また、誤字脱字のご連絡もありがたいです。目を通しているつもりなんですけどね、粗忽者で申し訳ありません。
義父のことが頭によぎったその時に、
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ。」
と、消太さんの声が、教卓そばに落ちている黄色の芋虫から聞こえてきた。
何してるんですか?
消太さんはエナジー系のゼリーを一息に飲んだ。
いや本当に何してるの?
朝食べたじゃないですか。カロリーオーバーですよ、消太さん。
消太さんという人のことを私なりに半年間理解してきたはずだった。
その理解がガラガラと崩れていくのを私は悟った。
怖すぎる。私の記憶が正しければあの芋虫は私が教室の扉を開けた時にはもうそこに
頭が痛くなってきて、眉間に指先を添えた。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね。」
普段よりもテンションの低い消太さんを見て、これが先生モードなのかな。
現実を受け入れられなくなったのか芋虫だった父のことは横に置いて、思考が回る。
そういえば私、今この場所は消太さんのこと父だと言わない方がいいのかな?確認しておけばよかったなぁ。
寝袋から出て、消太さんが話す。
「担任の相澤消太だ。よろしくね。」
「相澤…?」
瀬呂くんが私の方を向いた。変な汗が出た。
ぎぎぎと油の切れた機械みたいに瀬呂くんから目をそらす。
「後からどうこうなっても面倒だから先に言っておく。そこの相澤弓月は俺の娘だ。」
ぐるんと消太さんに向いていた視線が私の方に向いた。
「そーなん?」
瀬呂くん、そんなに見ないで。
「い、一応、そうです…。」
「一応ってなによ…」
呆れたような瀬呂くんの表情を見て、いままさに私は自分の父をやってくれている人ことがよくわからなくなったところです。とはいえなかった。
「早速だが、これ来てグラウンドに出ろ。」
と言って消太さんはジャージをずるりと引っ張り出した。
いくら身内の寝袋とはいえ、人の寝袋から出てくるジャージちょっと嫌だなぁ…
…しぶしぶと受け取ったジャージは少し生ぬるかった。
男子更衣室、女子更衣室は隣同士にあるらしく、クラス全員で廊下を歩いている。
「廊下を歩くときは右側通行だぞ!」
と先頭の方で飯田くんが言ってる。今日も彼は元気だ。
「うち、麗日お茶子!よろしくなぁ。」
と
「私相澤弓月。実技試験の日の朝、転びそうになってた…緑谷くん?助けてあげてたの見てたから勝手に知ってる気持ちになっちゃってました。よろしくね。」
「いやぁ、あの後その緑谷くんに実技試験で助けて貰っちゃったんよ…」
と話す麗日ちゃんは可愛かった。
「…?実技試験何かあったんですか?」
「
それは、緑谷くんかっこいいな。いい人って感じ。
「だから知り合いっぽかったんですね。」
朝の教室前での彼ら二人のやり取りを思い出す。
「いやー!助けてくれたって言ったら私のことは相澤ちゃんが助けてくれたもんねー!」
と芦戸ちゃんがずいっと割り込んだ。
「あれはでも瀬呂くんがいてくれなかったら為す術なく沈没でしたよ。」
「まさか実技試験で共闘なんてするとは思わなかったよなー。」
と、瀬呂くん。
「ま・さ・かぁ、私の事助けてくれた可愛いヒーローがお姫様抱っこされて帰ってくるなんて思わなかったしねぇ?」
「ぐぬ。」
からかい顔の芦戸ちゃんに混ぜ返されて少し眉が寄る。
どうして私が実技試験で出会った子達は揃いも揃ってからかいっ子なんだろう?
「あれ、お姫様抱っこってことは相澤さん、仮想
鍛え上げられた身体が制服の上からも見て取れる短髪の男の子に声をかけられて、記憶を辿る。
「壊して積んで、はしてたかもしれません。」
とりあえずお姫様抱っこ=相澤弓月の構図をどうにかして欲しい。
「俺の中学のやつが同じ会場だったみたいで、少女漫画みたいだったって興奮して言ってたからすごく記憶に残ってる。俺尾白猿夫です。よろしくね。相澤さん。」
「羞恥心のあまり死にそうなんですけど…相澤弓月です。よろしくね尾白くん。」
彼の背面にしっぽが生えていることに今気がついた。
もふりたい、そのしっぽ。仲良くなったらもふもふさせてもらえるだろうか?
