東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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アンケートにまだ登場していないグループがあるのは何となくです。



第6話

私がまふゆに、セカイに拉致された日から1週間が過ぎた。

まふゆとのやり取りの流れでまふゆの家を知った私は、毎日用事が終わればまふゆの家へと向かい、セカイでくっつくだけ。

 

たまにセカイに入るなり開幕腹にタックルしてきて、食べてきたものが出てきそうになったが...変わったことと言えばその程度だ。

それ以外はずっと、寝転がってる私のお腹にまふゆが顔を埋めて寝てるとか、それを見た初音ミクが私の胸の上に頭を置いて寝ようとしたりだとか。

 

...さすがに胸が苦しかったから腕枕で我慢してもらったけど。

 

セカイで遅くまで過ごしている際の言い訳は、友達の家に泊まっている、だ。

朝に1度家に顔を出しているのだから、まぁいい顔はされなかったが、それでも彰人も絵名も踏み込んでは来なかった。

 

そんな、私とまふゆと初音ミクの静かな毎日は、突然終わりを告げた。

 

何やら聞いたことのある声が2つと、知らない声が1つ。

ここには物が何もないからなのか、声が響いて聞こえてくるのだ。

 

その声が聞こえてきたとき、私の服を掴むまふゆの体が強張ったのを感じた。

私のしびれつつある腕に頭を乗せている初音ミクを見ると、不思議そうに首をかしげるだけだ。

 

これは頼れないか、と考えていると、突然初音ミクが立ち上がり私たちから離れていった。

もしかしたら、あの2人に会いに行ったのかもしれない。

 

「まふゆ、行こう」

 

「...私たちだけでいいのに」

 

「そうは言っても。...いるものは仕方ないし」

 

まだ向こうはこちらに気が付いていないが、それも時間の問題だろう。

何となくだが、あの初音ミクがこちらに連れてきそうだ。

それまでに会話をさせる気にはさせておかないと、黙ったまま進まなさそうだ。

 

「...瀬名がここにいるのなら」

 

「いつも通りいる」

 

目を伏せがちのまふゆが私にそういうが、私は即答で返す。

多分だけど、『ここ』っていうのは、このセカイにいるってことだけじゃない気がする。

ただの勘だが...それが正しいような気もする。

 

私がまふゆの望むようにすると答えると、まふゆはようやく立ち上がった。

 

私もそれに続いて立ち上がると、まふゆは私の手を掴んで初音ミクの方へと歩き出す。

 

「ミク」

 

「その声...雪?」

 

何やら初音ミクと話し込んでいる彼女たちの背後から、まふゆが声をかける。

その声に驚いて振り返る奏。どうやら1番最初に雪が目の前にいるまふゆであることに気が付いたようだ。

 

そして奏と絵名とピンクの彼女の視線は、まふゆから私へと移っていく。

 

「せ、瀬名!? え、友達の家に泊まってるって...!」

 

「嘘は言ってない」

 

絵名に心底驚いたようにそう聞かれるが、私は嘘を言っているつもりはない。

ここまで献身的にまふゆに付き合っているのだ。これはもう友達と言っても過言ではないだろう。

 

「友達...?」

 

どうやら私は嘘を吐いていたようだ。

隣で私の手を掴んだままのまふゆがこちらへ振り返り、ただ真顔でこちらを見てくる。

 

友達でなければ一体何だというのだ。私たちの関係は。

 

「...ま、まぁそのことはいいわ。よくないけど...」

 

手を繋いで見つめあってる私たちを見て、絵名は私の言う事を信じたようだ。

どうやらまふゆの呟きは聞こえていなかったようだ。

 

少しの間私のことを見つめ続けたまふゆだが、それに飽きたのか今度は奏の方を見て口を開いた。

 

「ミク。どうしてここに私たち以外の人がいるの?」

 

「...」

 

しかし、それを問われた初音ミクは表情を変えずに視線をそらした。

答えたくないみたいだが、わざわざ隠すようなことなのだろうか。

 

そこまでやり取りしてようやく、再起動したのか、固まっていたピンク髪の子が目を見開いた。

 

