東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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今までの更新頻度(毎日投稿)とは、お別れをした!

ポケモンやってました。
ただ図鑑埋めたり色違い集めたりとかはしないので、ストーリー終わらせたら更新頻度上がると思います。


第4話

「アイドルになりたいって、あんた本気なの?」

 

みのりが彼女たちの前でアイドル宣言をかました後。

ここからはみのりが話すべきだと判断したのか、遥はみのりの後ろに立った。

ちょうど私の隣だ。

 

「は、はい! 今はオーディションのために練習してます!」

 

「オーディションって...どこの?」

 

「え? えっと、次はモリプロのオーディションを受けようと思ってます!」

 

みのりの口から出てきたモリプロというもの。

私ですら『なんか聞いたことあるな』という認知度を誇る、その道に興味のない人でもテレビなどで一度は聞いたことがあるような事務所だ。

 

私よりもその価値を理解している愛莉は、予想通り目を見開いた。

 

「モリプロ!? 超大手事務所じゃない! あそこの倍率何倍かわかってるわけ!? あんたみたいな素人じゃ、通ってせいぜい1次審査よ!」

 

これは厳しい。

あまりにも辛口な評価に、みのりも押され気味だ。

 

「ひょ、ひょえ......」

 

『ひょえ』なんて使う人は初めて見たけど。

 

とはいえ、今回は私も愛莉に同意だ。

愛莉は知らないが、みのりは既に50回オーディションを落ちており、書類審査を通ったのも片手で数えられる程度。

悲しくなる。

 

とはいえ、みのりには不屈のつよつよメンタルがある。

愛莉に言われたからと言って、諦めるとも思えないのだが。

 

「あんた、名前は?」

 

「は、花里みのりです...」

 

「そう。今までいくつオーディション受けたことあるの? 結果は?」

 

「お、応募は50回くらいして、書類審査を通ったのは3回で...2次審査に受かったことは、まだないです...」

 

改めて聞くと、普通に悲しくなってくる内容である。

私だったら既に挫折して、普通に公務員でも目指しているところだ。

 

そんなみのりの悲しい経歴を聞いた愛莉は、深く息を吐き出した。

 

「そんなんじゃ、モリプロに受かるわけないでしょ! 弱小事務所のアイドルすらなれるかどうか...」

 

「うっ....。で、でも! がんばります!」

 

頭に手を当ててそういう愛莉に対して、頑張る、と返すみのり。

その瞬間、愛莉の眉がピクリと動いたのを、私は見逃さなかった。

 

「もっともっともーっと頑張れば、きっと...!」

 

「頑張る...? 頑張っただけで、何とかなるわけないじゃない...!」

 

そういう愛莉の声は、複雑、と言ったような声色だった。

その声に何が込められていたのかは、きっと同業者である彼女たちにしか分からないだろう。

けれど、何かがあった、というのは、私でもわかるほど重たい言葉だった。

 

「...え?」

 

「...アイドルを目指すのはやめた方がいいわ。あんた、向いてなさそうだから」

 

それは嫌味というわけではなく、単純にアイドルという世界を知っているからこその、善意で出て来る言葉だった。

しかし、それを聞いていた雫が2人の間に入った。

 

「待って、愛莉ちゃん」

 

「...何よ」

 

「その子の夢を否定しないであげて。...愛莉ちゃんは、今はお仕事をしていないけど、みんなに希望をあげる、アイドルでしょう?」

 

「...」

 

「だから、愛莉ちゃんには、そういうことを言ってほしくないの」

 

先程までの、はっきりしない態度を見せていた雫が、今この時は、しっかりと愛莉の目を見て告げていた。

彼女には、彼女なりのアイドルへの想いがあるのだということが分かる。

 

「わかってるわよ...」

 

そして、少しの間誰も喋らなくなった。

 

空気が重い。この空気を何とかするには、私が突然笑顔で歌って踊ってアイドルしなければいけないのではと思うほどに重たい。

だがそれを、みのりが振り払っていく。

 

「私、向いてなくても頑張ります!」

 

「...だから、頑張ったからってなんとかなるわけじゃ...!」

 

「『今日が良い日じゃなくても、明日は良い日になるかもしれない』。私、この言葉を信じてるんです」

 

それは、初めてみのりに出会った日にも言っていた言葉。

この言葉を言った本人の方を見ると、予想通り驚いた顔をしていた。

 

「だから、合格するまで絶対絶対あきらめません! ダメでも頑張って頑張って、頑張り続けます!」

 

生半可なことでは、この少女の心は折れない。それをここにいる全員が理解した瞬間、みのりのポケットに入っているスマホから声が響いた。

 

『今の言葉、とっても素敵だね!』

 

この場からでは見えない6人目の声。

私だから、それが誰なのかはわかるし、音の出処もわかるが、愛莉たちはわからないようで辺りを見渡していた。

 

