各章に挿入と言うような形をとる予定なので、よろしくお願いします。
バッドエンド編をこちらに足すとタグがごちゃごちゃしそうなので、別小説に投稿予定です。
「...はぁ。これで何とかなった、ってことでいいのかな。それにしても、ほんとめんどくさいヤツ」
「ま~ま~。でも、良かった。えななんもそう思うでしょ?」
何とかまふゆを引き留めることに成功した私たちは、今後のことについて話を進めようとしていた。
そんな中、絵名とAmiaは少し離れたところで2人で話していた。
「...さあね。ま、瀬名を二度と攫わないって言うなら考えるけど」
私もご免だ。
「そういえば、OWNの曲...全部聴いたよ」
「...そう」
奏がそうまふゆに言い、まふゆはちらりと私を見てまふゆへと頷いた。
まぁ私も関わってはいるが、その時のものをまふゆが更に激しくアレンジをしているので、まふゆの曲と言っても過言ではないだろう。
「やっぱり全部、雪がいた。ちょっと別人の音もしたけど、雪の音もしたよ」
変態か?
「...そっか。...今度教えてくれる? 私の音って、どんな音か」
「...うん、わかった」
まふゆの件についてはまだ現状維持のまま、というか、現状維持に戻したという感じだが、そう悪い方向には向かないだろう。
奏と見つめあっているまふゆを背中越しに感じていると、そう思う。
「...気になってたんだけど、雪は瀬名が気に入ってるの?」
「...よくわからない。けど、離したくないと思う」
「は~?? どうせこれが終わったら離れるんだから、今のうちに離れて慣れておきなさいよ!」
「嫌」
「くっ...こいつ...!」
絵名の怒りゲージが限界を超えそうになっている時、それまで黙っていた初音ミクが声をかけてきた。
その表情は、先ほど目が合った時よりも嬉しそうだ。
「よかった。...本当の想いを見つけられたんだね。これでやっと、一緒に歌えるね」
「え?」
一緒に歌える。
そのワードを聞いて、奏は不思議そうに首を傾げ、絵名とAmiaは顔を見合わせた。
まふゆは微動だにしていない。
まぁ、ビビバスの時の事を考えると、曲ができるのだろう。
「本当の想いから、歌が生まれようとしている。ほら...」
初音ミクがそう言うと、どこからなのかは不明だが、音楽が聞こえてくる。
「...何か聴こえる?」
「もしかして、これがミクの言ってた...」
しかし、今度はそれらを聞いていたまふゆが首を傾げた。
「この歌が、私の本当の想い...? でも私はまだ、何も見つけられてないのに」
「ううん、まふゆは見つけられたんだよ。セカイが...そして歌がここにあるのが、その証拠」
「ここに...私の想いが」
「うん。...だから、一緒に歌おう」
聴こえ続けてくる音楽。
あれが、まふゆの想いで出来た歌なら、きっとそこから何か手掛かりが見つかるだろう。
そう考え奏を見ると、奏も同じことを考えていたようで、真剣な表情で顎に手を当てて考え込んでいた。
「...ミク。ありがとう」
「...うん。さあ、6人で歌おう」
初音ミクがそう言うと、絵名たちは顔を見合わせた。
「え、私たちも?」
「本当の想いは、あなたたちがいなければ見つけることが出来なかった。4人とも、ここにきてくれて、ありがとう」
そう言うと、初音ミクはぺこりとお辞儀をした。
なんだか小動物みたいで可愛い。
素直に初音ミクに感謝の言葉をぶつけられた絵名は、腰に手を当てて明後日の方向を向いた。
「べ、別に私は...。雪に文句を言いに来ただけで」
そう言いながらも、照れからなのか頬は赤い。
まさにツンデレと言った感じの絵名を見たAmiaが、悪そうな笑みを浮かべた。
「来てくれてありがと~。えなな~ん♪」
「...Amiaに言われるとイラっとくるんだけど」
「え~!? ひっど~い!」
このサークル名物と言っても過言ではない、ツンデレのえななんといじるAmiaの図。
それを見た初音ミクは、楽しそうに笑っている。
「さあ、歌おう。雪」
「...うん」
奏が手を伸ばし、雪がそれを掴む。
どうやらこれから歌うようだ。
ならば、私は特等席でそれを眺めるとしよう。
他3人の歌声は未知数なところがある物の、絵名の歌唱力は高い。本人は無自覚だろうが、努力も無しにそれだけの歌唱力を持っているというのは、何だか微妙な感じだ。
どこか手頃な座れる場所が無いかと探していると、初音ミクと目があった。
「瀬名も」
「え」
「『6人で歌おう』って言った」
「...」
頭を高速回転させ、その時の事を思い出す。
...なるほど、確かに言っている。
その時は他に考える事があって聞き逃していたのか。
だが、私が歌う必要はないだろう。
「私は別に」
「瀬名、歌おう」
「ま、まふゆ」
じっと見つめてくる初音ミクの視線に耐え切れず、その場を離れようとしたら、今度はまふゆに手を掴まれてしまった。
