東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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気付いたら10万文字以上書いてました。

長く書けたのも、皆さんのおかげです。
ありがとうございます。

飽き性の私もえらい。ちょっとだけ。


第3話

それから何日かたった日。

何回も不法侵入することによって生徒も見慣れてきたのか、私もあまり気苦労せずに宮益坂に入れるようになったころ。

朝早くにみのりからメッセージが飛んできた。

 

『みのり:ダメだった~....』

 

事前に聞いていた、久しぶりに書類選考が通ったというオーディション。

みのりは、これで50回目、なんて言っていたけれど、精神的には大丈夫なのだろうか。

 

『瀬名:まだ次がある。諦めないで』

 

とはいえ、ここでそうだったんだ、なんて冷たい対応は取れない。

何が引き金でバッドエンド直行するか分からないのだ。

 

『みのり:もちろん! 今回のオーディションはだめだったけど、次はいい結果が出るかもしれないし! もっともーっと、頑張らないと!』

 

どうやら、つよつよメンタルの持ち主のようだ。

これならある程度は私が補助に回らずとも、みのり自身で全て解決していくかもしれない。

 

...もしかしたら、既にみのりは本当の想いを見つけていたりして。

 

「...さすがに、かな」

 

みのりとの会話が途絶えたことを確認した私は、スマホをぽいっと投げ捨て、ベッドの中に潜り込む。

既に彰人は学校へと向かっており、絵名はすやすやと寝ているので、私の安眠を妨げる存在はいない、ということだ。

 

彰人に1度起こされてはいるものの、起きたふりをしてこうして眠っている。

絵名に頼まれたから起こしたのに怒鳴られ、私は起こしても起きたふりでそのあと自身の知らぬ場所でまた寝ていると。

かわいそうな彰人。

 

ひとまず、私は宮益坂の放課後までおやすみなさい、だ。

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

15時にアラームをセットしていた私は、今流行りだというグループの曲でスマホにたたき起こされた。

のそ、というような擬音が付きそうなほど遅い動きで起き上がった私は、スマホを手に取って通知を確認する。

 

上の方に、私が入れている数少ないゲームアプリの通知が来ておりそれ以外にみのりから何通もメッセージが来ていた。

 

『みのり:遥ちゃんが引退』

『みのり;朝バタバタしてたから気付かなかった』

『みのり:別のクラスにいるらしい』

『みのり:うぅ...認めたくない...けど、事実C組に...』

『みのり:真っ二つになりそう...』

 

その他にも、色々とメッセージが来ていた。

まぁ、とんでもなくショックを受けているということは分かった。

 

スマホでニュースを見ると、そこには『桐谷遥、引退』という文字がでかでかと表示されていた。

既に武道館に立てるほどの実力を持っているはずの彼女が、所属していたASRUNは解散し、彼女自身も引退。何があったのだろうか。とサブタイトルには表示されている。

 

桐谷遥。...どこかで聞いたことのあるような。

気のせいかな。

 

「...気のせいじゃない!?」

 

私はあわてて連絡先を表示し、上から名前を確認していく。

すると、あるではないか。

1番上に、『桐谷遥』と、堂々と。

 

「...何かが起こる予感がする...!」

 

ひとまず身支度を大慌てで整えた私は、自分の『Untitle』を再生し、セカイへと飛び込んだ。

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

「もしかしてなんだけど、みのりと遥って」

 

「...来て早々だね。うん、瀬名の想像通りだよ」

 

「キミノソーツォートーリダヨ」

 

「天気〇子でも見た?」

 

ふざけている初音ミクを適当にあしらい、リンが素直に私の問いかけに頷いてくれていることに、私は若干感動している。

何せ、このふざけている初音ミクは明確なことはあまり言ってはくれなかったのだ。

 

...というか、どうやって映画を見たんだろう。

 

ふと空を見上げると、赤、紫と光っている星に続き、緑に光り始めている星があった。

1つは既に、他の星とそう大差なく光っている星。

もう1つは、弱弱しく、今にも消えそうなほど小さく光っている星。

 

