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魔法使い、個性把握テストに参加しました。
グラウンドでまた全員揃った私たちを胡乱げに見つめる消太さんは「個性把握テストするぞ。」と言った。
なんですかそれ。
「個性把握テストぉ?」
私だけが知らないわけじゃないみたいで安心した。
「入学式は?ガイダンスは?」
と聞く麗日ちゃんが可愛い。
楽しみにしてたんだろうなぁ。入学式。
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事、出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。」
固唾を飲むような音が聞こえた。
「お前達も中学の頃からやってるだろ?個性使用禁止の体力テスト。」
「未だ画一的な記録をとって平均を作り続けている。合理的じゃない。ま、文部科学省の怠慢だな。」
「実技入試成績のトップは、相澤。お前だったな。ソフトボール投げ何メートルだった?」
斜め上を見遣る。
「記憶にないです…。」
ソフトボール投げってやったことないな。と思う。
いまだにこう言った細かいところのギャップを感じる時がある。
「…んじゃあ2位の爆豪。中学の時ソフトボール投げ、何メートルだった?」
つんつんくんは爆豪くんと言うらしい。
彼は少し考えて答えた。
「67メートル。」
「そんな正確に覚えてるものなんだ…」
驚愕した。そもそも私はやった記憶すらないと言うのに…!
「普通覚えてっだろうがよ!」
あァん?と中指を立てる爆豪くん。活きがいい。
「じゃ、個性使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。思いっきりな。」
「んじゃまぁ、死ねぇええええええ!」
死ね?
ついうっかり拳を握って手のひらに爪が食い込む。
周りできょとんとするみんなを見わたして、過剰に反応するのも良くないなと思い拳を緩めた。
一つだけわかった。やはり、彼とは仲良くなれない。
全力で距離を取っていきたいので、絡んでこないでくださいと祈る。
「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」
消太さんの声で彼の手の中にある液晶を見る。705メートル。
さっきの60メートル台が普通だとするなら、すごいんだろう。
「705メートルってまじかよ。」
と金髪の子が呟く。
「何これ面白そう!」
芦戸ちゃんが楽しそうに声を上げる。
「個性思いっきり使えんだ!流石ヒーロー科!」
と瀬呂くんが拳を握る。
「面白そう、か。ヒーローになるための3年間そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」
消太さんがニヤリと笑う。あ、やばいやつだ。
爆豪くんへの怒りは取り敢えず忘れることにして、一歩だけ後退りした。
「よし、8種目トータル成績で最下位の者は見込みなしということで除籍処分としよう。」
ようやく入れたのに?本当に言ってる?
というか、みんな
「ま、待って!しょ、相澤先生!」
ずびしと手を挙げる。消太さんと呼びかけてとどまれた。危ない。
「なんだ。」
「わたし、その、ソフトボール投げ?やったことがなくて…」
あぁ…お前の記録そもそも残ってないもんな。あり得るか。と、消太さんが納得した。
「んな奴がこの世にいっかよ!おい先生よォ!娘だからって贔屓するってのか?」
と爆豪くんが噛み付くように叫んだ。うるさい。
さっき忘れようと思ったものがふつと湧いた。
彼らが元気にグラウンドを走り回っていたであろう年頃の自分を思い返して、そっと右手で太ももをさする。
「別に娘だからって言って贔屓するつもりはない。」
と爆豪くんに向けて話す消太さん。
「だが、やったことないってのは盲点だったな。相澤、全種目最後にやれ。そしたらやったことない種目あっても見れるだろ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
出席番号としては多分頭にやる予定だったであろう私は後ろに回してもらえた。
じっくり周りのやり方を見て、成績を残すついでに一種目でも爆豪くんに勝ちたいなと思う。
消太さんは髪をかき上げて言う。
「生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ。」
いやでも、と麗日ちゃんが反論する。
「最下位除籍って、入学初日ですよ。いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!」
「自然災害、大事故、そして身勝手な
そして、消太さんはこう締めた。
「さて、デモンストレーションは終わり、こっからが本番だ。」
頑張れる気がしない。
いやでも、初めてのテストってやつだし。
頑張れわたし。
胸元でふたつ、拳を握った。
第一種目:50メートル走
春の陽気と、グラウンドの砂埃を一身に受けて学校って感じがするなと思った。
「位置について、よーい」
どんと音がして、最初の2人が地面を蹴る。
飯田天哉くん、梅雨ちゃんの50メートル走を見て、飯田くんって足が速いんだな。と思う。
やっている人の個性わかんないと何やってるのかよくわかんないなぁ。
ベルトを巻いた男の子はビームを出して後ろへ進んだ、と思ったらころんで、またビームを出す。の繰り返しをしていた。
「1秒以上射出するとお腹壊しちゃうんだよね。」
と、彼は言っていた。
勿体無い…
出力の調整は可能なんだろうか?細く長くとか。無理?
