これでMVでの舌出しは2人目...瑞希は出してましたっけ。覚えてないですじゃ。
これで奏とえななんは猫だと言う事が立証され...。
「K、、どこ行ってたの?」
『セカイに』
絵名たちが心配していたのだと、どこに行っていたのかを聞くと、奏はあっけらかんとした声で告げた。
「え、セカイって...あそこに行ってたの?」
丁度私たちも、セカイに行く行かないの話をしていたところで、実にタイムリーな話だと思った。
『そう。...それで、決めた。私は雪のために曲を作る。雪を...救いたいの』
そういう奏に、困惑の声を漏らす絵名とAmia。
そんな2人に、奏はセカイであったことを話した。
ミクと話し、2人で曲を作って救うことに決めたのだと。
『本当は消えたいなんて思ってない...か』
その話を聞き始めてから、Amiaは相槌をしていたが、絵名は黙ってしまった。
ただ黙って私の頬をむにむにと触る。
気に食わないことがある、と言う事は理解したが、それで私で発散するのはやめてもらえないだろうか。
『ねえ、K。ボクも一緒に連れてってよ』
『Amiaも?』
『もちろん、ボクが行っても何にもなんないし、雪のことは、雪にしかわかんないけど。...でも、ボクの感じた気持ちを伝えたって、いいと思うんだよね。雪がいなくなったら、寂しいって気持ちはさ』
『Amia。...わかった。セカイに行く時は、連絡する。Sはなんて言ってたか、誰か聞いてたりする?』
私はここにいる、と私自身が答える前に、絵名がそれに答えた。
「Sなら、私の家にいるわ。私の妹だもの。それと、Sはセカイなんかに行かせないから。あいつがまた私から奪うってことも考えられるし...」
『まぁまぁ。...っていうことは、えななんは一緒には...』
「行くわけないでしょ。と言うか、KもAmiaも。雪のこと、構い過ぎじゃないの? しんどいのなんてみんな一緒で、雪だけ特別なわけじゃない。...他の人とは違うってとこはあるけれど...でも、だからって雪のためにあんなところに行きたいなんて、私は思わない』
まさに取り付く島もないといった様子の絵名。
これ以上聞いても答えは変わらなさそうだと察したのか、Amiaはすぐに身を引いてKと話し出した。
『わかった。なら、ボクたちだけで行こうか。K』
『う、うん。...S、ほんとに行かないの?』
「...そんな感じ」
言外に、Kに来てほしいと言われるも、絵名を置いて私だけセカイに行くわけにもいくまい。
行きたいのはやまやまだし、勝手に行くことも出来るが、それだと仮にまふゆの状態を何とか出来たとして、まふゆがサークルに戻ってきた際に、絵名とまふゆの間で一触即発の空気が常にできそうだ。
まずは、絵名の考えを変えてからになるだろう。
明確に行く、行かないを表現しなかった私のメッセージを、奏は察してくれなかったようだが、Amiaが察してくれたようで、どこか嬉しそうに反応した。
『そっかそっか。なら、よろしく頼んだよ、S』
「任された」
『?』
「...」
そうしてその日は、解散した。
〈♪〉
次の日の夜。
絵名が学校に行っている間、曲を作り続けている奏の様子を見に行ったり、中学時代の知り合いのアイドルだった子に街中でたまたま会ったりと、いつも椅子の上で過ごしていた私に比べてアクティブに動いて疲れた私は、うとうとしながら絵名と一緒にベッドに横になっていた。
まぁ、ビビバスの時と比べると、運動量は落ちるが。
「...瀬名は、さ。あいつと一緒にいて、どう感じたの?」
「...まふゆは、寂しがり。人の温もりを求めてる。自分に理想を被せてこない、そんな人の温もり」
「...温もり」
「誰かから求められている自分のしたいことはわかるけど、本当にしたいことはわからない。そんな子。絵名が言うほど、悪い子じゃない」
「いや、あんたを誘拐したじゃない...」
そう言われるとそうかもしれない。
でもまぁ、それはある意味しょうがないのかもしれない。
私の予想だけれど、まふゆが私を誘拐した時の感覚としては、幼い子の好きなぬいぐるみを持ってきちゃう、みたいな感覚に近いのではないかと思う。
ぬいぐるみに名前をつけて、いつでもどこでも一緒。そうしていたかったのだと。
あのまま私がセカイから出ずに、まふゆも全てを諦めていたら、私もまふゆも、人生の半分以上をあのセカイで過ごしていたに違いない。
