東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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ニーゴ新曲追加されましたね。
難易度31...この前もレオニの30追加されましたし、最近難易度高いの多いですね。嬉しいですけど。


第9話

「ところでなんだけれど」

 

「あへば(?)、な、なんですか?」

 

まふゆの部屋の掃除を手伝ってくれと言われて、私がすることはただ物をよけて、まふゆ母が掃除機をかけるのを見守っているだけという中で、唐突にまふゆ母が話しかけてきた。

 

掃除機の音と一緒に、まふゆ母の声が聞こえてくる。

 

「これ、まふゆにはもういらないと思うのよね。そろそろ大学受験を考えなきゃいけないし...」

 

そういいながらまふゆ母が指で示したのは、まふゆのシンセサイザーだ。

今日も私が使ったように、私やまふゆの楽曲制作には欠かせないものとなっている。

 

出来れば捨てさせたくない。だが、今日会ったばかりの私の話をどれだけ聞いてくれるだろうか。

 

...適当なことを言って、思いとどまらせることが出来たらそれで十分だ。

 

「じ、実はシンセサイザーって、曲を作るのに必要でして。医者になった後、実は彼女は患者のために曲も作れるってなれば」

 

「でも、曲を作るのも、医者になるのも楽な道ではないわ。曲作りに熱中しちゃって、勉強がおろそかになる可能性はゼロじゃない」

 

「...え、えと...」

 

私が言い訳を思いつこうと焦っていると、まふゆ母が掃除機を止めてこちらを見た。

 

「もしかして、貴女、それが狙い?」

 

「...!」

 

図星でこんな反応をしたわけじゃない。

単純に、まふゆ母に恐怖を覚えたのだ。

 

先程まで優しく微笑んでいた彼女の顔はもう見る影もなく、今にも私を排除しようとしているような雰囲気をピリピリと感じる。

ミスった、ということは嫌でも分かった。

 

「全く、まふゆにも言ったのに。友達は選びなさいよって」

 

「え、選ぶって...」

 

「まふゆにとって益にならない人は、まふゆの近くにはいらないのよ」

 

そう言いながら、彼女は掃除機を振りかぶり。

 

「いらない!いらない!いらない!」

 

私の頭めがけて何度も振り下ろしてきた。

 

右に、左にと間一髪で避けた私は、これ以上この家にとどまっていると死ぬと理解して、部屋を出て玄関へと走った。

 

まさかまふゆ母がこんなに実力行使に出る人だとは思わなかった。

恐らく普段の彼女であれば、ここまで荒れることはないのだと思う。

ただ、まふゆが絡んだ時だけ、手段を選んでいられないという事なのだろう。

 

最近激しい動きをしていなかった自分の体に鞭を入れて、まふゆと風呂に行った時を思い出しながら玄関へと急ぐ私。

 

「大体、最初に言ってたあれも嘘なんでしょ! 待ちなさい!」

 

それを追いかけるまふゆ母。

まるでホラーゲームの主人公になった気分だ。

 

玄関と思わしき扉を開けて、すぐさま閉める。

すると扉に衝撃が襲い掛かると同時に、何かが割れるような甲高い音が鳴り響いた。

 

皿なのか、軽めの壷でも投げてきたのかは知らないが、それが私の頭にでもあたっていたらと思うとぞっとする。

そのまま私の体を地中に埋められでもしたのだろう。

 

とにかく、この場を離れないと死ぬという、危険な状態の私は、すぐに靴下のまま走る。

スマホはまふゆの部屋に置いてきてしまった。セカイ間の移動は出来ない。

既に夕方になっている今の時間帯。靴下で歩いていると、不審に思われるだろう。

 

まふゆ母が面倒ごとに絡まれるのはいいが、まふゆも巻き込まれるのは避けたい。

事実を並べていけば、まふゆも警察の厄介になるだろうし。

 

「ここから1番近いのは...家、か」

 

