東雲家の末っ子。   作:水が死んでる

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誰か成人済みまふえなの話書いてくれ。

本編での問題がどう動くのかわからんけど。




誤字報告ありがとうございます。


第10話 Assignment

雲一つないような晴れ模様の中。

私は楽器店へとやってきていた。

 

店内は外と比べて多少涼しく、太陽に照らされて汗をかいた体が急速に冷やされるといったことはなく、私は安堵のため息を吐いた。

スマホのメッセージを確認すれば、咲希から『もう少しでつくと思う!』ときていた。

 

そう、私は咲希のシンセサイザー選びを一緒にしに来たのだ。

 

つくづく、私は変わったと実感する。ここまでアクティブであれば、もう少し私の肌も健康的な色になっていただろうか。

奏よりも白い肌というのは、引きこもって作業をしているはずの彼女よりも外に出ていないという事になるのだろう。

 

あぁ、いや。私の事はどうでもいいのだ。咲希の事だ咲希の。

 

咲希のシンセサイザーを選ぶのを手伝いに来たのは良いのだが、如何せん私が助けになれるかどうかと言う問題が出てくる。

こんなこれ見よがしなイベント、私抜きで行ったときに何か起きたら面倒だからこうして来ているのだけど...まぁ、それを考えたら一歌も力になれなさそうだから、3人揃って結局店員に聞くことになりそうだけど。

 

咲希と一歌が来るまで店内をぶらついていよう、と歩いていると、妙に見慣れた姿が目の前にやってきた。

 

「あ。...よくわかんない場所にいた人...人?」

 

もしかして:人認定されてない

 

「こんにちは」

 

「こんにちは...いや、そうじゃなくて。...もしかして、咲希とかいるの?」

 

はい。ここで問題です。

灰色の髪の少女、志歩に問われたことにどう返すのが正解でしょうか。

答えはわかりません。

 

「いや、いないけd」

 

「お待たせ~! 美味しそうなケーキ見てたら遅くなっちゃった!」

 

面倒ごとを少しでも回避しようとする私の癖が出た瞬間、後ろから咲希がやってきた。

タイミングが良かったのか、悪かったのか。

私が嘘を吐こうとしていたのに気づいたのか、志歩がジト目で私の事を見ていた。

 

これ以上見られたら私の体に穴が開いちゃう。

 

「咲希...一歌も...」

 

「しほちゃん久しぶり! あの不思議なセカイで会った後、全然あえてなかったよね。今日は何してるの? 買い物?」

 

「そうだけど...そっちは?」

 

「ふふん。こっちも買い物だよ~! 今日はシンセサイザーを買いに来たんだ!」

 

「...シンセ?」

 

咲希から買い物の目的を聞いた志歩は、シンセの名前を出しながら首を傾げて、すぐに思い至ったように目を見開いた。

 

「もしかして、バンドでも組むの?」

 

「正解! しほちゃんよくわかったね! アタシ達、バンドやります! しかもセカイにいたミクちゃん達が練習手伝ってくれるんだよ!」

 

「本気...? それに、ミクが練習をって...あんななんだかよくわからない場所でよくやる気になるね」

 

それは確かに。

この中の誰よりもセカイに触れているはずの私だけど、私もよくわからないっていうのが今の所の結論だ。

 

うん、と言う事は志歩も私と一緒か。

 

「そんなことないってば! とってもいい所だよ!」

 

まぁ、良い所なのは否定しないけど。

 

...そう考えると、それぞれのセカイって、構成している人間にとって良い所として存在している気がする。

今回の咲希や一歌たちのセカイだと、バンド練習するのに適している場所と初音ミクたち。

みのりたちで言えば、練習どころかライブの本番まで出来るような環境。

まふゆたちのあの場所が、4人にとってどう良い場所になりえるのかはよくわからないけど...まぁ、落ち着ける場所ということかもしれない。

 

そもそもあれか。セカイというのは、その人間たちの望んだ場所になるのか。

よく分からなくなってきた。

 

