東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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APするのに平気で1週間ぐらいかかりそうなので、更新します。
ノーツ叩きながら頭の中でどう話を進めようかと悩むんですよね。





第4話 Won't forget,Can't regret.

音楽というものは、既に一度触れている。

ただしそれは作曲でのみであって、実際に演奏する立場になって音楽に触れたことは皆無と言っていい。

 

つまりそれは、私1人で弾くだけなら他人に聞かせられるレベルになっているとしても、複数人で曲を演奏することになった場合、私が正確すぎて逆に浮く、という話だ。

 

呼吸が合わない、と言えばいいのだろうか。

 

何回か飛び入りで参加できる場所に行ってその場のグループで弾いてはみたものの、人と合わせることと演奏技術が高すぎたせいで、ひどく浮いていた自覚がある。

ほぼ私のソロギターで演奏を引っ張ったようなもので、見に来ていた観客の目もほとんど私の事を見ていた記憶がある。

そして、最後に失望した目で私のことを見ていた、他3人の目も覚えている。

 

そうして思い返すのは、これまでの事。

まふゆや奏たちと曲作りをした時も、みのりたちと一緒に踊った時も、こんな気持ちにはならなかった。

もしかしたら、楽しかったのかもしれない。あの時の私が自覚していなかっただけで。それを考えると、杏たちに誘われた時も乗っておけばよかったかもしれない、なんて後悔。

 

いや、やめよう。今はもう関係の無い話だ。

さて、仮に私が曲を演奏する場合。

他人と組むのはやめて、ギターソロでやるか、打ち込みを用意するかの2択になるのだろう。

身近にプロ級の演奏の出来る人間でもいればいいか、いかんせん私には人脈が皆無と言っていいほどない。

 

学校には行かずに適当にぶらぶらしながらギターを弾く。

そんな生活を続けていると、私のスマホの楽曲プレイリストに曲が増えていることに気が付いた。

 

5個目のセカイへの道標。

『Untitled』だ。

 

「でも、まだそれらしい人と知り合っただけ...今までは一緒に入り込んでいたはず」

 

時刻は16時過ぎ。学校には行っていない私は帰宅も早いので、この時間には既にこうして自宅でギターを弾いている。

まだ絵名は起床しておらず、彰人はまだ帰宅していない。

両親は今日は用事があるとの事なので、自宅にはいない。

 

「...再生、してみようか」

 

もしかしたら、今回のとは関係なしに、私がこんなことになっている張本人に会えるかもしれない。

黒幕がわざわざ私との関りを作ることの利点はよくわからないけど、その可能性だって無くはないはずだ。

 

そうして、私は意を決して『Untitled』を再生した。

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

いつもと変わらない眩しさに目を閉じて、眩しさが止んだ後の開けた視界の先は、教室だった。

 

椅子や机は教室の端の方に寄せられており、黒板の前の教卓の上には大きくはない望遠鏡と、黒板に立てかけられている星座早見盤。このセカイは、星、天体観測がモチーフになっているのだろうか。

 

「あれ、一歌たちより早かったね」

 

眩しくて見えない、窓の外を眺めていると、後ろから声を掛けられた。

非常に聞きなれた声に後ろを振り返ってみると、そこにはツインテールの初音ミクがいた。

ただ、深い緑の髪色と、胸につけている制服のリボンの色と同じ赤のメッシュのようなものが入っている初音ミクは、初めて見るタイプだった。

 

「いらっしゃい」

 

「うん」

 

改めてそう初音ミクに言われて、取り敢えず頷いておく私。

正直、今この状態が良く分かっていない。

 

初音ミクの言葉の通りならば、このセカイを構成している人よりも先に、私がセカイにやってきていることになるのだが、それは大丈夫なのだろうか。

そして、それをこの目の前にいる初音ミクに聞いても不審に思われないだろうか。

 

私がそうして悩んでいると、初音ミクは視線を下げて、私の手元を見た。

 

「それ、ギターだよね。暇なら、一緒に演奏しない?」

 