そうして私は、自分の家を目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...瀬名?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

歩くこと数時間。

人目につかないように隠れながら移動していたせいで、予想以上に時間がかかってしまったものの、無事に家へとたどり着いた私。

玄関を開けると、ちょうどカバンを肩にかけた絵名が靴を脱いでいた。

 

「? だ、れ...」

 

「...ただいま」

 

後ろに立っているのが私であるのを認めた瞬間、絵名はカバンを落として、私を優しく抱きしめた。

...最近勢いがあったり、力強かったりしたから、こんなに優しくされるのは久しぶりかもしれない。

 

「...帰ってくんの遅い」

 

「...ごめんなさい」

 

「許さない」

 

「...」

 

まぁ当然かと思う。

姉である絵名を優先せずに、同じサークルメンバーを、それもまふゆを優先していたのだから、怒るのも当然だ。

 

「罰として、しばらく私のそばにいること」

 

「...それは、学校以外で、ってこと?」

 

「買い物にも付き合ってもらうし、一緒に寝てもらうし...しばらく私から離れたらだめだから」

 

「...」

 

これは、家族愛と取って良いのだろうか。

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

夜。

いつもの時間通りにナイトコードに参加した絵名と私。

なお、私はノートPCがあるにはあるけれど、イヤホンをスマホと一緒に置いてきてしまったので、参加して話を聞くことは出来ても、会話に参加することが出来ないため、絵名と同時参加だ。

 

椅子に座っている絵名に抱えられて、イヤホンを左右を分け合ってPCの画面を見る。

 

「絵名、邪魔じゃない?」

 

「邪魔な訳ないでしょ。というか、そのノートPCも昔に買ってもらったやつでしょ。まだ動くの?」

 

「まぁ...少し良いものを買ったみたい」

 

「ふーん...あいつがね...」

 

絵名のPCモニターの前に、私のノートPCを置いて起動する。

ナイトコードにまふゆからのメッセージは来ていない。

恐らくスマホが部屋に置きっぱなしになっているのに気づいたんだろう。

まふゆの部屋の掃除はある程度終わった後だったし、そのままになっているはずだ。

 

「そういえば、何度も連絡したのに、どうして出なかったのよ」

 

「...? 来てなかった」

 

「...はぁ? スマホの調子が悪かったのかしら...。今度新しいの買いに行くわよ」

 

「...わかった」

 

どうやら今使っているスマホとはさよならしなくてはいけないようだ。

まぁ、古い方はWi-Fiがあればネットは出来るし、作業用にでもしよう。

 

もう少しで25時だな、と時計を見ていると、突然私の首に湿った生暖かい何かが触れた。

 

「っ!?」

 

「あ、ごめん。つい」

 

思わず振り返って絵名を見ると、絵名は全く悪いとも思っていない顔で舌を出してこちらを見ていた。

舐めたのか。私の首を。

 

「...汚いと思うけど」

 

「別に、不快には思わないわよ」

 

「...」

 

そりゃ、舐めてる本人はそうでしょうよ。

 

...まぁ、先ほどお風呂に入ってきたばかりだし、汚れは落としているはずだけれど、ただ単純に恥ずかしいというかなんというか。

 

私は恥ずかしさをごまかすように、私のお腹に回されている絵名の手をにぎにぎしながら前を向いた。

 

と、イヤホンから声が響く。

 

『やっほー! 今日もみんなでがんばろーねー! ...ってあれ、えななんだけ? Kは?』

 

「いない。ずっと離席中なのよね...。あ、そうだ。Sも戻ってきたから」

 

「ただいま」

 

『おお、おかえり! ちなみに聞きたいんだけど、今まふゆってどんな感じなの? 元気にしてる?』

 

私が帰ってきたことを告げると、Amiaも元気よさそうに返事をする。

そうして聞いてくるのは、まふゆの現状についてだ。

 