「だ、誰よ! まだ他に誰かいたの?」

 

「...あれ? 私のスマホが光ってる?」

 

みのりがスマホをポケットから取り出すと、突然初音ミクが映し出された。

私たちは、スマホから3Dホログラムを映し出すという、現代科学技術も顔真っ青なものを見せられている。

 

『はじめまして、みのりちゃん!』

 

「えっ!? ミクちゃんの、映像...え!?」

 

若干後ろが透けてる、と呟きながらあわあわとスマホを持ちながらパニックになるみのり。

面白いのでこのまま見ていたいのだが、一旦落ち着かせなければ話が進まなさそうだ。

 

私は遥の服を引っ張った。

 

「ん?」

 

「みのりを一旦静かにさせて」

 

「そ、そんなこと言われても...。まぁ、やってみるけど」

 

私のお願いに渋々頷いてくれた遥は、みのりの後ろまで歩いて行って、彼女の両肩を後ろから勢いよく手を置いた。

 

「みのり、ストップ」

 

「ひゃい!」

 

これでみのりは暫く静かなはずだ。

 

それを察してくれたのか、今まで黙っていた初音ミクが口を開いた。

 

『それに、遥ちゃん、愛莉ちゃん、雫ちゃんだよね。全員揃ってくれててよかった。もちろん、瀬名ちゃんも! よろしくね♪』

 

名前を出しながらそれぞれの方を向いて、最後に私の方を向いてウインクした。

この様子を見る限り、予想通り私の事を知っているのだろう。

 

「...なんでミクが話しかけてきて、私たちの名前まで知ってるの?」

 

『それは、みんなの想いで出来たセカイから来たから、だよ!』

 

「想い?」

 

『そう! 私ね、セカイのステージで、リンちゃんと一緒にアイドルとしてライブしてるの! リンちゃんはダンスがとっても上手なんだよ。私も教えてもらったりするんだ』

 

そういう初音ミクの目はキラキラと輝いていて、本心から楽しんでアイドルをしているのだろうな、と思わせるほどの物だった。

 

それを聞いていたみのりが、何かに気付いたような声を上げるも、それに誰かが気付くことはなく、初音ミクは慌てたような声を上げた。

 

『あっ! そろそろライブの時間だからいかなくちゃ!』

 

「ライブって...さっき言ってた、セカイのステージってところで?」

 

『そう! それじゃあ、セカイで待ってるね。みんな、早く来てね!』

 

初音ミクはそれだけ言うと、すぐにスマホから投影されていたホログラムを消した。

ライブに向かったのだろう。

 

それまで初音ミクとは遥だけがやり取りしていて、茫然としていた愛莉と雫が、まだ呑み込めていない声を出した。

 

「な、なに、今の。...新手の広告?」

 

「ミクちゃんとおしゃべりできちゃうなんて...とっても不思議ね」

 

愛莉はまだ普通の反応だとして、雫のその反応はいかがなものだろうか。

こういう天然が彼女の魅力なのだろうか。アイドルとしての彼女は知らないけど。

 

頭が痛い、と言った感じで頭に手を当てている愛莉と、頬に手を当ててぽわぽわしている雫。

そして、考え事をしている遥。

みのりはどうした、と思って見てみると、ちょうど彼女が大きな声を出したところだった。

 

「あ、あの、すみません!!」

 

「? 何よ?」

 

「え、え~っと、その、今の広告のミク...あ、広告じゃないかも...? とにかく、ミクが言ったことが、私、思いまして...!」

 

話が入ってこない。

慌てているというか、なんというか。

 

「大丈夫? 落ち着いて話していいのよ」

 

「あ、はい!」

 

雫に優しくそう言われたみのりは、目を閉じて数回深呼吸をして、再び目を開いて彼女たちを見た。

 

「め、迷惑じゃなければなんですけど...先輩たち、私の練習を見てくれませんか!?」

 

「はぁ!?」

 

突然のみのりのお願いに、愛莉が大きな声を出して驚き、遥と雫は目を見開いて驚きを示した。

 

「あ、もちろん瀬名ちゃんにもお願いしたいんだけど!」

 

なんでやねん。

 

「なんで私たちがあんたの練習を見なきゃいけないのよ!」

 

ただの正論を返す愛莉だが、みのりもそれはわかっているようで、自分の手を自分で握って、それでも諦めずに言う。

 

「私、ダンスも歌もずっと1人で練習してて...。ついこの前から瀬名ちゃんが手伝ってくれてるけど、それでも私、わからないことがいっぱいで...」

 

まぁ手伝うって言っても、やったことは精々スマホの中のお手本と彼女の動きを見比べて、動きの矯正をしたりしたぐらいだ。

後は柔軟の手伝い。

 

仮に愛莉たちが手伝ってくれるなら、私が手伝う必要はないと思うのだが。

...いや、まぁ完全に関わらなくなるつもりはないのだけれど。

 

