東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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今月初めての1日休みを堪能していたら投稿忘れていました。

うえーん。


第8話

「え? ここ、どこ?」

 

私たち5人が飛び込んだのは、メインの色は緑で彩られているステージのあるセカイ。

下からライトが照らされていて、結構な広さがある。

 

「ステージ...? が、あっちにも、こっちにも...」

 

私たちがいるのは、ステージの横。

観客席とは少し離れた場所なので、どちらかというと、出演者がいるような場所だろうか。

 

「どうなってるの...?」

 

「私たち、さっきまで屋上にいたわよね?」

 

遥は真剣な顔でこの状況を理解しようとしている中で、雫は目をぱちぱちさせて、まだこの状況についていけてなさそうだ。

愛莉を見ると、自分で自分の頬をつねっていた。

 

「何よ、ここ...! 夢じゃないわよね...うぅ、頬が痛い」

 

3人揃って困惑していると、少し前に出てステージ近辺を見ていたみのりが、こちらに戻ってきた。

 

「あ、先輩たちも! 瀬名ちゃんもいた! よかったぁ...1人じゃなくて」

 

みのりは安堵の声を漏らして、私の手を握った。

本当に心細かったのかもしれない。

 

みのりは私の手を握ったまま、周りを見渡した。

 

「それにしても、すごい数のサイリウム。...もしかして、これからライブが始まる、のかな?」

 

緑、黄色、ピンクのサイリウムが数多くの人に振られている。

もしかしたら他の色もあるかもしれないが、私の場所から見えるのはその3色だけだ。

 

そうして周囲を観察していると、私からしてみれば聞き慣れた、でもどこか違うような声が聞こえてきた。

 

「うん! そうだよ、みのりちゃん!」

 

声のした方を振り向けば、そこにはあの時みのりのスマホから映し出されていた初音ミクがいた。

 

「ミ、ミクちゃん!?」

 

笑顔の初音ミクの後ろから、頭のリボンがトレードマークのリンが走ってきた。

 

「ミクちゃーん、もうすぐ開演だよー! ...あっ!」

 

リンはその勢いのまま、初音ミクを追い越してみのりと、手が繋がっている私を抱きしめた。

 

「みんな、来てくれたんだね~! 私たち、待ってたんだよ~!」

 

「リ、リンちゃんも!? っていうか、私今、リンちゃんと握手してる...?」

 

リンが空いているみのりの片手、右手を取ってブンブンと振り回し、そのあと、私の空いている左手を取ってブンブン振り回した。

別に私は握手を求めているわけじゃないのだが...。

あ、サインもらえますか。

 

未だにこの状況を把握しきれていない様子の遥が、思わず、といった様子で呟く。

 

「...一体どういうこと? ミクもリンもバーチャル・シンガーのはずなのに、どうして会話して、触ることもできるの?」

 

確かに、遥の疑問は最もだ。

私も最初セカイに来たときは驚いたし、初音ミクに触れられるという謎現象も、飲み込むのに少し時間がかかった。

ただまぁ、最終的には『そういうもの』だと納得したのだが。

 

「それはね、ここが、みんなの想いでできたセカイだからだよ!」

 

「想いでできた、セカイ?」

 

雫の問いに、初音ミクは元気よく頷く。

 

「うん! 4人の、アイドルへの想いでできたセカイ! 私たちは、ここでみんなが本当の想いを見つけられるよう、お手伝いするためにいるの」

 

「そう! ここでは、本当の想いを見つけられたら、その想いから歌が生まれるんだ♪」

 

初音ミクの説明に、リンが補足を入れる。

ただ、その説明を聞いていた遥が首を傾げた。

 

「4人? ここにいるのは5人だけど、数が合わないんじゃ...」

 

「ううん、数は合ってるよ。瀬名ちゃんは、みんなのお手伝いに来てくれた人だから!」

 

遥の問いに答えたリンは、私に抱き着いて頬擦りしてくる。

なんだか、私のセカイにいる初音ミクのようだ。まぁあれより可愛いからよしとするけど。

 

というか、私の特異性を、お手伝いって説明するのいいな。

今後のセカイでの私の説明は、お手伝いさんで通そうか。

 

リンの説明に納得したような、していないような遥は、とりあえず頷いた。

 