...まぁ、元気ではあったのだろうけど、ここからどうなるかわからない、と言ったところだろうか。

 

「ここからが本番」

 

『そっか。...というか、Kはもしかしてついに倒れちゃった、とかじゃないよね?』

 

『わかんない。...DMも送ったけど、返事ないし』

 

まぁあり得ない話じゃないだろう。

誰も介入しなければ3食カップ麺だし、栄養は確実に足りてないだろう。

それに運動不足。更に食事を抜く。

前にセカイを経由して部屋に行ったときは、サークルに入らないかと言われた時より片付いていたから、ヘルパーか家政婦か、誰かしらを雇っているのだろう。奏に片づけが出来るわけがない(偏見)。

 

『大丈夫かなぁ...。やっぱ、全部自分とSでやるなんて無理なんだよ~。雪がいないとさぁ』

 

Amiaがそういうものの、まだ私は奏を手伝ってはいない。

きっと、出来るだけ自分でやろうと頑張っているんだろう。

それで体を壊して、曲が完成するのが遠のけば元も子もないとは思うのだが。

 

そう考えていると、半ば不意打ち気味に私の腹が圧迫され苦しくなった。

なんだ、と思ってみれば、絵名の腕が私のお腹に手をまわしているんだった。

それが、雪の名前が出てきたことで、力が入っているらしい。

 

「雪はいなくていいでしょ」

 

『もー、えななん、まだ根に持ってるわけ? 確かに妹ちゃんのSを攫ってはいたけどさ、それもSの意思があってのことでしょ? そんな怒ってると顔シワシワになっちゃうよ~?』

 

確かに私の意思もあったにはあったが、絵名になんて事言うんだこいつは。

今の絵名にそんなことを言えば、火に油を注ぐのと同じだ。

 

「うっさいわね! 別に、怒ってなんかないわよ! ただ、雪はニーゴにいる必要がないって思っただけ」

 

『すっごい怒ってると思うのはボクだけかな...』

 

「あんなすごい曲を1人で作れるんだから」

 

『まぁ、そうかもしれないけど...』

 

そこで会話は一旦途切れた。

絵名はぷりぷりと可愛らしく怒っているし、Amiaは今の状態の絵名に触れると火傷すると思ったのか、黙った。

 

むぅ。このままではまふゆは誤解されたままだ。

何とかしなければと、私が脳内で言葉を選んでいると、再びAmiaの声が聞こえてきた。

 

『雪も、本当はずっとキツかったんだろうな』

 

「え?」

 

『前にさ、ボク、雪と雪のお母さんが話してるの、聞いちゃったんだよね。もしかしたらSも聞いたことあるかもだけど...雪のお母さんって、ナチュラルに価値観押し付ける感じの人でさ。でも、雪は全然気にしてないって感じで受け止めてたんだ』

 

そうAmiaが言う事には、共感しかない。

 

私が頷いているのが見えているであろう絵名は、微妙な声を漏らすだけだ。

 

「...それで?」

 

『雪がいいならそれでいいのかなって思ったんだけど...でも、セカイであんな感じになっちゃってたでしょ? だから、雪はお母さんのために、無理にいい子になろうとしちゃってたんじゃないのかなーって思って』

 

「...母親が原因で、あんな感じになっちゃった、ってこと?」

 

『それだけじゃないかも。雪は、周りに合わせて自分を変えてっちゃったのかもしれない。みんなに慕われて、誰にも迷惑かけない。みんなにとってのいい子にならなきゃって思って...そういうのがキツくって、全部わからなくなっちゃったんじゃないかなって。なんとなく、そんな気がするんだ』

 

確かに、Amiaの考えは私と大体同じだ。

あれだけのヒントの少なさでそこまで考えつくというAmiaの洞察力というかなんというか。

...あぁ、なるほど。Amiaも『そう』なのか。もしくは似たようななにか。

 

