魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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ここすきもありがとうございます。通知、来ないんですね。いつつけていただいてたのでしょう………………


魔法使い、ナンバーワンヒーローを脅しました。

「いえ、」

俯いたままだった私は顔を上げた。

にっこりと笑う私を見て、オールマイト先生は何を思っただろうか。

 

「私は()()()()()。」

ここまで運んで(ぶっ飛ばして)くれてありがとうございます。オールマイト先生。

 

ぱ、と壁に沿うように垂らしてある鋼線(ワイヤー)を手に取ってオールマイト先生の視線上に乗せた。

上から蜘蛛の糸のように垂らされた唯一の持ち込み武器は、どこからここに垂れているのか。

 

「この鋼線(ワイヤー)、引くだけで核の信管を揺らすように核に巻いてあります。」

適当な手順で核兵器の信管なんてものを動かせばどうなるか、わかりますよね。と呟いた。

 

オールマイト先生の笑みが薄くなる。

「オールマイト先生、あなたが言ったんです。状況設定を重んじてあれを()()()()()()()()()と。」

本物の核兵器であれば、信管が揺れるということは安全装置が壊れる、ということになる。

 

「一応、本物の爆弾同様に安全装置もあると想定するとなれば、私の手首がここから、」

オールマイト先生に向けて鋼線(ワイヤー)を持っていない方の腕を見せる。

手のひらを晒すように曲げた手首を見せつけた。

 

「ここまで、」

そのまま手首を脱力するように手の甲を見せる。

 

「下がってしまえば、信管は無事では済まないかもしれませんね。」

デッドラインを見えるように示す。

 

私がオールマイト先生に付け入るとしたらここしかない。

実際のところ、彼はきっと(ヴィラン)退治で同じような状況に陥ったこともあるだろう。

 

──だからこそ、モニタールームと音声を繋いでいて欲しかった。

 

「ここで核が爆発したら、モニタールームの皆さんも無事じゃ済まないですね。」

淡々と、ただ淡々と言葉を紡ぐ。

モニタールームに会話が聞こえているからこそ、オールマイト先生は下手に手を出せなくなる。

 

今の彼は、ヒーローとしてではなく、先生としてここに立っているはずなのだから。

 

 

「嫌なことするね、相澤少女。」

「そうおっしゃるなら諦めていただきたいです。私別に人を傷つけたいわけじゃないんですよ。」

大量殺人者にはなりたくないです。と眉を下げて見せる。

 

「ならその鋼線(ワイヤー)から、手を離してくれないかな。」

「オールマイト先生、お立場わかっていますか?」

小首を傾げて鋼線(ワイヤー)をついと少し引く。

主導権を握るのは私だと、暗に示す。

 

状況が膠着する。

オールマイト先生がぴくりと動こうとするたびに私はこれ見よがしに鋼線(ワイヤー)を引っ張る。

 

「君は本当に知恵が回るね!」

「そうでしょうか?使えるものを使っているだけですよ。」

くそう。とオールマイト先生が歯噛みする。

無意識のうちだろう、オールマイト先生の視線は私の手に集中する。

 

あぁ、と声を漏らす。

「ところで、頭上注意ですよ。」

鋼線(ワイヤー)を手放して、上を指差す。

ぱらりと、少量の砂埃がオールマイト先生に降りかかる。

核兵器の目の前ではなく、ワンフロア下にわざわざこんなものを仕掛けたのには理由がある。

 

…もう4階まで登る気も登らせる気もないからだ。

 

騒霊現象(ポルターガイスト)で真上の天井に上から圧をかける。

ぱきり、と真上の天井にヒビが入る。

思ったよりも頑丈で時間がかかってしまった。

あぶない、と心の中で冷や汗を拭った。

「そこまでやるかい!相澤少女!」

 

「ナンバーワンヒーローと対峙するんです。これくらいやります、よ!」

オールマイト先生の言葉に、ヤケクソ気味の返事をしながら足掻けるなら、足掻いて見せようと思い、騒霊現象(ポルターガイスト)に力を込め直す。

が、叶わずがくと力が出なくなる。

 

キャパオーバーか。時間もかかるわけだ。

膝が言うことを聞かない。

 

 

「でもね、子供たちに前へ前へって言い続けてる手前、大人も負けられないんだよ。」

確保。とテープが私の腕に巻かれた。

 

「やっぱり強いですね。平和の象徴。」

わたしはそのまま大の字に倒れ込んだ。

結局お互いにほぼ無傷、しかもめちゃくちゃ手加減されてるとなると流石にちょっと凹んだ。

 

外に全員が集合して、私も這々の体で集合場所に移動した。

 

運ぼうか?と言うオールマイト先生の言葉には全力で首を横に振った。

これ以上揶揄われたくない。

 

「相澤少女、君の作戦には思ったよりも手を焼いたよ。」

オールマイト先生が言う。

 

「でも結果を見たら完封も完封。綺麗な完敗です。」

お手上げです。と言うように両腕を上げる。

 

