石ないなっちゃう...。
奏に破壊されたので今回は短めです。
みのりの技術面の問題が解決された今。続いての問題は遥をどう呼び出すか。
最終的にはこのセカイに連れてくることが出来ればおっけーなので、私的には過程はそこまで重要視していないのだが、愛莉たちはそうじゃないようだ。
まぁ、慎重になっていると言う事だろう。
「でも、遥ちゃんはまた呼んでも来てくれそうじゃない?」
「...どうかしら。ただ、その場合はもうミスは許されないわよ。恐らく遥も、その時に『もう呼び出さないように』って言ってくるだろうし...」
「で、でも、ミスさえしなければ...!」
「そこなのよね...前だけ見ることが出来たら、どんなに楽か...」
失敗したときに、どうしようもなくなる、という状態を避けたいのだろう。
みのりと遥はもう、呼んでしまおうか、と言ったような感じだが、愛莉がその1歩を踏み出すことが出来ずにいる。
最終的な判断を下すのは、この中では愛莉という事になっているようだ。
まぁ、雫に任せるのは元アイドルと言う事を加味しても、なんか不安になる。みのりは言わずもがなだ。
その点、遥がいてくれたら愛莉の負担も減るだろうし...うん、まぁひとまず連絡してしまおうか。
このままほっといても愛莉が決断するのにもう少し時間がかかるだろうし、その間にみのりの冴えを曇らせたくない。
...みのりの冴えに関しては、時間があれば更に進化する可能性もあるけど。
と言う事で、3人には黙って遥へメッセージを送る。
『見せたいものがある』とだけ送信すれば、ものの数秒で遥から返信が返ってきた。
『どこに行けばいい?』...割と乗り気だ。前回それで真衣が居たことを忘れているのだろうか。
とはいえ、遥が乗り気なのはこちらとしても助かるので、日程を...そういえば、そのあたりを決めるのを忘れていた。
仕方がない、とスマホから目を離して、3人の元へと歩いていく。
「みのりちゃんは本当に遥ちゃんのことが好きなのね~」
「はい! 遥ちゃんは私の未来を照らしてくれて! きっかけはたまたま見たテレビだったんですけど、それ以降見るたびに元気を貰っていて、どういう魅力なのかを言葉に起こすことができないから尊いとしか言えないんですけど!」
「ちょっと落ち着きなさいみのり。雫も不用意に話を振らない」
こいつらは何を話しているんだ。もう脱線しているじゃないか。
ため息を吐きたくなるのを我慢しながら、愛莉の肩を叩いてスマホを見せる。
これで話は進むだろう。
「? 何よ瀬名...って、遥!?」
「遥ちゃん来てくれるのね。日にちはどうしましょう?」
「明日はどうですか? 私、今日の感覚を忘れないうちにステージに立ちたくて」
みのりが明日を希望して、雫も首を縦に振っているので、遥に日にちと場所を伝える。
どうせ場所は屋上になるし、愛莉に確認を取らないのは愛莉なら大丈夫だから。
「ちょっと、私にも確認取りなさいよ!」
〈♪〉
そして、翌日。
宮益坂女子学園の屋上で私たちは待機していた。
「...瀬名が呼んだんだし、私が喋ると変よね...よし、瀬名、頼んだわよ」
「え」
「確かに、瀬名ちゃんが呼んだように遥ちゃんからは見えてるだろうし...」
「遥ちゃんにダンスを披露...遥ちゃんにダンスを披露...」
まぁ、愛莉と雫の言い分も理解できる。
遥から見たら、私からのメッセージで来ているのだ。私が誘っているように見える、というかそうとしか考えられないだろう。
と言うか、みのりは練習中の姿を以前に見られているのだから、今更だろうに。
開幕遥に何と言おうか、と考えていると、屋上へ出る扉のドアノブがひねられた。
そこから出てきたのは予想通り遥。
若干笑顔でやってきた遥は、私の横にそれぞれ立っている3人の姿を見て、最後に私に見た。
