魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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第1回戦闘訓練編
魔法使い、お昼ご飯を食べます。


今日も朝が来てしまった。

昨日うっかり爆豪くんを煽ってしまったのでもはや学校に行きたくない。

 

「うう…起きたくない。」

唸りながらこれ私が不登校になってしまったら扱いどうなるんだろう?と考える。

いやいくらなんでも養ってもらっている以上は登校しなければ。

 

身支度をざっくり整えてリビングへ出る。

 

「おはようございます…。」

「おはよう。」

いつもの朝の定型文を交わして、小麦の焼けるいい匂いに気がつく。

 

「あ、昨日炊飯器つけるの忘れてました。すみません。」

そうだった昨日、炊飯器のスイッチどころかお米を研ぐのも忘れていた。

それで消太さんはパンを焼いているのだった。

「いや、疲れてたろ。気にするな。」

鳴き出したやかんを見て、珈琲でいいか?と聞かれる。

「お願いします。」

 

珈琲が入るまでに洗面台での用事を済ませる。

トースターがリンと鳴った。

 

ダイニングに座って、ふたりで手を合わせた。

 

さくりと焼けた食パンはマーガリンを少し塗ってキラキラと輝いている。

見て美味しいし、食べても美味しい。

幸せな朝だなぁ。と単純な頭が切り替わる。

 

「お前、爆豪と一悶着あったって聞いたぞ。」

「げほ。」

食パンのかけらが気管に入った。

どこから聞いたのだろうか。というかどこまで知ってるんだろう。

 

「なんかあの、彼どうなんですか。死ねとかくたばれとかくそとか軽率に悪意をばら撒かれるこちら側はたまったものじゃないんですけど。」

私が悪いわけじゃないと思うんだけどな。という意図を伝えるべく少し愚痴っぽく伝えてみる。

 

「まあ、あいつの性格にも難があるが、お前ももう少し大人になってやれ。」

 

「クラスメイトの肩が軋むレベルで握り込みに来る上に人のことクソアマとか呼びつけてくるひとに対してこちらが大人になってあげる意味がわからないです。」

「無理して仲良くしろとは言わないが、穏便に済ませろ。」

大人げないことなんてわかってるけど、腑に落ちないことはある。

唇を尖らせて善処します。とだけ返事をした。

 

「愚痴なら聞く。」

と一足先にトーストを食べ終わった消太さんの足が私の隣で止まった。

 

「…約束ですよ。」

少しぶすくれた顔のまま念を押した。

 

「あぁ、今日は送っていってやるからゆっくり食え。」

「ありがとうございます。」

 

ありがたいな、とおもいながら食べ終わった食器を、シンクまで運ぶ。

消太さんが洗ってくれていたので、今日の私は拭く担当だ。

 

食器をあらかた片付けてから、のんびり準備をした。

昨日は少しバタバタしちゃったなぁと反省する。

 

そういえばミッドナイトさんの香水つけたい。

香水を構えて、リビングへの扉を開ける。

 

「消太さん。香水って学校につけていっていいんですかね?」

思いっきり顔を顰められた。駄目らしい。

 

しょんぼりしながらノズルから指を離した。

残念…

 

車に乗っている間に少しだけ爆豪くんのことを愚痴った。

なんであんなに緑谷くんのこと目の敵にするんですかとか、

彼あんなに粗暴な性格でヒーローになれるんですかとか、

八つ当たりじみたことを後部座席から乗り出すようにしてぷちぷちと話した。

 

ずっと静かに聞いてくれていた消太さんはおもむろに口を開いた。

「そうすることでしか自分を守れないやつだっているんだ。」

 

まるではりねずみのようだ。

爆豪くん、髪もちくちくしてるし。

 

「はりねずみ爆豪くんに対しては、触らぬ神に祟りなし方式でやっていこうと思います。」

「それできるだけ関わらないってことか?」

わかりにくいな。と消太さんが言う。

 

 

校門前で車から降ろしてもらったところを障子くんと遭遇して、

「本当に相澤先生と親子なんだな。」

と少し驚いたように言われたのがむず痒かった。

 

「嘘だと思いました?」

「あまり雰囲気が似ているようには思えなかった。」

障子くん、君思ったよりはっきりもの言うね。

私もそう思いますよ。と笑って誤魔化した。

 

 

雄英高校ヒーロー科のカリキュラムっていうと、めちゃめちゃヒーローの極意とかを教えこまれるだけ!というイメージがあった。

 

実際のところの話だけど、午前中は完全に普通の必修授業だった。

マイクさんがすごく普通に英語の先生してるの、なんだかどうにも違和感があってにやついてしまった。

 

 

お昼休みになったので食堂に向かった。

 

「ごめん!今日は前の中学の子と約束してるんだよね。」

ぱちんと顔の前で両手を合わせる芦戸ちゃんに気にしなくていいのにと告げる。

 

「明日は絶対一緒に食べようね!」

と言って芦戸ちゃんはぱたぱたとお弁当を持って走って行った。

 

というわけでひとりだ。

瀬呂くんを誘おうかなとも思ったけど、彼だって男の子と仲良くしたいだろうし。

私の面倒ばかり見てもらうわけにも行かないしなぁ。

 

ひとりなのでのんびりと列に並んでいる。

 

「あれ、相澤くん。ひとりかい?」

「飯田くん。」

後ろから声をかけてきたのは飯田くんだった。

 

