魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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お気に入り、感想、評価、誤脱のご連絡ありがとうございます。
初めて評価10をもらって大前転しました。嬉しいです。


魔法使い、戦闘訓練の見学をします。

私以外のみんながくじをひいて、班わけはこう決まったようだ。

 

チームA、麗日ちゃん、緑谷くん

チームB、障子くん、轟くん

チームC、八百万ちゃん、峰田実くん

チームD、飯田くん、爆豪くん

チームE、青山優雅くん、三奈ちゃん

チームF、口田甲司くん、砂藤力道くん

チームG、上鳴電気くん、耳郎ちゃん

チームH、梅雨ちゃん、常闇踏陰くん

チームI、尾白くん、葉隠ちゃん

チームJ、切島くん、瀬呂くん

 

そしてついでに、

チームK、オールマイト先生

チームL、相澤弓月

ということになる。

自分で付け足していてひとりのくせにチームってなんだと思った。

虚しすぎる。

 

「すごい!縁があるね。よろしくね!」

と麗日ちゃんが緑谷くんにガッツポーズをする。

私もそういう青春っぽいことがしたいなぁとつま先を見る。

 

「最初の対戦相手は…こいつらだ!」

と、箱をガサガサと探るオールマイト先生。

 

出されたボールは、AとDだった。

 

「Aコンビがヒーロー!Dコンビがヴィランだ!」

 

つまり、1試合目は飯田くん、爆豪くん VS 麗日ちゃん、緑谷くん。

 

嫌な予感がした。

 

「他のものはモニタールームに向かってくれ。」

というオールマイトさんの言葉で、4人を残してモニタールームへ向かう。

 

「なぁ相澤。大丈夫なのか?サシでオールマイトとだぞ?」

と、心配顔の切島くんに声をかけられた。

 

「何も殺し合いするってわけじゃないんですから、大丈夫も何もないですよ。」

 

「いやでもどうなの?ヒーローの卵がナンバーワンヒーローとタイマンって……………というか相澤さん五体満足で帰って来れる…?」

と、金髪の子が話しかけてくる。

誰だろ?という疑問が顔に出ていたのかもしれない。

 

「ん、あぁ、おれ上鳴電気ね。よろしく!」

「相澤弓月です。よろしく。一応、手足繋がったままで帰ってくるつもりでいますよ。」

 

「それ、折れたりするのは許容範囲内ってこと…?」

うへえ、と口角を下げる上鳴くんに少し興が乗ってしまう。

 

「リカバリーガールもいますしね。骨の一本や二本で日本一に稽古をつけて貰えるなら安いものです。」

まあ、冗談なんですけど、一応怪我しないように祈ってて下さい。と添えたところ、絶対怪我しないでね?!?!と上鳴くんが叫んだ。ちょっとうるさかった。

 

Sault(やぁ)!僕は青山優雅!輝いているでしょ!」

Bonjour(こんにちは). 相澤弓月です。輝いてるかは分からないかな。」

青山くん、というきらきらしい子に話しかけられた。

 

「君…フランス語分かるの?」

「昔、欧州にいた事があって。ドイツ語フランス語なら日常会話くらいはできましたよ。全然使わないからだいぶ忘れちゃったかもしれませんが。」

magnifique(素晴らしい)!君とは仲良くなれそうだよ!」

 

青山くんはくるくると先を歩いていった。

マントは彼の動きを追うみたいにキラキラと輝いた。

 

やはりヒーロー科、キャラクターが濃いなぁ。

ちょっとめげそう。

 

 

どうやら、飯田くんと爆豪くんが位置についたようだ。

 

「それでは、Aコンビ対Bコンビによる屋内対人戦闘訓練、スタート!」

と、オールマイト先生がマイクに向かって声を吹き込んだ。

 

「さあ、君たちも考えながら見るんだぞ。」

モニタールームで待つ私たちにも課題を与えた。

 

ヒーロー側の2人は開いていた窓からの潜入を成功させた。

 

そもそも立てこもっている(ヴィラン)が窓を開け放しておくなんてことあるんだろうか。と考えつつ、モニターをぼんやりと眺める。

 

ヒーロー側の2人は廊下を進んでいく。

緑谷くんが前、麗日ちゃんが後ろを確認する形で前へ進んでいった。

 

爆豪くんが文字通り飛び出してくる。

初手から元気なことで緑谷くんに向けて爆破を仕掛ける。

 

緑谷くんが麗日ちゃんを庇うようにふたりで倒れ込んだ。

…読んでいた?

 

反射というには的確すぎる緑谷くんの行動に少し驚く。

 

「爆豪、ずっけえ!奇襲なんて男らしくねえ!」

と切島くんが拳を握った。

 

「奇襲も戦略。彼らは今、実践の最中だぜ。」

オールマイト先生がピシャリと言う。

 

ううん、個性ありの戦闘訓練ってこうなっちゃうのか。

ただの人間ひとり、存在しているだけで核弾頭になりうるというのは怖いものだな。と思う。

 

…今争奪戦している核に合わせて例えたわけじゃないことだけは弁明したくなってきた。

 

「緑くん、よく避けれたなぁ!」

という三奈ちゃんに

「多分、予想してたんじゃないですかね。」

と返す。

 

「爆豪が行った!」

予想?と首を傾げる三奈ちゃんに言葉をかけようとしたけど、上鳴くんの言葉でモニターに視線を戻す。

 

それはもう、悪人面の爆豪くんが大写しになっていた。

いいの?あれ。

ほんとにヒーローになれるの?

