魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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魔法使い、戦闘訓練の見学をします。

「先生、もう止めた方がいいって!爆豪アイツ相当クレイジーだぜ!殺しちまうぜ!!!!!」

と切島くん。

 

「いや…爆豪少年、次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする!」

とオールマイト先生は注意だけを出した。

どうして止めないんだろうか。

 

「屋内線において大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く。ヒーローとしてはもちろん、(ヴィラン)としても愚策だそれは!大幅減点だからな!」

という言葉に肩を揺らす爆豪くん。

 

そのまま緑谷くんに特攻。と思いきや爆破で彼の上を超えて、緑谷くんの背中を爆破する。

無駄に器用。

無駄に有能。

そう、無駄に。

 

「考えるタイプには見えねえが、意外と繊細だな。」

と轟くんが言う。

 

「どういう事だ?」

と切島くんは轟くんを振り返る。

 

「目くらましを兼ねた爆破で軌道変更。そして即座にもう一回。」

 

「慣性を殺しつつ有効打を加えるには、左右の爆破力を微調整しなきゃなりませんしね。」

と、八百万ちゃんが轟くんの言葉に続けて補足した。

 

「才能マンだ、才能マン。やだやだ…」

と上鳴くんがぼやく。

 

爆豪くんが緑谷くんを翻弄する。

先程の一本背負いを根に持っていたのか緑谷くんを地面にたたきつけた。

緑谷くんが勢い余って地面から宙に浮く。

 

「リンチだよこれ!テープ巻きつければ捉えたことになるのに!」

「ヒーローの所業に在らず。」

三奈ちゃんと、鳥の頭をした少年が言う。

 

「緑谷もすげえって思ったけどよ、戦闘能力において爆豪は間違いなくセンスの塊だぜ。」

上鳴くんは少しわくわくしたように言う。

 

私は、またもやため息をついた。

 

「相澤は爆豪についてどう思う。」

と障子くんに聞かれて靴のつま先を見つめたままこう答えた。

 

「稚拙で短絡的かと思えば、案外自分の個性の有利を押し付ける戦い方ができるんですね。あの個性がどこまで成長するのかも私には想像がつきませんが、現段階ではあの篭手さえ奪ってしまえば遠距離は無いと思うので、遠距離系の個性さえあれば遠くから削り切れるはずです。」

 

落ち着かず、つま先は地面をこつこつと叩いた。

 

「遠距離のカバーをコスチュームに組み入れているあたり、自分でも自覚してるようですし、そのうち改善してくるかもしれません。こと、戦闘におけるセンスだけなら上鳴くんが言うように突出していると思います。いじめっ子は人の嫌がるところをよく見ているというようなことかもしれませんね。」

つま先から隣に寄りかかる障子くんの顔に視線を上げた。

障子くんは続きを促すように頷いた。

 

「出来るのであれば彼の前で自分の個性は晒したくないですね。割と早い段階で弱いところを突かれそうな気がします。」

これが個性じゃないとバレてしまいそう。ということは隠しつつ、こわいですね。と締めた。

 

そうか、ありがとう。と障子くんが満足したようなのでモニターに視線を戻す。

 

みんながこちらを見ていたようで、全員の首がモニターに戻っていくのが見えた。

 

「障子くん。」

ちょいちょいと障子くんにかがんでもらって彼の耳元に唇を寄せる。

「もしかしてみなさん聞いてました?」

「嗚呼、気がついてるものと思っていたが。」

と障子くんが耳打ちに答えてくれる。

 

いや、気がつかないです。

 

「案外周囲の気配には疎いんだな。」

と言われたけど、私は超人ではありません。

 

 

そうしている間にも緑谷くんは爆豪くんから逃げていた。

 

「男のすることじゃねえけど仕方ねえぜ。しかし変だよな。なんで…」

と切島くんは言うけれど、あれは本当に逃げなのだろうか?

