artset4をiPadに入れたのですが楽しすぎてどハマりしています。
ご指摘をいただいたため、すごく直しました。
そしてすごく長くなってしまったので後半は明日手直しして投稿とさせてください。
13号先生と多分20分ほどお話をして、彼女はお仕事があるからと去っていった。
机に置いたスマートフォンが役割を思い出したように光る。
ロックを解除して通知の中身を見ると、消太さんからのメッセージだった。
[教室で待ってろ。]
わかりました、と返信して誰もいない教室を見回す。
「…まさかここまで普通に接してもらえるとは思わなかったなぁ。」
ぽつりと呟く。
想像以上に今まで通り、というより至れり尽くせり接してくれるクラスメイトに今日1日驚き通していた。
怖がられている、はずなのだ。
「それでも、期待しちゃうな。」
くしゃりと無意識に握り込んでしまった前髪と眉間が歪む。
怖くないという、彼等の言葉を信じていいのかわからなくて頭がぐるぐると回る。
「何をだ?」
「…消太さん。」
考えごとに耽っていたからか、扉が開く音にすら気が付かなくて、肩が跳ねた。
「何を期待しちゃうんだ?」
「…なんでもないです。」
尾白くんが日々座る席に消太さんは腰を下ろして頬杖をつく。
これはもう、私が何か答えを言うまで立ち上がらないつもりだろうか。
「私も普通の女の子になれるかなと、少しだけ期待しました。」
消太さんと鏡写しのように頬杖をつく真似をしてはにかんで見せた。
ばればれの誤魔化しをそれでも見ないふりしてほしくて、笑みを取り繕った。
「…そうか。」
消太さんは黙って見過ごしてくれた。
初めて会った日から、消太さんは私の踏み込まれたくないところには極力踏み込まない。
だからこそ昨日のあれはびっくりしたのだけど。
「そういえば昨日、お前が寝落ちた後もう一度校長に呼ばれてな。」
「?はい。」
ぼんやりと考え事をしていた私の耳に、やたらと歯切れの悪い消太さんの声が届く。
「お前の魔法について、使用制限が掛けられた。よほどのことがない限り
「ルーン魔術は使っていいんですか?」
そこまで許されるとは思わなかった。
個性として登録している
と、思ったところではた気がついた。
もしかして、高校という箱庭の中で使わせることで魔法という未知のシステムの有用性と危険性を測りたいのかもしれない。
「ルーン魔術なら、
「はい。」
なら、他はできるだけ使うな。と消太さんは言う。
それはまるで私の身を案じているが故の使用制限に聞こえて、腑に落ちたはずだった理屈が混乱の渦に巻き込まれる。
「ただし、お前がどうにもならないと思ったときは躊躇なく使え。お前自身の力だ。そこの判断は委ねる。」
「…随分と信用いただいていると思っていいんですかね?」
まあそんなわけないなと目を逸らした。
「信用してなかったらここまで要求を引き下げさせてない。」
冗談のつもりで呟いた言葉に真正面から返してくる消太さんを見て、瞳が揺れた。
強い人だな、としばしば思う。
きっと私の想像している数倍、消太さんも校長先生も他の皆さんも私のために動いてくれているのだろう。
引き下げさせた、ということはこの間別室にいた公安の人からの要求はもう少し厳しいものだったのだろうと容易に想像できた。
おそらく、
ありがとうございますと掠れた声で呟いた。
消太さんから伝えられた言葉はそのまま私が私自身を守ることができる切り札となる。
細々と禁止事項について認識をすり合わせて、そういえばと話を変える。
「朝のお話ですけど、体育祭出たいです。」
消太さんの瞳が開く。
「なら今からリカバリーガールのとこ寄ってから帰るか。」
少しでも治してもらっておこうと、消太さんは車椅子を広げて椅子の横につける。
反対されるかなと思っていたから、驚いた。
学校で抱き上げられるのが恥ずかしくて、自力で車椅子に乗り移ったら少し恨みがましい目で見られてしまった。
どうして…。
「あんた本気かい?!」
リカバリーガールの驚嘆の声が保健室に響く。
「…本気です。普通科の子が宣戦布告に来て、本気でやらなきゃって思ったんです。やりたいんです。」
きゅっと力のこもらない拳を握る。
「イレイザー。あんたも許したのかい。」
「俺はこいつの判断に任せると決めていました。」
リカバリーガールの怒気を孕んだ言葉にも消太さんはすらりと返す。
「あんたら親子がそれでいいっていうなら、私に言えることはないけどね。」
ふぅ、と椅子に腰掛け直すリカバリーガールを見つめる。
