魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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おきにいり、評価、感想、誤脱のご連絡ありがとうございます。

もともとあまり自分の心持ちをお伝えするのが得意ではなく、感想、少しお返事に時間をいただいてしまうのですが、ちゃんと返させていただこうと思っております。(14時時点に確認したご感想については全て返信させていただきました!)
でも励みになるし嬉しいのであたたかいご感想をいただけると嬉しいです。


魔法使い、目のやり場に困りました。

2試合目は障子くん、轟くん VS 葉隠ちゃん、尾白くんに決まった。

 

葉隠ちゃんがグローブと靴を脱いでいるのをモニター越しに見て、それは倫理的にどうなの?と首を傾げている。

 

「それでは屋内大人戦闘訓練、第二戦スタート!」

というオールマイト先生の声で訓練は始まった。

 

ヒーローチームの障子くんの複腕の先端の形が変わる。

 

耳?

結構画質のいいモニターが障子くんの腕の先が耳の形に変化したのを鮮明に映し出した。

 

私が思っている以上に、彼の個性は人を助けることに向いていそうだなと思った。

うらやましい。

 

最初は体格をみて羨んでいたけれど、個性まで人を助けるのに向いている彼は、ヒーローにおあつらえ向きだ。

 

 

私はミッドナイトさんの個性を、優しい個性だなと思ったのだけれど、彼の個性もきっと優しいんだろう。

 

別の腕の先端が口の形に変わって、轟くんに話しかけている。

 

轟くんひとりが数歩だけ中に歩む。

障子くんは反対にビルから外に脱出した。なぜ。

 

その答えはすぐに身をもってわかった。

「は?」

轟くんがビルを丸ごと凍らせた。

 

…寒い。

壁にもたれてモニターを見ていた私が悪いのだけど、壁をつたって冷気が回ってくる。

寒すぎて壁から離れる気力もないままずるりと体育座りをする。

 

尾白くんと、葉隠ちゃんは轟くんの氷に足を取られてしまったのか何もできないまま轟くんに核を取られる。

 

そのまま轟くんは自分で凍らせた氷を溶かす。

季節感を間違った服装で出かけちゃった時でも、温度調整が楽そうでいいなと思った。

 

ここまで個性を見せてくれた人たちの中で段違いで個性を使った時の規模が大きい。

もしここから彼と戦うことになったらどうしようかなぁ。

遠距離から削るべきなのか、近距離まで潜り込んで拳にものを言わせるべきなのか。

 

…にしても芯まで冷えちゃったからかすごく寒くて、考えがまとまらない。

デザイナーさんの計らいでつけてもらったマントにくるりと包まった。うう、少しだけ暖かいのは、マントが暖かいのだろうか。それともこれを作ってくれた方たちの優しさの温もりなのだろうか。

 

みんながどよめいているのを、ぼんやりと聞く。

 

尾白くんと葉隠ちゃんが震えながら戻ってきた。

葉隠ちゃん、ほぼ裸だもんなぁ。

 

「ふたりとも寒くないですか?だいじょぶ?」

寒くて舌が回らない。

 

「相澤さんもすごい寒そうだね。」

「さむ、いですけど、だいぶましって感じです。くまみたいに冬眠したくなってきました…」

凍傷にはなってないですか?と聞くと、割とすぐ溶かしてくれたから大丈夫。と答える葉隠ちゃん。

 

手袋がカタカタと震えているのが見える。大丈夫じゃないじゃないか。

ぷちと肩口のスナップを外して、マントをコスチュームから外す。

 

「葉隠ちゃん。使ってください。」

「ええ?でも、相澤ちゃんも寒いって言ってたじゃん…」

言いましたけど、靴と手袋以外布を纏っていない女の子を目の前にして(見えないけど。)、私だけマントでぬくぬくするって言うのは人としてやばくない?

 

「尾白くんも冷え切ってしまっているところ申し訳ないんですけど、私も尾白くんも葉隠ちゃんより遥かに布あるので…あとちょっと見えないからと言って心理的に目のやり場に困っちゃうので、羽織ってて欲しいです切実に。お願いします本当に私のためにも。」

尾白くんも上半身ほぼ出てるような柔道着スタイルなのだけど、もうそこは前を閉めてどうにかしてほしい。

どうしてこうもコスチュームの露出度が高い人が多いんだろうか。

 

「う、ありがとう…」

とりあえず、全裸に等しいと周囲に露呈してしまっている葉隠ちゃんを布で覆うことに成功した。

ふうと、心の中で汗を拭ったところでいまの葉隠ちゃんとのやりとりで少し体温が上がったことに気がついた。

 

「尾白くんも、風邪ひかないように前閉めてくださいね。」

「ん、あぁ、ありがとう。…ところで俺も目のやり場に困る対象だったりする?」

 

「すごく。」

うわごめん、と言いながらいそいそと前を閉まってくれる。

ありがとう尾白くん。

でも実際のところ他の人たちの露出度もあんまり低くないからそこまで気が休まらないな。

 

