魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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魔法使い、入学準備をしました。

2週間も経てばそれなりにうまく自分の体を操れるようになってきた。

 

成果をお披露目したら、消太さんが俺のことでも動かしてみるか?と聞いてくるから首を横に振った。

うっかり他人をべきべきのぼきぼきにしてしまうと思ったら震える。

 

そのうちそれも練習してもらうから、覚悟を決めておけ。と言われたけど、全力で逃げたい。

 

 

それはさておき、私の穀潰しライフに対人格闘の練習が入ってきた。

変な癖がつかないようにと、空きコマで時間のある先生がトレーニングルームに来てくれて手合わせをする。皆さんが忙しい場合は1人でトレーニングする、という形だ。

 

基本的な戦い方は、消太さんに教えてもらって、そこからの応用は戦いながら調整する。これが意外と楽しくて心が躍る。

 

昔は隻蓮さんに五行拳を習っていたけど、よくわからなかった。

「魔法については随分器用だと言うのに、こと体術となっては適性がないと見えるなぁ。」

と快活に笑う虚無僧を思い出して少し眉が寄る。

 

オルトヴィーンからも気紛れに体術を教わったこともあったが、それもそれでからきしだった。

彼からの一言は私の心を随分と抉ったので思い出さないことにする。

 

今あの2人から教わったことを振り返って実践すれば、きっともう少し動ける気がする。

試してみたいな。強くなれるなら、強くなりたい。

 

 

ブラドキング先生の「操血」という個性は、私の騒霊現象(ポルターガイスト)の参考になるだろう。ということで重点的に私にあてがわれている。気がする。

 

「お前のその、魔法?というのは思ったよりも便利なものなんだな。」

とブラドキング先生は話す。

「…他の人との連携を考えると正直視認性がある方が便利かなって思います。」

思うところがあって、それだけ返した。

「隠密性でいうと視認性がない方がいいが…」

とブラドキング先生は眉を顰めた。

 

見えるか見えないかをこう、なんか、切り替えられたらいいのにな。と今こっそり練習している技には本当は視認性が欲しいと無い物ねだりをした。

 

 

そういえば、ブラドキング先生の個性をさらっと知っている通り、合格してからそれぞれ先生方の個性を本人達から教えてもらった。

たぶん、当面の危険性はない、と判断されたのだろう。

少しほっとした。

 

消太さんの個性は「抹消」というらしく、イレイザーと呼ばれていたのは、ヒーロー名(イレイザー・ヘッド)のことだったらしい。

いじめじゃなくてよかったと胸を撫で下ろした。

 

私が保健室で呑気にお茶を入れていた時に私の力を「抹消」しようとしたらしい。

それでも私の力は消えなかったために、これは個性じゃないのかもしれない。と思ったそう。

 

以前、魔法について懇々と説明した時に、消太さんだけが真面目に聞いてくれたことを思い出した。

 

 

そして、マイクさんの個性は「ヴォイス」というものらしい。すごい声が出せると思ってくれ!って言われたのでそう思うことにした。

…すごい声って何だろ?

 

 

ミッドナイトさんの個性も聞かせてもらった。「眠り香」。体から発せられる香りが人を眠らせる効果があるらしい。

気になっちゃったから使ってもらったら、一瞬ですやすやと寝た。

ミッドナイトさんは頭を撫でてくれていたみたい。目を覚ましたら時計の短針が4分の1進んでいた。

…流石に叩き起こして欲しかった。

 

 

──実際、これが何よりびっくりしたんだけど、ランチラッシュさんはクックヒーローなるものらしく、ご飯を作ることがヒーロー活動となるらしい。

 

洗濯ヒーロー、という人もいるらしいという話を聞いて、世界って、広いなぁ。と天井を見上げた。

理解するのを諦めたともいう。

 

 

エクトプラズム先生とは、多対一の戦いを実践することが多く、手合わせのタイミングをどうにか多めに作ってもらっている。

戦場で一対一になるなんて巌流島にでも流されない限りあり得ない、と思っているからこそ、今のうちに慣れておきたい。

全然慣れないけど。

 

