東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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調整平均が9の大台に乗っていました。ありがとうございます。

わあい。


クリスマスの話を投稿していたことを忘れて、投稿する場所を間違えました。
最近やらかしがち。


第12話

「じゃあ今日はここまで! かなりサマになってきたわね。みのりも、瀬名も」

 

「えへへ、ありがとうございます! これも桃井先輩と日野森先輩のおかげです!」

 

あれから大体、1週間と少しの日にちが経った。

その間、結局2人から逃げきれなかった私は、セカイでリンと初音ミクと一緒にライブをしたりしたおかげで、今もこうしてみのりと一緒に指導を受けている。

 

あの日は恥ずかしさで死ぬかと思った。

 

ついでに今は愛莉のしごきで体力的に死にそう。

 

愛莉は、みのりと私にタオルを手渡した後、心配そうな顔でみのりに話しかけた。

 

「ねえみのり、最近雫に会ったりしてない? 仕事が忙しいみたいで、学校でも見かけなくて...」

 

そう尋ねられたみのりは、少しの間顎に手を当てて悩んで、何か思い当たったような声を出した。

 

「あ、今日のお昼に来てたみたいです。日野森先輩ファンの友達がみかけたって...」

 

「え!? そ、それ本当!?」

 

「は、はい。...どうしたんですか、桃井先輩?」

 

みのりがそう問いかけると、愛莉は少し気まずそうに顔をそらした後、ベンチを指した。

 

「座りましょうか」

 

話す気が無い、と言う事じゃないのは、私もみのりもわかっている。

簡単に済む話ではないから、座ることを提案しているのだ。

 

私とみのりは、先に座っていた愛莉の両隣に腰かけて、愛莉が喋り始めるのを待った。

 

「....私、この前、雫にひどいこと言っちゃったの。雫は私の事を心配してくれたのに、私は雫に、『生まれ持ってるものだけでアイドルだって認められてるくせに』なんて言っちゃって...」

 

それは...また、何と言ったらいいのか。

 

愛莉がひらすらに努力を続けていて、今もなおそうであるのは知っているのだが、それでも羨ましいと思う事が無かったわけではないはずだ。

普段であればそれを口にすることはないのだろけど、彼女の精神が限界だった時なのか、それが雫にもれてしまった、と言った感じか。

 

「だから、雫に謝りたくって」

 

「...どうしてそんなことを言ってしまったのか、なんてことは聞きません。何となく、私もわかる気がしますから」

 

「...みのりでも、そう思う事があるのね。...最初に雫を見たときは、圧倒されたわ。私に無いものをすべて持っている。これが天性のアイドルか、なんてね。もちろん、絶対負けない!って思ったけどね?」

 

愛莉が苦笑しながらそういう中で、私はみのりをちらりと見る。

 

みのりが嫉妬をして、つい口に出る、もしくは出そうになるような状況になったことがある、と言う事なのだろうか。

例えば、オーディションで出会った人にひどく嫉妬した、みたいな。

 

「それからデビューまで一緒に練習して頑張ってきた。辛いこともあったけど、励ましあって、乗り越えてきて。...でも、私はアイドル扱いされなくなっていく中で、雫はどんどん先に進んでいって。私も雫みたいだったら、なんて。本当...最悪よね...」

 

そう言う愛莉の顔がひどく辛そうで、私はみのりの顔を見た。

みのりも私と考えていることが同じなようで、1つ頷いた後、私たちは同時に立ち上がった。

 

言ってしまったことを後悔しているなら、することは1つだけだ。

 

「じゃあ、ちゃんと謝りに行きましょう! 今から一緒に日野森先輩に会いに行きませんか?」

 

「大丈夫。しっかり正面からなら気持ちも伝わる」

 

そう言いながら差し出したみのりの手を、愛莉は少しの間見つめて、微笑んだ。

 

「ええ。ありがとう、みのり、瀬名」

 

とはいえ、雫の現在地が分かるわけでもないので、地道に聞き込みでもして情報を集めるしかないだろう。

友達の多そうなみのりに、まだ校内にいる生徒に連絡を取ってもらおうと考えてみのりを見ると、みのりのスマホから軽快な音が鳴った。

 

「何だろう。ニュースアプリの通知...?」

 

スマホのロックを解除して、ニュースの内容を確認しているみのりだったが、すぐにその顔色が真っ青になった。

 

「え!? あ、桃井先輩、大変です! ......これ!」

 

「.....?」

 

みのりのあまりの慌てように、私と愛莉は顔を見合わせながら、みのりがこちらに向けたスマホの画面を見た。

 

そこには。

 

「何よもう、そんなに慌てて。なになに?『人気グループCheerful*Daysのセンターとして活動していた日野森雫が、同グループを脱退。事務所も退所....!?」

 

元々、彼女の周りでの噂はあった。

それこそ、枕だとか、そういう類のものはなかったけれど...グループ内の、不和だとか。

 

