魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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小躍りしました。


魔法使い、起床しました。

目が覚めて、ぴくりとも動かない手足に驚いた。

生きてる?とまたもやびっくりした後に思ったことはひとつだった。

 

やってしまった。

 

あーどうしよう。

というか他の人からどういうふうに見えていたんだろう。

怖がられるのも嫌われるのも仕方がないけど、気持ち悪がられたりしたら立ち直れないかもしれない。

どうしてこう、冷静になれないんだろう。

 

「相澤さん!?目が覚めたの?!」

自己嫌悪に陥っていると、廊下から足音が聞こえて、見たことのない看護師さんが私の苗字を呼ぶ。

喉が渇いているのか声が枯れて出なかったのでパチリと瞬きをする。

周りの人が動くたび、風の動きが私の瞳に映って、煩わしい。

看護師さんがぱたぱたと足早に部屋の外へ出る。

 

義眼を落としたことは覚えている。

自分の服装がコスチュームではなく、病院着になっていることを確認して、ひとつため息をついた。

 

とりあえず、騒霊現象(ポルターガイスト)を駆使して折れてずれた骨たちをあるべき位置に当てはめる。

 

肉体操作(ドーピング)で身体中の骨や筋肉を押さえつけながら自分の体の限界を超えて動き回っていたせいか、あちこちの怪我が悪化しているようで血がぽたりと落ちる。

「…っ」

声を殺す。

 

まだ戦いの最中にいる気分が抜けてないな、と自嘲した。

別にもう声なんて殺さなくていいのに。

 

 

鬱屈とした気持ちのまま、文字通りばきばきの自分の体を騒霊現象(ポルターガイスト)で覆えば、とりあえず動かせる体としての体裁だけは繕えた。

肉体操作(ドーピング)ほどの出力はいらない。

ただ、見た目が元に戻って、それなりに動けばいい。

 

お医者さんが駆けてきて、お父さんを呼んだからねと言う。

 

そしてものすごく怒られた。

「状況を聞くに君もクラスメイト同様に逃げるべきだったと僕は思うけどね。」

「す、すみません。」

至極真っ当なお話すぎて項垂れる他ない。

 

「リカバリーガールすらほとんど治癒させられないほどに体力が底を尽きかけていたんだよ。」

「はい…。」

 

「と言うよりまず血が足りなすぎる。どんな無茶をすればあんな失血死してもおかしくない量の血を流せちゃうのかな。」

私の返答を聞いているのか聞いていないのかお医者さんはマイペースに怒り続ける。

もう不甲斐なさすぎて頭が上がらない。

 

「今君の体は、細かく破砕された骨があちこちに飛散している、それを君が自らの個性でジグソーパズルのように()()()()()()()()()()()()()()()という状態な訳だけど。」

「そう、ですね。」

お医者さんは私の腕を手に取りつつ状況を淡々と説明する。

 

自分で骨の位置を戻したときに気がついていた。

主に腕、足の骨なんかは局所的にかなり細かく砕けている。

 

「君の骨は君の個性によって砕けて、そして君の個性によって接がれている。マッチポンプすぎて医師としてはその力、あまり使用をお勧めできないよ。」

「…はい。もう少し上手い使い方を考えます。」

骨が折れない限りは上手くやれていたのだけれど、骨が折れたとなった途端にこれだ。

医師として勧めない、というより使うなという意味を滲ませた言葉に、渋々返答した。

 

「それから、君の…大腿部。」

ふ、とお医者さんの視線が下がり、口籠る。

この視線に晒されるとわかっていたから、人に見せるのは嫌だったのだけれど、こればかりは不可抗力だ、仕方ない。

 

「今の父に何かされたというわけでは全くないので、気にしないでください。」

太ももだけが寒いような気がして、す、と摩りつつ、消太さんはなんら関係ないと明言する。

 

修復(なお)したいとは思わないのかい?完全には消せないかもしれないけど見えにくくすることは可能だよ。」

「お言葉はありがたいですが、必要ありません。」

わたしだけがこの蟠りから抜け出すわけにはいかないのだ。とここにいる誰にも通じない言葉を飲んだ。

 

それにきっとこれは一生消えないだろう。という予感がある。

 

