自分で読み直すときにどうして見つからないんでしょう…
「相澤さん?!!?大丈夫????」
尾白くんの声で目を開けた。
膝立ちの体制になった私の足と足の間に尾白くんがうつ伏せになっていて、上半身を捻ってこちらを見ている。
「うわごめんなさい馬乗り!」
あわあわと尾白くんから降りて立ち上がらせる。
「それはいいんだけど、ここは…火災ゾーン?」
「ううんそうみたいですね。暑いですね。」
小声で話しながらぱたぱたと襟元を煽ぎつつ、お互いの背中を合わせるように立つ。
露出度の高い尾白くんが火に触れでもしたら火傷してしまうと思うと気が気ではない。
ここで
厳しい、ということは間違いなく出てくるということだろうなぁと若干のめんどくささが脳裏をよぎる。
「…尾白くん。正直私は尾白くんがどのくらい戦えるのかがわかりません。訓練の時も轟くんのせいで全然見れませんでしたし。なので、尾白くんがやりやすい方を選んでください。」
こうなってくるとこの間の訓練で氷一撃ぶっ放して強制終了させてきた轟くんを恨みたくなる。
尾白くんの個性のことが全然わからない。
「…やりやすい方って?」
「多数いるかもしれない
私の背後で周りを目ざとくみ続けているであろう尾白くんからの質問に答える。
自分の体に
気のせいかと思っていたんだけど、やっぱり〈アストラル〉にいた頃と比べて出力が下がった気がする。その分細かめの制御を頑張らざるを得なくなっているので、頭が疲れてしまうのはどうにかならないのか、と解決策のない文句を心の内で呟いた。
「…もう近づいてきてるみたいだからふたりで
「私もそう思いました…」
楽はできないですね。と苦笑する。
「背中は預けるよ。相澤さん!」
「背中くらいなら守って差し上げますから存分に戦ってくださいね尾白くん!」
尾白くんの左側頭部に向かって振り下ろされたナイフを
なんで頭に振り下ろすんだ、ナイフを。頭蓋骨で滑るってことを知らないのか。馬鹿なのだろうか。
まぁそもそも、
「左方注意です、よ!」
ナイフを振り下ろした男の手首を
崩れた隙を狙って首元を締め上げて意識を奪った。
頸動脈を狙えば、私程度のフィジカルでも人の意識を刈ることは不可能じゃないということはここに来てから知った。
「まず、ひとり」
ホルスターにつけたカラビナからパチンと音を鳴らして取り外した捕縛用テープで左右の親指を後ろ手にざっくり巻いて転がした。
尾白くんが背後からのフックを屈んで避ける。
尻尾での打撃を喰らわせて脳震盪を起こさせたようで、
おおーすごい。やっぱり戦闘訓練のアップとか付き合ってもらわなくて正解だった。
一撃どころかジャブで沈む自信がある。
過去のことに気を取られたその刹那、ずるりと足が滑った。
「う、わ!」
「相澤さん!」
石鹸液のようなぬるっとした液体を出す個性の
尾白くんの尻尾が私の体を支えてくれた。
「ありがとうございます!」
倒れきらずに元の体制に戻った反動を利用して、液体を出したであろう
勢いのまま手のひらでそのまま顔面を掴んで地面に叩きつける。
そのまま尾白くんの背後に回って攻撃を繰り出そうとしている
「なんなのよガキ!」
さらに別の
イメージに呼応した
「あんたに当たんないならそっちのガキに当てるまでだよ!」
と笑うその
角度が悪かったようで少し勢い負けしつつ、どうにか瓦礫をはたき落とした。
そのまま足元に転がる瓦礫を握りしめて
「…がっ!」
地面に伸びているのをチラリと見て、流石に脳震盪を起こしているだろうしと放っておいた。
尾白くんの方を見ると、3人と戦っていた。いやどうしてそっちに行くの?絶対私の方が弱そうじゃん。と心の中で愚痴を言いつつ、尾白くんの方へ向かいつつ、ひとりを
ゴッという鈍い音が鳴る。
「ありがとう。気づかなかった。」
尾白くんのお礼に気にしないでと伝えてぱんぱんと手に付いた気がする埃を払う。
「ひと段落ですかね?」
「まだいる気がするけどね。」
まああれだけうるさくしたら他にいる
そうすれば他の生徒に負担が行かないかな。と思ったのだけれど。
「…こないですね。」
「こないね。」
2人で背中合わせで待ってみたのだけれども誰も来ない。
…嘘でしょ。持ち場を守る系の無法者なんて聞いたことがない。