思い起こされるのは調べた雫のことに関しての記事の内容だけど、それと同時に。

 

「.....!!」

 

「あ、愛莉先輩!?」

 

荷物もそのまま、校内へと繋がる扉を乱暴に開けて走っていく愛莉。

 

それを見て一瞬呆けていたみのりだったが、すぐさま気を持ち直して私の方を振り向いた。

 

「追いかけよう!」

 

「わかった」

 

みのりの提案にすぐさま私は頷き、みのりと一緒に愛莉を追いかける。

扉を開けて階段を降りていくと、廊下を全力でかけていく愛莉の姿が目に入った。

 

よかった、姿さえ見つけることが出来れば、追いつくことはできる。

 

私が足にぐ、と力を入れ、愛莉を止めようと動き出そうとした瞬間、扉から遥が出てきて、愛莉とぶつかりそうになっていた。

ぶつかる寸前で、遥が後ろに体を反らしたおかげで愛莉とはぶつからずに済み、愛莉に至っては遥のことが目に入っていない様だった。

 

「桃井先輩? どうしてあんなに走って...」

 

「遥」

 

「瀬名? 珍しいね、こんなところにいるなんて。それにみのりも一緒...さっきの愛莉が関係してる?」

 

「はぁ、はぁ、遥ちゃん、こ、これ!」

 

ひとまず遥にも説明しておこうと立ち止まり、みのりが持っていたスマホを遥に見せる。

 

そのニュースの内容を見て、遥も驚いたようで目を見開いていた。

 

「これ...」

 

「ごめん遥、今愛莉を追ってるから」

 

「ご、ごめんね遥ちゃん! 瀬名ちゃん行こ!」

 

何かを聞きたそうにしていた遥だったが、残念ながら私たちにはやることがあるため、遥の声を遮って、私とみのりは愛莉の後を追った。

 

すまん遥。あとでいくらでも聞くから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どこに、行っちゃったんだろう...げほっ」

 

「すれ違った人に聞いてこっちに来たけど、もしかして追い抜いた?」

 

愛莉を追うのを再開した私たちは、立ち止まっていたために愛莉の姿を見失っており、すれ違う人に聞き込みをしながら走り回っていたのだが、既に校舎内にはいないように思えた。

 

今度は敷地内ではあるが、校舎外を探そうとみのりの方を見ると、膝に手を当てて疲れ切っていた。

 

「...みのり、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫...と言うか、桃井先輩の練習を受けた後なのに、瀬名ちゃんすごいね...」

 

みのりに言われて、私は言われてみればと思う。

別に息は乱れていないのだが、それだと愛莉の練習であれだけ疲れていたことに説明がつかない。

 

少しでも休憩を挟めば大丈夫なのだろうか。聞き込みをするのに止まっていたし。

 

「とりあえず、外に行こう。歩ける?」

 

「ち、ちょっと休ませて...」

 

みのりが今すぐに動ける状態でない事を把握した私は、1秒でも時間は無駄にできないとし、みのりをおんぶした。

 

「ひゃ、せ、瀬名ちゃん!?」

 

「私の背が低いから、もしかしたら足引きずるかもだけど。我慢して」

 

そして、そのままダッシュ。

 

みのりがいたから速度をセーブしていたが、今やみのりは私の装備品の一部だ。

この体のチート能力を見せつけてやろう。

 

「せ、瀬名ちゃん、私をおんぶしてるのにはや...!?」

 

みのりを背負いながら走る事数分。

ちょうど中庭で、歩いている雫の姿を発見した。

 

これから帰宅、だろうか。

 

「みのり、雫いた」

 

「うぷ...ちょっと酔ったかも...ふぇ? ほんとだ。今すぐ話しかけ...」

 

吐くなら私の上では吐かないでくれ、と思っている中で、愛莉の声が響いた。

 

「待ちなさい、雫!」

 

「愛莉ちゃん...」

 

「はぁっ、はぁっ」

 

走り回っていたみのりが疲れ切っていたように、愛莉もかなりの疲労が蓄積している様で、膝に手を置いて肩で息をしていた。

 

そんな愛莉の姿を心配そうに見ている雫だったが、愛莉の顔が上がるのと同時に、雫は目をそらした。

 

「...やっぱり、あの噂は本当だったのね...。でも、どうして...?」

 

「..........」

 

「なんで黙るのよ! ちゃんと話してよ! 雫!」

 

愛莉の声にも、雫は目をそらしてばかりで。

 

吐き気から立ち直ったみのりも、2人の側へと歩いていく。

そのみのりの後ろに、私と遥。

 

...遥?

 

「桃井先輩の後を追ったら、ここに」

 

じゃあ私たちは無駄に走ったってこと?