「話してみたらわかる。絵名も、セカイに行こ...」
「...私はいかない、って...寝ちゃったのね。...私だって、あんたを常に手の届くところに置いてられたら、どんなに...」
〈♪〉
今日も絵を描き、それを見て私が客観的なコメントをすると言う事を繰り返していると、ナイトコードにKとAmiaがいることに気が付いた。
まだ25時には少し早い。
このタイミングで集まっていると言う事は、曲が出来た可能性が高い。
絵名が目をつむって唸っている最中に、私は勝手にマウスを触ってナイトコードのボイスチャンネルに入室する。
『えななん? 起きてたの?』
「え、ちょ、瀬名!?」
「...K、曲できた?」
『うん。2人にも聞いてほしい』
そういって奏から送られてきたファイルを開き、曲を再生する。
...うん、良い曲だ。
「...やっぱり、Kの曲はあったかいね」
『ありがとう』
絵名からも好反応を得られた奏は、ひとまず、と言った様子で息を吐きながら絵名に礼を言った。
それでも、絵名はセカイに行くつもりはないようで、2人にちゃんと戻ってくるように言う。
『もっちろん! それじゃあ、行こう、K!』
『うん。会いに行こう。雪に』
そして、2人はナイトコードに入ってはいるものの、セカイへと行ったようで、音は聞こえてこなくなった。
誰の声も聞こえてこない中で、絵名は私のうなじに顔をうずめる。
迷っているのだろう。なんだかんだで絵名は見て見ぬふりは出来ないだろうし。
中学の時から変わっていない、と言うかなんというか。
「...私、すごい迷ってる。いや...もしかしたら、踏ん切りがつかないだけなのかも。OWNの曲が好きで、雪が消えたらもう新しい曲は聴けなくて。それは嫌だけど、また瀬名を失うのも嫌。ねぇ、どうしたらいい?」
「...」
何となくだけど、今この瞬間だけは、私は東雲家に、このセカイに生まれてこなければよかったんじゃないか、と思った。
私がいるから、絵名は迷ってる。私がいなければ、きっと遅れてもあのセカイに行って、一言でも二言でもまふゆに言いたいことを言うだろう。
ただそれでも、私はここにいるから。だから、絵名の背中を押さなければならない。
「大丈夫。あのセカイを管理してるのは、初音ミク」
「...ああ、1回私たちを強制的に出したの、ミクが触れたからだっけ」
「だけど、今度は大丈夫。絶対に出されないし、私がいなくなることもない」
「...なにそれ、すごい自信ね」
「何となく。それに、絵名は雪に何も言いたいことはないの?」
「...」
これで何の反応も示さなければ、絵名はセカイには行かない。
最悪私だけでもセカイに行くしかないだろう。
だが、絵名は突然立ち上がり、私を抱きしめながら力強くマウスを握った。
「ええ。ええ。言いたいことなんて山ほどあるわよ! いいわ、この際だから、好き勝手言わせてもらおうじゃない!」
絵名は半ばやけくそのような感じで、『Untitled』を再生した。
...まぁ、結果オーライか。
〈♪〉
セカイにたどり着くと、奏がまふゆに何かを喋っている所だった。
それを見つけた絵名は、私と手を繋いでずんずんと歩いていく。
「ここまで来たんだから、絶対に消えさせなんてしないわよ!」
「吹っ切れた」
威勢よく私を連れて歩く絵名だが、その手は震えている。
怒りで震えているわけではないだろう。多分怖いのだ。それでも、立ち向かっている。
ホラーはダメなのに、こういうものには立ち向かえるの、すごいと思う。
ようやく3人の声が聞こえてくる距離まで来た時、初音ミクだけがこちらを向く。
それに絵名が驚いたように肩を震わせるが、初音ミクは表情を変えずに頷いて、私たちに道を譲った。
こちらに敵意が無いことを理解した絵名は、初音ミクに会釈して横を通り過ぎた。
そして、息を大きく吸い込んだ。
「だからもういいの。放っておいて」
「ゆk」
「ふっざけんじゃないわよ!!」
耳がキーンとした。
とんでもない声量を出した絵名に、他4人も目が点になっている。
特に初音ミクは思わず耳をふさいでこちらを見ている。
先に言っておけばよかったかもしれない。
というか、私は手を繋がれているから、耳をふさぐことが出来なかったんだが。
「え、えななん!? どうしてここに...っていうかすごい大声...」