「なので、体育祭に間に合わせたいんです。この体。」
「…あんた食事もろくに取れてないだろう。」
リカバリーガールは私の手首を取ってそう言った。
すぐにわかるようなものなのだろうか。
「それでも治したいんだね。」
「はい。」
念を押すようなリカバリーガールの言葉に頷いた。
「点滴はしたことあるかい?」
「ありませんけど、大概の感染症には強いと思います。」
私にそう質問をしながらリカバリーガールは手袋を脱いで、携帯に何かを打ち込んだ。
「今から食べられるようになるのを待つより、点滴で強制的に栄養を取り込んで治癒する方が早いのはわかるかい?」
「…なんとなくは、はい。わかります。」
医療的な知識があるわけではないのでしっかりとわかっているわけではないけど、近道だと言うならやるしかないと思って再度頷く。
「何日か入院することになるかもしれないよ。」
「…点滴ってそんな大仰な感じなんですね。」
なんというか、こう、泊まりがけになるのかと天を仰いだ。
「この間あんたがいた病院に馴染みの医者がいてね。今から行っていつ対応してもらえるか聞いているところだよ。」
先ほど携帯に打ち込んでいたものはその問い合わせだったらしい。
仕事が早い…。
リカバリーガールの馴染みのお医者さん、と言う方から返信が来て、今日なら予定が空いているとのことで大慌てで私は搬送された。
そう、搬送だ。
意識があるにも関わらず担架に乗せられてえっさほいさと学校の大型車に担ぎ込まれる。
「大丈夫だからな。」
消太さんが私を励ましてくれる。
あれ?私がするのって点滴なんだよね?
自信がなくなってきてしまった。
私の想像する点滴って、手首から針を刺してぽたぽたと液体が落ちるのを待てばそれで終わりみたいなアレなんだけど、違うんだろうか。
そんな生死の境を彷徨う覚悟が必要なのだろうか。
困惑したまま、あっという間に病院に着いた。
私は担架に乗せられたまま病院に担ぎ込まれる。
「昨日ぶりだね。相澤さん。」
「き、昨日ぶりですね。お医者さん…。」
私にとって幸か不幸かリカバリーガールの馴染みの医者というのは、昨日私の診察を担当してくれたお医者さんだった。
「ご飯も食べられない状態だけど体育祭に間に合わせたいなんてオーダー、初めてだよ僕。リカバリーガールに感謝するといいよ。」
「あの、なんというか、本当にすみません…。」
怒りを通り越して、と言ったように呆れ顔のお医者さんを見て肩を丸めるほか、私にできることはなかった。
「まずは今日君の体にカテーテルを入れます。局所麻酔を打つことになるね。」
いくつか選択肢はあるけど、首元から入れることが多いよ。と自らの首元を指差すお医者さんを見つめる。
「ちなみに入れる予定のカテーテルはこんな感じ。」
三又に分かれたチューブのようなものだった。
カテーテルってこういうものなのか。
「このそれぞれの口から別の薬剤を混ざらないように注入することができるんだ。使わなくていいなら使いたくないけど、万が一のことを考えてこれを入れることになる。」
「…わかりました。」
複数種類の薬剤、となると何が入ってくるのか全然わからないけど、お医者さんに任せよう。
「そこから先は数日間にわたって持続的に点滴をし続けることになる。点滴を刺したままだと、学校にも行けないから、勉強については学校と相談してね。」
「わかりました。消太さん、お願いしてもいいですか?」
「あぁ。」
また学校行けないのかと多少辟易した。
でも確かにあの人混みがしばらく続くと思うと点滴を刺したまま学校を動き回るのはかなりリスクがあるよなぁと納得する。
というか怖すぎる無理だ。
「栄養の注入と、リカバリーガールによる治癒を並行して行う変則的な対応になる。リカバリーガールには、消化器官から先に治癒してもらおうと思っているから、消化器官が戻れば、カテーテルを抜くことになる。」
そこからは経口接種で栄養を摂りながらの治癒になるらしい。
「正直、体が完治したところで鈍った体をどこまで取り戻せるかはわからない。それでもやるのかい?」
「可能性があるのなら、やりたいんです。」
最後のダメ押しというようにお医者さんは問う。
そうして私は手術台の上に上がった。
「うわめちゃくちゃ緊張しますね。」
「緊張している子はこんな場所で喋らないかな。」
手術着に着替えたお医者さんは私の横でのんびりと話す。
「手術中はこの布をかぶせるからね。」
とお医者さんは穴の空いた布を見せてくれた。
頷いた瞬間かけられた。早すぎない?
