慌ててコピーして、としていたので、もしかしたら文が抜けている可能性があります。
えへ。
まふゆから逃げるように合流した屋上では、既にみのりの練習が始まっているところだった。
屋上の扉を開けて入ってきた私にいち早く気付いた遥は、ベンチから立ち上がってこちらに近づいてきた。
「遅かったね。何かあったの?」
「...まぁ、ちょっとだけ」
歯切れの悪い私の返答に、特に突っ込むこともなく、遥は1つ頷いただけで私から視線を外した。
「みのり、順調そう?」
「うーん、どうだろう。これまでのみのりの練習をしらないから何とも言えないけど、あの2人の練習がこれまでのと比べてハードだった時、ちょっと気になることはあるけど」
「...?」
遥の言う気になる事を考えても、特にぱっと思いつくものはない。
何を気にしているのかを聞くのも何だか憚られたので、私はそのまま流して制服を脱ぎ始める。
「...いつも思ってたんだけど、瀬名ってあんまり乗り気じゃないのに、レベル高いよね。実はアイドルだったりする?」
「ただの一般人」
私が制服を脱いで運動服に着替える最中に、遥がそんな事を聞いてくるので、私は内心ガッツポーズをしながらそれを否定していく。
この間までアイドルやってた遥が言うのだ、私の作戦は成功と言えるだろう。
着替え終わった私は、遥に荷物を任せて、3人の元へと向かう。
「待たせた」
「あら、ようやく来たわね。今日は激しくいくわよ。みのりは動きのぎこちなさを無くすのを意識すること。瀬名は自然な笑顔を浮かべることを意識しなさい!」
「はい!」
「はぃ...」
はっきり言おう。
自然な笑顔はもう無理だ。
笑顔に関しては、私の性格のせいなのか、真顔でほぼ固定されているため難しい。
ただその代わり、ジト目は得意だ。目を細めるだけでジト目になるので、彰人を問い詰めるのに重宝している。
「さ、やるわよ!」
〈♪〉
「そうね...瀬名ちゃんは笑顔、と言うよりかは、表情を変化させるのが苦手そうだから、まずは表情筋を鍛えましょうか」
「表情筋?」
「ええ。『う』と『い』を繰り返し言うのよ。ただこの時、単純に言うだけじゃなくて、『う』の時は思い切り口をすぼめて、『い』の時は前歯が見えるようにして笑顔を作るの。変に違うところに力を入れちゃだめよ」
「ふむ」
愛莉の号令の後、いざ実際にトレーニングしましょう、となったところで、私とみのりのやるべきことが違うという話になり、愛莉はみのりを。雫は私を見るということになった。
雫の言うように、『う』と『い』を繰り返し言う私。
ちらりとみのりの方を見ると、みのりが愛莉に指導されていた。
だが、この間までの『鞭! 鞭! 鞭!』ではなく、今回は優しめだ。
「本当は全身鏡でもあったら便利なんだけど。今日はこれで我慢しましょう。内カメラで確認しながらやるわよ」
「はい!」
愛莉はそう言いながら、スマホのカメラアプリを起動し、カバンに立てかけてみのりの姿を視えるようにして指導を始めた。
さすがに飴担当がこちらに来ている分、配慮はしているようだ。
「う...い...」
「そうそう! 上手ね!」
ただ問題なのは、雫が飴担当から変われなさそうという点だろうか。
私の身体スペック上、このままでも上達することは間違いないだろうけど、一般人には甘すぎる環境かもしれない。
雫が他人に教えるときは要注意だ。
そんな事を考えていると、横から視線を感じた。
感じた方を見てみると、そこにはベンチに座って本を広げているのに、本を読まずに私を見つめている遥の姿があった。
「...」
「う...う...う...」
「どうしたの? 『う』の次は『い』よ?」
「い...い...い...」
「『い』の次は『う』よ瀬名ちゃん!?」
なんだ、この圧は。
プレッシャーを感じる...これが、ニュータイプだとでも言うのか。
そんなふざけたことを考えているうちに練習は進んでいき、太陽が沈み始めたところで、愛莉の声が飛んだ。
「今日はここまでにしましょうか!」
「うぅ...疲れた...」
「『う』...『い』...」
「瀬名ちゃん、上手!」
「いや、もう終わりだってば。...雫、あんた瀬名に何したのよ」
みのりが床に座り込み、私は虚空を見つめて言葉を繰り返す。
そんな私の異常に気が付いたのか、愛莉がジト目で雫を見た。
