東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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今回は短いです。

こういうことをしてるから話数が重なるんですけどね。

えへ。

追記:今更ですが、頂いた感想をまとめて返信させて頂きました。
いつもありがとうございます。感想は気軽に書いちゃってください。
ニコニコしながら読んでます。


第11話

セカイからリンと共に、愛莉を元気づけたその日の夕方。

 

今日も今日とて練習するみのりのステップは、確かに成長していた。

 

「ふっ、ふっ、ほっ、と。...瀬名ちゃん! 今の、良い感じだったんじゃないかな!?」

 

私が目を離していたここ数日の間に、みのりは1つのステップであれば完璧に踊れるほどに成長していた。

その間、誰かが練習を見に来てアドバイスをしてくれているわけでもないのに、修正すべきところはきちんと修正されている。

 

「ん、これなら遥たちの前で見せても大丈夫」

 

「やったぁ! この調子で...!」

 

みのりが私に褒められ、ガッツポーズをしていると、勢い良く扉が開いた。

 

なんだなんだと思って振り返ると、そこには肩で息をしている愛莉がいた。

 

「みのり...!」

 

「桃井先輩! よかったぁ、来てくれたんですね!」

 

よかった、と言いながら私の手を振り回して、喜びを体で表現するみのり。

振り回されている私を見て、愛莉は苦笑しながらこちらへと歩いてきた。

 

「前に出来なかったところ、瀬名ちゃんのお墨付きで踊れるようになったんです! 見てもらえませんか?」

 

私を出すのはやめて頂きたいのだが。...なんというか、恥ずかしい。

 

そんな様子のみのりを見て、愛莉はその苦笑いのままため息を吐きだした。

 

「な、何かダメだったですか?」

 

「いえ、私自身に呆れてたと言うか、なんというか。...みのりって、ほんと、がんばり屋ね」

 

「え?」

 

みのりががんばり屋と言うのは、愛莉からは言われなれている単語ではある。

だが、このタイミングでその単語を出してきたことがよくわからず、みのりは首をかしげたのだが、愛莉は少し下を俯くだけだった。

 

「愛莉先輩、大丈夫ですか? 一旦座りましょう! まだ飲んでないスポドリもあります!」

 

「ふふ、ありがと。ねえ、みのり。私今からちょっと、変な事言うわね」

 

みのりにベンチまで案内され、封の開いていないスポドリを手渡された愛莉は、そう呟いた。

 

「アイドルって、楽しいだけじゃないの。デビューして有名になっても、思うようにいかない事なんて沢山。いろんな人の間で、やりたいことがどんどんできなくなっていって...。最後には、道は用意された1つしかなくなるかもしれない。____それでもみのりは、アイドルになりたい?」

 

座っている愛莉の正面に立つ、みのりに向けられたその言葉。

みのりは目を閉じて、隣に立っている私の手を強く掴んで、愛莉の事を力強く見た。

 

「なりたいです。私は...アイドルになりたいです。桃井先輩に昔どんな事があったのか、私にはわかりません。それに、この先どんな辛いことがあるのかも、全然想像つかないです。でも、自分で決めた道だから。何があっても後悔しません」

 

絶対に、と。

そう口にするみのりの顔は、これまでに見てきたみのりのどの顔とも違うものだった。

 

アイドルになりたい、と夢を口にしていた時でも、遥の事を語っていた時でもない。

過去に何かあって、決意を固めているような。

 

「みのり、あんた.....そうよね。誰がなんて言っても、それでいいのよね。私がアイドルでいたいんだから」

 

そんなみのりの雰囲気に充てられたのか、愛莉も何かを決めたような表情をしていた。

 

今の会話で決めることと言えば、アイドルをやるやらない、ぐらいのことぐらいだが。

 

「...桃井先輩?」

 

みのりはピンときていないようで、首を傾げている。

よかった、いつもの純粋で、すぐに騙されそうなみのりの顔だ。

 

「...全く、私の方が元気づけられちゃったじゃない。...私ね、前の事務所で、バラエティタレントとして売り出した方がいいって言われてたの。その方針に反発して、事務所を変えても、同じことを言われたわ」

 

「桃井先輩...」

 

「まぁ、瀬名の事を、私をダシにしてスカウトしようとしてから事務所を変えた、っていうのもあるんだけど」

 

何その怖い話。

 

「アイドルよりも、ずっと長く芸能界にいられるって話をされたの。...でも、私はアイドルでいたかったの。ステージの上から、みんなに希望を届けたかった。届けたかったんだけど...業界からアイドルとして必要とされなくなって。結果はあのざま」

 

そこで愛莉は一度区切り、ベンチから立ち上がり、スポドリを私に預けた。

 

「でも、みのりを見てて気が付いた。好きだから。なりたいから。それ以上の理由はなくて、それは、誰に邪魔されるものでもない!」

 

「...!」

 

「まぁ、事務所の事とか、これからの仕事の事とか。まだどうすればいいのかはわからないけど...それでも私は、希望を届けられるアイドルになりたい」

 

そう言いながら歩き、夕日を背に愛莉は振り返った。

 

「だからみのり、瀬名。今日からは私も一緒に練習するわ。もう一度、ゼロから。今度は同じ夢を追いかける仲間として、ね」

 

「桃井先輩...!」

 

「さ、アイドルを目指す者同士、一緒に頑張りましょ! いい? 絶対負けないわよ!」

 

「...! はいっ! 私も瀬名ちゃんも、負けません! よろしくお願いします!」

 

ナチュラルに私が含まれていることはもうこの際何も言うまい。

 

何はともあれ。

愛莉はみのりと一緒に練習することになったし、これまでのセカイでの経験上から、みのりと愛莉は一緒にアイドル活動をしていくことになるのだろう。

その時は、私はマネージャー的な立ち位置でいようか。

 

「それじゃあまずは、瀬名のライブを見せてもらおうかしら。あの、セカイってところで、リンと練習していたんでしょ?」

 

「え、そうなの!? みたいみたい!!」

 

その前に、私はこの場面を切り抜けなくてはいけないようだ。

 

ここでライブをするのは非常に嫌だ。

これに似たようなケースが、杏の歌ってに近いと言えば、この後の事は想像しやすいだろうか。

 

別に杏の時も歌ったわけではないが、どうせ1回ライブをしようものなら、またさせられるのだ。

『1回も2回も同じでしょ』なんて言って。

愛莉はすごい言いそうだし、みのりは口にはしなさそうだが、表情で訴えてきそうだ。

 

私は2人に背を向けて走り出した。

 

「あ、逃げた」

 

「みのり、捕まえるわよ!」

 

 




なんか後半の方、みのり3連続ぐらいで「桃井先輩」って言ってる気がする。
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