東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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ローソンコラボ、2回引きました。

B賞2つで、こはねと杏でした。

運命だ……!


第16話

宮益坂女子学園の校舎を出た帰り道。

ある程度一緒の方向へと歩いている私たちだが、その帰り道での間、会話はまだなかった。

 

非常に重たい空気の中、愛莉が口を開く。

 

「遥が、あんなことになってたなんてね...」

 

「...全然わからなかった。去年一緒に収録した時も、元気そうに見えたから...」

 

「誰にも悟られないようにしてたんでしょうね、ファンにも、仲間にも。心配かけたくなくて」

 

誰か1人が声を出せば、それに続いて喋りだすことが出来る。

愛莉に続いて雫も喋るが、それもすぐに途絶えた。

 

愛莉は空を仰ぎ見るように見て、やるせないような声を出した。

 

「...ほんと、根っからのアイドルね。あの子。...私たちに、出来ることは何もないのかしら」

 

結局それ以降、愛莉も雫も喋ることが出来ず、帰り道の都合上今日は解散となった。

その間、みのりは一言も喋ることもなく、自身の傷ついた手のひらを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

 

自宅のベッドの上で寝転がりながら、私はスマホの画面を見つめる。

画面に出されているのは、再生されていない『Untitled』。

これ以外にも『Ready Steady』や、『悔やむと書いてミライ』も存在している私のスマホだが、今回用事があるのはこの『Untitled』。

 

「...私のセカイも『Untitled』だけど、何となくどっちがどっちなのか、わかる」

 

まだ間違えたことは一度もないので、誤タップ以外は間違えることはこの先もないだろう。

 

「...余計なことは考えないで、これからのことを考えないと」

 

今考えるのは、遥の事。

希望を届ける存在であるアイドルだったはずの彼女が、一番側にいたはずの真依に希望を届けることが出来ていなかった。それ故に、彼女はアイドルをやる資格がないと考えている。

 

これを何とかするためのキーは恐らくセカイだ。

では、私に何が出来るのだろうか。

 

セカイで私が出来ることは、基本的にそのセカイのバーチャル・シンガーの協力が必要不可欠であるが、まず1つは、セカイを経由して相手のスマホやPCの画面から出られる事。

これの原理がどうなっているかは定かではないが、そもそも私たちがセカイに入ることすら意味不明なのだ。考えるだけ無駄だろう。

 

次に、セカイ越しに相手のスマホから、ホログラムのような形で出ること。

これも、あのアイドルのセカイでは鏡が出入り口になっていただけで、他のセカイだと違う可能性があるから、詳しくは考える必要はない。

 

1つ目は、ニーゴのセカイで得た方法。

2つ目は、今回のセカイで得た方法。これらをうまい事使って、今回の件をどうにかできないだろうか。

 

「...相談、してみようか」

 

1人で考えるのも限度がある。

私は『Untitled』を再生した。

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

私は入ったセカイは、アイドルのセカイ。

私自身のセカイに入るのは、ひとまず情報を集めきってからの方がいいと感じて、こちらのセカイに足を運んでいた。

 

すると、そこには既に先客が来ているようで、みのりが初音ミクとリン話していた。

 

「あれ、瀬名ちゃん?」

 

「みのり、来てたんだ」

 

「うん。...前に、ミクちゃんが言ってくれてたことを思い出して」

 

初音ミクが前に言っていたこと、と言うと、恐らく『自分の想いや誰かの想いが見つけられなくて、苦しくなったりしたら。いつでもセカイに来てね』と言っていたやつだ。

ふと思い出した、といった感じでこのセカイへとやってきていたのだろうが、それにしても奇遇だ。

 

そんなことを考えていると、突然隣に立っていた初音ミクが私の肩に手を置いた。

 

「ねえ、みのりちゃん。今からもう一度、私たちのライブを見てみない? 特等席を用意するし、今ならスペシャルゲストもいるよ!」

 

「...スペシャルゲスト。もしかしなくてもそれって私のことじゃ」

 

「はい、瀬名ちゃんはこっちこっち~♪」

 