初音ミクに言われて気づいたが、私の手には確かにギターケースが握られていた。

セカイに来る前にケースにしまった記憶はないし、手に持っていた記憶もないのだが。

 

まぁ、考えようによってはラッキーかもしれない。

相手はあの初音ミクだ。このセカイの初音ミクがどういう個体なのかはまだ不明だが、誘ってくるということはそれなりに出来るということなのだろう。

私は初音ミクに期待を寄せて、首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

〈♪〉

 

 

 

 

 

 

一緒に弾こう、となったのはいいものの、まずはお互いが知っている曲を調べる必要があった。

 

「最近の流行りの曲なら弾ける」

 

「流行りの曲かぁ...例えば?」

 

「これとか」

 

「...う~ん、初めて聞くなぁ」

 

「じゃあ、これは?」

 

「これも」

 

「...」

 

「...」

 

結局のところ、初音ミクが知っている曲に、私が合わせることに。

PCの中で歌っている初音ミクは紛れもなく機械で、入力されれば初めて歌う曲でも入力された通りに歌ってくれるが、目の前にいる初音ミクは機械ではなく、生きていると私は思う。

短い会話の中でそう思ったので、恐らく練習と言うものが必要なのだろう。それならば、私が一度聞いてその曲を覚える方が早い。

 

まぁ、相手が機械でも同速の自身があるけれど。

 

「それじゃあ、スリーカウントから」

 

「うん」

 

そうして、初音ミクのカウントに合わせて、2人同時に弾き始める。

話し合って決めた曲は、『少女ライラと親愛なる色彩』。初音ミクが歌っているわけじゃないが、最近私が練習用に適当に流していたうちの1曲だ。

そこまで複雑という訳でもないが、細かくどちらがどう、と決めることもしない。弾く場所が被れば仕方ないと笑えるし、上手く嚙み合えば気分も上がる。

 

「ライラ ライラ 街の隅で」

 

「回る 消える 結末が」

 

「ライラ ライラ 刹那の意図」

 

「音もなく閉じてく世界を拾いたくて」

 

音を重ねていく。初音ミクの呼吸が分かる。

目を合わせなくても、一瞬もずれずに弾いていける。

 

私のセカイが、広がっていく。

 

時間がたつのは早いもので、一瞬にも思えた私と初音ミクのセッションは終わりを告げた。

そして、弾いている最中から気付いていたのだが、教室の外に4人ほど、誰かが近づいてきている。

そのことに初音ミクも気づいているようで、1つ頷いてギターをケースにしまって立ち上がった。

 

「ふぅ。楽しい時間は一瞬だね。待ち人も来たし、取り敢えず行こっか」

 

初音ミクの言葉に頷いて、私もギターをケースにしまう。

どうやら教室の外にいた4人は隣の教室に入って行ったようで、こちらから迎えに行く必要があるようだ。

 

先程まで演奏していた教室を出て、隣の開いたままになっている教室の扉を通っていく。

そこにいたのは、一歌と咲希と、知らない2人だった。

この4人がセカイを構成しているのは理解できたのだが、それにしては雰囲気が微妙ではないだろうか。

 

なんだこの空気、と考えている中で、知らない2人が、前に一歌が言っていた『仲の良かった』人たちなのだと理解が及んだ。

 

 

「やっと来てくれたんだね。待ちくたびれちゃったよ」

 

彼女たちの背中に初音ミクが声をかけると、4人は同時に驚いたように振り返り、一歌が目を見開いた。

 

「え...!?」

 

「いらっしゃい、4人とも」

 

「ミ、ミクちゃん!?」

 

まさに目が点になる、という状況なのだろう。

他の人たちも初音ミクを直接目にした時は驚いていたが、驚き具合で言えば彼女たちが1番な気がする。

 

「何これ。どういうこと?」

 

「ミクちゃんがいる...? これって映像、だよね...?」

 

銀髪と茶髪の少女も一歌たちと同様に驚いているらしく、茶髪の子は思わず、と言った様子で口に出していた。

 

映像、と言われた初音ミクは目を丸くして私の方を見た後、何か思いついたような笑みを浮かべて、4人に向けて手を出した。

 

