東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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お久しぶりです。

お気に入り800超えてました。ありがとうございます。



※この話は本編とは関係ありません。
ただの日常会です。


おーばーどーず! いち!

すぅぅぅぅぅぅ。

 

「まふゆ。もう時間」

 

「...もう少し」

 

セカイにて、私はまふゆに猫の様に吸われている。

これは最早彼女の中で日課になっているもののようで、吸っている時間に差異はあれど、吸わない日は無い。

 

恐らくだけど、これが彼女なりのストレス発散方法なのだと私は思う。

 

絵名のストレス発散方法なんかは見てわかるように、自撮りをSNSにあげていいねを貰って承認欲求を満たすし、スイーツを食べに行って幸せな気持ちで心を満たすだろう。

 

ただ、まふゆにはそれが難しい。

 

叫ぶこともできなければ、衝動的に何かを壊すこともできない。

 

まぁ、彼女の中の我慢がきかなくなれば、誰でもわかるように爆発するのだろうけど。

 

私個人としては、このまままふゆに吸われたままでもいいのだが、いかんせんまふゆに予定がある。

外では優等生として通っている彼女が、遅刻なんてするわけにいかないだろう。

 

つまりは、今の時間帯は朝なのである。

 

「...じゃあ、いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

なんとなく肌がツヤツヤしているようなまふゆがセカイから出ていくのを見送って、私も『Untitled』を止めよう、としたところで、視界に端に灰色の髪の毛が映り込んだ。

 

「...出てきていいよ」

 

「...瀬名、私もしてみたい」

 

先ほどまではまふゆに気をつかっていたのか、隠れて様子を見ていた初音ミクだが、私とまふゆがしていることを初音ミクもしたいらしい。

別にそれは構わないのだが、何をしていたのかを初音ミクは知っているのだろうか。

 

「...ぎゅ」

 

「...」

 

先ほどまふゆは、仰向けになっている私の上にかぶさって、私のお腹に顔を埋めて吸っていたわけだが、初音ミクはただまふゆの真似をして、上目遣いで私の顔を見てくるだけだ。

 

...前から気になっていたのだが、初音ミクがよく私の顔を見てくるのは、私の顔に何かついているからなのだろうか。

 

「...私の顔、何かついてる?」

 

「何も。ただ見てるだけ」

 

「...そう」

 

理由はないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

 

特に日中用事のない私は、その日を大半をセカイで過ごしている。

学校に行っているべき時間は、私のセカイで。

それ以外の夜と朝は、まふゆたちのセカイ。

 

時刻にして午前9時半頃。私はセカイで、バーチャル・シンガーの2人と雑談をしていた。

 

話題はその日によって変わるが、今日はまふゆのことを話していた。

 

「それ、猫吸いみたいだね」

 

「猫吸い?」

 

まふゆの中で日課となっているであろうことを話していると、初音ミクがツインテールにしている真っ黒な髪の毛をそれぞれの手にもって振り回しながら、私にそう告げた。

思わず聞き返して首をかしげると、その初音ミクの隣で眠そうな顔をしているリンが、あぁ、と思い出したような声を出した。

 

「猫を吸って幸福感を得るっていう、あれね」

 

「...なんか、麻薬みたいじゃない?」

 

「確かにそうかもしれないけど、猫は無臭なんだし、人間の脳がそういう幸せに感じる物質を出してるんじゃないの? 試しに私もリンを吸う!」

 

「は? ちょ、やめて、話を、あーもう...好きにすれば...」

 

まるで大型犬に遊んでと構われる猫のようだ、と思うような光景を見ながら、私は自分の服を引っ張って匂いを嗅いだ。

 

...分からない。

まだ今日は運動らしい運動をしていないとはいえ、人は自然と汗をかくもの。

汗臭くはないが、自分の匂いを自分で判別する、というのは難しいというか、ほとんどの人が無理だろう。

要は慣れてしまう、ということだ。

 

目の前でリン吸いを始めた初音ミクに聞いてもまともな答えは返ってこなさそうだし、リンは拘束されているからそれどころじゃなさそうだ。

 

ひとまず、今日の夜まで待つとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、みんなに確かめてもらおうと思って」

 

「そう。...変な匂いはしないけど」

 

夜。いつもの集合時間より20分程早いが、私はナイトコードに『相談したい事があるからセカイに来て』とだけ告げて、私はセカイで待機していた。

 

セカイに来た時にその場にいた初音ミクに説明して、ニーゴのメンバーが来るのを待つ。

その間に初音ミクに試しに嗅がせてみたが、首を傾げて『変な匂いはしない。良い匂い』と言うだけだ。

 

そのまま初音ミクに髪の毛で遊ばれること数分。

一番乗りはまふゆだった。

 

「瀬名。相談したいことって?」

 

「...まふゆは、私の事猫だと思ってる?」

 

「...? 人間だと思うけど」

 

まふゆにどう説明しようか迷っていた所、色々と端折って聞いてみたのだが、残念ながら望んでいたような答えは返ってこなかった。

まぁこれに関しては私が悪いのだが。

 

とはいえ、まふゆに『私って変な匂いする?』と聞いても、それも求めている答えは得られないだろう。

何せ私の悩みの原因になっているのだし。

 

後ろからまふゆに、前から初音ミクに抱き着かれながら座っていると、奏と瑞希がやってきた。

今日は絵名が最後のようだ。

 

「瀬名、相談したいことって...?」

 

「珍しいよね、いつもボクたちが聞くことはあっても、瀬名から聞かれることはあんまりないし」

 

確かに...そう言われるとそうかもしれない。

普段私がこのニーゴでしていることは主にそれぞれの進行の管理と、手助け。

『どっちがいいと思う?』と聞かれれば詳しく理由を付けて選ぶし、『どうしようか?』と言われれば、これまでの傾向とその時の世の中の流行などを加味して助言する。

 