 

緑谷くんが、ここに来てようやく個性を使う。

このタイミングを待っていたのもしれない。

にしても、爆豪くんを捕縛できそうだった時にやればいいのに。と少し思った。

 

ソフトボール投げの時の緑谷くんの剛力と、爆豪くんの爆破。

下手したら粉塵爆発。

大した効果はないだろうけど、とりあえず耳を塞いだ。

 

「やばそうだってこれ!先生!」

と叫ぶ切島くんに、ぐぬと唸るオールマイト先生。

なんだか煮え切らないオールマイト先生に少し苛立ちを覚える。

 

「双方、中…」

し、といい切る前に、緑谷くんが何かを叫んだ。

 

麗日ちゃんが柱に抱きついた。

柱…?

 

彼の拳は、爆豪くんではなく、天井を穿った。

柱が、壁が、崩れる。

 

麗日ちゃんが崩れた柱を振り回して、飯田くんが自分の顔を庇った隙に自らの体を浮かせて核を奪う。

 

麗日ちゃんのそれ、体の負担が大きいからやりたくないのかなと思っていたのだけれど、2回も使えるのであればそうでも無いのかなあ。

 

でもそれなら幅跳びとかで使えばよかったのに。

 

そして、破壊神と化した緑谷くんは右腕をボロボロにして、左腕を火傷でいっぱいにして、ビルはおろか自分のことまでボロボロにして倒れ伏した。

 

「ヒーローチーム、WIN!」

と叫ぶオールマイト先生に、今そこじゃないでしょ。と思った。

 

麗日ちゃんは吐き気に耐えているようだ。飯田くんが介抱しているのをモニターで見た。

なるほど、それなら幅跳びごときじゃ使いたくないよなと納得した。

 

「負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてら。」

呆然とした声が聞こえる。

 

「勝負に負けて、試合に勝ったというところか。」

と、鳥の頭の少年が言う。

 

「訓練だけど。」

と梅雨ちゃんがすかさず突っ込む。

 

現地に赴くオールマイト先生は緑谷くんが運ばれていくのに立ち会っているようだ。

 

そう考えている間に、オールマイト先生と、訓練を終えた緑谷くん以外の3人が帰ってきた。

 

「まぁ、と言っても、今戦のベストは飯田少年だけどな。」

みんなはどよめいて、飯田くんも言葉にならない叫びをあげている。

 

「勝ったお茶子ちゃんか、緑谷ちゃんじゃないの?」

と梅雨ちゃんが聞く。

 

「うーんそうだなぁ。なぜだろうなぁ。分かる人!」

考えを促したいのだろうと思うが、ゆるい言葉を発するオールマイト先生に少し苛立ちが募る。

 

「はい、オールマイト先生。」

八百万ちゃんが手を挙げる。

 

「それは飯田さんが、一番状況設定に順応していたからです。」

 

「爆豪さんの行動は、戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先ほど先生がおっしゃっていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。」

爆豪くんはただ、敗北の悔しさに震えているようだった。

 

「緑谷さんも同様。受けたダメージから鑑みてもあの作戦は無謀としか言いようがありませんわ。」

 

「麗日さんは中盤の気の緩み。そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを核として扱っていたらあんな危険な行為はできませんわ。」

そこまで言った八百万ちゃんは、飯田くんに目を向けた。

 

「相手への対策をこなし核の争奪をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後対応に遅れた。」

飯田くんはパァと顔を明るくした。

初めて彼の年相応な反応を見た気がして、微笑ましくなる。

 

「ヒーローチームの勝ちは訓練だという甘えから生じた反則のようなものですわ。」

そう言って八百万ちゃんは締め括った。

 

「ま、まぁ、飯田くんもまだ硬すぎる節はあったりするわけだが、まあ、正解だよ!」

オールマイト先生は少し口ごもりながら八百万ちゃんにグッドサインを贈る。

 

八百万ちゃんは腰元に手を置いてさらに続けた。

「常に、下学上達。一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので。」

その表情にはヒーローになるんだという使命感と誇らしさが滲んでいるように見えた。

 

「よーしみんな。場所を変えて第二戦を始めよう。」

そう言ってオールマイト先生は、くじの箱を取り出す。

 

「今の講評をよく考えて訓練に励むように。」

と付け加える。

 

生徒たちのはい!という返事の中に爆豪くんの声はなかった。




戦闘訓練ってどうにも爆豪くんの株が暴落するなぁと、書きながら思いました。

勝つために手段を選ばないことは悪いことではないけれど、相手を叩き潰すために手段を選ばないことは少し違うので。
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