「核兵器の脅しのところ、ぞっとしたぜ。」

「本物のように扱うべきだ。と最初の対戦の時にオールマイト先生と八百万ちゃんがおっしゃってたので、ちょっと頑張りました。」

少し引き気味の切島くんに答える。

 

「というか、最初のままオールマイトを建物内に入れない状態にしておけば時間切れで勝てたんじゃないの?」

と、まだ少し寒そうな葉隠ちゃん。

 

「あの時は通話に音声が乗っていたのでほぼ掌握しているとは言いましたが、実際のところオールマイト先生の腕力やもろもろを考えると2階より上の窓までは固められませんでした。あれはブラフです。」

 

オールマイト先生が音声を聞いてる前提での作戦でした。と言うとギャンブラーね。と梅雨ちゃんにジト目で見られてしまった。

 

気にしないでそのまま続ける。

「私の作戦が多少なりとも有効だったのは、オールマイト先生の立場が、ヒーローではなく先生だったからです。」

 

「先生だったから?」

麗日ちゃんが首を傾げた。

 

「はい。先生という立場で、生徒と一対一の戦闘訓練となれば、理想的な(ヴィラン)の確保を皆さんに見せたいだろう。と考えました。」

そうだね。とオールマイト先生が頷く。

 

「その場合、不殺はもちろんですが、不壊についてもできれば守りたい。あまり周囲を破壊しないことも、ヒーローには大切な心得ですから。その場合、入ってくるなら一階の玄関しかあり得ません。他の経路で入るとすれば、オールマイト先生の体格ではどこかを壊してしまうからです。」

緑谷くんたちの戦いの時に、拠点を崩すべきではない。と注意してらっしゃいましたし。と付け足す。

 

話しすぎて喉が乾いたので持ち込んだボトルから水分を摂る。

 

 

「あの核を爆破するっていうのは、実際には使いにくい手だね。」

オールマイト先生は腕を組んで言う。

 

「そのワイヤーについても、オールマイト先生が先生であることに付け込ませてもらおうと思いました。」

ふ、と息をつく。

消耗が激しい。こうならないように鍛えたはずなのに。

 

「モニタールームに音声が流れているという前提ありきでしたが、皆さんに聞かせることでオールマイト先生は20人の人質と同時に、自分の生徒20人からの信頼まで天秤に載せることになったわけです。」

ひとりの(ヴィラン)を倒すために20人の一般人を犠牲にするようなヒーロー科の先生、嫌でしょう?とと両手を天秤のように上下させる。

 

現実にはそんな犠牲、ありふれているのだろうけど。

 

「その揺さぶりを強くするためにあこがれ云々の荒唐無稽な話をしていたのか?」

「いえ、あれは普通に1から10までしっかり私が人生において目の当たりにしてきたことです。」

轟くんからだからあんな出鱈目なことが言えたのか。みたいな質問が飛んできたので、実際にあったことだとだけ伝えた。

 

鳥の頭の少年が、「深淵…」と言っていたがよくわからなかったので放置した。

 

 

「そこからオールマイト先生が3階まで吹っ飛ばしてくださったのはすごく好都合でした。ひびを入れておいたのは、2階階段の壁と、4階の階段前の床だけだったので。」

 

「核のことといい、天井崩落といい、自らを巻き込んだ自爆戦法はあまり褒められるものではないよ。相澤少女。」

「…すみません。」

 

「相澤、なんで4階の床落としちまったん?核は4階にあったじゃん。」

首を傾げる上鳴くんに追従して、黒いメッシュの入る金髪が揺れる。

 

「核を取られたら終わりなら、核をとれなくてしてしまえばいいんですよ。」

信じられないものを見る目で見られた。

 

「オールマイトならあれくらいジャンプひとつで越えれちゃわない?」

「あの状況なら、オールマイト先生が核を確保するよりも、私が鋼線(ワイヤー)で核を壊す方が早いですからね。」

いくらなんでもワンフロア分の大ジャンプを決めるより、手首を脱力して鋼線(ワイヤー)を引く方が早い。

 

三奈ちゃんからの疑問に答えたら、ほわーとよく分からない声が上がった。

 

ふう、と息をついて自分で立てた作戦の意味のなさをあげつらう。

 

「実際のところ、私が本当に(ヴィラン)だった場合は、あんなもの引っ張る前にというより壁を壊す前に確保されているでしょうし、そもそも私もオールマイト先生が入口にいる限り、立てこもりを解除したりしません。」

 

「訓練、という状況をフルに利用したってことね。」

「耳触りがいいように言えばそうなります。」

瀬呂くんの結論に頷いた。

 

「状況判断、見事だったよ相澤少女。戦い慣れているのかな?」

「対人訓練については、入学まで稽古をつけていただいていたので。」

入学式までの血の滲むような戦闘の日々を思い出す。

 

そういえば爆豪くんは、と彼のほうを見遣った。

爆豪くんは、静かに押し黙ったままだった。




核兵器で脅す以外本当に思いつきませんでした。
やるなら徹底的に、と思っているのでクラスメイトを巻き込む手法で行きましたが、やりようによっては普通に嫌われそうです。
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