「君が入院したその日に校長先生がいらしてね。その傷の話もしてあるからね。」

とまだ怒り顔の医者は言った。

話という名前の説教がひと段落して、ゆっくり休むんだよ!と言った医者は忙しそうに足音を立てて去っていった。

 

 

ふと一息ついて、ナースコールのボタンを押した。

 

「どうしました、相澤さん。」

「すみません、血が気持ち悪くて、服とシーツを変えていただきたいです。」

看護師さんに病院着とシーツを変えてもらって、すこしだけ気分が楽になる。

私の気楽さとは対照的に看護師さんは眉を下げている。

 

「ごめんなさいね、あなたが寝ている間に髪、切っちゃったの。血で固まっちゃったところもあってね。」

と看護師さんは申し訳なさそうに言いながら鏡を差し出す。

どうりで肩が軽いわけだと思った。

 

「気にしないでください。伸ばそうと思えば勝手に伸びますし。」

それでも彼女は申し訳ない顔を続けて、私は少し困ってしまった。

たまには髪型変わるのも楽しいなと思ったのは本当なのに。

 

鏡を覗き込んだら、その中には肩口でぱつりと切れた長めのボブに変貌を遂げている私が映っていた。

新鮮で驚いてしまった。

 

 

看護師さんも別のナースコールに呼ばれて出て行った。

考えをまとめるために真っ白な壁をぼんやりと見つめていたところで、ばたばたと慌てた足音が聞こえた。

またさっきのお医者さんかな。と視線を向けると同時に扉がぴしゃりと悲鳴を上げた。

 

この瞳に映ったのは想像した相手ではなく、それでも会いたいと願っていた人だった。

「しょ、うたさん。」

 

顔で分かったというにはあまりにも包帯まみれで、それでも毎日一緒に住んでいる彼のことは、わかる。

腕すら吊ったままの消太さんがつかつかとこちらに足を進めた。

 

消毒薬と汗の香りがして、走ってきたのかなと思った。

「怪我は…」

「今は、騒霊現象(ポルターガイスト)で骨を固定して動かせるようにしているだけなので、あんまり良くないかもしれないです。」

私の座るベッドの前まで来て言いにくそうに聞く消太さんに対して、気にしないで大丈夫という意図を込めて笑う。

 

笑った私の顔を見た消太さんはそれはもう火山が噴火するかのように激昂した。

青筋がぶちりと切れる音すら聞こえた気がした。

 

「お前は!どうして!あの状況で飛び出して!1人で戦おうなんて思うんだ?!」

合理的じゃねえだろ!と怒られてつい正座する。

「う…」

だって、誰か死ぬとしたら私が死ぬのが一番悲しむ人少ないじゃん。とはいえなくて、口籠る。

 

この間までならそう言えてたはずなのに、言えなくなったのはきっと怪物に殴られた時に消太さんの必死な顔を見てしまったからだ。

本日2度目のお叱りを受けてしょんぼりと肩を丸めていた。

 

暫くして、廊下の空気が激しく動くのが見えた。

 

ばたばたばたとたくさんの足音が聞こえてきて、視線を開け放された扉に向ける。

クラスメイトたちが入り口に立っているのが見えた。

人が多くてくらっと来たのを歯を噛み締めて堪えた。

 

そこまで怪我をしているようには見えない私に驚いた顔をしているように見えるクラスの人たちに、

「昔取った杵柄っていうかね、怪我の治り基本的に早いの。」

と、騒霊現象(ポルターガイスト)で覆った体を外側から動かしてみせる。

 

「だからほら、この中で誰かが怪我しなきゃいけないなら私が怪我するのがいちばん早いよね。慣れてるし。」

誰かが死ぬなら。とヒーローの卵たちにいうのはなんとなく憚られて、怪我するならとぼかして、戯けたように言った。

怪我に慣れているのは本当の話だし。

 

麗日ちゃんに引っ叩かれて、抱きしめられて、泣かれてしまった。

抱きしめてあげたいと思って腕を上げたら、縋りつかれてたのを忘れていて左腕の骨が少しずれて血がじわりと滲んだ。

 

心配をかけてしまいそうだったから隠したけど、

消太さんが鼻をすんと鳴らしていたから多分バレてる。

 