 

大きく振りかぶった爆豪くんの腕を、緑谷くんが両腕で掴んだ。

そのまま一本背負いを決めた緑谷くんを見てモニタールームに小さなどよめきが走る。

 

よく相手を見ている。

私にはできないことだなぁと思う。

 

攻撃が加えられそうなとき、つい目を閉じてしまいたくなる悪癖をやめなきゃなとひとつ自分の課題にチェックをつける。

 

構えている緑谷くんと地面に倒れ込んだ爆豪くんがふたことみこと話しているのをモニター越しに見る。

 

爆豪くんが立ち上がった。

ファイティングポーズを取る緑谷くんに対して爆豪くんは手のひらから火花を散らして、何かを怒鳴った。

 

別室にいるであろう飯田くんが少し慌てているように見えた。

…もしかしてこれ、爆豪くんの独断専行?

 

それなら、よろしくないな。と思う。

爆豪くんはなまじ()()()()()出来てしまうからこそ、自分の判断に迷いがない。

 

「爆豪のやつ、何話してんだ?定点カメラで音声ないとわっかんねえな。」

と切島くん。彼はなんだかみんなの疑問を言葉にしてくれる。

 

「小型無線でコンビと話していたのさ。持ち物はそれプラス、建物の見取り図、そしてこの確保テープ。」

 

白いテープをつまみ上げてみせるオールマイト先生。

彼が大柄だからか、あまりにも小さく見える。

 

「これを相手にまきつけた時点で捉えた証明となる。」

なるほど、巻けばいい。巻けばいいのか。

 

「制限時間は15分で、核の場所はヒーローには知らされないんですよね?」

と聞く芦戸ちゃんに対して、一言オールマイト先生が返す。

「YES!」

 

「ヒーロー側が圧倒的に不利ですね。これ。」

と芦戸ちゃんが思案顔をする。

 

「ピンチを覆していくのがヒーローさ。」

そう言いながらオールマイト先生は私たちの方へ向き直る。

 

「それに、相澤先生にも言われたろ?あれだよ。せーの!」

 

皆が拳をつきあげる。

「Plus Ultra!」

 

私はちょっと置き去りになった。

油断していた…。

 

「ムッシュ、爆豪が!」

と青山くんがモニターに促す。

 

爆豪くんが、仕掛けた。

麗日ちゃんが走り去って行くのを見逃した。

 

彼は緑谷くんしか見えていない(麗日ちゃんが目に入っていない)

 

緑谷くんが、確保証明のテープを爆豪くんに巻こうとしている。

あれ、もしかして消太さんの真似?

そうだとしたら緑谷くん、少なくとも戦略の柔軟性においてはこのクラスの中で突出している。

 

爆豪くんの攻撃をまたも読んでいたのか、緑谷くんは確保テープを巻き付けることを諦めて横に抜ける。

 

「すげえなアイツ。」

とプロレスラーのようなコスチュームに身を包む男の子が言った。

 

「個性も使わずに入試2位と渡り合ってる!」

瀬呂くんの言葉に、確かに凄いよな。と思う。

 

緑谷くんは背を向けて逃げだした。

それを追いかける爆豪くん。

 

撒かれたのか、爆豪くんは叫んだように見えた。

短絡的すぎる。

 

「なんかすっげえイラついてる。怖っ。」

と上鳴くん。

 

何があったんだろうあのふたりに、と思い目を細めた。

そんな間に、麗日ちゃんが飯田くんの元にたどり着いたようだ。

 

なぜか麗日ちゃんが吹き出した。

何事?

細めた目は丸く開いた。

 

最初に見た時よりもあの部屋、すごく片付いている。

飯田くん、もしかしてこれ全部片付けたのか。マメだ。マメすぎる。

 

 

ふと、もうひとつの戦いに目を移すと、逃げ惑っていた緑谷くんの背後に爆豪くんが歩を進めたところだった。

 

爆豪くんの篭手が鈍く、赤く光る。

 

確保証明のテープを両手で張る緑谷くんに向けて爆豪くんは篭手の引き金を引く。

 

まずすぎないか。

がたりと立ち上がる。

 

「爆豪少年!ストップだ!殺す気か!」

オールマイト先生の声が荒れる。

 

「緑谷くん」

届かない声を空気に溶かした。

 

緑谷くんが吹き飛んだ。

 

「そこまでするか。」

弟弟子のように蓮っ葉な口調を繕いきれなかった。

喉の奥で唸るように出てしまった声だったので、多分周りには聞こえていない、はずだ。

 

「少年!緑谷少年!」

とオールマイト先生がマイク越しに声をかけているのを耳に入れつつ、私は自分の眼差しがどんどん冷えていくのを感じていた。

 

爆豪くんは倒れ伏した緑谷くんに向けて歩んだ。

 

核のあるエリアで麗日ちゃんは勝負に出たらしい。

頭を切りかえてそちらに目を向ける。

麗日ちゃん、自分のことも浮かせられるのか。

 

確保、という所で飯田くんが核を持って走り抜ける。

こう、やっぱり、私や麗日ちゃんみたいなスピードのないタイプだと飯田くんのスピードは天敵なのかもしれないな、と考えた。

 

たたかうなら、どうしようか。

つま先は踊らなかった。




弓月ちゃんにとって、明確に嫌いなタイプの人間がいます。
ひとりは、軽率に他人に悪意を振り撒く人間。これはもう明らかに爆豪くんです。
もうひとりは、自分の立場を全うする気のない人間です。
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