「そいつに...雪に、一言...二言、言いに来たの」
「増えた...」
「自分を探せないとか、消えた方がいいとか、ぐちゃぐちゃ言ってるそいつが、心底むかつくから! あと、瀬名から聞いたけど、一緒にお風呂入ったって聞いたから!」
後半はただの私怨だし、というか、私の名前さっきは流れたけど、言い過ぎじゃないだろうか。
一応Sって名前で入っているんだけどな。
「...」
今もなお黙ったままのまふゆに、絵名は私の手を離してツカツカと歩み寄る。
「なんであんたは、私の欲しいもの持ってるくせに、消えたいとか、平気で言えるわけ?」
「何、言ってるの。私は何も持ってない。ずっと」
その言い方にカチンときたのか、絵名は更にヒートアップしていく。
「何もない? 私にとってはそうじゃないって言ってんの!! あんたは持ってる! あんなにすごい作品が作れる! あんたの作品を待ってて、期待してくれる人だってたくさんいる!! 腹立つぐらい才能を持ってる...私が、私が欲しくてたまらないものを、あんたは持ってる」
「...」
絵名はその勢いのまままふゆの胸倉をつかむが、その腕には力が入っていないことが、少し離れたここからでも分かった。
「あんたの曲が頭から離れない。あんたみたいな勝手なヤツ大っ嫌いなのに、あんたの曲はもっと...もっと聴きたいって思ってる。嫌いなのに...嫌いなのに! 心のどこかで、雪に消えてほしくないって...もっと雪の曲が聴きたいって、思ってる!」
絵名はそこまで一気に言い放つと、まふゆの胸を押して、深呼吸を1つ挟んだ。
「だから...消えないで作りなさいよ。才能があるなら、才能がない人の分まで苦しんで、作りなさいよ。...消えるなんて、絶対に許さない...!」
「...私の曲がすごいかどうかなんて、そんなのどうだっていい。欲しいのは誰かからの賞賛じゃなくて、ただ見つけたかっただけ。...でも、そんなの無理だってわかったから、もうどうでもいいの。あなたにはわからないかもしれないけど」
「はいカチーン。私がここまで言ったのにあんた、そういう事言うんだ。瀬名に免じて我慢してたけどもう限界だわ...」
「え、えななん落ち着いて...」
えななんが拳を握りしめて震えているのを見て、奏が慌てて止めに入る。
非力な奏だが、半ば奏信者のような存在の絵名には効果てきめんのようで、実力行使に移れないでいる。
ふむ。今後は奏に絵名を抑えてもらうとしようか。
そんなことを考えていると、今度はAmiaが口を開いた。
「ボクは雪の気持ち、ちょっとわかるけどな。ほら、天才だろーがお金持ちだろーがカワイイ子だろうが、キツいことってあるし? 雪がどんだけすごい曲作れても、1番欲しいものが手に入らないなら、雪にとっては意味ないと思うんだよね~。...だからボクは、雪が消えたいなら好きにすればいいと思うよ」
Amiaがそう言い放ち、まふゆは眉を寄せる。
「...なら」
しかし、Amiaはまふゆの言葉をさえぎって、話を続ける。
「...でもさ。何となく、ボクたちって、似てるような気がしたんだ」
「...似てる?」
「うん。周りに少しずつ自分の形を変えられそうになってるところとかさ。それに抵抗したり、受け入れられたりして。そうやって必死になてるうちにつかれて、全部どうでもよくなっちゃう。...そんな感じが、似てるなって」
あんまりこの気持ちを分かってくれる人はいないからさ、とAmiaは疲れたような笑顔を浮かべて肩を落とした。
まぁ、そうだろうなと私も思う。
中学だから今の私が許されているだけで、高校に行くとそうもいかないのだろう。
出席日数もあるだろうし、なまじ私のスペックが高いだけに、ああした方がいい、こうした方がいいと言われるのは目に見えてる。
「だからボクは...雪がいなくなったら、ただ寂しいって思うよ」
「...勝手なことばっかり。勝手に嫉妬して、勝手に共感して、勝手に救おうとして。やめてよ。...もう十分でしょ」
3人がこうしてまふゆに想いをぶつけているのに、まふゆの考えはいまだに変わらない。
「救われるかもって、希望があるかもって思うのが。だったら。最初から見つからないって思えてた方が楽だった。だから、もう、もう救われるかもなんて、思いたくない! もう疲れたの! 探しても、探しても、探しても探しても探しても!!! 探す度に違うって、絶望して...もうこれ以上、どうしようもないじゃない...っ」
