東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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一応、各グループ12話構成を目指してたんですけどね。

前回の第9話時点で、本編のモモジャンメインストーリー8話分までしか進んでないみたいです。

わぁ、この調子だとモモジャンだけ22話ぐらいかかるぞぉ。


第10話

翌日。

 

早速とばかりに、私は遥に連絡を取り、放課後に会う予定を取り付けた私は、宮益坂女子学園の校門前で待機していた。

 

ただ、やけに視線を集めている気がする。

 

それもそうか。

私の服は他校の、それもわかる人が見れば中学生の物だとわかるし、周りを見ても私のような白い髪の人はいない。

 

それならなぜ校内に侵入する時は誰も止めないし、ただ笑って手を振ってくるだけなのかが理解できないのだが。

 

...あぁ、そうか。

普段はそのまま校内に入るから、今日こうして外で待っているのが珍しく見られているのか。

 

私が腕を組んで唸っていると、後ろから遥が声をかけてきた。

 

「お待たせ。行こっか」

 

「うん」

 

そこから、私が先導する形で歩き出す。

 

目的地は、私がよく行く喫茶店だ。

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

私が案内する喫茶店は、私が何度も来ている喫茶店だ。

この店は私が昔考え事をしたい時によく利用しており、おしゃれな雰囲気で人気のありそうな店だが、店内の客は少なく、静かなのが良い。

 

店内に入り、私お気に入りの店の奥の角に座った私は、店内を見渡している遥に着席を促す。

向かい合うタイプの2人用の席に座った遥は、荷物を床に置いて口を開いた。

 

「おしゃれで静かな店だね。もしかして、昨日言ってた場所ってここ?」

 

「違うけど、確かにここはいい店。ここが良いなら他の場所は探さないけど」

 

メニュー表を遥に渡しながら私がそういうと、遥は首を縦に振った。

 

「うん、気に入っちゃった。いつもこの時間に来てるの?」

 

「そう。放課後なのに学生が来ないから、よく来てる。コーヒーは絶品」

 

「じゃあ、私も瀬名がいつも飲んでるのと同じものを飲もうかな」

 

メニュー表を開くことなく、元の場所に戻した遥を見て、私は店員呼び出しボタンを押す。

カチ、と言う音がボタン自体からの音はするものの、それ以外の音は、店内で流れているピアノの落ち着いた曲だけだ。

 

すぐに店員が歩いてこちらにやってきたので、目で会釈して、指を2本立てる。

 

それだけで注文内容を把握した店員は、笑顔で親指を立てて、戻っていった。

 

私が指を立てるだけで注文している事に驚いたのか、遥は目を見開いていた。

 

「...『いつもの』で注文できるよりすごいんじゃない、それ」

 

「そうかな。...そうかも」

 

改めて他人に言われると、確かにおかしな光景な気もしてきた。

ただ、私が来店するたびに同じものしか頼まないので、店員の方から『いつものですか?』って聞いてきたのだ。

そのうち目で聞いてきているような気がしたので、頷いてみたら、私の注文通りの物がやってきたので、それからはそんな感じだ。

 

「お待たせいたしました」

 

少し時間が経った後。

届いたコーヒーの匂いを嗅いだ遥は、少し力んでいた顔を緩めて呟いた。

 

「...良い匂い」

 

「ミルクと砂糖はそこ」

 

私がミルクと砂糖の場所を指した後、そのまま飲んでいるのを見た遥は、私と同じくそのままブラックで飲み始めた。

 

遥もいけるタイプか、と思っていると、しばらくした後、苦笑してカップを置いた。

 

「ちょっと苦いかも。でも、そのまま飲んでこんなに美味しいと思ったのは初めて」

 

「...それはよかった」

 

そのまましばらくコーヒーを楽しんでいると、遥が口を開いた。

 

「そういえば...今日って、何か用事があったんじゃないの? もしかしてこのお店を紹介してくれるのが用事だった?」

 

「ん...気分転換。みのりがアイドルを目指して、遥を目標にしていることに対して、苦しそうな顔をしてたから」

 

私がそういうと、遥は特に驚きもせず、コーヒーに視線を下ろして苦笑いした。

 

「気づかれてたか」

 

「別に遥の過去を聞きたいわけじゃない。...話したいなら聞くけど」

 

「ううん、大丈夫。...だけど、いつか話すかもしれないから、その時は聞いてもらってもいい?」

 

「もちろん」

 

私が顔を上げた遥の目をまっすぐ見てそう伝えると、遥は少し恥ずかしそうに「ありがと」とだけ笑った。

 

ひとまず、遥は大丈夫そうだ。

 

それから他愛ない話をして、店を出た私たち。

今回の支払いは私がしたのだが、未だに遥は納得いっていないようで、私の腕をくいくいと引っ張っている。

 

「私年上なんだし、これでも売れてた元アイドルなんだよ? 私の分どころか、瀬名の分だって私が出したいのに」

 

「紹介したのは私だし、気分転換に来てほしかったのも私。...納得できないなら、また今度でかける時におごって」

 

このままでは納得してもらえないと確信した私は、次回を口にする。

これを持ち出したら大抵断れないのを知っているし、私はその次回を一緒に来るつもりはない。

 

その時はみのりにおごってやるといい。

 

私の提案を渋々と言った様子で承諾した遥と別れ、寄り道せずに自宅についた私。

ひとまず遥は大丈夫そうだ。

問題は後の2人。

 

みのり、遥、愛莉、雫の4人が今回のキーな事は確定している。

明日以降で、カバーが必要であればすぐに行かなければいけない。

 