初音ミクに異議を唱えようとすると、リンが私の手を引っ張ってステージの袖へと連れていく。

まさか、ここでライブをさせる気か。それもみのりの前で。

 

「なんで私も踊る必要があるの」

 

「一緒に踊った方が絶対楽しいって! それに、踊りは心配ないでしょ?」

 

「...そうだけど」

 

一度スパルタで教えられている私の体は、アイドルとしての踊りを覚えている。

忘れることはできないだろう。忌々しい私の体だ。

 

私が渋々納得したのを察したのか、リンはその場で指を1つ鳴らした。

 

そうすると、なんということでしょう。私の服が一瞬で初音ミクやリンのような、アイドルのような衣装になっているではありませんか。

 

初音ミクが緑で、リンが黄色をメインにしている衣装なのに対して、私の色は青。

まぁ私の髪色が白いので、何色にしても問題はなさそうだが。

 

うへぇ、と思っていると、既にみのりはステージの舞台袖にやってきていた。

そのステージの端っこには誰が置いたのか、椅子が1つ置かれていた。

もしかしなくても、みのりの席はあそこなのだろう。

 

「え? ええっ!? こ、ここで見るの!?」

 

当然のごとく驚いている様子のみのりだが、2人はそんなみのりを笑顔で無視して、こちらへと歩いてきた。

 

「今日のセンターは瀬名ちゃんだよ! それじゃあ、元気良くいこう!」

 

「え、聞いてない...!」

 

そうして、私の地獄の初センターライブが始まった。

 

こうなればやけだ。

私に出来ることは、こうなってしまってはもう腹をくくって、みのりに元気を届けるだけ。

これまでのアイドルを模倣しているだけでは、きっとみのりの心に届かない。

 

ならば、模倣して得た技術を基にして、私としてのライブを彼女に届ける。

 

よーく見ておけみのり。これが私の、最初で最後のアイドルとしてのライブだ。

 

...この後の私が、恥ずか死しなければいいけど。

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

「みんなー! 久しぶり! 今日は、私たちのお友達、みのりちゃんが来てくれてます! みのりちゃんには、特等席で楽しんでもらおうと思います! それじゃあ、ライブ、スタート!」

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

 

 

「みのりちゃん、、ただいま! ライブ、どうだった?」

 

「すっごく良かったよ! 3人とも息ぴったりで...それに、遥ちゃんの見てた景色を見られて、嬉しかったな」

 

みのりの言う、遥の見ていた景色というのは、先ほどのライブの途中、観客が持っているペンライトが一斉に青く染まっていく時間帯があったのだ。

きっとそれのことを言っているんだろう。

そして、恐らくこれが、遥を救うためのキーになるはず。

 

「それにしても、瀬名ちゃんってやっぱりアイドルやってたんじゃ...だ、大丈夫?」

 

「...しばらく今回の件には触れないでほしい」

 

「う、うん...分かった」

 

とはいえ、それとこれとは話が別だ。

まさか歌どころか、普段の私とは180度方向が違うキャラを見せることになるなんて。

 

黒歴史だ。私の中での黒歴史の1つだ、今日は。

 

「まぁまぁ。あの青い海みたいなペンライト、ここから見るとすっごくキレイだよね!」

 

あれを見てテンション上がったでしょ、とリンに言われて、私は渋々頷く。

 

確かに、あの時、視界の先にあるペンライトが一斉に青く染まっていった瞬間、私はテンションが上がっていた。

だからこそ妙に張り切って踊って歌っちゃったのであって、今こうして横になって顔を隠しているともいう。

 

まぁ私のことはどうでもいいとして。

 

流石に私が青の衣装を着ているからペンライトが青く染まっていたわけでもないだろう。

なにせ、前回私たち5人で観客側に回ってライブを見ていた時にも、青く染まっていたのだから。

 

セカイは想いで出来ている。であるならば、セカイに起きる現象も基本的には、その人の想いが作用している。

 

ならばペンライトが青に染まるのは。

 

「このセカイでライブをすると、ペンライトが一面青くなる時があるんだよ」

 

「あ、そういえば前に来た時にも...でも、どうして?」

 

「なんでだろう? でも、セカイは想いでできてるから、誰かの想いが現れてるのかもしれないね」

 