多人数を目の前にし続けて熱くなってきた頭の中に、早く義眼を探さないとなと思った。

みんなの息遣いすら目障りで、ぐらりと頭が揺れる。

結局あれがないと日常生活すらままならない。

 

「お前らとりあえず学校戻れ。」

少し経ってから消太さんがみんなを帰らせる。

正確に言えば、帰らせようとした。

 

みんな帰ったはずの廊下に、瀬呂くんだけが立ち尽くしていた。

 

 

「なぁ、相澤。ちょっといい?」

とクラスメイトの中で一番聴いた声が降ってきた。

聞き馴染みのある声はいつもよりも硬く病院の壁廊下に響く。

 

「瀬呂、お前も今日は帰れ。」

話したいことがあるのはわかる。と消太さんは言う。

 

みんながいなくなったからか、だいぶ楽になった頭と瞳のことを考えれば、今話しても問題なさそうだ。

「相澤先生、申し訳ないんですけど、ちょっと2人にしてもらってもいいすか。」

「消太さん、私も話したいです。お願いします。」

消太さんは頭をガシガシと掻いて10分だ。俺は忘れ物をとってくる。と告げて外に出た。

 

扉の狭間に消えていく消太さんを見届けて、重たい頭を少し振って気力を持ちなおす。

 

「ごめん、しんどいでしょ。体大丈夫?」

パイプ椅子を引っ張り出す瀬呂くんが聞く。

 

「大丈夫、と言いたいところなんですけど。個性把握テストで自分の体を操作できるって話したの覚えてますか?」

私の質問に瀬呂くんは頷いた。

 

「それの応用編みたいなもので、折れた骨の位置を固定して、体を外側から動かしてる、て感じですね。」

「つまり全然大丈夫じゃないってことね。」

「言いようによってはそうかもしれないですね。」

返事と一緒に苦笑いが漏れた。

 

「目は、って聞いていい?」

「そこについては、どこまで話していいのか分からなくて、少し待って欲しいです。ごめんなさい。」

多分これをはじめに話さなきゃならない人は、瀬呂くんじゃない。

だから彼に今話す訳には行かない。

父と、先生方を騙していた私に唯一通せる義理だと思って口を閉ざす。

 

「わかった。いつでも話せると思ったときに話して。」

瀬呂くんは思ったよりも直ぐに引き下がってくれた。

 

 

「俺さ、お前とは結構仲良いと思ってんのね。」

パイプ椅子を開いて座った瀬呂くんが少しの沈黙ののちに口火を切った。

 

思っていた、ではなく思っている、という言葉選びに今、私がどれだけ救われたか瀬呂くんは分からないだろう。

 

「やっぱ実技試験のとき、協力したってのもあるしさ…」

男の人にしてはしなやかに見える彼の10本の指が彼自身の表情を覆い隠していた。

 

「……頼って欲しかったんだよな。」

瀬呂くんの表情は、読めない。

私は、ちゃんとわたしとして応えなければと思った。

 

「あのとき、」

私は、さっき麗日ちゃんたちには言えなかったことを口走ろうとしている。

ずっと堪えてきた言葉は坂道を転げる小石みたいにぽろぽろと溢れる。

 

「あのときね、消太さんの頭が砕かれたのを見たときに、カッとなって飛び出しちゃったんです。」

尾白から聞いた。と瀬呂くんは言う。

そういえば、尾白くんにも謝らなきゃなと思いながら続けた。

 

「でも、あそこにいる人たちの中で誰かひとり死ぬならわたしだって思いました。」

瀬呂くんの息を飲む音が病室に響いた。

 

「わたしひとりの命を捨石にして、みんなが五体満足で帰れるならそれでもいいかなって。目も、見られちゃいましたし。」

怖いでしょうこの目、と続ける。

優しい彼は顔はあげないまま、頭を横に振る。

 

「瀬呂くんは気付いてると思うんですけど、わたしと消太さんは血が繋がってない、養子ってやつでして。」

予想はしていたのだろう。

瀬呂くんはわずかに滲んだ声でそっか。とだけ言った。

 