これまでのまふゆの苦しみを、まふゆは3人にぶつけていく。
3人はその雰囲気におされて何も言えずにいるが...まだ、奏の目は死んでない。諦めていない。
なら、一瞬だけでも時間が必要だろう。
「まふゆ」
「...瀬名。もしかして、一緒に消えてくれる?」
「それでもいい。けど、まふゆが私を攫った責任は? それでまふゆが何かを見つけられるならと付き合ってた私の時間は? どうなるの?」
「...それは...」
「おお、雪を追い詰めてる?」
「昔からスイッチ入ると怖いのよね、瀬名...あ、S」
「今更遅いと思うけど...」
私がまふゆのしたことを問い詰めていくと、まふゆの旗色が悪くなっていくのが目に見えてわかった。
微妙に罪悪感を覚えているのだろう。であれば、まだチャンスはある。
「少しでも悪いと思ってるなら、もう少し話を聞いて。それでも答えが変わらないのなら。私も付き合うから」
「...瀬名」
恐らくだが、ここでどうにもならずにまふゆが消えてしまえばそこでゲームオーバーだ。
なら、そのあとの私がどうなろうが、この際考える必要はない。
後ろを振り向けば、奏が真剣な表情でこちらを見ている。
「奏」
「うん。ありがとう」
奏は私の横を通り過ぎると、まっすぐまふゆの目を見て口を開いた。
「私が作り続ける」
「...え?」
「この曲で雪を本当に救えなかったとしても、救えるまで作り続ける。雪が自分を見つけられるまで、ずっと作る」
その奏の宣言は、一種の呪いのようだ。
「...何言ってるの?」
「ずっと作る。お父さんの呪いだとしても...私はもう、私の目の前で誰かが消えるのを見るのは嫌なの」
「でも、Kだって消えたいんでしょう!?」
「うん。そうだよ。だからもし、私が絶望して、消えそうになったら。その時は雪が、『まだ見つかってない』って言ってくれればいい」
そう穏やかな表情で告げる奏に対して、まふゆは呆れたような顔をする。
それはそうだ。これは、もう1つ呪いを、自ら増やす行為。
「何を言ってるかわかってるの? 私が私を見つけられるまで、Kはずっと曲を作り続けなくちゃいけない! それを...!!」
「うん。わかってる」
まふゆもそれを理解しており、奏が理解していないで言っているのではと問うが、奏はそれを理解しているという。
既に承知の上での発言なのだ。
「どうして...そこまで...」
「私の、エゴだよ。どの道私は、ずっと曲を作り続けなくちゃいけない。だから、雪の分が増えたって何でもないよ」
私はそういう奏の横に立ち、手を握った。
ここまで来たら一蓮托生だ。
「それに、瀬名もいるし」
「...わからない。見つかるまで、どれだけかかるかもわからない。見つからないまま終わるかもしれない。それでも...本当にやるの?」
「うん」
言い換えてしまえば、命を懸けてまふゆを救うとも言っている。
それらをどう思ったのか、まふゆは急に笑い出し、すぐにいつもの真顔に戻った。
「.......なら、もう少しだけ...探してみるよ...」
「...雪」
まふゆはそれだけ言うと、私を後ろから抱きしめて、後頭部に顔をうずめた。
「本当に、ずっと作り続けてくれるんだよね」
「うん。大丈夫だよ、雪。絶対にいつか、救って見せるから」
「...うん」
とりあえずこれで一旦落着、と言いたいところなのだが...まふゆさん。
私の後頭部に顔を埋めながらしゃべるの、すごいこそばゆいからやめて頂きたいのだが。
「瀬名も、ずっと?」
「え。...多分」
完全にまふゆが救われたとは到底言えないだろう。
ニーゴとしてのゴールはきっと、そこなのだから。
ただ今回の件がこれで終わるのであれば、私が4人といられるのもそこまでになるだろう。
次にセカイが待っている。
だから私は、適当にとりあえず頷いてみた。
「...そう」
何故か一瞬、寒気がしたのだが...風邪でも引いただろうか。
ともかくこれで、一旦肩の力を抜けるだろう。
そう思い回りを見ると、初音ミクと目が会った。
初音ミクは、心底安心した、と言うような雰囲気で、私たちの方を見ていた。
本当に、私も安心したよ。
次回でついに曲生成。
その次でファミレスに行って、ニーゴ編は一旦終了です。
次、どのグループにしましょ...。