そうなると
全災害エリアを回るという手もあるにはあるけど、流石にこの程度の相手に殺されるということもないだろう。
なんだか…呪い合いどころか殺し合いにも慣れていなさそうだし…。
まさか捕まりにきたわけじゃないだろうなこの人達。
そんなに馬鹿じゃないと思いたい。そんな奴らに侵入される日本最高峰の高校嫌すぎる。
「尾白くん。提案があります。」
「何?」
今、間違いなく一番危ないのは消太さんと13号先生だ。
「最初に奴らが出てきた広場にいきましょう。」
「もちろん。」
お父さんのことは心配だよね。と尾白くんは言う。
否定の言葉は紡ぐのが面倒で、空気を振るわせなかった。
その代わりざりと靴裏が細かく砕けた瓦礫を踏み締める音が響いた。
──side飯田
クラスメイトの大半が黒いモヤの男に飛ばされてしまった。
僕たちは散らされずにその場に取り残されていた。
最初に立っていた入り口付近からずっと動けずにいる。
僕たちを守るべく13号先生は黒いモヤの男と対峙している。
「すべてを吸い込みチリにするブラックホール。なるほど驚異的な個性です。しかし13号、あなたは災害救助で活躍するヒーロー。やはり─」
黒いモヤの男は高らかに話す。
「戦闘経験は一般ヒーローに比べて半歩劣る!」
13号先生の後ろに黒いモヤが生成された。
奴の飲み込んだ13号先生の個性が、13号先生本人に牙を剥く。
「う、うわぁあ!ワープゲート!」
13号先生の叫びと共に、彼の宇宙服はブラックホールに塵にされた。
「自分で自分を塵にしてしまった。」
にたり、と顔の見えない筈の
「ひぃ。」
麗日君の息を引くような声が聞こえる。
「や、やられた。」
13号先生が倒れるのを俺たちは一歩も動けずに見ていた。
「先生!!!」
芦戸君の叫びが空間に響く。
「飯田!走れって!急げ!」
砂糖君の言葉にハッとする。
「救うために、個性を使ってください。」
と13号先生が言っていたことを、思い出した。
僕は、僕にできることを、僕にしかできないことをしなければならない。
そして僕にできることはここにはない。
ないのか、本当に。
あのモヤを僕の個性で倒せないのだろうか。
相澤君がオールマイトと戦っていたときを思い出した。
彼女なら何か作戦を思いつくことができるのだろうか。
ないものねだりをしている自分に歯噛みした。
救助をいち早く呼ぶのが、いま自分にできる1番の仕事だと、葛藤の中で結論を出した。
「くそっ!」
エンジンに火をつける。
あのモヤに追いつかれぬように、誰よりも早く駆け抜けろ。
インゲニウムを兄に持つ男だろう。僕は。
エンジンの火とともに心の火を燃やす。
「散らしもらした子供!待つべきはオールマイトのみ。」
目の前に、黒いモヤが広がった。
駄目だ。逃げられない。
「しかし、教師たちを呼ばれてはこちらも大変ですので!」
足を踏ん張る。
どうにかして回避しろ。
みんなのことを、僕が守るんだ。任されたんだ。
目の前の黒いモヤが、力強い腕に遮られる。
「行け!」
障子君が黒いモヤを抱え込んで僕を庇う。
「ちょこざいな!外には出させない!」
自動ドア、蹴破れるか。
蹴破れる厚さだろうか?
後ろから迫るモヤは気にするな。と自分に言い聞かせる。
前へ、前へ進め。
「生意気だぞ眼鏡。」
声が、耳元で聞こえた。
ひゅと喉元で息が詰まる。
「消えろ。」
声と同時に周りが暗くなる。
反射的に目を閉じた。
足は止めない。
進めるか。違う。進むんだろ。
そう思っていたら突然閉じた瞼の先が明るくなった。
「理屈は知らへんけど、こんなん着とるなら、実態あるってことじゃないかな!」
麗日君がそう言いながらモヤの男を空に投げ飛ばした。
「行け!飯田くん!」
扉までたどり着く。
重たい。皆の期待とどちらが重たいんだろうか、なんてそんなものは期待の方が重たいに決まっている。
「させねぇ!」
さらに迫るモヤの男に瀬呂君のテープが巻き付いた。
砂糖君がそのテープを振り回してモヤの男を遠くへと投げる。
自分が通れるだけの隙間をこじ開けて、俺は、USJを抜け出した。
これは本当にどうでもいいこだわりなのですが飯田くん視点だと平仮名のくんがしっくりこなくて漢字にしています。