とりあえず葉隠ちゃんとの小さな争いで上がった熱を逃さないように体育座りに戻った。

さむ。

 

マントの温もりは偉大だったようだ。

 

 

ぼんやりしていたら3回戦のメンバーが決まっていた。

という言い方ならまだいいのだけど、私は結構ずっとぼんやりしていたので結局なんだかよくわからないままに最終講評まで来てしまった。

 

「なぁー見てた?俺らの勇姿。」

「とうみんしたいきもちとたたかってたらおわってました。」

ぽすぽすと額を人差し指で突いてくる瀬呂くん。

 

コツコツと突かれているとなんだか脳が揺れる気がした。

揺れているせいで回らない呂律で素直に答えたところ、普通に強めに小突かれた。

 

「いたい。」

額を抑えてひとり呟いた。

 

「というか、弓月。最後オールマイトとやるんでしょ?大丈夫なの?」

「演習場に向かってる間に作戦考えます。」

揺れなくなったのでしっかりした呂律で三奈ちゃんの言葉に返事する。

 

「軽い組手とかアップやりたいなら俺、手伝うよ。」

と尾白くんが申し出てくれる。

 

「お言葉はありがたいんですけど、生身だと多分尾白くんにひとひねりでダウンさせられちゃいます。個性はできれば節約しておきたいですし。」

と、お断りを入れてぐ、と体を伸ばす。

 

「とりあえずみんな、お疲れさん。緑谷少年以外大きな怪我もなし!しかし真剣に取り組んだ。初めての訓練にしちゃあみんな上出来だったぜ。」

 

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業、なんか拍子抜けというか…」

梅雨ちゃんが肩を落とす。

 

真っ当かなぁ。

私はずっと緑谷くんと爆豪くんの戦いが引っ掛かっている。

 

「真っ当な授業もまた、私たちの自由さ!」

 

オールマイト先生の瞳がこちらを向く。

「じゃぁ相澤少女。準備はいいかい?」

「いつでもどこでも大歓迎です。」

ぐ、と腕をのばしてオールマイト先生に返事をした。

 

「あ、相澤ちゃん。マント返すよ…」

葉隠ちゃんが畳んでくれたらしいマントを差し出してくれる。

 

「引き続き目のやり場に困りますし、まだ冷えてると思うので風邪を引かないためにも羽織っててくださいお願いします。」

いくらなんでも男子率の高いモニタールームで手袋と靴しか着用してないなんて子、いたらまずいから…!

 

「う、分かった。ありがとうね!」

「…出来れば早急にコスチューム作ってください。」

私の言葉に葉隠ちゃんが首を傾げ、ているような気がした。

 

「透明になるコスチュームなんてあるのかなぁ?」

「研究は必要になりそうですね。」

とりあえず行ってきますね、と声をかけて演習場所へ向かう。

 

「なぁマジで緑谷みたいな怪我すんなよ!!?」

後ろから上鳴くんが叫んでいるのが聞こえた。

 

怪我は、するかもしれないなぁ。

ごめんね。上鳴くん。

爆豪くんじゃないけど、わたし、少しだけ苛ついているんですよ。

 

ぐ、ぱと手を握り開きしてから、自分の装備を思い起こす。

 

今日来たばかりのコスチュームに呪物(フェティシュ)は仕込めなかった。

まあ、使う機会は来ないだろう。と思うのだけれど、やっぱり魔法使いの末席を汚す人間の癖なんだろう。

自分の命を預けるものが無いのは、少し落ち着かない。

 

今日帰ったらいくつか仕込んでおこうと放課後のやることを決めて、指先は太もものホルスターをなぞる。

 

指先はただひとつだけ仕込んだ道具をこつりと弾いた。

 

「…よろしくお願いします。」

「ヒーロー側と(ヴィラン)側、どちらをやりたい?」

オールマイト先生からの問いに少し考える。

 

全てにおいて私は彼に劣っている。

レーダーチャートで言うと、私が彼よりもはみ出すことはない。

…今の状態なら。

 

いや、やめだ。

ふるりと首を振る。

 

どれだけの人に迷惑をかけるか、わかっている。

このまま出来るだけ目立たず楽しく青春をしたいのだ。

 

この状態で、私がオールマイト先生に少しでも善戦するためには選択肢は一つしかなかった。

 

(ヴィラン)側でお願いします。」

 

勝てなくても一矢くらいは報いたいな。と頭の中で算段を立てる。

 

「よし、じゃあ決まりだな!」

この試合に関しては解説が出来ないからモニタールームからも聞こえるようにマイクをオンにするよ。というオールマイトさんに頷いた。

 

─正直、好都合だった。

 

でも、もうひと押し欲しい。

「訓練がスタートしたら、オールマイト先生にも私の声聞こえるようにしてもらいたいんですが、可能ですか?」

「それは…………相澤少女がいいならいいが。」

オールマイト先生は戸惑い気味に答える。

 

「それでは、お願いします。」

彼に対して燻っている苛立ちを表情からおおい隠すようににこりと笑った。




明日から戦闘編です。
ちゃんとかけてるか不安です………
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