「厚かましいお願いだってことはわかってます! でも、先輩たちみたいなすごいアイドルに教えてもらえたら、もっとアイドルに近づけるって思ったんです! 私もっともっともっとアイドルに近づけるように頑張りたいんです! だから...」

 

みのりの言っていることは、先人たちの知識を私に下さい、と言っているような感じだろうか。

まぁ先人と言うほど年が離れているわけじゃないからちょっとニュアンスが違うかもしれないけど。

 

ただ、みのりに協力してくれるとしたら最初に声を上げるのは彼女だと思っていたから、この展開には少し驚いた。

 

「いいわよ」

 

「雫!?」

 

「みのりちゃん...だったかしら。お仕事があるからオフの日だけになっちゃうけど、それでもいい?」

 

まさかこんなにすんなりと協力してくれると思っていなかったのだろう、みのりは一瞬ぽかんとしたような顔をした後、満面の笑みを浮かべた。

 

「も、もちろんです! ありがとうございます!」

 

その笑顔のまま、みのりは私のそばに駆け寄ってきた。

 

「瀬名ちゃん瀬名ちゃん! 日野森先輩がオフの日だけだけど、教えてくれるって! これを機に、瀬名ちゃんも一緒に頑張ろう!」

 

「え、いや私は...」

 

「うぉー! やるぞ~!」

 

聞いていない。

 

ちらりと遥に助けを求めると、遥は苦しそうな顔を浮かべながら、外を向いていた。

 

「ちょっとどういうつもり? あんた、自分の仕事...」

 

「昔、愛莉ちゃん言ってたでしょ? 『アイドルなら、アイドルを目指す子は絶対に放っておけないものよ』って」

 

雫に詰め寄った愛莉はそう返されると、肩を落として、みのりと私を見た。

 

「はぁ。...わかったわよ。私も見てあげればいいんでしょ。ただし、次のオーディションに落ちたらそこでおしまい! いい?」

 

「...!! は、はい! ありがとうございます!」

 

例え短い時間だとしても、みのりからしてみれば貴重な時間だ。

本当ならば今すぐにでも練習を始めたいところだろう。

 

そうして、雫と愛莉のオフの日だけ、みのりは2人に練習を見てもらえると言う事になった。

何故か、私は強制参加である。しかも練習に参加。なぜ。

 

そして、遥は1度も口を開くことはなく、今日はこれで解散という事になった。

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

「みのり、良かったね。練習見てもらえることになって」

 

「うん!」

 

宮益坂女子学園からの帰り道。なぜか私はみのりに誘われて、遥と私とみのりの3人で帰っていた。

遥にそう笑顔で言われるも、みのりは最初笑顔で返したが、すぐに曇る。

 

「えっと、遥ちゃんごめんね。結局バタバタしちゃって...」

 

...そういえば、どこか気の休める場所を探していたのだったか。

それを考えると、屋上を勧めた私にも責任がある気がしてきた。

しかも、屋上でみのりが練習をしている、と言う事を知っていて遥を屋上へと向かわせたのだ。

 

それに今更気づいたが...まぁばれなければ問題ない。

 

「...瀬名は、どうして屋上を提案したの?」

 

そういう遥の顔は、笑っているようで笑っていなかった。

 

「そういえば、あのミクちゃんの映像は何だったんだろう?」

 

「...そうだね。とっても不思議だった。今日はなんだか変わったことがいっぱいあったな」

 

遥の私への質問が聞こえていなかったのか、みのりがそう言いだして、遥が顔を私から背けた。

助かった。素晴らしいタイミングで話題を出してくれたぞ、みのり。君は今1つの命を救ったのだ。

 

「...みのりは、アイドルになりたいんだよね」

 

「うん。...えへへ、遥ちゃんに言えるなんて、変な気分。私、遥ちゃんに憧れてアイドルになりたいって思ってたから...」

 

みのりからしてみれば、アイドルになりたいという夢の出発点たる存在だ。

そんな彼女の前で夢を語ると言うのは、変な気分になるだろう。

 

だが、みのりから憧れを向けられているはずの彼女は、苦しそうな顔をするばかり。

みのりは前を向いていて、彼女の表情には気づいていない。

 

「私も遥ちゃんにもらった分、そんな風に誰かに希望を届けられるアイドルになりたいの。だから先輩たちに見てもらって、瀬名ちゃんともっともっと、頑張らなくちゃ!」

 

私を混ぜて頑張ろうとするのはやめていただきたい。

その文面だと私もみのりレベルで頑張ることになるのではないだろうか。

 

死ぬな。このままでは。

 

「...そう」

 

それを聞いていた遥は、彼女の背中を押すような言葉をかけるでもなく、ただ頷くだけで、そのまま解散した。

 

 




何日か前にIFを更新しましたが、中々展開に悩んでいます。
恐らく、あっちは年内に更新されることはないでしょう。
えへ。
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