「そうしたら、局所麻酔かけていくからね。皮下浸潤麻酔って言って注射した周りだけが麻酔にかかるからね。」
首元にちくりと痛みを感じた。
「痛みはもうすぐ感じなくなるからね。」
ぼんやりと麻酔が入り終わるのを待つ。
「そうしたら今からさっき見せたカテーテル、入れていくからね。まずは針を刺すよ。」
少し押される感覚以外に何も感じない。
麻酔ってすごいなぁと思いながらじっとする。
「針からガイドワイヤーを挿入するからね。」
見えない上に何も感じていない私が不安にならないようにか、説明してくれるのがありがたい。
「…はい。そうしたらカテーテル入れるよ。」
なんとなく、あれが入ると思うと僅かに気持ちが悪いような気がして眉根が寄った。
それでも実際には何も感じないのだから麻酔っていうものは本当にすごいのだろう。
「カテーテル入ったよ。頑張ったね相澤さん。あとちょっとだよ。」
お医者さんはそう告げて、私の首元に何かを貼り付けた。
「お疲れ様。終わったよ。カテーテルちゃんと入ってるか確認するためにレントゲン撮らせてね。」
緑色の布が私の頭から外されて、眩しさに目をくらませていると、お医者さんにそう告げられた。
そのまま担架に乗せ直されて、レントゲン写真を撮られる。
「…うん。大丈夫そうだね。息苦しさとか違和感は?」
「いえ、特にないです。ありがとうございます。」
特に何も違和感はなく、首筋に何かあるなぁと思うくらいだった。
「相澤さんが退院する前のベッドまだ空いててよかったです。」
「…またご迷惑おかけします。」
病室まで担架で運ばれて寝かされて、看護師さんに言われた。
確かに同じ天井を見た気がする。
「そうしたら、このまま点滴しますね。点滴始まったらお父さん呼びますからね。」
カテーテルの先のうちのひとつに点滴のパックが繋がれる。
「弓月。大丈夫か。」
「大丈夫です。麻酔って偉大ですね。」
消太さんが扉を開けて入ってくる。
「荷物は明日の昼間でも持ってくる。今晩くらいは付き添う。」
「明日だって消太さん授業あるでしょう。ちゃんと帰って寝てください。」
いくらなんでも明日も仕事の消太さんをここに引き止めるわけには行かない。
「寝るくらいならここでだって寝れるだろ。」
「もう夜ですし、私も寝ますから。」
あ、義眼。と思ったところで消太さんの手が伸びる。
「外していいか?」
「ん、はい。ありがとうございます。」
ぱきりと義眼が外れる音がする。
消太さんは私の義眼を外すことにあまり抵抗がないらしい。
「心配なんだ。ここにくらいいさせてくれ。」
「朝ちゃんと学校行ってくださいよ。」
ぽた、ぽたと液体の落ちる音がする。
「あぁ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
私たちはようやく長いようで短い1日を終えた。
すみません。医療系の知識が無さすぎてすごく書き直しました。
一応調べて書いたつもりなのですが、どうでしょう…間違ってたら教えていただきたいです。
ミッドナイト先生編は明日になりそうです。すみません。
本筋自体は変わらない予定なのですが、ちょっとお家に帰れなくなったので諸々書き直します。