弱弱しい星は今のところ遥なのか確証は持てないが、力強く光っている星は間違いなくみのりだろう。

というか、みのりでなければ誰も当てはまらない気がする。

 

「ありがと。じゃあ、戻る」

 

「うん。...たまにでいいから、セカイで過ごして」

 

セカイを出る際に、リンは寂しそうに笑いながら私に手を振った。

そういえば、最近はセカイで寝ることが少なかったかもしれない。

なんだかんだ外で用事を済ませていることが多かった。

 

今度はセカイでリンと一緒に寝よう。

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

宮益坂へと向かっている最中。

私のスマホにメッセージが届いたことを知らせる通知音が鳴った。

道の端っこで立ち止まり、スマホをポケットから取り出すと、遥からメッセージが届いていた。

 

『遥:どこかに落ち着ける場所、ないかな?』

 

『瀬名:屋上』

 

『遥:ここって屋上解放されてるんだね、ありがとう。行ってみる』

 

想像するに、この前までテレビの前にいた国民的アイドルである彼女がクラスにいることで、いろんな生徒から『そういう目』で見られていたのだろう。

落ち着ける場所を探していたので、私は屋上を勧めた。放課後はそこでみのりと練習することになっている。

 

あわよくば、遥とみのりの間で何かが起きないかと思って。

 

スマホをポケットにしまい込み、歩くペースを上げる。

これでみのりと遥の間に修復不可能な溝でも生まれようものなら大変だ。

 

というか、あれだけ遥のことが好きだと話をしていたみのりだが、いざ本人を目の前にしてあがらずに喋ることはできるだろうか。

 

みのりがパニックになる様子を頭で思い浮かべながら歩いていると、いつの間にか宮益坂についていた。

すれ違う女子生徒は、いずれも遥の話ばかりだ。

 

これは、ちょっと想像以上かもしれない。

 

若干急いで歩いていると、屋上へと向かう道の途中で、誰かが言い争っているような声が聞こえてきた。

 

恐らく人数は2人。片方は普通ぐらいの声量だが、もう片方はかなり大きい。

気持ちが抑えきれなくて、声も大きくなっているような感じだろうか。

というか、これ愛莉だ。

 

2人はそのまま屋上へと向かっていったので、私もそのあとを追う。

 

こそこそとついていくと、愛莉たち2人は屋上へと行き、更に奥へ歩いて行った。

その後姿を眺めていると、ちょうど給水塔の裏で隠れているみのりと遥を見つけた。

 

それを確認した私は、音もなく2人の元へと駆け寄る。

 

「あ、瀬名。まだ探してるの?」

 

「探し人はとなりのみのり」

 

「さ、探し人...?」

 

遥とみのりの2人と合流し、愛莉たちから隠れながらこそこそ会話する私たち。

 

どうやら遥に、未だに人を探していると思われているので、私はみのりを見ながら、探し人は見つかったことを言う。

みのりには、みのりを探して宮益坂まで来たとは言っていないので、若干混乱しているようだ。

 

「は、遥ちゃん。探し人って...?」

 

「それにしても、あの2人はどうしてここに来たんだろう?」

 

「うぅ、不思議そうな横顔の遥ちゃん、眩しい...!」

 

話を聞いていない遥と、それにすらも感動を覚えているみのりを無視して、愛莉たち2人を見る。

 

愛莉と一緒にいるのは、水色の髪色の生徒だ。。

 

口元にあるほくろが特徴的な彼女だが...どこかで見たことがあるような気がする。

 

「雫と、桃井愛莉だね。あの2人の間で何があったのか、聞いてたらわかるかな」

 

「あ、そっか。日野森先輩は『Cheerful*Days』のセンターだし、歌番組でも一緒になってましたもんね!」

 

「もう1人の、『QT』の桃井愛莉はよくバラエティ番組に出てたよね」

 

「はい。でも、半年前くらいに辞めちゃったんですよね。あんなにバラエティ番組に出てたのに...」

 

みのりはそう呟くと、悲しそうに視線を下げた。

 

それらを聞いていた遥は、納得したように何度か頷いて、私の方を見た。

 

