魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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魔法使い、意気消沈しました。

リカバリーガールの「あんたは治癒する必要ないさね。」という言葉で解放された私はそれはもうまっすぐに更衣室に向かった。

 

あーーー本当に最悪最後の最後に印象悪くない???

ひと仕事終えて倒れちゃいました!なんてどーう考えても人命救助、(ヴィラン)の退治、などなど大から小まで仕事がひっきりなしに入ってきてそれを安心安全快刀乱麻を断つように解決しなくちゃならないヒーローに向いてなさすぎる。

そして最も露呈させては行けないタイミングで露呈した。

 

あとお姫様抱っこって何?人生で初めてなんだけどほんと無理。俵担ぎとかにしてよ恥ずかしすぎる。初対面の子にお姫様抱っこされるの控えめに言ってやばすぎる。私が。

 

いやもう心の中だけでいいから言い訳させて欲しい。

最後のお邪魔虫(0ポイント)を持ち上げようとした時にはぶっちゃけもうガス欠だった。重すぎだよね。あれ、他のエリアのみんなどうやって倒したの?教えてリスナー…

 

その前にいっぱいロボットの電源切って破壊して積み上げてってやってたから結構集中力が切れてきてたし、いや、結局のところ言い訳なんだけど。

 

うわーん最悪。私が本当にみんなと同い年だったらわんわん泣いてた。

 

どうしてこう詰めが甘いんだろうか。

 

色んな人々にご迷惑をかけてこの半年を駆け抜けてきた自覚がある。だからこそ頑張ったし、頑張れた。

私が知らないところで多くの人が奔走したこともわかっている。

 

突然現れた人間の戸籍を用意するなんてどう考えてもただ事ではなかったはずだ。その上での養子縁組。どういった手順を踏んだのかもわからないくらい途方もない労力がかかってることは容易に予想できる。

 

きっとわたしには想像もつかない色々な苦労を、わたしには想像もつかないくらい色々な人に掛けているのに。

 

多分討伐ポイント以外にも評価点があるはずとちらっと思っていたはずなのにどうしてやらかしたんだろう。

 

「最悪…!」

両手で顔を覆って嘆いた。ロッカーとの距離がわからなくて頭突きしてしまった。痛い。

頭突きしたまま、ずるずると座り込んだ。

 

更衣室でジャージから昨日も着ていたセットアップに着替えている途中で漏れてしまった声は思ったよりも響いて周りの女の子たちからの視線が突き刺さった。

 

「す、すみません…」

恥ずかしすぎる。

 

「あ!さっきの子だ!ねえ、さっき助けてくれてありがとね!」

女の子の人混みの中からツノの生えたピンクの女の子が飛び出してくる。

 

ありがとうなんて言われることしたっけ?と記憶を掘り出す。

あ、

「足挫いてた子ですよね。ほっとけなかっただけだからお礼なんていらないですよ。怪我大丈夫ですか?」

「うん!リカバリーガールに直してもらえたよ!」

「そっかぁ、よかったですね。」

 

お邪魔虫(0ポイント)の足元でうずくまっていた女の子だ。

あの後の瀬呂範太くんが劇的過ぎて記憶からすぽんと抜けてしまっていた。

 

いやぁでも鮮やかに助けて貰っちゃったしお礼くらいしたくってと話す女の子。

周りの人たちが、え?あの子ってもしかしてお姫様抱っこされてたって子?お邪魔虫(0ポイント)倒したって聞いたんだけど…嘘だぁあんな小柄なのにそんな力どこにあるのさぁ増強系?いやでもあの子飛んでなかった?とヒソヒソし始めてすごく居た堪れない。

 

やめてお姫様抱っこっていうの恥ずかしいからほんとに

 

この視線から解放されたい。

 

「わたし、相澤弓月っていうの。もし、2人とも合格してヒーロー科で会えたら、仲良くしてくれますか?」

とちょっと早口に聞いた。

「もっちろんだよ!ちなみに私は芦戸三奈!」

グーサインが返ってきた。

 

「ねえねえ三奈、まだー?」

芦戸ちゃんのお友達は着替え終わったみたいで、痺れを切らして声をかけてきた。

 

「あ!ごめんねー!相澤ちゃんまたね!」

「またね。芦戸ちゃん!」

いやもう多分落ちてるからまたとかないかもだけど…とまたナーバスに引きずり戻される。

 

…着替え終わってしまった。

 

先生方になんて言えばいいんだろう。

塩をかけられたナメクジみたいな気持ちになってる。

 

とぼとぼと職員室に向かう。

とりあえずで扉をノックして、からからと扉をスライドさせる。

 

「おーーーおつかれ!イレイザーは今いないぜ!」

マイクさんが声をかけてくれる。

 

「ありがとうございます……全然ダメでした……」

おわっちゃったーぁあとひと息に吐いてマイクさんの椅子の近くにしゃがみこむ。

 

「時間作ってまで授業してもらったのに、すみません…」

「まぁだ結果はわかんねえだろ?」

マイクさんは私と向かい合うべく椅子を引きつつ首を傾げる。

 

「いやぁもう最後の最後に手酷すぎるやらかしをして…」

「あーーー!お姫様抱っこで運ばれて帰ってきたやつな!」

びし!と私の方を指差すマイクさん。

あれ?まって?