「誰かの想いって...」

 

初音ミクはみのりにそう説明すると、横に倒れている私に向かってウィンクしてきた。

初音ミクも、リンも。既に何が要因なのかわかっている。だけど、あえて明言しないのは、みのりに気付かせるため。

 

このセカイを構成している彼女たちで、前へと進んでほしいからこそだと私は思う。

 

それに、既にみのりも気づいているようだ。

 

いつまでも横になっているのもあれなので、立ち上がってみのりの事を見守る。

 

「もしかして...遥ちゃんの...もし、あの景色が遥ちゃんの想いなら...!」

 

瞳をぎゅっ、と閉じたみのりは、すぐに目を開いて、私たちを見て言った。

 

「...ミクちゃん、リンちゃん、瀬名ちゃん! このステージに、遥ちゃんを連れてきてもいい!? あの光を遥ちゃんに見せてあげたい。例えアイドルに戻れなくっても、せめてあの景色を...遥ちゃんの大事な景色を、見せてあげたいの!」

 

もちろん、それを拒否する理由どころか、こちらとしてはむしろ、と言った感じなので首を縦に振る。

私の隣にいる初音ミクもリンも、私と同じ気持ちだろう。

 

恐らくだが、ここでつまずけば遥はもう2度とアイドルとして立てないだろう。

みのりが諦めることはそうそうないと思うが、肝心の遥がダメになる。もし失敗した場合、最悪な形で遥の後押しをしてしまうということだ。

 

私たち3人が快諾したのを見て、みのりはひとまず安心したように頬を綻ばせて、すぐに表情を引き締めた。

 

「それじゃあ、遥ちゃんを連れてくるから、ミクちゃんとリンちゃん、瀬名ちゃんはその時にライブを...!」

 

しかし。

別に私たちがライブを見せることを承諾したわけじゃない。

むしろ私はもう2度と歌って踊ることは拒否したい気持ちだが、今回はそれとは別にライブする理由が無い。

 

そんな私の気持ちを代弁するかのように、初音ミクが顎に指をあてながら、みのりの言葉を遮った。

 

「でも、ライブをやるのは、私たちじゃなくて、みのりちゃんがいいんじゃないかな?」

 

「え!? わ、私がライブ!?」

 

「うん。遥ちゃんを励ましたいのは、みのりちゃんでしょ? それなら、やっぱりみのりちゃんが直接届けた方がいいと思うの」

 

ただでさえ、人の想いというのは言葉にする時に、その想いの大半を取りこぼしてしまう。

他人の想いを乗せてライブをしたところで、言葉にする以上に取りこぼしてしまうだろう。

 

初音ミクにそう提案されたみのりは、眉を八の字にしてリンの事を見た。

 

「で、でも、私ステージに立ったことなんて...」

 

「大丈夫! みのりちゃんは遥ちゃんがだーい好きでしょ? だからきっと出来るよ! それに瀬名ちゃんもついてるし!」

 

まぁ、確かにみのりの遥ラブは中々のもので...今おかしな言葉が聞こえたような。

 

「.......うん、私、頑張る。遥ちゃんの1番見たい景色を届けてみせる! 瀬名ちゃん、お願い、手伝って!」

 

「.....わかった」

 

内心渋々、と言った感じで頷いた気分なのだが、いかんせん私の表情筋が死んでいるせいで、普通に頷いているようになってしまった。

これでは前向きみたいではないか。黒歴史を作るのに前向きとは、いったいどういう...。

 

いや、よく考えてみたら、ここでいくら黒歴史を作ろうが、そのうちリセットされてみんな忘れて私の中だけの思い出になるのだから、別にいいのか。

 

そう考えたら気が楽になってきた。

こうなったら気合入れて踊ろうか。みのりを目立たせるために全神経を注ごう。

 

「みのりなら大丈夫、出来るよ」

 

「うん、届けてみせるよ!」




PCで文字を打っていると、急に「k」が「あ」に変換されるんですよね。そうなると「き」と「け」が打てなくなるわけで。

その度に再起動です。キーボード君が限界なんでしょうかね。
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