魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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本編に入るまでは毎日更新したいなと思っているのですが、想像以上に本編に入るまでに時間がかかってしまいそうです…,,


魔法使い、お義父さんができました。

詳しいことはもう少しゆっくり休んでからにしようか、という校長先生のお言葉に甘えてそのまま倒れ込むように占領したベッドの上で天井を仰ぎ見る。

 

高校に入りたいですけど入れますか?という質問に対して入れますよ。と色良い回答が返ってきたところで、問題は山のようにある。

ひとつひとつ考えていけば解決するかもと思い、とりあえず三つほど挙げてみる。

 

まず一つ目は年齢だ。

私は今16歳。年度初めに入学したとしたら高校3年生になってしまう。

いきなり高校3年生次に転入してくる世間のことをよくわかっていない魔法使いと名乗る女、控えめに言っても不審すぎるし、馴染める気もしない。

そもそも学習指導要領が同じなわけがないんだよね。入試から不安になってきた。

 

二つ目に戸籍。

布留部市がないということは戸籍があることに期待ができない。もはやこの問題は高校行けないなぁ困ったとかそういうレベルの問題ではない。

戸籍がないということは何もできないということだ。就職どころかアルバイトもできない上に、家も借りられない。ストリートチルドレンまっしぐらだ。

 

三つ目に個性社会を知らなすぎるということ。

個性ってなんですかね?とか雄英高校ってなんですか?とか聞いただけで変なものを見るような目で見られるというあたり他にも知らなければならない常識がありそうな気がする。

 

いくらネズミ型の生命体が校長先生の座に君臨できるとんでもない世界と言えども社会というものは大衆的な常識が無い者に厳しくできているのだ。

 

弓月ちゃん頑張っちゃうぞ!でどうにかなる範囲を大幅に超えている。

 

他にも細々と懸念点があるけれど、とりあえずこの三点が重たい。何よりも戸籍がないのが厳しすぎる。

 

「うーーーーん」

どうしよっかな。と呟いてとりあえず身を起こそうとして、出入口側に手をついてそちらを向く。

 

「………………………………」

「…………………………よォ」

私を紐で搦めとった黒ずくめの男がドア枠に凭れていた。

 

「はじめまして、弓月と申します。魔法使いです。」

とりあえず頭を下げておいた。

弓月ちゃん頑張っちゃうぞ!とか声に出してなくてよかったなと思った。

 

「相澤消太。」

たった8文字、名前だけの自己紹介をして目の前の男はふいと目を逸らした。

 

「あいざわしょうたさんは私のお目付け役ですか?」

「そうだな。」

投げた質問に対してはちゃんと返してくれるみたい。

 

「…………」

別に話題を振ってくれるわけではないようだ。気まずい。

 

「あいざわしょうたさん。」

「なんだ。」

名前を呼んでみるとこっちに視線を流してくれたので気になっていたことをダメ元で聞いてみる。

 

「私さっき紐で縛られたじゃないですか。あれってどうやるんですか?」

「あれは…企業秘密だな。」

あと、相澤でいい。長いだろ。と、また目を逸らしながら言う彼は多分悪い人じゃないんだろうな。

会社の可愛い後輩であり可哀想な弟弟子(オルトヴィーン・グラウツ)に重なるところのあるあいざわさんを仰ぎ見る。

 

「あんまり見るな。穴が開く。」

手で視線を遮るような動きをするあいざわさんを微笑ましく眺めつつ、二言三言会話をしていたらそれなりの時間が流れていた。

 

そこから少しして、校長先生がミッドナイトさんの肩に乗って現れた。

 

「やあ、ゆっくり休めたかい?」

「おかげさまで。ありがとうございます。」

校長先生からの問いかけにベッドの背もたれに背を預けた体勢で答える。

 

「君の処遇についてだけどね、流石に入学試験を免除とはいかないんだよね。」

さすがにそこまで免除してくれとは思ってない。

そうだろうなとしか思わないので頷く。

 

「そして、君の戸籍はないものと思ってもらった方がいいと思う。」

僕たちもまだ君のことを100%信用できるわけじゃないしね、監視もさせてもらいたい。と申し訳なさそうに呟く校長先生にもう一度頷く。

これでもうすっごい信用してるよ!と言われた方が不安になる。

 

校長先生があいざわさんの方に視線を遣る。

「というわけで、身元引受人兼お目付役に相澤くんを指名したいのさ。」

「俺ですか?」

あいざわさんが首を傾げた。

「彼ですか?」

私も首を傾げた。相場はミッドナイトさんとかじゃないのかな?女の子同士で仲良くやってね、みたいな。

 

疑問を掬い取ったかのように校長先生が言葉を繋ぐ。

「僕も本当は女性同士でって思っていたのさ。でも君、この個性社会の常識を知りたいんだよね?」

それなら、相澤くんが適任だと思うんだ。と彼は重ねる。

 

「でも、俺の抹消は彼女の個性には効きませんでしたよ。抑止力としては微妙では?」

あいざわさんが反論する。

抹消ってなんだ?効かなかったってどこで試したんだ?気になることしかない。

 

「僕は逆にこう思うんだ。君の個性が彼女に効かないのならば、バレていても問題ないよね。」

校長先生は理由を一つ重ねた。

 

うっかり敵に回るかもしれない私に情報は出来る限り与えたくないということなのかな?