 

「見てたんですか?」

にやりとマイクさんが口元を釣り上げる。

「み・て・た!」

青春だねーー!とげらげら笑うマイクさんを見て恥ずかしさが再燃する。

 

ぷしゅぷしゅと湯気が上がってる気がした。

マイクさん以外の先生方からの視線が生ぬるいのはそれだったの?

嘘じゃん最悪ほんとに無理。

 

恥ずかしすぎて私の後ろの扉が開いたことにも気が付かなかった。

 

「あ、ちなみにだけどイレイザーも見てたぜ!」

なぁ!と私の後ろに向けて声を投げる。

 

「あぁ。」

ぐえ、最悪。

親子半年目にして思春期の気持ちを味わった。

 

「頑張ったな。」

消太さんの少し冷たい手が私の頭に置かれた。

 

「…っ、ごめんなさい。多分、実技試験、合格ラインに乗ってません。やらかしました。」

そのまま、言葉を繋ぐ。

 

「皆さんに助けていただいたのに、すみません。」

ぐ、と私の頭に乗った手に力が籠った。

 

一粒だけ涙が溢れた。

 

「まだ集計もしてないから、結果はわからない。でもとりあえず、お疲れ。頑張ったな。」

 

「ありがとう、ございます。」

マイクさんがティッシュを出してくれたので鼻をかんだ。

あまりにもしおしおとしていたせいか先生方で人垣ができてしまった。

 

「いや、な、お姫様抱っこくらいいいじゃねえか!減らねえし!実技だって頑張ってたと思うぜ…?」

「ゔ、お姫様抱っこなんてされたの人生で初めてだったんですぅう。」

「わ、悪い…」

パワーローダー先生の言葉で羞恥を思い出してよりしょげた。

 

「もう帰りたい…ふて寝したい…」

なんかもう悲しすぎてそう呟いた。

 

ふて寝するべく消太さんに連れて帰ってきてもらった。

「ありがとうございます…」

お礼を述べて靴を脱いで部屋に上がる。

 

「よく頑張ってたと思う。」

どうして消太さんって褒めてくれる時こっちをみてくれないんだろう。

ずるずるとしゃがみ込む。

 

「討伐ポイントはそれなりかなと思ってたんです。」

消太さんがこちらをみて続きを促す。

 

「でも、(ヴィラン)退治が終わりました。倒れました。じゃヒーローは務まらないですよね。」

「そうだな。」

消太さんはゆっくりと私の前に膝を折る。

 

「しかし、お前たちが受けたのは、プロヒーローの資格試験じゃない。ヒーローの卵を排出するヒーロー科に入るための試験だ。」

合否については、他との総合的な兼ね合いもあるからわからんが。と続けるあたりほんとに夢は見せてはくれないんだよなぁ。

 

目を擦ってる私に対して、

「ランチラッシュが、お前に飯、作ってくれてるぞ。」

と、ローストビーフ丼をダイニングに置いてくれる。

 

う、わぁ、美味しそう。

どんなに落ち込んでいても結局人は三大欲求には敵わない。

 

いただきます、と手を合わせ、もくもくと食べる。

「今日、お話できた子が二人いて、また会えたら、仲良くしてねって約束したんです。約束、守れるかなぁ。」

「守れるといいな。」

消太さんも黙々とご飯を食べていて、返事だけ返してくれた。

 

守れないよ。とも、守れるよ。ともはっきり言わないけど、私の合否はきっと最優先で採点されているはずだ。

 

だって私まだ疑われている。

 

わざわざ今の皆さんとの関係をぶち切って悪いことしようなんて思わないのになぁ、と思う。

 

ふぅ、と息を吐いた。

まぁ、なるようにしかならないよね。

ごちそうさまと呟いて食器を下げる。

 

「そういえば、明日からって私どうすればいいですかね?できれば体を鍛えたいんですけど…」

流石に体力不足が露呈してしまった今となっては結構深刻にトレーニングがしたい。

 

「明日学校行ったら校長に掛け合ってみる。それ次第だな。」

「よろしくお願いします。」

とりあえず、できることを、淡々とやっていこう。




弓月ちゃんスーパーうじうじタイムです。
なんだかんだで今の環境好きだし、捨てられちゃうのは困るし、迷惑かけた分は恩返ししたいのになって思っていたのにな。とへこたれています。
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