魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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魔法使い、寄り道をしました。

そういえば、今日は演習の録画に目を通さねばならないから帰りが遅いと、消太さんは言っていた。

 

腹の虫はご機嫌を損ねたことを伝えるためにぐきゅると鳴く。

 

「ん?どしたの相澤。」

「上鳴くんは、お好きな食べ物なんですか?」

私の視線に気がついた上鳴くんに質問を投げる。

 

「うーん、ハンバーガーかな。」

「はんばーがー。」

顎に手をやって少し考えた上鳴くんはよくファーストフード店で見る食べ物の名前を口にする。

ううん、全然食べないからお店も分からないしどこが美味しいかも分からない。

 

「上鳴くんのおすすめのお店ってありますか?あんまり詳しくなくて。」

「うぇ?行ってくれんの?一緒に?」

きょとんとして自分の顔を指差す上鳴くん。

 

「私じゃ力不足ですか?」

「や!いや!違くて!そういうの行くタイプに見えないっていうか!」

麗日ちゃんは誘ったのに?と首を傾げる私に上鳴くんはあわあわと手を振る。

 

「え?弓月ハンバーガー食べに行くの?私も行きたーい!」

と三奈ちゃんが私に体重を乗せた。

 

「そーなったら瀬呂くんも混ぜてもらうべきじゃない?」

と瀬呂くんが私の肩を叩いた。

 

「じゃあ4人で行っちゃうー?」

という上鳴くんの言葉で、あ、と思う。

 

「ちょっと消太さんにだけ連絡してもいいですか?」

と言ってスマホを取り出した。

 

「いいよー。」

という三奈ちゃんの言葉に甘えてスマホに文字をたぷたぷと打ち込んだ。

[ハンバーガーを食べて帰るので、少し帰りが遅くなりますが、よろしいでしょうか?]

 

「待って業務連絡すぎる。」

てかなんで敬語?!とスマホを覗き込んだ上鳴くんが目を丸くする。

 

スマホがぴろんと着信を知らせる音を鳴らす。

[夕飯は入るようにしておけ。ランチラッシュのカレーライスだ。]

 

「うわ、楽しみ…!」

声が漏れた。

 

「なになに?」

と瀬呂くんに覗き込まれて、画面を見せる。

 

「うわまじ?ハンバーガーやめて速やかに帰るべきよそれ。」

「いやでももう心はハンバーガーとカレーライスの気持ちなんですよね。」

ハンバーガー食べた後でカレーまで食べれんの?と瀬呂くんが言うが、それなりに食べれる方だと自負している。

食べれるけど食べなくてもいいタイプなのだ。

 

「んじゃー行くしかなくなーい?」

「いくしかないない!」

上鳴くんと三奈ちゃんの相性がよろしすぎる。元気の相乗効果ってこういうことを言うのかな。

 

「弓月ー!はやく!」

「はぁい三奈ちゃん。」

スクールバッグを肩にかけて席を立ってぱたぱたと三奈ちゃんの元へ走る。

 

「お待たせしました。」

「待った!行くよー!」

三奈ちゃんがずいずいと歩いていくのを3人でのんびりと追いかけていたはずだった。

 

みんな気がはやってるのか歩幅が大きくていつの間にか置いていかれる。

ハンバーガーの魔力だなぁと思いながら小走りで追いかけていると、前からスピードを落とした瀬呂くんに腕を掴まれる。

「ゆっくり行かね?」

「?はい。」

 

そう言った瀬呂くんはさっきより少しゆったりとした歩調で私の隣を歩く。

「革靴をさ、入学の時に新しく買ったのね。まだあんまし歩いてないから馴染まないんだよね。」

早く歩くとちょっといてーの。と笑う彼の靴は新品ではあるけれど革がしなやかな代物で、ふと笑ってしまった。

 

「瀬呂くんは、優しいですね。」

「わ、ちょ、見ないで。」

すらりとした瀬呂くんの指が彼の顔を覗こうとした私の顔を軽く覆う。

照れたのだろうか、と思うとどうにも笑みがこぼれてしまう。

 