頑なにお父さんと呼ばない他人行儀な娘と、その割には距離を詰めようと努めている父の構図は多分少し奇妙に映っていたはずだ。

歳を考えたとしても、彼を私の実父とするには計算が些か合わない。

 

「だから、やっぱり誰かが死ぬのならわたしが死ぬのが一番涙が流れない、と思ってたんです。」

麗日ちゃんを泣かせた女が何を言う、と我ながら思う。

消太さんがわたしを呼ぶ声だって忘れたわけじゃない。

 

…瀬呂くんが怒った顔をしてたのだって、見えていた。

 

「だからって、生みの親だっているだろ?」

「いないですよ。影も形も。」

文字通りこの世にいないし、いてほしくもない。

 

「だからしぬならわたしだったの。」

ぽろりと、喉に詰まっていた金平糖みたいに幼くてまるい棘のある言葉が溢れた。

 

瀬呂くんは俯いている。

酷なことを、話したかもしれないといまさら口を押さえる。

彼はまだ、高校生になったばかりなのだ。

 

きっと彼は家庭にも、友達にも恵まれていて、そしてこれからも周りの人に恵まれるだろう。

歯を見せて笑う特徴的な笑顔が素敵な彼は、これからもずっとそうであって欲しい。

 

なのにどうにも少し大人びて見える瀬呂くんを前にすると、つい年齢のことを忘れてしまう。

 

「俺は、お前が死んだら、泣くよ。」

少し切れ切れに、言葉が紡がれた。

瀬呂くんの両の手が顔から離れて、瞳がゆるりとこちらを向いた。

 

「もしそうなったら、いやそうなってほしくないけど、通夜も葬式も四十九日も行く。一回忌も三回忌もそこから先も俺が生きてる限り行く。墓だって行けるときは花供えに行く。」

クラスの奴らだって、きっとそうする。とまっすぐにわたしを捉える瞳から目を逸らせなくなる。

 

「相澤先生だって、泣くかはわかんねえけどさ。今日の授業中めちゃめちゃ気もそぞろで。校長先生が面会謝絶解除だって伝えにきた途端走って出てったんだぜ。」

「それはちょっと見たかったですね。」

想像して頬が綻んだ。

瀬呂くんは真剣な顔に戻って、こわごわとわたしの手を握った。

加減を間違えたら、割れてしまう繊細なガラス細工に触れるような、やさしい手だった。

 

「だから、自分が死ぬのがどうでもいいことみたいに言うな。」

「…はい。」

はぁ、と瀬呂くんはため息をついた。

 

こんなこと言ったら引かれるかもしれないけど、と一度私から視線を外して戻した瀬呂くんは続けた。

「お前が誰も悲しまないから死んでもいいって言うなら、俺はお前の死ねない理由になりたいよ。」

 

空気が、固まった気がした。

瀬呂くんのあまりにもまっすぐな瞳に気圧された。

 

「だからさ、死ぬなよ。絶対。」

「はい、死にません。」

燃えるような瞳を見て、あぁ青春の色だなと思った。

私はその色を痛みとともにどこかに落っことしてきてしまった。

それが高校生をやり直している今となっては少し寂しくて、眉を下げる。

 

「じゃあ瀬呂くんも、死なないでくださいね。ちゃんと守りますから。」

「俺が守られるのってお前の中じゃ前提なの?」

そういえば実技試験の時も俺戦ってないんだよなぁ。とぼやく彼をみて、くすりと笑いが漏れた。

2人で顔を合わせて笑った。

 

「髪、短くなっちゃったね。綺麗だったのに。」

「お揃いですね、髪の長さ。」

私以上に残念そうにする彼を見て収まったはずの笑いがまた蘇る。

 

「これで次の休みとかに切りに行ったらお揃いなのが嫌みてえじゃん。」

切りにくくなっちゃったわーとぼやく瀬呂くん。

 

「一緒に伸ばします?」

「うーん、なんかロングって女子の特権って感じしねぇ?」

冗談のつもりで笑いを含みながら言ったら思ったより真剣な回答が来てしまった。

 

「でも消太さんも長いですしね。」

ロングヘアの瀬呂くんを思い浮かべて、あぁあんまり似合わないなと失礼なことを思う。

 

「ねえ今失礼なこと考えたでしょ。」

彼はじとりと瞼を落として口を尖らせた。

 