まとめれば、その人たちにとって嫌な場所にはなることはないってことかな。

 

じゃあ別に、よくわからない場所ではないか。

 

確かに私も、『自分以外はいらない』って、結局思っているのだし。

 

「ねえ、しほちゃんは今もベース弾いてるんだよね。バンドとか入ってる?」

 

「...その手には乗らないよ。私は誰かとバンドを組む気はないから。臨時でベースすることもあるけど...それだけ」

 

「そんな~! まだ何も言ってないのに~!」

 

「私は1人でいい」

 

「でも...アタシはもっともっと、しほちゃんと一緒にいたいよ! 一緒にバンドもやりたい! それに、ほなちゃんとも! 4人で一緒に!」

 

1人でいい、と言い張る志歩の顔を、真正面から見つめる咲希。

やがて根負けしたのは、志歩の方だった。

 

呆れたようなため息を吐きだし、眉根を下げた彼女は腰に手を当てた。

 

「咲希って、ほんと変わらないね。小学生の時からずっと同じ」

 

「え? 小学生の時って?」

 

「遊ぼうって毎日毎日しつこく言ってきたでしょ。私、ゲームしたいからって何度も追い払ったのに」

 

「そ...そんなにしつこかったかな...?」

 

「しつこい。うちのお姉ちゃんくらいしつこい。結局、私が折れるしかなかったし」

 

多分、他に姉妹が居ない限り、雫の事を言っているんだろうけど...まぁ、別に意外でもなんでもないか。

私やみのりだとか、人への触れ方を見ていれば予想もつく。

妹が大好きなんだろうなぁ、ぐらいは。

 

「う、ごめん...。でも、しほちゃんと遊びたかったんだもん」

 

だもん、なんて。さすが咲希ちゃん。なんか似合ってる。

 

「...中学の時、1度バンドに入ったの。軽音楽部の先輩に誘われて。まぁ1度も真面目に練習しなくて、ケンカになって。...結局追い出されたのは私。だから私は、誰かと一緒にバンドをやるとしても、本気でやりたい」

 

それを言い切った志歩は、肩にかけていたバッグからファイルを取り出して、咲希に手渡した。

 

「...これ、楽譜?」

 

「この曲、来週までに合わせられる?」

 

志歩のその言葉に、咲希と一歌はもしかして、という顔をして、志歩は若干顔をそらして腕を組んだ。

 

「それ一緒に弾けたら、考えてあげる」

 

「! ...うん、うん! 絶対弾けるようになる! 練習する! ね、いっちゃん!」

 

「う、うん!」

 

善は急げ、と言わんばかりに、志歩が目の前にいるのに楽譜を読み始める咲希と一歌を見て、志歩は一瞬微笑んだ後、すぐにいつもの顔に戻って背を向けた。

 

「じゃあ、私はこれで」

 

「うん! またね!」

 

志歩の背中が見えなくなるまで手を振っていた咲希は、興奮冷めやらぬまま私と一歌の手を取って上下に振り始めた。

 

「今すぐにでも練習しなきゃ! いっちゃん! 瀬名ちゃん!」

 

「うん。じゃあ、店員さん呼ぼうか」

 

「あ、そうだった! すみませ~ん!」

 

その勢いのまま、私たちの手を離した咲希は店員の元へと走りだし、あれこれと説明し始めた。

 

やれやれ、とは思うけれど、咲希のそれはこっちも元気になれるような明るさだ。

 

私の隣に立っている一歌をちらりと見ると、咲希のそれに感化されたのか、気合の入ったような顔つきをしていた。

これからの練習は、ルカのスパルタに拍車をかけることになるかも知れない。

私は多分、必要とされない限り演奏はしないけど。

 

1回くらいは、私のセカイで演奏してもいいかもしれない。




またレオニードも20話を超えそう。

そういえば、通算10万UAを超えてました。
皆様ありがとうございます。

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