「...みのりちゃんもお疲れさま。2人とも今日も頑張ったわね」
しかし、雫は愛莉から顔を背けて、話をそらした。
おい、ちゃんと説明しろ。
私が『う』と『い』しか喋れない体になったらどうしてくれる。
雫の様子に若干呆れ気味の愛莉だが、すぐにため息1つ吐き出して切り替えた。
「...今日できなかったことの確認、ちゃんとやっておくよーに! いい?」
「はい! ...あ、痛たた」
愛莉にそう声をかけられ、立ち上がろうとしたみのりだが、バランスを崩したようにその場に再び座り込んだ。
見るからに怪我だろう。
それを愛莉も分かっている様で、すぐにしゃがんでみのりの足首を見た。
「ちょっと、大丈夫?」
「あ、ちょっぴり足ひねっちゃったみたいです。でも、すぐ治ると思いますから...」
心配する愛莉に対して、怪我を押し通そうとするみのり。
どれだけ小さい怪我だとしても、それを無視して動けばどうなるかを知っている彼女たちは、すぐにみのりに言い聞かせようと口を開いたが、その間に遥が入ってきた。
「見せて、みのり」
「え、遥ちゃん?」
いつの間にかベンチからこちらまでやってきていた遥は、みのりがぼーっとしている間に軽く足を見て、安心したようなため息を吐き出した。
「...よかった。腫れてはいないみたい。でも、湿布を貼っておいた方がいいかも」
その遥の判断を聞いていた私たち3人も、安堵の息を漏らす。
ひとまずは、何ともないようで助かった。
そして、遥が心配そうな声でみのりに言い聞かせる。
「みのり、練習を頑張るのはすごくいいことだよ。でも、無理はしないでね」
「う、うん! ありがとう、遥ちゃん」
みのりの足の軽い診察を終えた遥は立ち上がり、みのりの側から離れる。
足首を痛めたみのりと言えば、彼女は遥の優しさを目の前で見て、感動し、また改めて決意しているように見えた。
そんな時、側に置いてあったみのりのスマホから、またもや光が溢れだし、初音ミクが映された。
『みのりちゃん!』
「ミ、ミクちゃん!? どうしてまた...」
『驚かせてごめんね。本当はセカイで待ってようと思ってたんだけど、みんな元気がないんじゃないかなって、気になっちゃって』
そういう初音ミクに対して、みのりは不思議そうに首を傾げた。
「え? 私は元気だけど...」
でしょうね。
と言うか、みのりに元気がないところを見たことが無いというのもあるけれど、多分すぐにわかるような状態だと思う。
詰まるところ、それはみのりのことではなく。
「......」
『みんなで私たちのライブを見に来て欲しいの! そしたらきっと、元気になれると思うから』
「ライブ?」
『後でプレイリストを見てみて! それじゃ、セカイで待ってるから!』
初音ミクはそれだけ告げると、姿を消し、スマホの光も消えた。
またしても唐突に出てきた初音ミクに対して、少し呆けていた皆も落ち着きを取り戻していく。
「あ、消えちゃった」
「やっぱりこれって、新手の広告なのかしら? 随分こってるわね」
これが新手の広告だとして、私たちの名前を把握していることと、勝手にスマホから映し出されること。更に、技術面とおかしな点が多すぎる。
今の科学技術でどれだけ再現できるだろうか、と私が考えていると、雫がそういえば、と口を開いた。
「セカイ。...あのミクちゃん、前もセカイって言ってたわね」
「あ、そういえばプレイリストを見てみてって...」
先程まで初音ミクが映し出されていた自身のスマホを手に取り、みのりはプレイリストを開く。
数多くあるアイドルの曲たちの中に、『Untitled』と言う曲が入っていた。
「あれ? なんだろう、これ。『Untitled』って曲が入ってる」
「『Untitled』? 無題ってこと?」
「うーん、もしかしたらそういう曲もあるかもしれないけど...」
愛莉と雫が首をかしげている中、みのりが顎に手を当てて私を見る。
「この曲を聴いてってことなのかな?」
それに、私は迷いなく頷く。
私が頷いたことで、みのりは『Untitled』をタップして曲を再生する。
その瞬間、思わず目を閉じてしまうほどの光がスマホから放たれた。
「わわっ!? す、スマホが光って...!?」
「...!?」
ようやく、私たちはセカイへと入り込んだ。
35曲目までAPしました。
動画投稿者がぽんぽんAP出していることの凄さを再確認しました。