一体どうなるかわからない未来を考えながら、私は1日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

翌日。

目が覚めた私は、いつも通り学校に行くふりをしてセカイに入る。

今日も私のセカイではなく、みのりたちのセカイだ。

 

「あれ? 今日も早いね。誰かの所に行きたいの?」

 

私がセカイに入り込むと、前回と違ってすぐに気が付いた初音ミクが、不思議そうに首を傾げた。

 

「ん...落ち込んでたりする時に、すぐに行こうと思ったらここがちょうどよかった」

 

今回の世界線だと、何かが起きるとしたら大抵宮益坂女子学園の中。

ならば、いちいちそのたびにセカイに入って、そこから移動して、とするより、どうせ学校はさぼるのだし、最初からセカイにいればいい。

 

私が簡潔にそう初音ミクに伝えると、初音ミクの後ろからリンがひょっこり顔を出した。

 

「頭良いね! なら、早速私たちの出番だよ!」

 

ウキウキした様子のリンに手を引かれ、そのままステージから降りていく私とリン。

後ろを振り向けば、初音ミクが嬉しそうに手を振っていた。

 

一体どこに行くんだと思いながらリンに手を引かれるまま歩いていると、控室のような場所へと入っていった。

 

テーブルにイスに、テレビ。あとは化粧をするためのでかい鏡とそれに合わせた少し小さめのイス。

 

最初はここの整理でもするのかと思って見てみるが、特に散らかっている様子もない。

一体なんだと思いリンを見ると、リンは満面の笑みで腰に手を当てて胸を張っていた。

 

「さぁ、元気づけに行こう!」

 

「は?」

 

リンの突拍子もない言葉に困惑していると、リンはでかい鏡の、真ん中の1枚に手を触れた。

 

その瞬間、鏡に映っていた私とリンの光景が、ぐにゃりと歪んでいく。

歪んだ光景は全て混ざった後真っ白になり、更に声も聞こえてくる。

 

『でも...アイドルとして必要とされなかった私が、みのりに教えてるなんて...』

 

愛莉だ。

きっと、みのりからまた連絡でも来たんだろう。

 

ただ、あのライブを見た日の様子だとそこまでの考えになる様子はなかったはずなのだが...私が遥と出かけていた間に、誰かと何かあったか。

 

それこそ、雫と。

 

「さぁ、行くよ!」

 

リンは私を一瞥した後、すぐさま鏡の中へと飛び込んでいく。

まるで鏡が別世界への入口のように、リンの姿は鏡の中へと吸い込まれていった。

 

『やっほ~! 会いに来たよ~!』

 

『な、何? 今の声、誰!?』

 

鏡の中から、リンの元気いっぱいな声と、驚いている愛莉の声が聞こえてくる。

私も、鏡の中に行かなければならないのだろう。

 

「...ええい、ままよ!」

 

鏡にぶつかって、後ろに倒れるのを想像しながら、私は鏡の中へと飛び込んだ。

 

鏡の中に入り込んだ瞬間は、特に何の感覚もなかった。

鏡の中は、正面にでかい愛莉の顔。

左には最近よく見た宮益坂女子学園の校舎。

右には、笑顔のリンがいた。

 

『な、なんでリンだけじゃなくて、瀬名まで...?』

 

多分だけど、私の状態は、みのりのスマホから初音ミクが投影されていたような感じなんだろう。

だからなのか、愛莉の声が若干響いているように聞こえる。

 

『...瀬名も、調べただろうから知ってるんでしょ? アイドルとしての私は必要とされてなかった。私が必要とされてたのは、バラエティタレントとしての私。別に、アイドルにトークスキルが全くいらないとは言わないわ。でも、それが今みのりに必要かと言われれば、そうじゃない。瀬名もそう思うでしょ?』

 

私が鏡に飛び込む前と、話が若干飛んでいる。

ちらりとリンの方を見ると、リンは申し訳なさそうな顔をして私の手を握った。

 

きっと、ここが私が必要とされている瞬間だ。

 

「それでも愛莉には、努力に裏付けされたアイドルの知識がある」

 

『...そんなの、遥だけで十分で』

 

「それに。アイドルが好きじゃなきゃ、それだけ頑張れない。私とリンがここにいるのは、愛莉がアイドルを好きだから」

 

『......』

 

普段あまり長い文書を言う事のない口をフル活用して、愛莉に何とか前を向いてもらおうと頑張る私。

目をそらした愛莉を見て、もう一息、と思いリンの方を見ると、リンは力強く頷いた。

 

「あのね、誰でも、しょんぼりしちゃうことはあると思うの。だからそんな時は、私の歌を聴いてほしいな♪ 私たちが、前向いてがんばろー!って気持ち、絶っ対に届けちゃうんだから!」

 

多分だけど、その私たちの中に、ちゃんと私も入っているのだろうな。

 

ああ、これまでの練習はこの日の為に、と私の目が死んでいく中、愛莉が小さく笑った。

 

『...ありがとう。リン、瀬名』

 

愛莉はこうしちゃいられないわ、と言ってどこかに行きたそうにしているのを見たリンが右手を軽く振ると、それまで映っていた景色が一瞬で黒く染まった。

 

あのホログラムみたいなのを消したのだろう。

 

「よっし、じゃあ戻ろっか!」

 

「...うん」

 

とりあえずは、何とかなってよかった、だろうか。




遥を書いてると、ブルリフの白井日菜子となんかすごい被るんですよね。
髪型とか...ストイックな所とか...。

...え、私だけ?



スマホから各バーチャル・シンガーが出てくるときの出方は、独自設定です。
本編で再現されていなかったので、勝手に私が考えました。

見逃してたらごめんなさい。
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