「でも、みんなはまだ、本当の想いを見つけられていないみたいだね」

 

「........」

 

「想いが歌に? えーっと、どういうこと...?」

 

リンが告げた内容に、遥は黙り込み、みのりが首を傾げた。

 

想いが歌になる。

確かに、文字にしたら意味が分からない。

 

しかし、それを今この場で説明する気は無いようで、リンと初音ミクはステージの方へと歩いて行った。

 

「詳しい説明はあと! まずは私たちのライブを見てほしいなっ♪」

 

「うん! みんなが元気になれるように、とっておきのライブを考えたんだよ! 見ててね!」

 

リンと初音ミクの説明に、みのりたち4人は顔を合わせた後、揃って首を傾げた。

 

「え、えーっと、つまり、今からミクちゃんたちのライブを見られるってこと...?」

 

『?』を浮かべているみのりの服を、後ろから愛莉が引っ張る。

その顔はやけに真剣な表情だ。

 

「みのり、顔貸して」

 

「え? いひゃひゃひゃひゃっ!?」

 

なんと愛莉は、呆けた顔をしているみのりの頬を引っ張った。

 

まさか何も言わずに引っ張るとは思わなかったが、愛莉が言わんとすることもわからないでもない。

 

愛莉に頬をつねられ、涙目のみのりは私を盾にしながら愛莉に困惑の視線を送った。

 

「な、なんでほっぺたつねるんですか!?」

 

「だって、夢でも見てるのかもって思うでしょ?」

 

「じ、自分のほっぺたでやればいいのに...瀬名ちゃんもそう思うよね?」

 

自信満々に告げられた愛莉の言葉に納得できないようで、みのりは私の後頭部に顔を埋めながら同意を得ようとしてくる。

 

まぁみのりの言いたいこともわかる。

頬をつねられることで夢かどうかを確かめると言うのは、痛みが伴うからこそだ。

夢なら痛くない、という本当なのかどうかもよくわからないことで現実かどうかを区別しようとしているのだが...それにしても自分で確かめないのは卑怯だと思う。

 

「やり返せば?」

 

「むむむむむむむりだよっ!?」

 

やられたらやり返す精神をみのりに教えてみると、みのりは涙目で首を横にぶんぶんと振った。

まぁみのりがやり返してやろうと思うような子でないことは私がよく知っているのだが。

 

私とみのりが戯れていると、雫が、あ、と声をあげた。

 

「見て、始まるみたいよ」

 

雫の声に従ってステージの方を見ると、私たちはいつの間にか特等席に来ていて、ステージの真正面から初音ミクとリンを見るような形になっていた。

 

「みんなこんにちはー! ミクです!」

 

「リンだよーっ♪ 今日は私たちのライブに来てくれてありがとう!」

 

「みんなに楽しんでもらえるように、精一杯歌うね! それではこの曲から! 聴いてください!」

 

『ー♪ ーー♪』

 

そうして歌いだした初音ミクとリンは、技術どうこうよりも、楽しさが見ている私たちにも伝わってくるようだった。

2人のアイコンタクトで、次々と息が合っているパフォーマンスをしていく。

魅せつつも、楽しさを届けるような、そんなライブだと私は感じた。

 

「わぁー! 瀬名ちゃん、今ファンサしてくれたよ!!」

 

「うむ」

 

「あんたたち、よくこんなわけわからない状況で楽しめるわね...」

 

流石にみのりのハイテンションにはついていけないが、私もこの状況を楽しんでいる。

もうよくわからない状況というのは慣れたのだ。人間誰しも慣れということだ。

 

「みんなも一緒に~?」

 

初音ミクがそういうと、観客も息の合ったコールを返す。

まるで一体になっているかのようだ。

 

それを見ていたみのりは目を輝かせて、興奮を抑えきれないように私の方を揺さぶった。

 

「お客さんもとっても楽しそう...!」

 

そうして少しの間私を揺さぶっていたのだが、それがピタリと止まり、不審に思った私がみのりの顔を見上げると、何かを決意したような顔のみのりがいた。

 

今のみのりであれば、また私を揺さぶることはないだろうが、またいつ揺さぶりを始めるともわからない。

私はみのりの側から少しだけ離れた。

 

そうすると、先ほどまで聞こえてこなかった3人の声が聞こえてくる。

 