「じゃあ握手してみる? ハイ」

 

「え...手?」

 

「やっと会えたね。一歌」

 

「さ、触れる...。ミクが、本当にいる...!」

 

初音ミクが出した手に1番最初に触れたのは、一歌。

架空の世界に存在していた初音ミクがこうして目の前で触れられると言う事に感激しているのか、笑みを我慢できないような顔で初音ミクの手をむにむにしていた。

 

むにむにされている初音ミクはくすぐったそうに困った笑顔を浮かべている。

 

そうして少しの間一歌が初音ミクの手を触っていると、唐突に一歌は初音ミクの方に顔を向けた。

 

「ねえ、もしかして夢に出てきてくれたミクなの? 私、聞きたいことがたくさん...!」

 

「私も聞きたいことがある」

 

その一歌の言葉を遮って入ってきたのは、どこか他人を寄せ付けないような雰囲気を出している銀髪の少女。

一体、過去に何があってこうなってしまったのだろうか。

 

「ここは一体、なんなの?」

 

「ここはセカイだよ。このセカイは、君たちの想いで出来た場所なんだ」

 

銀髪少女の問いに答える初音ミクの説明は、何度か聞いたことのある内容だ。

 

「想いで出来た場所?」

 

「そう。想いはあらゆるものを形に出来る。だから、こんなセカイにもなるし、歌にもなる」

 

そこで一旦言葉を止めた初音ミクは、教卓の上にある望遠鏡を触りながら、話を続ける。

 

「例えば、4人に見覚えのあるものもあるんじゃないかな」

 

ある程度把握している私だから何も言わずに聞いていられる内容だが、今初めて聞かされた彼女たちにはまだ、理解しきれていないようだ。

そして、銀髪少女が苛立ったような声をあげる。

 

「何言ってるのかさっぱりわからないんだけど。からかってるならいい加減に...?」

 

だが、その言葉は途中で勢いを失って止まった。

彼女の視線の先にあるのは、1つの楽器。恐らくベースと呼ばれるそれを見て、彼女の動きは止まった。

 

「え、もしかしてこれ、私の...? 今背負ってるのに...どうして...」

 

銀髪少女の言葉に反応して、一歌たちも周りを見て驚きの声をあげた。

 

「あ、私のギターも。...家に置いてあるはずなのに、なんで...」

 

「キーボードとドラムもある! なんだか、今からバンドの練習始めるところみたいだね」

 

そう咲希が言うのを聞いて、なるほど、と私は理解した。

 

この4人、過去にバンドを組んだことがあるのだろう。

だから、このセカイにこうやって、自分自身の道具が形になって置いてある。

個人でやっているのであれば、ここには出てこないはずなのだから。

 

となると、咲希の病気の話がますます気になるところだが、と考えていると、その本人が昔を懐かしむような声を出して、キーボードをなぞるように触れた。

 

「バンドかぁ。...ふふ、またみんなでやってみたいな」

 

だがその言葉には3人は反応することはなく、少しの間の後反応したのは初音ミク。

 

「いいよ、演奏したいなら。4人で好きに使って」

 

「え?」

 

「言ったでしょ? 一歌。バンドやってみないか、って」

 

どうやら初音ミクは既に一歌と出会っているようで、そんなことを言っていたらしい。

先程一歌本人が言っていた、夢の中の話の事かもしれない。

 

好きに使っていい、という許しが出たことで、咲希は満面の笑みを浮かべてキーボードの準備を始めるが、一歌以外の他2人が乗り気ではないようだった。

 

「ここで演奏していいの? じゃあやってみたい! やろうよ、みんな!」

 

「え? わ、私はちょっと...。この後友達と帰る約束してるし...」

 

「私もバイトあるから。大体、みんな知っててすぐあわせられる曲なんてないでしょ」

 

「でも、昔みんなで演奏した曲ならきっと弾けるよ!」

 

「あの曲は、確かに...覚えてるけど...」

 

諦めずに誘い続ける咲希の言葉に、茶髪の子は困ったような表情を。銀髪の子は気まずいような表情を見せた。

 