「...この学校、私も単位制クラスが便利だから選んだけど、やっぱり芸能活動している人が多いんだね」

 

単位制クラス。

いわゆる留年があるのが学年制と呼ばれるもので、単位制クラスは高卒までに必要な単位数を取得すればいい、といったような感じだろうか。

 

単位制のメリットとしては、自分のライフスタイルに合わせて時間割を組むことができる、という点だろうか。

学年制では決まっている時間割があり、それに従って単位を取得していくが、単位制は必要な分だけ選んで、余った時間は趣味にあてるなどができる。

 

まぁ他にもいろいろとあるのだが、メリットはまぁそんなところだろうか。

 

逆にデメリットもある。

メリットでもある、自分で時間割を組める、という点が、自己管理能力を求められるという点。

それから、高校であるがゆえに、人数が少ない授業が開かれないという可能性。

 

とはいえ、日中芸能活動をしなければならない彼女たちには、こちらの方が便利ではあるのだろう。

 

「そ、そうですね、桐谷さん!」

 

私の方を見てうんうん頷いている遥に同意し、今度は嬉しそうな顔をして、頬に手を当てているみのり。

なんだかこの空間、カオスじゃないか?

 

ずっと私の方を見ていて、みのりの声が聞こえていないのではないかと思っていたのだが、遥はみのりの方を向いて、困ったような笑みを浮かべた。

 

「同級生なんだし、敬語じゃなくていいよ。私も、みのりって呼んでいい?」

 

「え!? あ、わ、わかりまし...じゃなかった! う、うん、遥ちゃん!」

 

今度は、嬉しそうな顔から一転、青ざめた表情になるみのり。

何を考えているのか、事前に遥に対する想いを聞かされている私からすればまぁ分かりやすい。

 

分かりやすいのだが...忙しい子だ。

 

「それにしても、あの2人がケンカ、ね...」

 

みのりから愛莉たちへと視線を移した遥は、その目を細めて呟く。

現役時代に何か絡みがあったんだろうか。

 

「...雫。わたし、昔の後輩から聞いたのよ。アンタがメンバーとうまくいってないとか、移籍するとか、変な噂が立ってるってこと」

 

雫、と呼ばれた生徒は、気まずそうな顔をするだけ。

 

スマホでパッと調べた限りでは、その見目麗しいというか、ビジュアル一点での記事ばかりだ。

そして、出てくる名前は日野森雫だけ。

彼女はなんちゃらデイズのセンターなのだから、グループで活動しているはずなのに、どの記事も触れていない。

恐らく原因はそこだろう。

たまにアイドルとしての彼女の記事も出てくるが、それでも軽く触れられるだけで、メインは彼女だ。

 

「...本当なの?」

 

「....それは....。..........」

 

不安げに尋ねられた彼女は、煮え切らない反応を示す。

それを見た愛莉は、右足で強く床を踏んだ。

 

「はっきりしなさいよ! 中途半端な態度が一番良くないのよ! あんたがそんなだと、ファンだって不安になるじゃない!」

 

「わかってる。わかってるけど...」

 

彼女にも考えがあるのだろう。

愛莉に強く言われても出てこないのは、迷っているからなのか、それとも。

 

とはいえ、愛莉たちよりも今の優先順位はみのりと遥だ。

今私たちがおかれている状況としては、みのりの練習場所に愛莉たちが来て、練習どころじゃなくなってしまった、という感じだろうか。

 

どこか別の場所で練習ができるならその方がいいな、と考えていると、隣に立っている遥がため息を吐き出した。

 

「なんだか長くなりそう。仕方ない。こっちから出ていこうか」

 

「え?」

 

私と遥の考えが一致しているかは分からないが、愛莉たちがいなくなるのを待つのではなく、逆に私たちから出ていこうと動き出す遥。

急に出入口へと動き出した遥に、みのりは置いてけぼりだ。

 

そして、視界の角にでも入ったのか、愛莉がこちらを見た。

 

「!! 誰かいるの!?」

 

どうしよう。猫の真似でもしようか。

 

「にゃー」

 

「...さすがに無理があるんじゃないかな...」

 