AmiaもAmiaで、周りの人間からの押し付けられる何かがあったのかもしれない。

 

だからこそ、似たような雪のことが...まふゆのことが、理解できるのだろうか。

 

『別にボクは、雪みたいないい子ってわけじゃないけど。...何となくわかるんだよね。みんなに合わせなきゃいけないって空気がすごく苦痛だってことはボクも知ってるし...』

 

そこまでAmiaの話を聞いた絵名は、意外そうな声を出した。

 

「Amiaでも、そういう風に思う事があるんだ」

 

ナチュラル失礼か、絵名。

 

『まぁね~。って、ちょっとちょっとー! ボクでもってどういう意味!? ボクだってキツい時はあるんですけど~!?』

 

「あ、ごめん。...でもAmiaって、割といつも自由だし、楽しそうにしてるから」

 

『え? ま、そりゃねー! 人生楽しまなきゃ損だし? いつまでもネガってちゃ楽しくないもん! えななんもSも、毎日パーッとやりたいでしょっ♪』

 

「...まぁ、楽しくはやりたいけど」

 

そして、マイクに拾われない程度で『楽しく、か』と絵名は呟いた。

今の絵名は、絵を描いても、描いてる時の大多数は苦しみながら描いている。

描き終わっても苦しいことだらけで、認められるために、自撮りをあげている。ちなみにこの自撮りの存在は最近知った。

 

『でも雪は、そういう風にできなかったんだろうね。1人で抱えて限界超えちゃって、Sを誘拐しちゃったのかも』

 

「それだけはホントに許さないんだから」

 

『まぁまぁ。...だから、思うんだよね。もし雪も苦しんでて、そのせいでああなっちゃって、それで消えちゃうっていうのは...ボクは、ちょっと寂しいなって』

 

「....」

 

『ボク、もう一度雪と話したいな。あの"Untitled"って曲を再生すればいけるんだよね。それなら...』

 

雪に会いに行く、か。

ただ今の状態だと、また門前払いだろうし、そこに私もついていこうものなら、今度こそ完全監禁だ。

あの初音ミクがセカイにいる人間を出すのを自由にできるとしたら、私は出ることが出来なくなる。

 

それを絵名も想像したのか、苦い顔をして私の頭に顎を乗せた。

 

「確かに、そういってたけど....でも、肝心の雪があんな感じじゃ、会いに行ったところで...」

 

意味がない、と続けようとしたところで、何かの通知音が鳴った。

 

「今の音、何?」

 

『あ! OWNの...雪の曲の更新通知だ!』

 

「え? また新曲出したの...? 前出してからそんなに時間たってないのに...」

 

そう言いながら、絵名は動画投稿サイトを開いて曲を再生する。

その曲は私の耳にも残っている曲で、まふゆと共同作業した時の曲だ。

これ以外にもまだ数曲一緒に作業した曲があるので、まふゆがその気になれば一気にあげることが出来るだろう。

 

相変わらず拒絶の激しい曲を聴いていると、再び通知音が連続で鳴る。

 

『え、なに、2曲連続? いや、3曲...?』

 

「どれだけ曲作ってんの? ...しかも、今までよりも...これ、もう...」

 

その曲のどれもが、聴いたことはあるけれど、手が新たに加えられている。

まふゆの精神に更に負担がかかるような事が、起きているのかもしれない。

決壊寸前のダム、みたいな感じだろうか。

 

「...本気なの?」

 

まふゆの事に何か心当たりがあるのか、絵名がそう呟いた後、イヤホンからAmiaではない別の人の声が聞こえてきた。

 

『...えななん、Amia』

 

「『K!』」

 

まふゆを救うための物語があるとしたら、動くのはきっとここからだ。

 




ニーゴのIF書いてたら瀬名ちゃんの人としての尊厳が損なわれる話が出来上がっちゃったのでボツです。
でも時間は帰ってこないので大変です。

えーん。
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