障子くんや砂糖くんに気を取られてあまり大きく見えなかったけれど、彼も私より遥かに大きい子だということを今更認識した。

 

「ちょっとちょっと何青春してんの?」

俺を差し置いてー!と上鳴くんが瀬呂くんの肩に腕を乗せる。

 

「えー弓月青春してたの?」

三奈ちゃんが私の腕に彼女自身の腕を絡ませた。

 

「ハンバーガー友達と食べにいく状況がもう青春で、結構わくわくしてます。」

あー相澤先生確かに中学生に外食とか許してくれなさそう!と笑う三奈ちゃんに合わせて笑った。

 

少し不審げな瀬呂くんの顔なんて笑うのに忙しい私には見えないのだ。と見ないふりをした。

 

 

少し歩いて到着したお店のメニュー表には12種類ほどのハンバーガーが載っていた。

が、全くどれが美味しいのかわからない。

と言うよりも全部美味しそうで決めきれない。

 

「上鳴くんのおすすめ聞きたいです。」

「ええーどれでも美味しいと思うけど…これは?俺好きなんだよね。」

上鳴くんが指を置いたのは、照り焼きチキンだった。

 

「美味しそうですね。じゃあそれにします。」

「なんか責任重大じゃね?」

「これで私の味覚に合わなかったら上鳴くんと私の味覚は合わないってことですかね?」

うわーもうちょっとちゃんと考えれば良かったかもしれない…と上鳴くんは少しいじけた。

 

「ねぇ私チーズバーガーにするから弓月の一口ちょうだい。」

「いいですよ。」

三奈ちゃんの言葉に甘えることにする。チーズバーガーも美味しそう。

 

「ちょーど金額分お金あったわ。」

わたしも、おれも、と3人の手のひらにそれぞれの分のお金が乗る。

お財布の小銭入れをちゃりちゃりと鳴らして見るけどちょうどはなさそうだった。

 

「…私ないのでまとめて払ってきますね。」

「まじ?ありがてー!」

「ありがとー!席とってくるね!」

「ありがと。」

3人のお金が私の手のひらに乗る。

全員分の注文をとりまとめて、レジの列に並んだ。

 

ファーストフードのお店は随分混んでいるんだなぁ、と思いながらのんびりと並ぶ。

「お次の方どうぞー。」

すらりと伸ばされた腕の方へ向かう。

 

記憶を辿りながら指定されたハンバーガーを読み上げていく。

「ええと、照り焼きチキンバーガーふたつ、チーズバーガーひとつ、フィッシュバーガーひとつで、それぞれセットでお願いします。」

 

ぴ、ぴ、とレジのボタンを店員さんが押す音が聞こえてくる。

「はい。それではドリンクお選びくださいー。」

「アイスティー、コーラ、オレンジジュース、烏龍茶をそれぞれ一つずつお願いします。」

「アイスティーは、ガムシロップやミルクお使いになられますかー?」

「あ、いえ要りません。」

炭水化物に甘い飲み物という組み合わせは何となく慣れなくてお断りする。

 

かしこまりました。とレジの向こうの店員さんは注文を繰り返してくれて、値段を教えてくれる。

キャッシャーに値段に足りる分のお金を置いて店員さんに向けて少し押し出した。

 

「レシートご入用ですかー?」

「いただきたいです。」

レシートとお釣りの小銭がキャッシャーに乗って返ってくる。

 

「こちらの番号札の番号でお呼びしますねー。ありがとうございましたー。」

31番の番号札を受け取る。

 

「会計ありがと。あっちで芦戸と上鳴が席とってるから行っといで。」

と言いながら瀬呂くんが番号札を私から奪取する。

 

「トレー1枚じゃ足りない量だと思うんですけど……」

「んじゃ、上鳴呼んできて。」

瀬呂くんひとりじゃ不安だなぁと思って話すと、そういうのは男がやるの。と言う。

 

たしかに消太さんも荷物をよく持ってくれる。

そう言うものだと思うことにした。

 

 

「三奈ちゃん。」

「あ、弓月!結構並んでたね。」

「いやぁお疲れ。相澤。」

ぐてーと怠ける横並びの2人を微笑ましく眺める。

 