「ヘアアレンジはあんまりできなそうですね。」

「ハーフアップとか編み込みくらいならできんじゃない?」

慌てて話題を逸らす。

たまに暇なときに自分の髪を三つ編みするのが案外好きだったので少し残念に思ったけど、この髪の長さでやってみるのもありかも。

 

「挑戦してみます。」

がんばれ楽しみにしてると言って彼は時計に目をやった。

 

「うわ、もう全然10分超えてるじゃん。帰るわ。」

「気をつけて帰ってくださいね、瀬呂くん。」

慌てたようにパイプ椅子をたたんだ瀬呂くんは扉に手をかけた。

 

「体、労われよ。ノートは取っといてあげるから。」

瀬呂くんはその言葉と共にひらりと一度手を振って部屋を出ていった。

 

 

瀬呂くんがいなくなって、少し経ってから扉の音がもう一度。

消太さんだった。

そこからついさっき畳まれたパイプ椅子が開かれる音がした。

 

「弓月。」

「なんですか?」

多分、そっちを見たら泣いてしまうと思って、窓の方を見るふりをする。

 

「ひとまず、助けてくれてありがとう。」

「皆さん無事ならよかったです。」

定型文のようなやりとりだなと思う。

消太さんは頭を下げていた。

 

「消太さん。」

がばりと消太さんが顔を上げた。

「怪我、大丈夫ですか?」

「お前よりはるかに大丈夫だ。」

包帯まみれの消太さんから大丈夫さは感じられなかった。

 

「13号先生も、大丈夫でしたか?」

「あぁ、目が覚めたらお前がぼろっちくなってて落ち込んでた。まだ休養中だがな。」

「それは、申し訳ないですね。ぶん投げちゃってごめんなさいって謝っておいてください。」

自分で謝れ。とお父さんが言う。

…まぁ確かに。

でも会うの、ちょっと怖い。

 

「それから、校長が心配している。」

「色々、説明が必要ですよね。」

「そうだな。」

どこからどこまで説明すればいいのか分からずため息をつく。

 

「クラスのみんな、怖がってませんでしたか?」

「あいつらも心配してたぞ。」

みんな、と言うには少し足りなかったお見舞いの面子を思い出す。

怖くなかったのかな。私のこと。

 

消太さんのポケットからハンカチで包まれた何かが取り出される。

「これ、障子が探してくれたぞ。」

と、出された手には私の義眼。そして、指輪。

 

「わ、ありがたい。」

義眼をかぱりと嵌める。

 

この無駄に見えすぎる妖精眼(グラムサイト)は厄介な代物で遮光率100%かつ私からは想像もつかない密度で魔術的意味を持たされているこの義眼をはめてようやく「うーんなんか見えすぎかな?」くらいまで性能を落とせるのだ。

 

うん、楽だ。

何度か瞬きを繰り返すうちに馴染んだ義眼越しの風景に安心した。

 

「こうみると、本物にしか見えないな。」

消太さんがまじまじと私の目を見る。

 

「寝る時以外は基本的に外さないから、できるだけ自然にって気を遣って作ってくれたんです。」

 

少しの沈黙が横たわる。

「正直、その目のことも含めて色々と聞きたいことがある。校長が調子が良くなったら話しに来るようにと言っている。」

「そうですよね。」

そういえば、私が気を失った後、どうやってみんな帰ってきたのだろう。

あの(ヴィラン)は捕まえられたのだろうか。

他に誰も怪我しなかっただろうか。

 

「でもとりあえず今は休め。」

頭に乗る父の手が、私には安心を与えてくれる。

消毒液の香りが強すぎて、いつもの香りはしなかった。

 

「はい、」

うと、と瞼が落ちる。

いろいろなことを、明日話そうと思った。

 

だからどうか、今だけは休ませて。




お前の死ねない理由になりたいっていう誤解しか招かない台詞を真顔で言えるクラスメイトが瀬呂くんしかいませんでした。

そして弓月ちゃんヘアチェンです。
髪型変わったのを見てミッドナイト先生が落ち込んでウィッグとか買ってきそう過ぎていますが、地毛は短くなりました。
【挿絵表示】
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