みのりに言われてしまった。

なんだか悔しく感じるのは私だけだろうか。

 

愛莉に見つかり、素直に出ていく遥。

それに続く私たち2人。

 

遥の姿を見た時、愛莉と日野森雫はひどく驚いた顔をした。

 

「ASRUNの、桐谷遥......!? あんた、この学校だったの!?」

 

「遥ちゃん...?」

 

愛莉の反応からして、そんなに親しくないような間柄のようだが、どうやら日野森雫とはそこそこ仲が良さそうだ。

 

「久しぶり、雫。去年の収録以来だね」

 

愛莉の反応を無視して、まず日野森雫と話すという図にイラついたのか、愛莉の顔の険しさは増していく。

 

「ちょっと、こっちが話してるのよ! コソコソ盗み聞きなんて、いい度胸じゃない!」

 

「盗み聞き? そっちが勝手に誰もいないって思って、大声で騒いでいただけじゃないですか」

 

しかし、遥はどこ吹く風だ。

逆に愛莉を煽るような発言。これが、実力に裏付けされた態度というやつなのだろうか。

 

「なっ....!!」

 

「安心してください。さっき聞いたことは誰にも言いません。辞めたとはいえ、それくらいの常識はありますから」

 

「な、なんて生意気な...! まったくこれだから大手のアイドルは...!」

 

愛莉と遥の間でピリピリとした空気が強くなっていく中、みのりはあたふたとしながら私の影に隠れた。

 

「せ、瀬名ちゃん! どどどど、どうしよう!」

 

「別に、悪いことはしてない。堂々としてればいい」

 

「無理だよ~!!」

 

ええい、私の肩を揺らすでない。

 

そして、遥と言い合っていた愛莉は今度はこちらを向いた。

 

「そっちのあんたも話さないでよ!? ...ま、瀬名は分かってるか」

 

「い、言いません! 誰にも言いません!」

 

まるで銃でも突きつけられて脅されているような反応だ。

映画の中だと、既に目の前で見せしめに1人は殺されている反応。

 

「それならもう行っていいわよ。私たち、まだ話をしなくちゃいけないの」

 

「あ、あの...でも...」

 

愛莉にもう行け、と言われてもみのりは困ったような顔をするだけで、動こうとはしない。

みのりの反応を見るに、ここ以外で練習のできそうな場所はないのだろう。

確かに困った。

 

そんな様子のみのりを見て、愛莉は怪訝な顔をする。

 

「何よ。まだ何か用?」

 

ここはみのりの代わりに、と私が口を開きかけた瞬間、隣の遥が素早く前に出た。

 

「後から来ておいて出ていけ、だなんて。勝手ですね。彼女の方が先に、ここでダンスの練習をしていたんですけど」

 

「はぁ? ダンス? 2人...瀬名はないか。1人で? なんでよ?」

 

遥はないとしても、私を人数に加えかけたのはなぜだろう。

私は以前にも、アイドルに興味はないと伝えたはずだけど。

 

遥に説明をされた愛莉は、一瞬遥を見てみのりに視線を移し、目で答えなさいと訴えていた。

 

「あ、えっと、私...その、アイドルを目指してて...!」

 

「アイドル? あんたが?」

 

「は、はい! 私、アイドルになることが夢なんです!」

 

アイドルである、またはアイドルであった彼女たちの前で、そう堂々と宣言したみのりの姿に、愛莉たち2人は驚いた顔をした。

そして、愛莉はまさか、といったような表情で私を見る。

 

それを受けた私は慌てて顔を横に振る。

違う違う。私はアイドルになるつもりなんてない。

 

それを見た愛莉はどこか残念そうな顔で私から視線を外した。

 

今はみのりの事だけを見ていて欲しいのだが。




今回のモアジャン限定、とりあえず70連ぐらいしたんですよね。
星4が0でした。

これで前回のニーゴ復刻限定(えなみず)から合わせて270連星4が0ということになりますね。
不運。
不運ですが...私以上の方がいると信じていますよ。
出なければやってられません。

月末のガチャの事は月末の私が考えるでしょう。
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