そう眺めていた尾白くんのしっぽの先にすごく大きい子がいた。
生身の人間でここまで大きい人は久しぶりに見たなぁ。遺伝子の大勝利ってこういうことなのかな、と
不躾だと分かってはいるが下から上へと視線を移す。
顔の下半分を覆うようなマスクを着用しているのは、何かを隠したいのだろうか?
隠し事仲間だなぁと勝手に親近感を覚えながら声をかける。
「背、大きいですね。私、相澤弓月です。」
「嗚呼、それなりにな。障子目蔵だ。よろしく頼む。」
もう私の背丈は伸びないだろうと、自分の体格の限界を理解しているからこそ、190cmにも届きそうな上背は私には眩く見えた。
「背が高いってことはきっとそれだけ遠くに手が届くってことですね。」
うらやましい、と呟いた声は、障子くんに拾われてしまったようだ。
「うらやましい、とはあまり言われてこなかったな。怖いとはよく言われるが。」
「あれ、そうですか?すごく欲しいですその体格。」
本当に羨ましい。私にその体格と力があれば、きっとあの子のことをもう少し守れただろうに。
私よりも後に来て、私よりも凄惨な目に合った弟弟子を思い出して、仄暗い光景を平穏な学校の廊下と重ねる。
「あ、ここやね、更衣室。」
という麗日ちゃんの声で、思考の海から引きずり出される。
更衣室へ入った。
制服の上着、スカート、ワイシャツ、キャミソールをロッカーに備え付けられたハンガーにかける。
4分丈のレギンスを履いたまま、ジャージのズボンに足を通す。
Tシャツをすぽりと被って、ジャージの上着のジッパーを上げる。
手首に巻いていたヘアゴムで髪を適当にくくる。
そういえば、まだお話していない子がふたり。
「あの、私相澤弓月って言います。よろしくね。」
と、黒髪が艶やかでグラマーな女の子の方を見る。
「わたくし、八百万百と申しますわ。よろしくお願い致しますわ。」
とても綺麗な所作に、
あとひとり。
女の子とは早めに挨拶を交わしたい。
さっきはそこにいたはずなのにいなくなっちゃったなぁと思っていると背後から
「けろけろ。」
と聞こえて、振り返る。
「わ、後ろにいたんですね。わたし、相澤弓月です。」
と、八百万さんと同じ言葉を繰り返した。
「けろ。蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで。」
蛙水…梅雨ちゃんはそう話す。
「わかりました。梅雨ちゃん。よろしくね。」
「よろしくね。弓月ちゃん。」
つぶらな瞳の梅雨ちゃんはけろ、と特徴的な声色で笑った。
「え?ずるーい!私のことも三奈って呼んでよ!」
と、芦戸ちゃんが後ろからのしかかってくる。
「三奈ちゃん…?」
「うわぁ!嬉しい!弓月って呼んでいい?呼ぶね!」
ふふ、可愛い。
「いいですよ。」
三奈ちゃんの満面の笑みに釣られて私の顔も笑顔になった。
「そろそろグラウンド向かわないと怒られちゃいそうだね。」
耳郎ちゃんの言葉で時計を見る。確かにギリギリかもしれない。
もっとみんなとお話してみたいけど、消太さんが遅い。と怒りそうな気がしたので、みんなでいそいそと更衣室を出た。
20話分、バタバタと投稿してようやく次で個性把握テストです。
昨日の投稿前はお気に入り90件くらいで、「いやぁこれでうっかり明日3桁とか行ってたらちょっとそれっぽいこと書きたいな!」とか思ってたら想像以上に通り越しててびっくりしました。ひゃ、ひゃくさんじゅう?何が起きたんですか?
信じられなくて12回くらい再読み込みしました。迷惑なユーザーです。いまだに信じられてません。
ちなみに書こうと思っていたちょっとそれっぽいことは一晩寝たら全部忘れてしまいましたので、今思っていることだけ。
自分が読みたいっていう衝動だけで書いている文字たちなので、誰にも読まれなくても私が好きならいいよね!という気持ちで書いていたのですが、お気に入りに入れていただき、評価や感想をいただき、誤脱まで教えていただいている今の状況に驚いています。とても嬉しいです。
ちなみに感想いただくとついつい数倍くらいの分量でお返ししてしまっているのですが、迷惑になってないでしょうか…大丈夫ですか…?
これからも本編では暗い影を落としつつ、ほのぼの続けていきたいと思っておりますので、気が向いた時にお読みください。