「えっ、雪? 確かにその声、言われてみれば...」

 

「...でも、本当に雪なの? なんかナイトコードで喋ってる時と雰囲気違くない?」

 

まふゆに直接訪ねることはせず、ピンク髪の子と絵名で2人で静かに話す。

流石にこの距離なので全て丸聞こえなのだが...それは指摘しないでおこう。

 

そして、まふゆが先程から視線をそらさずにいた奏へと問いかける。

 

「...K?」

 

「うん、そう」

 

「...本当に雪なんだ」

 

「...えななんと、Amiaまで」

 

ナイトコードでの名前を知っている人間は限られており、なおかつ奏がまふゆのことを雪と呼んだ。

この2つでようやく確信に至った絵名とAmiaと呼ばれた彼女2人は、再び驚いた顔を見せた。

 

それに比べてまふゆの顔は、呆れの色が浮かんでいる。

 

「よかった、無事だったんだね、雪! 連絡とれないから何か事件に巻き込まれたのかと心配だったんだけど、ほっとしたよ~!」

 

どちらかと言うと事件を起こした側(私を拉致した)だと思うが、まぁ余計なことは言わずに黙っていよう。

それに先程から、私の手を握る強さがだんだん増している。

 

「もしかして、ずっとここにいたの? あ、帰り方がわからなくて困ってた、とか?」

 

「.......」

 

しかし、まふゆは目を閉じて、口を開かない。

Amiaの問いかけに微動だにせず、直立不動だ。

 

「...あれ? 雪、大丈夫? もしかしていなかった間、何も食べてなかったりする?」

 

Amiaの単純な善意。

しかし、まふゆはそれらを拒絶する。

 

「...うるさい」

 

「え?」

 

「このセカイに来ないで。...2人だけに、させて」

 

目を開けたまふゆはそれだけ言うと、視線を下に下げて、私の方へ1歩寄った。

きっと彼女は、今はこれまでと同じように過ごしたいのだろう。

彼女の事を、まだ私は何も知らない。単純に何も聞かなかったのだ、情報が足りていない。

ここからの行動を間違ってはいけない。

 

まふゆの言動に、絵名は眉を寄せる。

 

「なにそれ。どういう意味? ...2人にさせてって、瀬名も巻き込んで帰りたくないって事?」

 

「今言ったでしょ。私は、ずっとここに2人でいたい」

 

「...あんたねぇ、せめて私の妹を巻き込むのは...!?」

 

絵名が我慢できないとばかりにこちらに1歩足を動かした瞬間、まふゆが私と絵名の間に立った。

まふゆの背中越しでも感じる、明確な拒絶のオーラ。

それにあてられた絵名は、足を動かそうとしているがそこから動いてはいなかった。

 

それらを聞いていた奏は、どこか苦しそうな顔で言う。

 

「2人で...ずっとなんて、それは...」

 

まふゆの視線が絵名から奏に移った瞬間、絵名は即座にAmiaの元へと駆け寄った。

 

「ちょ、ちょっと。わけわかんないんだけど」

 

「う~ん...? えっと、じゃあ、もうボクたちと一緒に曲を作る気はないってこと?」

 

「そう。何度も言わせないで。作るとしても、瀬名と2人で作るから」

 

Amiaの問いかけに、そう答えるまふゆ。

 

いやちょっと待て。

私にその気は無いんだが。

確かに今は奏に誘われて一緒に作業することにはなっているが、別に望んで参加しているわけではないのだが。

 

私がその意を込めてまふゆを見つめると、その視線に気が付いたまふゆがこちらを見て頷いた。

 

「大丈夫、私が1から教えてあげる」

 

その心配はしていません。

 

「そ、それは困る。瀬名は私と一緒に作る。瀬名と一緒なら、もっと色んな人に...!」

 

えぇ。

いや、まぁ。このグループから抜けないままならそのルートになるのか。

というか、ただの素人に何をそんなに期待しているのだろう。

 

「あー、そんな急に言われても...え、奏?」

 

突然雪がもう一緒に作らないと告げた衝撃と、奏の様子がおかしいことにダブルの衝撃を受けている様子のAmia。

大丈夫、私も二重の衝撃を受けている。これがフタエノキワミ...。

 