口角は上がっているが、細くなった目が笑っていない。
え、私何かしたっけ。
「...えと、また呼び出してごめん」
「ううん、大丈夫。もしかしたらお出かけのお誘いかなって思ったんだけど...違ったみたい。私の早とちりだったね」
この会話で全てを理解した。
確かに、私が遥にする連絡と言えば、この間の真衣の件を除けば基本的にはいい感じの店を見つけた時だ。
私が忙しくて実際に行くことは出来ていないのだから、そこに『用がある』なんて連絡したらそうなるか。
「...遥の都合の良い日に...いこ...」
「うん。じゃあ今度連絡するね」
さらば、私の休日。お布団。
私が遠い目をしていると、遥が「それで、用って?」と催促してきたので、本来の目的を口に出す。
と言っても、私が言うべきことは少ないのだけれど。
「今日は一緒に来てもらいたい場所がある。誰かさんが遥の事を元気にしたいんだって」
そう言いながらちらり、とその誰かさんを見ると、その視線の先を追った遥は苦笑いを浮かべて、すぐに真顔で首を傾げた。
「...そっか。ちなみに、瀬名は?」
「...私も気持ちは同じ」
妙な圧を感じて思わずそう頷くと、数秒固まった後、また苦笑いをしながら頷いた。
え、今のは何だったんだ。
「...わかった。気を遣わせちゃってごめんね。帰りが遅くなるといけないから、あんまり遠くには行けないと思うけど...」
「大丈夫、すぐに行けちゃう、遠くない場所だよ!」
「え? ちょっとみのり、どうして手を握って...って...」
遥は以前にもセカイにいたことがある。本人が来たくてセカイに足を運んでいたわけではないが、実際にその目で見ている以上説明は容易いだろう、と考えていると、みのりが遥の手を取って、スマホを取り出した。
スマホは既に『Untitled』を再生できる状態になっており、その画面を見た遥は目を見開いた。
「それじゃあ、行こう、遥ちゃん! 私たちのセカイに!」
「この光、もしかして...!」
〈♪〉
光が収まった時、私たちの行動は早かった。
セカイに来慣れているからなのか、遥が来るまでにタイムラグがあったのはラッキーだった。
その間にステージ横に向かって全力疾走をして、準備を整える。
「桃井先輩、日野森先輩、ミクちゃん、リンちゃん。そして、瀬名ちゃん。...練習通り、よろしくお願いします!!」
「「頑張りましょう!」」
「「任せて!」」
「ん」
衣装はそれぞれメインは一緒で、愛莉はピンクが、雫は水色、みのりはオレンジの色が入っている。
私はシルバー。なかなかアイドルでシルバーがイメージカラーはいないんじゃないだろうか。
なんちゃら48にそれぞれイメージカラーを付けたら、いそうだけれど。
後は遥の前に立つだけ、と言ったところで、みのりがステージの方を向いて止まった。
呼吸が浅い。ひどく緊張しているのだろう。
こういった時に先人の知恵が役立つ、と思ったのだが、愛莉と雫は2人で軽く流れを確認しているところだった。
2人を呼んでみのりを何とかしてもらおう、と考えていると、みのりはそのまま足を進めようとしていた。
「っ、みのり」
「っ! あ、せ、瀬名ちゃん?」
今のみのりの様な緊張というものに、私は共感こそできないものの、理解はできる。
見知らぬ人の前で何かを見せる、というのは緊張するものだとわかっているし、それが遥の前だと猶更だろう。
だから、私が言えるのは一言だけだ。
「1人じゃない。みんなで想いを届けるんだよ」
「...私、ドキドキしすぎて何も考えられなくなってた。ありがとう、瀬名ちゃん」
「...ん」
私がなんとかできるのかと思ったが...ひとまず何とかなったみたいだ。
まぁ本番はこれからなのだが、その点についてはもう何も心配していない。
そうして、みのりは遥の前に立つ。もう一度、ステージの上に希望を持って立ってもらうために。