そうしていることがほとんどだったので、私が聞く側に立つ、というのは1ヵ月に1回あるかどうかという頻度だ。

 

そのたまにしかないことを、こんなしょうもないことに使っているのだけど。

 

「実は、2人...絵名も入れたら3人に、私の匂いを嗅いでほしくて」

 

「...? 嗅いだことはあるけど、いつもいい匂いがするよ」

 

「え、ちょっと待って。どうして聞こうと思ったのか気になるし、奏も奏で気になる...もしかして、瀬名の後ろにいるまふゆっていつも嗅いでるの?」

 

「息をしてるから不可抗力だけど...いつも、猫吸いみたいに吸われる時間がある。不思議に思って」

 

「...変な臭いだけど、クセになってつい嗅いじゃう、みたいな感じかな。でも大丈夫。瀬名はいつもいい匂いがするよ。フローラルの香りに近いかな」

 

フローラルとな。

フローラルというと、花の匂いがするということなのだが、あれか、人間にしては動かなさすぎで植物にカウントされているということか。

 

「あ、それはわかるかも。服は絵名と部分的に同じ匂いがするから柔軟剤じゃなくて、フローラルは瀬名自身からの匂いってことなのかな」

 

へぇ、とスルーしかけて私の頭は動きが一瞬止まった。

瑞希も瑞希でおかしくないだろうか。

え、あれか。私がおかしいだけで、今時の子は他人の服の匂いを嗅ぐのは普通なのか。

 

まぁ他人の忘れ物に名前が書いていなければ、匂いで確認するのも手ではあるのか...。

 

「...私なら瀬名の忘れ物なら匂いを嗅がずに判断できるけど」

 

後ろからボソッと告げるのは、私のうなじに顔をうずめているまふゆ。

確かに目の前で私の匂い談義をされるのは恥ずかしいものがあるけど、『見てすぐわかる』と言われるのも少し恥ずかしい。

 

最近の若い子はすごいんだなぁ。

 

奏と瑞希の柔軟剤と本人の香り談義をぽけーっとしながら見ていると、セカイに絵名がやってきた。

 

「来たわよ瀬名。相談ってなんの...2人は何してるの?」

 

「何って、瀬名っていい匂いするよねって話だけど」

 

「絵名はどう思う?」

 

いや来たばかりの絵名にいきなりいかれた話題を振るのはやめて欲しいのだが。

 

若干奏と瑞希の2人に引きながら見ていると、絵名は何やら勝ち誇った笑みを浮かべて、鼻で笑った。

 

「私はその話は別にいい。だってもう通った道だもの」

 

「みつを」

 

「茶々を入れない。まぁ、そういうことだから、その話は私抜きでお願い」

 

絵名は茶々を入れてきた瑞希を雑にあしらいながら、こちらに向かってきて、側に座った。

 

「それで、相談したいことってまさかあれ?」

 

「似てるけど違う。まふゆに猫みたいに吸われるから、どんな匂いがするのか聞きたくて」

 

絵名はちらりとまふゆの方を見て、息を吐き出した。

 

「...なるほど。そうね、瀬名の匂いはフローラルの匂いがするけど、それと同時に落ち着く匂いがするのよね。乱れた心が落ち着く、というか」

 

「落ち着く?」

 

気分に作用する匂いと言うことか。

 

なるほど、その線が関係してそうだ。まふゆにこれだけ吸われているのも、それで説明できそうだ。

もしくは、ただ単に好みの関係かもしれないけど。

 

「私が瀬名を抱き枕にして寝るのも、それが理由の1つね。まぁ他にもちょうどいい大きさとか、あったかいとか、色々あるんだけど」

 

どうやら私を抱き枕にして眠るのはそういうことだったらしい。

ひとまず背を伸ばすことが最優先だろうか。自分の匂いなんて簡単に変えられるものでもない。

 

絵名の話に反応したのか、まふゆの顔が私のうなじから離れる感覚がした。

 

「抱き枕?」

 

「ええ、瀬名ってほどよい体温に加えて良い匂いもするから、すぐ寝られるのよね。...あんた、顔は変わってないけど何考えてるか丸わかりよ、それ」

 

「ダメ?」

 

「...2日。それ以上はダメ。前はそれでも耐えられたけど、今はもう無理」

 

何やら私を放置して2人の間で通じ合って会話をしている。

まふゆの考えていることが何となくわかる時がある、というのは私も共感できる話だ。

絵名よりもその精度は高いと自負できるが、別に誇る物でもないかもしれない。

 

「で、相談事はもう解決できたの?」

 

絵名にそう言われてはっとしたが、確かに解決したかもしれない。

別に悩んでいるわけでもなく、ただ知りたいだけだったのだ。

 

私の匂いは、『フローラル』『落ち着く匂い』。この2つがポイントだ。

別に誰かにアピールするわけでもないけど。

 

私が首を縦に頷くと、絵名は薄く微笑んで、立ち上がった。

 

「それならいいわ。そろそろ作業に戻りたいし...瀬名のこと、任せたわよ、まふゆ」

 

「わかってる」

 

はぇ?

 

「何の話?」

 

結局話についていけない私が首をかしげて絵名に問いかけると、絵名は曖昧な笑みを浮かべてスマホを取り出した。

 

「本当はもう1日も渡したくないんだけど...まぁ、こればっかりは話題を出した私の責任だし。ちょっと2日間、まふゆの抱き枕になってあげて」

 

は?

 

「よろしく」

 

は?

 

...は?




オーバードーズ=瀬名の過剰摂取=?



ちなみに当初の予定では単話の予定でした。
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