 

「日野森先輩! あの、本当に辞めちゃったんですか...?」

 

雫は、みのりと遥、そして最後に私を見た後、目を伏せて口を開いた。

 

「......もう少し、伏せておいてもらえるはずだったんだけど...」

 

その言い方をするということは、このニュースの記事の内容を肯定しているようなものだった。

 

「本当なのね?」

 

遥が確認するように問いかけると、雫は否定はせずに目をそらすだけだった。

 

雫がアイドルをやめる。そのことに納得できていないのか、愛莉は声を荒げた。

 

「どうして? どうしてよ! 雫がアイドルを辞める理由なんてどこにも...! 雫は羨ましいくらいアイドルじゃない。華があって、立ってるだけで存在感があって...みんなが振り返るくらい綺麗で...!!」

 

そんな雫が辞めるなんて、と言った感じの愛莉の声を聴いて、雫はここに来て初めて愛莉と目を合わせた。

 

「どうして愛莉ちゃんまでそんな事言うの!?」

 

「....え?」

 

雫にそう言われるのは、愛莉にとっても予想外だったのだろう。

呆然とした様子の愛莉だが、私の隣に立っている遥の顔を見ると、どこか予想通り、と言ったような顔だった。

 

「愛莉ちゃんが教えてくれたんじゃない。大事なのはハートだ、って。ファンに希望を上げるために頑張るのがアイドルだって」

 

雫は、苦しそうに胸辺りの服を握りしめながらそう言う。

 

雫の心の支えは。アイドルになったばかりの彼女に投げかけられた、愛莉の教えだった。

 

「だから私はずっと、そんなアイドルになろうって頑張ってきた。なのに...。なのに、どうしてみんな、私の見た目や生まれ持ったもののことばかり言って責めるの...!?」

 

「.....もしかして、私のせい、なの....?」

 

雫の言葉を受け、力なく後ずさる愛莉。

何か、後1つ、何か彼女を揺さぶる何かを言われた瞬間、彼女の、『桃井愛莉』を保てなくなるような、そんな表情だった。

 

「......辞めることは、ずっと考えていたの。みんなと上手くいかなくなってから、ずっと....」

 

愛莉が問答を出来るような状態ではないことを察知した遥は、愛莉の代わりと言うわけではないが、話の間に入って行く。

 

「....メンバーが人気のある雫を妬んでいた、っていう噂は...本当だったの?」

 

「......初めは違ったわ。みんなで競い合って頑張れて、楽しかったの。でも私がセンターになってからは、新曲のセンター選抜も、どこか形だけになっていって...。頑張っても頑張っても、私の仕事だけが増えて、みんなはだんだん、冷たくなっていって...」

 

「...そうだったの」

 

雫の答えを聞いて、遥は噂が正しかったことに、苦しそうな顔をした。

 

「みんなと上手くやっていけるように頑張ったけど、それもダメで。...もう、アイドルが好きなのかも、わからなくなっちゃったの.....」

 

そう、後悔するような雫の声を聞いた瞬間、愛莉が地面に両膝をついて座り込んだ。

愛莉の顔は雫の方を向いているものの、その焦点はあっていないように見える。

 

「私のせいだ。私が、言って、逆のことを...雫からアイドルを...」

 

「...! せ、瀬名ちゃん、どうしよう...!」

 

「.....」

 

どうしよう、と言われても。

 

正直に言えば、こうして思考を回せているのも、どこか現実逃避しているからだ。

このパターンは初見で、どう対応したらいいのかわからない。

 

雫の問題も、愛莉の問題も、全てまとめて解決して、みのりと一緒にアイドルでもやるのが1番手っ取り早い解決方法だと思うが、じゃあどうする、と言うのが全く思いつかなない。

 

愛莉をどうにかしなければ、と思うものの、どうしたらいいのかわからず立ち尽くしている。

 

「雫は本物のアイドル...私とは違う...私とは...雫は...」

 

愛莉がそう呟いているうちに、焦点が段々と合い始め、今度は怒りを宿したような顔になっていく。

 

「雫がステージから降りる...そんなの、そんなの...! 嫌っ!!」

 

突然愛莉は立ち上がり、雫を追いかけていた時よりも更に早いスピードで、どこかへと走っていく。

 

「も、桃井先輩!?」

 

彼女がどこに向かったのか、皆目見当もつかない私とみのりは、どうしよう、と頭を混乱させた。

その中で、遥が口を開く。

 

「もしかしたら、劇場に行ったんじゃないかな。『Cheerful*Days』の」

 

「...!!」

 

本当にそこに言っているかどうかは確証はないが、ひとまずそこに向かうしかないだろう。

そこじゃなければ、他に向かいそうなところと言えば自宅ぐらいのものだし。

 

私とみのりは屋上に置いてある荷物をそのままにして、遥に位置情報を教えてもらって走り出した。

 




愛莉って1歩間違えたら心折れてもうアイドル出来なかったんじゃないかって。

そんな愛莉も好き(存在しない記憶)。
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