爆豪くんは、手のひらから爆破を繰り出しているのか。
わざわざ手のひらを後ろに向けているあたりそこからしか爆破は繰り出せないようだ。
攻撃的な性格に合ってるよな。その個性。
他のみんなの50メートル走を見て、個性を使ってとなると前に進むだけでも結構バリエーションがあるんだなぁと思いながらスタートラインに立つ。
ぐりぐりと手首足首を伸ばしていると、
「思い切りやれ。」
と消太さんから声をかけられる。
「りょうかいです。」
もちろんそのつもりだと思いつつ、返事を返して、前を見た。
もうみんな走り終わったし、普通に走ってもおもしろくないよなぁと考える。
入学までの間、
全身の筋肉に
クラウチングスタートの体勢を取り、号令を待つ。
「位置について、よーい」
どんと音がして、私は、
そして、50メートルラインより奥に転がった。
肘の皮膚が少し削れた。ちょっと痛い。
50メートルくらいの短距離だと、走るよりももう自分を砲弾に見立てて射出した方が早かったし、派手でいい感じかなと思ってぶっ飛ばしてみたんだけど、流石に着地に難がありすぎた。
もう少し調整と練習が必要だな。と思っていたら記録が出た。
「2秒36」
上々かな。
「はァ?」
爆豪くんがアホみたいな顔してる。
にや、と笑ってみた。
お。目が吊り上がった。
「遊ぶな。」
べし、と消太さんに液晶でたたかれて、唇を尖らせる。
「遊んでません。すこぶる真面目です。」
そうこれは仁義なき戦いなのです。
消太さんはまたため息をついた。
第二種目:握力
握力ってそもそもわたしすこぶる芳しくなかった気がする。
具体的に言うと、両手共に10kg代前半だったはず。
体を強化したところでどの程度強くなるのだろうか。憂鬱だなぁ。
「すっげえ!540キロってあんたゴリラ???あ、タコか!」
と言う瀬呂くんの声で目をやる。
障子くんが540キロをたたき出しているのもはやCGか何かかな。と思いながら視界に収めていると、とても小柄な紫の男の子が、
「タコって…エロいよな。」
と呟いた。
…そういうものなの?
今回は腕だけでいいかなと思い、腕にのみ
右手の力を込める。
「74.1kg」
次、左手。
「95.9kg」
ちょっと力の配分を間違えたみたいであらぬ方向に曲がりかけた右腕をふるふると揺らしながら機材を消太さんに返す。
左手の方が筋肉痛になりやすいから力のこめ方わかってる感じするなぁ………本当は左右均等に動かせるようになりたいんだけど。
ちなみに今の目標は
なんか両利きって憧れない?
そんな他愛もないことを考えていたら瀬呂くんが話しかけてきた。
「相澤って、個性遠隔操作って言ってたよな?元々握力すげーの?」
「私本人の握力はあってないようなものですよ。10キロ代前半くらいしかないと思います。」
瀬呂くんは首を傾げた。
「じゃあどやったらあんな記録出んの?」
「あれはですね、
瀬呂くんは意味がわからない。と眉間に皺を寄せた。
できることを、少しずつ確実に。
この3年間で少しでも身につけたいと思っている。
私自身が本当にハンドボール投げをやったことがないです。
最初は過去編に繋げようと、全てやったことがないことにしようと思ったのですが、その方向で行くと弓月ちゃんが初手の50メートル走でスターティングブロックを丁寧に片付け始めるし、握力計の使い方間違えて壊したりしてしまって山から降りてきたゴリラ状態になってしまったのでやめました。