13号先生は、自分の個性は危険だから。と手合わせはしてくれない。

「たまにはゆっくり休むのも学生のお仕事ですよ。」

と、宇宙服の影響で少しくぐもった声で言うものだから、13号先生との手合わせの時間は自動的に休憩の時間になってしまう。

 

 

「あれ、空だ。」

自主練習の時間中にボトルのドリンクが切れてしまった。

せめて水でもいいから飲みたい。と思い、自販機を求めて雄英高校の廊下をパタパタと走る。

 

「やぁ、君のこと、トレーニングルームでよく見かけるんだよね!」

と言う元気な声が後ろから聞こえた。

 

ん?

「私ですか?」

「君以外ここにはいないんだよね!」

 

周りを見渡した。確かに私と目の前の彼以外にはもいない。

「たしかに、そうですね。」

 

「俺は通形ミリオ。君は?」

「相澤弓月です。次の新入生、です。」

 

「そうなんだ!お茶いる?」

「?ありがとうございます。」

 

ちょっと話そうよ。とベンチをさされる。

「相澤さんさ、どうしてそんなにトレーニングしてるの?」

「え?」

私の疑問符は廊下の空気にぼんやり溶けた。

 

数瞬考えて、答えた。

「生きるため、じゃだめですかね?」

 

通形ミリオさんはにこりと笑ったまま何も言ってはくれなかった。

期待された答えではなかったのかもしれない。

 

どうしてヒーローになるの?じゃなくて、どうしてトレーニングするの?という質問の答え方が私にはわからなかった。

 

──その日のトレーニングはどうにも身が入らなかった。

 

 

それはさておいて、

入学前の準備だけど、思ったよりもやることが多かった。

 

制服の採寸には、ミッドナイトさんが付き合ってくれた。

この世界の採寸は、私の世界よりいろいろなところを測られる。

異形型と呼ばれる体に現れる個性があるからだろうか、尾骶骨まで触れられた時はいくら同性の方による採寸でも跳ね上がった。

 

本当に全身隅から隅まで撫で回された気がする…

耳の高さなんて制服のどこで使うの…?

ぐったりとしながら、ミッドナイトさんが買ってくれたチョコレートドリンクを啜った。

 

 

ついでに相談したヒーロースーツにこだわりがなさすぎて怒られた。

こんな感じのコートで。と言う一文とぺらりと添付した写真を見せたところ、

「え?そのコート何?ヒーロースーツでまでコートにする気なの?」

センスを疑われた。

 

「いやぁ落ち着くんですよね…」

「駄目ー!!!!もっと可愛いのにするわよ!」

と絵筆を取り出したミッドナイトさんを見て、お任せしようと決めた。

 

「できればポケットいっぱい欲しいです。」

とだけお願いしておいた。

 

…結局あれよあれよという間に私のヒーロースーツは膝丈スカートの軍服風?というものになったらしい。

 

太ももにホルスターを巻くことで収納性を損なわない上に可愛さは増えるという一石二鳥!って嬉しそうに話してたから多分そういうものなんだなぁ。うん。わかんない。

 

「ヒーロースーツどうなった?」

と聞く消太さんにデザインを見せたら、ミッドナイトさんとお話ししに行ってしまった。

 

「パンツスタイルも作ったわ…弓月ちゃんが選んでいいわよ…」

少し落ち込んだミッドナイトさんを見て、両方とも好きです。と笑った。

パンツスタイルと呼ばれた図面にある袖のカット部分はきっとミッドナイトさんの抵抗の証なんだろうな…

 

「じゃあ両方作りましょうよ!」

「ん?え?はい。いいんですか?」

「もちろんーーーーーー!」

 

というわけで私のヒーロースーツは2パターンできることになってしまった。

 

そんなことある?

たまに、消太さんがミッドナイトはお前を甘やかしすぎる。と呟くことがあるが、同感である。

 

でもお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなぁと思うと、どうにも失い難いのだ。

 

喜ぶミッドナイトさんを眺めて手放しがたいなと思った。




明日でようやく入学式です。
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