「もし、ひとりで食べるようなら一緒に食べないか?麗日くんと緑谷くんもいる。」

「いいんですか?」

もちろんさ!と飯田くん。

 

ならばと、ランチプレートを受け取って飯田くんについて行く。

 

「麗日ちゃん、緑谷くん。お疲れ様です。混ぜてください。」

「相澤ちゃんやー!お疲れ様。混ざって混ざってー!」

飯田くんが麗日ちゃんの隣に座ったので、緑谷くんの隣の席に座った。

 

「白米に落ち着くよね!最終的に。」

と、私たちが座るテーブルに来たランチラッシュがサムズアップしてる。

 

「弓月ちゃんはお昼それでよかったの?」

その言葉と共にランチラッシュはわたしのランチプレートをみる。

 

「ランチラッシュのご飯、よくいただいてるからまだ食べたことないやつが食べたくなっちゃいました。」

と、だし巻き卵の入ったランチプレートに視線をやった。

 

「卵焼きは甘い方が好きだってイレイザーから聞いてたけどなぁ?」

首を傾げたランチラッシュにこう答えた。

 

「あまい卵焼きは、わたしの中で特別なものになっちゃったので。」

ランチラッシュさんがへぇ、とからかい混じりの声を上げた。

 

「イレイザーの特訓に付き合った甲斐があったね。」

と言って次のご飯作りに戻って行った。

 

「あ、相澤さん!ランチラッシュと面識があるの?!」

緑谷くんは相変わらずわたしと話す時に吃る。

 

「はい、消太さんと二人暮らしなので、たまに夜ご飯持たせてくれるんです。」

初日にいただいた、あのサンドイッチの衝撃は忘れられない。

 

「ええー最高やね!ごちそうやん!」

麗日ちゃんの嬉しそうな声。

 

「初めて食べた時は本当にこの世にこんな美味しいものがあるのかと思いましたよ。」

びっくりしました。と少し目を丸くしてみせる。

 

「ところでな、相澤先生って卵焼き、ちゃんと巻けるん…?」

全然想像できん。と麗日ちゃん。

 

「綺麗に巻けてましたよ。私の筆記試験のお弁当のために練習したそうです。」

「あ、あのイレイザーヘッドが?!卵焼き…?」

ランチラッシュに気を取られていた緑谷くんがイレイザーヘッドの卵焼きに今更驚愕する。

 

「そうです。あの相澤消太が卵焼きです。いっぱいお砂糖が入ってるとってもあまい卵焼きですよ。」

本人はだし巻きが好きだって言ってました。と特に意味のない情報を添える。

 

「相澤先生がお弁当を詰めている姿、想像できないな。」

眼鏡の縁を反射させて飯田くんが思案顔をした。

 

「私も朝、お弁当箱を渡された時の衝撃はいまだに忘れません。」

あたたかい気持ちになって顔が綻んだ。

 

ほんとうにお父さんのこと好きなんやね。と麗日ちゃんは言ってくれた。

 

…そうなのかなぁ。

人としては間違いなく好きだけど、父としてはどうかと聞かれるとよくわからない。

 

 

「そういえば午後からのヒーロー基礎学ってどんなことやるんでしょうか?」

ずっと思っていたことを聞いてみる。

 

「うーんなんなんやろね?というか、相澤さんは学校の先生達と仲ええんやろ?聞いてへんの?」

真っ当すぎる疑問だ。

 

「基本的に普通の生徒と変わりない扱いですよ。皆さんが知らないことはわたしも知りません。」

番茶の入った湯呑みを両手で持ちながら微笑む。

 

「ううむ、これがヒーロー科の公平性か…」

飯田くんが顎に手をやる。

 

「まぁそもそもわたしだけ特別扱いされていたら、入試についても疑わしいものになってしまいますしね。」

 

他愛のないことを話していると、カツン。とヒールの音がした。

 

「あら?弓月ちゃんじゃない!お友達、ちゃんとできたのね。」

ミッドナイトさんだった。

 

「ミッドナイトさん!こんにちは。こちらが緑谷くん、麗日ちゃん、飯田くんです。」

「あら、次のお買い物デートは3人かしらね?」

ミッドナイトさんがウインクを放つ。

 

「…うえ?うちですか?」

麗日ちゃんが自らを指差す。

 

「ええ。機会があれば行きましょう。」

じゃあね、弓月ちゃん。みんな。といってミッドナイトさんは立ち去って行った。

 

「相澤くんはミッドナイト先生に可愛がられているんだな。」

と飯田くんが言った。

 

「ミッドナイトさん、すごく気にかけてくれるんだよね。」

お世話になりっぱなしなの。と呟いた。

 

そうこう話している間に、昼休みが終わるチャイムがなって、私たちはあわあわと教室に戻ることになった。




飯田くんってクラスメイトを複数人呼ぶときに50音順で呼びそうです。
クラス名簿が出たら絶対暗唱できるくらい読み込むタイプだと思います。

弓月ちゃんは目についた順に呼ぶタイプですが、今回はミッドナイトに紹介するために3人の名前を呼んだので、隣、斜向かい、目の前でぐるっと呼びました。相手の目線の動かしやすさ重視です。

お茶子ちゃんは同性→異性でそれぞれ親しみのある順だと思いますし、
緑谷くんはヒーローノートに書いた順だと思っています。
まだ全然クラスメイトのノートはまとめられてないでしょうから、今のところは親しみを感じる順かな?と思います。特に男女の呼び順は区別しなさそう。
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