少しずつの投稿となるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
魔法使い、迷い込みました。
ふと瞬きをすると知らない人に囲まれていた。なんて良くある転生ものみたいな導入を自分がすることになるとは思わなかった。
そもそも私の目の前にいたあのふんわりとした金髪の優男はどこに行ったというのか。
「そんなことある…?」
舌の上で困惑の言葉を転がしながら私を絡めとる謎の紐に目を落とす。どうしてこうなった?
紐の先は全身黒色でゴーグルを掛けた痩せ型の男が握っていて、肩には大きめのネズミが座っている。どうしてネズミがそんなところにいるんだろうか?
隣には金髪サングラスの浮ついていそうな男。この場所は会議室に見えるのにサングラスはありなのかとか余分なことを考えてしまう。
さらに隣に並ぶパワーショベルみたいな装いの上裸のお兄さんとか宇宙服の人とかガスマスクを着用している人とかなんだか風営法とかに引っかかりそうな服装のグラマーなお姉さんとかあまりにも服装が個性的すぎてどういう状況なのかが理解できない。
コスプレイヤーのオフ会かなにかかな?と思ったけれど、明らかにネズミが人形やネズミではなさそうな挙動をしている。あんなもの作れる人はコスプレイヤーにはならないよなぁと考えていたら、
「ところで君は一体誰なのかな?」
ネズミが喋った。
私は気を失った。
─閑話休題─
目が覚めた。
ネズミと黒髪の風営法に違反してそうな服装をした女性が私をのぞいていた。
「目が覚めたようだね。」
気を失う前に聞いたような声を目の前のネズミが発しているのを見て幻覚じゃなかったかと心の中で頭を抱えた。
あの
少しだけ心に余裕ができ、理解を超えている状況に、現状を把握しなければとようやく頭をまわした。
困惑顔であろう私に向かって白いネズミは気遣わしげに口を開いた。
「ここは雄英高校の保健室さ。君は突然現れて突然倒れたんだよ。」
雄英高校。響きに覚えは無い。
わざわざ高校名まで教えてくれるということは私が不勉強なだけで有名な高校なのだろうか?
白いネズミは続けてこう喋りだした。
「僕はこの高校の校長さ。彼女はミッドナイト。君の名前と
…個性?
個性ってなんだ?明るいところとでも言えばいいのか?幼馴染が気弱なせいで少し気丈なところもある。いや、普通取り調べでそんなこと聞かないだろう。アルバイトの面接じゃないんだから。
「個性ってなんですか?」
私はようやく口を開いた。開口一番で気の抜けた質問だなと頭の片隅で自分に突っ込んだ。
ネズミの校長先生とミッドナイトという女性が信じられないものを見るような目を私に向けつつ説明してくれたことをざっくり総括すると、「身体機能として普通の人間の枠を超えて行使できる能力」のことを個性と呼ぶらしい。
良かった。強いて言うなら明るいところですかね?とか答えなくて。
そう答えていたら気狂いか愚か者だと思われていたに違いない。
安堵したところでネズミの校長先生から質問が飛ぶ。
「ところで、君は個性というものを知らないのかい?どこから来たらその年まで個性を知らずに生きていけるのかな?」
ネズミの疑問も当然のものだと、私も思う。
お互いの認識のすれ違いを埋めるために、初めましてを始めようと私は背筋を正した。
「魔法使い派遣会社〈アストラル〉で庶務を担当しております、弓月と申します。以後お見知り置きを。」
ベッドの上だったので姿勢を正したところで格好はつかなかった。
─side校長
「魔法使い派遣会社〈アストラル〉で庶務を担当しております、弓月と申します。」
と目の前の少女は述べた。
「は…?」
ミッドナイトの疑問の反応を確認して、僕が理解できていないだけという可能性に取消線を引く。
突如会議室に現れた彼女が
「魔法使いというのは僕たちが思っているような大釜を混ぜて箒に乗って空を飛ぶようなもので間違いはないのかな?」
我ながら馬鹿馬鹿しい質問だなと自嘲したが、魔法使いという存在がそもそも馬鹿馬鹿しい存在だ。どうしようもない。
その質問に対する返答は思ったよりもはっきりしたものだった。
「魔術特性によっては空を飛べます。箒に乗るかどうかはモノによりますが。大釜を混ぜる魔法使いにはあまり会ったことがありません。」
私も飛べますよ。と付け加えて微笑を携えた少女に毒気を抜かれかけた。
「実演した方がいいならやりますよ。」
言いながら掛かっていた布団をばさりと捲り、少女はふわりと浮き上がった。
あとはこんなことも。と呟きながらあとで出そうと思って部屋の隅に置いていたティーポットからティーカップへお茶を注いで僕らの前に運ぶ。
浮遊だけ、遠隔操作だけならよくある個性だと思ったけれど、複合的な能力だ。
そして僕ならこの場で初対面の相手に対して手の内の全ては晒さないし、晒せない。
この子は放置してはいけないかもしれないなと注がれたお茶を飲み込みつつ心の中でひとつ決断した。
─side弓月
(
難しい顔(に見えなくもない、気がする。)で私が勝手に注いだ紅茶を飲み下しているネズミの校長先生と少し目が輝いて見えるミッドナイトさんを見つめつつ考える。
他の魔術特性でも良かったんだけど、これ汎用性あるし、起きたらコートを脱がされていたから手元に
でも他の手はできるだけ晒したくないよなぁと心の中で自分の手札をパラパラと捲りつつ、元の位置であるベッドの上に腰を下ろす。
「質問ばかりで申し訳ないのだけど、君は今いくつなのかな?」
「16です。」
ネズミの校長先生からの質問に素直に答える。
「じゃあどこからきたのかな?」
「住民票は東京都布留部市にありますよ。」
通勤が面倒で住居ごと
そんな現実逃避に心を割いていたからか、怪訝な顔をしたネズミの校長先生とミッドナイトという女性に気がつくのに遅れてしまった。
「疑うようで悪いんだけどね。」
そう画面を切ったスマホと一緒に前置きを置いたミッドナイトさんはこう続けた。
「
へ?と気の抜けた声が自分の喉から発せられた。
弓月ちゃんの下の名前が決まっておりません。