「じゃあ。、雪は2人で...『OWN』に瀬名を入れて、曲を作っていきたいの?」

 

OWNというと...あのOWNか。

まさか、奏が嘘を吐く理由もないし、それは真実なのだろう。

まぁ、普段のまふゆからは到底想像できないが、今のまふゆなら、なるほど、となるかも知れない。

それほどに他者への拒絶が激しい。

 

「え、OWN? 雪が? ...え?」

 

突然まふゆがOWNであることを告げられ、絵名が混乱している。

訳も分からず自分を攻撃しそうだ。

 

そんな混乱状態の絵名に、奏が告げる。

 

「雪が、OWNだよ」

 

奏が自信をもってそう言い切るのを見て、絵名とAmiaは顔を見合わせて驚く。

しかし、まふゆは首をかしげた。

 

「根拠は?」

 

「根拠はない。でもわかる。...ニーゴで作っている曲と傾向は違うけど、間違いない」

 

確か、まふゆはこのグループでは作詞とミックスを担当しているのだったか。

曲の傾向は違っても、本人の癖と言うもので見抜いたんだろうか。

と言うか、このグループの略称って本人たちも使っているのか。

 

「そうだよね、雪」

 

絶対に外さない。奏から伝わる強い自信をもってまふゆに問いかけると、まふゆは否定する理由もないとばかりにあっさりと頷いた。

 

「うん、そうだよ。OWNは私。これから私たちになる」

 

だから参加するつもりはない。

 

まふゆがそう強く明言すると、なおさら絵名とAmiaの混乱は強まったように見える。

中でも、特に絵名の方が。

 

「え、じゃあ、この間、私とAmiaがずっとOWNのこと話してるとき...なんで、あの時言ってくれなかったわけ?」

 

「別に。...言う必要がなかったから、言わなかっただけ。雪じゃない私は、あなたと話したいことなんてないから」

 

前半は私も言わないかもしれないなんて同意しかけていたのだが、後半で手のひらがくるくる回転した。

さすがに私でもそこまでではない。

 

そんな、突き放すようなまふゆの言葉に、流石の絵名もイラっと来たようだ。

 

「なにそれ。...ふざけないでよ!」

 

今にもまふゆの胸倉を掴みそうな勢いで、絵名は吐き出していく。

 

「何も知らないですごいすごいって、騒いでる私をどういう気持ちで見てたの? 馬鹿だなって、そう思ってたってわけ!?」

 

このままではケンカになるかも知れない。

それを察知したAmiaは、すぐさま2人の間に入った。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてよえななん! 雪も、もうちょっとちゃんと話そうよ。ね?」

 

一旦絵名をまふゆから遠ざけたAmiaは、続けてまふゆの方を向く。

 

「ねえ雪。雪がOWNだとしてもさ、どっちも続ける、っていうのは無理なの? いくら何でも急すぎるし、ボクたちも...」

 

何とか説得を試みようとするAmiaだが、その奮戦むなしくまふゆは一蹴する。

 

「私はもうニーゴにいる必要が無い」

 

「えーっ、と...?」

 

まふゆの言っていることが理解できない、とばかりにAmiaの動きが止まった。

その理由を誰かが問いかける前に、まふゆは続ける。

 

「ニーゴにいても、足りなかったから」

 

「足りなかった、って...」

 

その続きを催促するかのような奏の問いかけに、まふゆは珍しく黙り込んで、何かを迷っているような様子を見せた。

言おうか迷っている、迷うほどの何かがあるのだろうか、この2人の間に。

 

「...初めてKの曲を聴いたときは、少しだけ救われたような気がした。だからKのそばで探せば、見つけられるかもしれないって思った。でも、それじゃ足りなかった...見つけられなかった」

 

「あ...」

 

それを聞いた奏の意識が、一瞬別の何かに取られていることが分かった。

わかりやすい。きっと、昔まふゆに言われた何かを思い出しているのだろう。

 

そうして、一瞬の空白の後、奏は震える手を誤魔化すように自分の腕を掴んで、まふゆを見る。

 