「2人とも息がピッタリ...。きっと、お互いのことをとても信頼しているのね」

 

「...そうね」

 

そういう雫と遥は、羨ましさ半分、苦しさ半分と言った感じで。

 

「.......。.......私も、こんなステージ......」

 

愛莉の顔は見るまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

「次の曲は、みんなもわかってるよね?」

 

初音ミクがそういうと、一斉にステージのライトどころか、観客のペンライトも青に染まっていく。

確か、会場が無線コントロールできるタイプのペンライトを販売していると、このような芸当が可能になるというわけだ。

一斉に色を変えるだけでなく、この席にいる人はこの色、などなど。色々な事が出来ると聞いたことがある。

 

そういう科学で気になったことは覚えているんだがなぁ。

 

「わぁ、すごい...! ペンライトの色が全部青に...!」

 

そうして始まるみのりの百面相。

最初は懐かしい表情をしていたのだが、今度は寂しそうな表情を見せていた。

 

青のペンライトを見てこの顔をしているのだから、何を考えているのかは何よりもわかりやすい。

だからこそ、今まさに歩み寄っている彼女の言葉が助けになるはず。

 

「...海みたいに見えるんだよ」

 

「えっ?」

 

「ステージの上から見ると、みんなが青くしてくれたペンライトが、海みたいに。...青い光と一緒に、みんなの嬉しそうな顔が見えて、すごく...綺麗だった」

 

途中まで明るい表情で語っていた遥だが、言葉を区切り、一気に表情を暗くさせた。

 

「もう.........見られないけど」

 

「遥ちゃん...」

 

表情を落ち込ませる遥に、みのりも何と言ったらいいのかわからないようで、同じように表情を暗くさせていく。

 

遥の大ファンで、遥の言う『海』の一員にもなっていたみのりだから、人一倍悲しんでいる様子だ。

 

その後もライブは順調に進んでいき、まるでみのりたち4人が誰からも見えていないかのような盛り上がりを見せていた。

彼女たちの周りだけ、どんよりしている。

 

もうあそこには立てない。あそこに立ちたかった。立ったとしても。

言わずとも顔を見るだけで声が聞こえてくる中で、みのりだけが純粋な憧れの目でステージを見ていた。

ただ、他3人の雰囲気に飲み込まれて見えなくなっているだけで。

 

ライブが終わり、初音ミクとリンがステージから降りてこちらへとまっすぐ向かってきていた。

 

「はぁ~っ! 今日もライブ大成功っ♪」

 

「ねえねえみんな! 私たちのライブどうだった? 元気になれたかな?」

 

ライブが終わってもまだ元気いっぱい、と言った様子の2人に、みのりも同じようなテンションで駆け寄った。

 

「うん! 最高のライブだったよ! 私、まだ明日から頑張れそう!」

 

「ふふっ♪ よかった~」

 

と、そこでみのりが不思議そうに首を傾げた。

 

みのりが視線を動かし、私もそれを追うと、目に入ってくるのは未だに光っている青いペンライト。

既にライブは終了しているためか、掲げて振っている人はいないようだが、光が消えるわけでもないようだ。

 

「でも、なんでみんな青いペンライトなの? ミクちゃんとリンちゃんなら、緑と黄色なのかなって思ってたけど...」

 

確かに言われてみればそうだ。

青と言えば、KAITOのイメージが強い。

 

私とみのりが揃って首をかしげていると、初音ミクは微笑ましいものを見たような笑みを浮かべた。

 

「それはね、想いがこのセカイで形になってるからだよ」

 

「想いが、形に...?」

 

既に想いが形を成し、こうして私たちの前に姿を見せている。

これも、みのりのつよつよメンタルからくる要因なのだろうか。

 

詳しい話を聞こうと私が口を開こうとすると、それよりも先に、私たちの後ろから冷たい声が聞こえてきた。

 

「ミク、リン。ライブを見せてくれてありがとう。とても素敵だった。...でもそろそろ帰らせてくれる?」

 

「え...」

 

普段見ている遥と雰囲気が違う。

そのことを感じ取ったみのりは、見るからに困惑していた。

 

 




まふゆの限定欲しいなぁ...年末用に石貯めなきゃなぁ...運営、鬼だなぁ....。
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