これなら断られない、と判断した咲希が「じゃあ___」と続けようとしたところで、銀髪少女がまたもや遮った。

 

「それより! そこにいるのは誰?」

 

彼女が指で示しているのは間違いなく私。どうやら自己紹介の時間が来たようだ。

 

「東雲瀬名。初音ミクの友達」

 

「え、ミクの友達...?」

 

「え~!? せなちゃん、いつの間にミクちゃんと友達に!?」

 

さて。今回の私だが、基本的にはこのセカイでのみ、彼女たちに触れあっていこうと思っている。

彼女たちの通っている学校は、制服を見る限り宮益坂女子学園。

そこに行くと、まふゆやみのりたちに出会う可能性がある。

みのりは現在大人気アイドルと言う事もあって学校にはいないかもしれないけど、まふゆに出会うリスクがある。

 

前回のみのりたちのセカイで、まふゆが私を覚えている可能性が...いや、あれは確定だ。私の事を覚えている。

それとまふゆの事を考えると、真面目に監禁されてしまう可能性が出てくるのだ。

 

と言う事なので、今回はセカイで彼女たちのサポート。

初音ミクと一緒に彼女たちを支えて行けば、何とかなるだろう。

 

「...日野森志歩」

 

「えっと、望月穂波です」

 

...これは驚いた。

まさか、あの日野森だろうか。

いや、恐らくそうだろうな。こんな狭い場所に日野森姓が複数もあってたまるか。

 

私が日野森に引っかかっていることに志歩も気が付いたのだろう。彼女はわかりやすく顔を歪めた。

 

そんな私たちの雰囲気を感じ取ったのか、咲希が間に入って先程の続きを話し始めた。

 

「じゃ、じゃあ、あの曲、やってみない? みんなわかるし、そんなに難しくないし、せなちゃんにも聴いてもらえるし。それに、ミクちゃんが歌ってた曲だし!」

 

「私が歌ってた曲? へえ。聴いてみたいな」

 

「ほら、ミクちゃんも聴いてみたいって言ってくれてるよ? いっちゃんは? やってみない?」

 

何とかみんなで演奏したい、という咲希の想いが伝わってくるような空気の中、一歌も首を縦に振った。

 

「私は...うん。やってみたい。みんなとあの曲演奏出来たら...いいな」

 

「ほら! いっちゃんはやるって! だからしほちゃんとほなちゃんも、やろうよ~!」

 

「私は帰る。それで、どうやって帰ればいいわけ? ミクが知ってるの?」

 

しかし、志歩は頑なに演奏をしようとしない。

一体、彼女の何がそうさせるのか。昔は仲良くて、一緒に演奏までしていたほどの仲だった彼女たちの間に、何が。

 

さっさと帰り方を教えろ、と言わんばかりに初音ミクを見る志歩だが、初音ミクは笑みを浮かべたまま、じゃあ、と提案を始めた。

 

「4人の演奏を最後まで聞かせてくれたら、帰り方を教えるっていうのはどう?」

 

「...何それ」

 

「ふふ。聴いてみたいんだよね。君たちの演奏」

 

これ以上何を言っても教えてくれないと悟ったのか、志歩は立てかけられているベースを肩にかけた。

 

「はぁ。...本当に、1曲だけだからね」

 

そうして、残る1人となった穂波も、流されるようにドラムが置かれている場所まで歩いて行った。

 

「久しぶりだから、上手く叩けないかもしれないけど...」

 

「やったー! みんなありがとう!」

 

弦を確かめるように弾き、力加減を思い出すようにスティックで叩く。

彼女たちの準備がある程度整ったタイミングで、初音ミクが口を開いた。

 

「それじゃあ聴かせてよ。4人の音」

 

一歌たちの演奏が始まる。

 

「よーっし、演奏始めよう! ...どうやって始めるんだっけ?」

 

...不安だ。




楽曲コードは検索しても出てきませんでした。悲しい。

私の大好きな曲です。
いつかプロセカに収録...望み薄...。

少女ライラと親愛なる色彩/jon-YAKITORY feat.IA
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