「救えて、なかった...?」

 

「Kと一緒にいても見つからない。だから、自分で見つけるしかないって、思った」

 

そうしてまふゆは、奏へと向けていた視線を私に移す。

まぁ、流石に私でも察していた。

 

私が彼女に何かをした覚えはない。

ただたまたま通話することになっただけで、詳細は分からないが、奏のように何かしら活動をしていたわけでもない。

まふゆに言われるがままに流されて、1週間ほどこのセカイで初音ミクも含めたら3人で過ごしていただけ。

 

それだけが故に、私には理解できない。

なぜこうまで執着されているのか。

 

「...ミク。もうこれ以上、この人たちと話すことはない。ここから追い出して」

 

そうまふゆに告げられた初音ミクの顔は、このセカイに来てから珍しい感情の色を出していた。

顔に出していたのは、悲しさ、だろうか。

 

「...そう。あなたは、本当にそれで見つけられるの?」

 

「...ミクが、私が、まだ私を見つけられるっていうのなら、全部捨ててでも探し出す。私には、それしか残されてない。もしそれでも見つからないなら、私はもう...」

 

「...」

 

まふゆのその言葉を聞いて、初音ミクはますます悲しそうな顔をした。

 

そうして今まで置いてけぼりを食らっていた絵名がようやくまふゆの圧から立ち直り、再び噛み付く。

 

「だから、あんたさっきから何言ってるのよ! 救われる救われないって、人の妹使ってそれにすがろうなんて、バカじゃないの!」

 

「うん。1度ちゃんと話そうよ。雪もちょっと変だしさ」

 

だいぶ頭にきている様子の絵名に、Amiaも続いて話し合いを提案する。

何度あしらっても変わらず話しかけてくる2人に思うところがあったのか、まふゆは私の手を放して向き直った。

 

「変? 私が変なら、あなたたちだってそうでしょ。だって本当は、Kも、えななんも、Amiaも。誰よりも消えたがってるくせに」

 

____。それは、また。

 

「どうして私だけが変だなんて言えるの?」

 

「...ほんとに、どうしちゃったの、雪? それに、ボクが消えたいってどういうこと? ボクは毎日が楽し~いし、そんなこと...」

 

まふゆの言葉に衝撃を受け黙った絵名と奏。

唯一まふゆに変わらず反論するAmiaだったが。

 

「そういうのもういいよ。Amia。あなたはいつも楽しそうにしてるけど、私が言ってることの意味。全部わかってるんでしょ?」

 

「...へぇ」

 

それまでとは打って変わり、低い声に半眼でまふゆを見た。

 

Amiaはまふゆのことをただ見るだけだし、絵名と奏はこちらを見ているようで見ていない。

まだ心ここにあらず、という感じだ。

少しの間誰も喋らずにいると、まふゆがため息を1つ吐き出して私の手を再び掴んだ。

 

「...とにかく、もう疲れた。ミク。このセカイにこの人たちはいらない」

 

「...うん」

 

私の手を、存在を確かめるように何度も強弱をつけて握る中で、まふゆは初音ミクにそう言い放った。

今度はそれに反論することなく、初音ミクは素直に頷く。

 

そのやり取りが耳に入ったのか、ようやく起動した絵名が慌てて初音ミクを止めようとする。

 

「えっ、ミク...!? 待って、瀬名!」

 

それでも初音ミクの行為は止まらず、初音ミクが次々と触れていき、絵名と奏とAmiaの3人は、そのままセカイから消えていった。

...その時の絵名の、私の名前を呼んだ時の悲痛そうな顔が、声が、頭の中で繰り返される。

 

「これで邪魔な人はいなくなった」

 

私は、正しい道を進んでいるのだろうか。

実の姉に、あんな顔をさせたかったわけじゃない。

だけど、今まふゆの側を離れることはできない。今離れれば、まふゆはどこかに行ってしまいそうで。

 

どうしたらいいのか迷っているうちに、脳が疲れたのか、私の意識は沈んでいった。

段々と考えられなくなってくる頭の中で、誰かに手を繋がれているのだけを覚えていた。




明るい展開を差し込む隙が...隙が...
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