「あ、瀬呂くんが受け取りの所にいるので、上鳴くんも行ってもらっていいですか?ちょっと量が多そうで。」

「んあ、おっけー。」

上鳴くんが瀬呂くんの方へ歩いていくのを見届けて、三奈ちゃんの正面へ座る。

 

「もうちょっと暑くなったらアイスとかも食べに行きたいね。」

「行きたいです!」

それはとても楽しみな提案だった。

 

「お待たせ。」

トレーがふたつ机に置かれた。

 

「これ相澤のね。」

「ありがとうございます。」

 

上鳴くんと瀬呂くんが座ったのを確認して、みんなでいただきますと手を合わせる。

 

ひとくち、噛み締める。

少し驚いて断面を見る。

「おいしいですね、照り焼きチキン。」

 

「よっしゃ!よかったー。」

それをじっと不安そうに見ていた上鳴くんがガッツポーズを決める。

 

「これからもおいしいもの教えてください。」

「もち!俺も食べちゃおーっと!」

少し緊張していたのか上鳴くんがハンバーガーをぱくぱくと頬張り始めた。

 

「弓月、はい。」

ずい、と目の前に出されたチーズバーガーを頬張る。

 

「んーこっちもおいひいれすね。」

お行儀は悪いがもくもくと咀嚼しながら話す。

 

「三奈ちゃんもどうぞ。」

「ありがとーう。」

三奈ちゃんに照り焼きチキンバーガーの口をつけていないところを差し出す。

 

「相澤、魚嫌いじゃなかったらこっちも食ってみる?」

「いいんですか?」

いーよ。と出されたフィッシュバーガーもひとくち頬張る。

バンズに挟まった白身魚がハンバーグ達とは違った味わいを口の中に広げた。

 

「これまた、味わい深いですね。」

「食レポすぎない?」

瀬呂くんからのツッコミをスルーして、彼の前に照り焼きチキンバーガーを差し出す。

 

「瀬呂くんも、嫌じゃなかったらどうぞ?」

「ありがと。貰うわ。」

んまいね。とひとくち食べてから瀬呂くんのひとこと。

 

「えまって相澤が芦戸にも瀬呂にもあげちゃったら俺だけぼっちみたいじゃない?!」

「………盲点でした。」

わたしはうっかり上鳴くんをぼっちにしてしまった。

 

また明日ね、と手を振りあって私たちはお店を出た。

 

 

ファーストフード、楽しいなぁ。と浮ついた心のままエレベーターに乗り込む。

 

家の鍵を差し込んで、扉を開いた。

「ただいま帰りました。」

「おかえり。」

 

カレーあっためてあるから早く手洗ってこいと言われて、あわあわと荷物を置いて手を洗う。

 

ダイニングに向かうと、2対の食器が目に入る。

「あれ?消太さん待っててくれたんですか?」

「そろそろ食おうかと思ってたけどな。」

相変わらず素直じゃない消太さんに少しにやけて席に着く。

 

「いただきます。」

「いただきます!」

やっぱりランチラッシュさんのご飯は最高に美味しい。

 

「ハンバーガーは美味かったか?」

「はい。あれは友達と食べるから美味しい食べ物な気がしますね。」

 

「…人生で、初めてでした。友達と放課後に外食行くの。」

楽しかったです。とポツリと吐き出す。

 

「今度、外にでも食いに行くか。夕飯で…イタリアンとかどうだ。」

もう食べ終わって、器を横に避けた消太さんは手のひらと指先で顔を隠すようにして言った。

 

「楽しみです。」

消太さんは案外忙しい人だから、いつになるかわからないけど彼 なんだかんだで約束を守る人だ。素直に楽しみにしておこう。




どうしてアイスティーをファーストフード店で頼んでガムシロップもミルクもいらないですって言うたびにガムシロップとミルクがついてくるのかよくわからないです。なんのために聞かれているんでしょう?

ハーメルンの挿絵に枚数制限があると噂を聞いたので弓月ちゃん落書きあげ用にTwitterを作ろうかなぁと思っています。需要はない。
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