魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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ようやく原作に合流、したりしなかったりします。


魔法使い、筆記試験に挑みました。

入学試験の朝を迎えた。

緊張していたので少し早く目が覚めて、不安なところだけ教科書を眺める。

 

いつも通り軽く身支度を整えて、部屋の扉を開ける。

 

「おはようございま…スーツ、珍しいですね。」

家の主が格式ばった服装に身を包んでいるのが新鮮でつい目がいく。

 

「おはよう。入試だからな。受験生に恥ずかしくないようにってことだ。」

「先生方も大変ですね…」

 

ふぁとあくびをする消太さんに少し同情した。

 

炊飯器から二人分ご飯をよそって作り置きのおかずに加熱を施す。

おかずがあたたまったらそれぞれ盛ってダイニングテーブルに置く。

 

「いただきます。」

二人で手を合わせるのももうすっかり習慣だ。

きっと忙しい日もあるだろうに、消太さんは朝夜のご飯は私と一緒に食べてくれる。

 

飲み会とか、ないのだろうか。

それとも私がいるから行けてないのだろうか。

 

「ごちそうさまでした。」

と、また二人で手を合わせて、今日くらい俺が洗う。という消太さんのお言葉に甘えた。

 

外に出られるよう身だしなみを整えて、受験票に貼り付けた写真と同じように髪をくくる。

中学に通っていないので当然だけど、制服なんてないのでいい感じにかっちりしたセットアップをミッドナイトさんにあらかじめ見繕ってもらっていた。

 

鞄の中に受験票と、筆記用具が入っているのを確認した。

さっきまで机に出していたノートを2冊鞄に入れて、蓋を閉める。

 

ミッドナイトが買ってくれたお守りを両の手の平で包んで念を込めてからお財布の小銭入れのスペースに滑り込ませた。

 

「お待たせしました。」

流石に教師に送ってもらう入学試験受験者って裏口入学を疑われかねないよねという話になったので、少し早めに家を出ることになっていた。

 

「まだ時間はある。眠気覚ましに珈琲でも飲んでいけ。」

消太さんの両手にはそれぞれのマグカップ。

「いただきます。」

あたたかい珈琲が喉を通る。頭が少し冴えた気がする。

ご馳走様です。と言いながらマグカップを洗った。

 

「弁当だ。」

消太さんがずいと袋を渡してくる。

「え、消太さんがお弁当作ったんですか?」

髪の隙間から見える耳が赤い。

 

「ありがとうございます!」

「頑張れよ。」

ぐ、とガッツポーズしてもちろんです!と答えた。

 

想像よりも受験生らしき人が多かったので、校門より手前の位置で車から降ろしてもらった。

「頑張ってきます!」

いつもと違う行ってきますを告げると、消太さんはひらりと手を振った。

 

校門に向けて歩き出す。

ここにきてからこのレベルの人混みは初めてで少し緊張した。

人混みは、あまり得意じゃない。

 

ここにいる、校門に向かう人はみんな受験生なのか。と少し驚く。300倍の倍率は伊達じゃない。

すうと深呼吸をひとつして、前を見る。

 

ここが私の、ヒーローアカデミアになるかもしれない。

なってくれないと困る。

 

もうそろそろ私を正体不明の危険人物(アンノウン)から、何者か(ヒーロー志望)にラベルを貼り変えてくれ。

 

最初ほどガチガチじゃないけれど、未だ付く監視の目に慣れない私は正直早くこの状況から解放されたい。

 

別に、消太さんと離れたいとか、ミッドナイトさん、マイクさん、校長先生達が煩わしいというわけではない。

…たまには1人でお出かけして気まぐれに肉まんを頬張りたい。そんな日だって私にはあるのだ。

 

時代遅れの魔法使いはできれば注目なんてされたくないんですよ。と、昔周りにいた魔法使いたちに聞かれたら総スカンを喰らいかねないことまでうじうじと考えていたら校門に着いた。

 

受験票に書いてある部屋を探して入る。

黒板に貼られた席順を見て自分の番号の席を探して椅子に座る。

鞄から自分で最後の最後に取った要点用のノートを取り出して、ぱらぱらと捲る。

 

うん。大体頭に入ってる。大丈夫。

 

うわーやべえ!と言いながらノートや参考書をひっくり返す男の子が斜め前にいて緊張が少し緩んだ。

 

試験が始まった。

カリカリと複数の鉛筆が紙と机を引っ掻く音が教室を木霊する。

早めに回答が終わったので確認をして時間を潰した。

 

午前中の分は多分大丈夫。

午後一番の社会がやっぱり不安だなぁと、消太さんが作ってくれたお弁当の蓋を開く。

 

箸を手に持ってもくもくとご飯を食べる。

何の気なしに卵焼きに口をつけて、目を見張った。

 

…美味しい。

このあまい卵焼き。

一度、どちらかといえば、甘い方が好きなんですよね。砂糖たっぷり入ってるやつ。と話したのを思い出す。

 

俺はどちらかといえばしょっぱい方が好きだ。と呟いていたのに、私のために作ったのだろうか?

消太さんが卵焼きを巻けるイメージがない。

 

少しだけ焦げている表面を見て、心が温まった。

 

ごちそうさまでした。美味しかったです。と消太さんにメッセージを入れてから社会のノートを開く。

 

午後の試験も頑張るぞ。と気を引き締め直す。

 

全ての教科の筆記試験の結果はそれなりな気がした。

他受験生の出来にもよるけども、と注釈は入るけど。

 

思ったよりも応用、というか全く知らない話は出てこなかったので安心した。

やっぱり社会は自信ないなぁ。

 

鉛筆片手に凝った体をぐいーと伸ばす。

 

それでもまだ体が固まっている気がして肩をぐるぐると回した。

 

やっぱり人生かかってると重圧が違うよなぁ。

いうても受験だしみんな人生かかってるんだよね、と思い直した。

 

周りの人たちが知り合いだろう人たちと連れ立って出ていくのを横目に見ながらのんびりと帰り支度をする。

ここから私は受験生にも関わらず消太さんにつれて帰ってもらうために職員室に寄らなければならないのだ。

 

教室にいた受験生たちがいなくなったことを確認してジャケットを羽織る。

 

鞄とお弁当袋を手に取って教室の扉を開けた。壁があった。

「お疲れ。」

 

目の前に現れた黒い壁は消太さんだった。

人がいると思ってなかったのでばくばくと心臓が鳴る。

「わ、ありがとうございます。あまい卵焼き、美味しかったです。」

「ランチラッシュに教えてもらって、練習した。」

消太さんが卵焼きの練習をしている図が可愛らしすぎて笑みが溢れた。

 

「あとは実技だな。」

照れ隠しなのかこちらを見ない消太さんが話し出す。

ふと、彼の右手に握られているエコバッグに目が行く。

「朝それ持ってなかったですよね?」

 

消太さんが振り返る。

「ランチラッシュからカツ丼の差し入れだ。」

「お勉強初日を思い出しますね!」

心が躍った。

 

家に帰って、カツ丼を食べた。

あの時の味がする。美味しい。

 

「ごちそうさまでした。」

 

寝る支度をして、ストレッチをする。

結局戦闘訓練っていうほどの訓練はできなかったなぁ。

ちょっとだけ、筋肉がついた、だけ。

 

〈アストラル〉にいたときは鍛えても鍛えても筋肉なんてつかなかったから、進歩ではあるけど、うーん。微妙。

 

とりあえず、明日の実技試験はうまくいくといいんだけど、ね。

祈ったこともない神様に手助けしてもらいたくなった。

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