奏と手をつないだ状態でこちらまで歩いてきたので、奏が若干引きずられたような格好になっていた。
まふゆに掴まれたことにより、逃げ場はないことを悟った私は、諦めて大人しく頷いた。
「わかった」
「...じゃあ、行こう」
そうしてまふゆは、左手に奏、右手に私と手をつないだ状態のまま、絵名とAmiaの方へと合流する。
あぁもう本当に、なんで私も。
「あ、雪2人と手つないでる。まさに、両手に花?」
「...仕方ないわね。ほら、さっさと歌うわよ」
「うん。雪は準備いい?」
「いつでも」
「瀬名。ちゃんと声出してね」
「わかった...」
〈♪〉
気付いた時には、私はセカイの中ではなく、現実へと戻ってきていた。
いつの間に戻ってきていたんだと、ナイトコードのチャット欄を表示しているモニターを見ていると、後ろから優しく抱きしめられた。
「あ~...よかった。私だけ戻ってきたときは『またやられた』って焦ったんだから」
絵名は私によりかかりながら、深く息を吐いた。
そういえば、椅子に2人で座りながらセカイへと向かったんだっけ。
「と言うか、瀬名ってあんなに歌うまかったっけ」
「そうかな」
「歌手の道でも目指してみたら? それこそ、愛莉に相談してもいいし」
「...よくわからないからいい」
「あっそ。まぁ興味が出たらでいいわよ。やりたいようにすればいい」
そう言って絵名は私の髪で遊び始めた。
クセが付くような髪型にはしないでほしいのだが。
『あ...いつの間に』
『戻ってきた! みんないる?』
「うん、ちゃんと戻ってる」
絵名は髪をいじるのは飽きたのか、私の頬をこねこねしつつ、奏とAmiaに反応を返す。
『雪は...』
奏が不安げな声を出す。
まふゆが戻ってきているかどうか。
3人は黙ってしまったことから確信はないのだろうが...まぁ大丈夫だろう。
『...いるよ』
『雪!』
『...そっか。よかった』
まふゆがセカイからちゃんと戻ってきていることを確認できたことで、Amiaと奏はよかったと、2人で安堵の声をこぼす。
私の後ろにいる絵名は、むすっとしているが。
「ったく」
「...あいくにのっひぇにゃい」
「わざとよ。わ・ざ・と」
いまだに頬をこねられているせいでうまく喋ることが出来ないが、声が小さくマイクに乗っていないことを絵名に伝えると、更にむすっとした顔でこねる強さが上がった。
顔面マッサージは今はいいのだが。
と、絵名に頬を遊ばれていると、突然Amiaが大声を上げた。
『あー! ねぇねぇ、共有フォルダ見てよ!』
「うるさっ! 急に叫ばないでってば...。共有フォルダがどうかした、って...」
Amiaに言われたとおりに共有フォルダを開くと、そこにあったはずの『Untitled』のフォルダ名が変わっていた。
『“悔やむと書いてミライ”?』
『ミクは、本当の想いを見つけたら、想いから歌が生まれる...って言ってた』
『じゃあ、これがさっきの...』
『...うん...』
まふゆが本当の想いを見つけた結果できた曲が、悔やむと書いてミライという曲。
果たしてそれがどういう想いなのかは、奏がうまく汲み取るだろう。
それを聞いていた絵名が、ようやくかと言った様子で体から力を抜いた。
「なんにしても、これで一件落着ってこと? はぁ...疲れた。雪のせいでほんとに大変だった...」
『とか何とか言って、わざわざ駆け付けたクセに~♪』
「だからそれは雪にムカついてたから! ...今もほんとムカつくけど。でもま...またよろしくね、雪」
『うん! おかえり、雪!』
『...うん』
絵名とAmiaが改めてまふゆを歓迎し、まふゆはそれに短く答える。
絵名はその反応に「うんって...もっと他になんかないわけ...?」と呟いているが、それもマイクには乗っていない。
多分それを指摘したら、言葉を発することも不可能なほどに頬をこねられるだろう。
賢い私は言うのを我慢した。
『...もう朝になるから、解散しよう。早めに休んで...また明日から、次の曲を作り始めたい』
確かに奏の言う通り、もういい時間だ。
いつもの作業する時間よりもだいぶ時間が経っている。
セカイと現実世界での時間の流れに違いはなさそうだし、それほど長い時間セカイにいたのだろう。
奏の言葉に同意するように、絵名が眠たそうな声を出した。
「そうだね。あと実際すっごい眠いし...ふわぁ。瀬名、今日は一緒に寝るわよ」
「...いいけど」
今日はもう解散、という空気感の中、Amiaが大きな声を出してみんなを呼び止めた。
『あのさ、ボクからちょっと提案があるんだけど...』
そうしてAmiaから提案されることに、私は自分でもわかるほどに嫌な顔をしたと思う。
これだけ頑張ったんだ。
しばらく家で寝ていたいなぁ...。