さっき信用された方が怖いなぁとか言っておいてだけど、想定を上回るレベルで信用されていないなと思うと少しだけ眉が下がる。

 

でも、だからこそ、信頼を得なければいけない。

「私としましては、校長先生の判断に委ねようと思っています。あいざわさん、よろしくお願いします。」

「わかりました。」

あいざわさんが少し仕方がなさそうに返事をした。

 

「戸籍については、雄英の方で用意させてもらうよ。弓月さんっていうのは苗字なのかな?」

「あ、いえ、名前の方で。」

苗字は偶然にも幼馴染(イバイツキ)の引き取り手の苗字と読み方が被っていたから名乗らないようにしていたのだった。

 

「なら、相澤先生の養子ということで、戸籍を作らせてもらってもいいかな?」

養子?

あいざわさんを見つめる。

この全身黒ずくめ(多分独身)の男の養子っていうのは少し、いやかなり、怪しいのではないか?

養子を取りそうな人間には見えなさすぎる。

 

あと、独身男性(子持ち)っていう肩書きは彼を結婚から遠ざけてしまうのではないかと考えすぎているかもしれない想定を浮かべて少し背を丸める。申し訳ないな。

 

「…皆さんにそれでご納得いただけるなら。」

よろしくお願いします。と再度の挨拶は静かな空気を少し震わせた。

 

結局のところ存在していない私の戸籍を作ってくれると言うのなら、私はそれに甘えるしかないのだから選択肢がない。

戸籍ブローカーのお世話になるとか悪いことはしたくないし、法律に従っていけるのならそれより良いことはない、と思う。

 

 

 

─side相澤

 

今、会議室では目の前でぼんやりと天井を見つめる少女についての職員会議が行われている。

俺は見張りをすることになりドア枠に凭れてこの少女を眺めているが、気がついていて無視しているのか、気がついていないのか、目は合わない。

 

と思っていたら少女の体がこちらを向いた。

「………………………………」

「…………………………よォ」

身を起こす途中で固まり、目を丸くした少女に対して一言だけ投げかける。

 

「はじめまして、弓月と申します。魔法使いです。」

少女はそのままの体勢で自己紹介をしてくる。

 

「相澤消太。」

その魔法使いってのはどうにかならないのか?と思いつつ、最低限の自己紹介をして目を逸らす。

 

「あいざわしょうたさんは私のお目付け役ですか?」

少し舌足らずに聞こえる俺自身のフルネームを耳に聞き、質問にそうだと首肯する。

 

そこからぽつぽつと少女の質問に俺が答えるという形の会話がなされる。

相手の顔をしっかりとみて話す少女だ。圧を感じる。

 

「あんまり見るな。穴が開く。」

と伝えるも少し口端を上げるだけで特に視線を逸らしはしない少女を見て諦めた。

 

校長とミッドナイトが保健室に戻ってきたのはそこから数十分ほど時間が経った頃だった。

 

社交辞令のような前置きをさっさと済ませて校長は本題を切り出した。

「君の処遇についてだけどね、流石に入学試験を免除とはいかないんだよね。」

少女は頷いた。

 

「そして、君の戸籍はないものと思ってもらった方がいい。」

続けた校長の言葉に対して、また頷いた。

住民票がある地域がそもそもないのだから覚悟はしていたのだろう。

 

信用しきれないという校長の申し訳なさそうな言葉にも諦めたような微笑みを混ぜたような表情で首を縦に振る。

覚悟はできていたのだろう。

 

「というわけで、身元引受人兼お目付役に相澤くんを指名したいのさ。」

「俺ですか?」

嘘だろ?心の中で呟いた。

「彼ですか?」

少女も同じような感想らしく首を傾げつつ、言葉を発する。

 

「でも、俺の抹消は彼女の個性には効きませんでしたよ。抑止力としては微妙では?」

 

抹消が効かなかったことは報告済みだ。

その状況で俺が身元引受人になるメリットがわからない。

 

効かないのならば個性がバレても問題ないと校長は理由を述べる。

信用できない間は万が一少女が(ヴィラン)になった場合でも問題ないように情報を規制するつもりらしい。

他の教職員の個性はできる限り晒したくないのだろう。

 

「私としましては、校長先生の判断に委ねようと思っています。あいざわさん、よろしくお願いします。」

目の前の少女はそう告げた。

 

校長はそのまま戸籍についての話を進める。

弓月というのは苗字ではなく名前だったらしい。

 

「なら、相澤先生の養子ということで、戸籍を作らせてもらってもいいかな?」

保護観察者に続いて二の矢が俺に飛んできた。

養子?俺が?

いくらヒーローとはいえこの風体の男が養子を迎えたら不審じゃないか?

 

混乱の最中、少女は背を丸めて小さく呟いた。

 

「…皆さんにそれでご納得いただけるなら。」

よろしくお願いします。と細い声で空気を震わせる義理の娘になる存在を俺は見下ろした。




どうやって雄英高校ヒーロー科に戸籍も後ろ盾もない女の子を突っ込もうかなと思った結果養子にすることになりました。
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