魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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お気に入り、感想、ここすきありがとうございます。
医療方面に知識が無さすぎて昨日のリカバリーガール編全直ししております。


魔法使い、入院生活始めました。

朝、私と消太さんは扉を叩く音で目を覚ました。

 

「おはようございます。」

「おはよう…。」

枕元のダッシュボードに置いてもらった義眼を手探りで探り当てて、少し乱暴に嵌め込んだ。

知らない人に見せたいものでもないし、私の体にも負担がかかりかねない。

 

首元に違和感を感じて、じとりと斜め上を見上げる。

そうだった点滴だ。

昨日電撃的にカテーテルを挿入したことを寝ぼけた頭で思い出した。

 

「あんたたち今起きたのかい?昨日はお疲れ様だったね。」

扉を開いたその人はリカバリーガールだった。

 

「おはようございます。」

リカバリーガールの方を向いて挨拶をする。

 

「消太さんカーテン開けてください…。」

個室のいいところは、好きな時にカーテンを開けられることだと思う。

まだ眠たそうな消太さんにカーテンを開けてもらうと燦々と降り注ぐ日差しが眩しくて目を細めた。

 

「朝の治癒、しちまうよ。」

「お願いします。」

リカバリーガールが私のベッドの隣にパイプ椅子を開いて座って、治癒を施してくれる。

 

「昨日はいきなりだったから心の準備もできなかっただろ。すまないね。」

「いえ、私のわがままなので。むしろすみません。」

むしろそれに付き合わせてしまって申し訳ない。

 

「よく頑張ったね。」

頭にいつもの手より小さい手が乗る。

おばあちゃんの手って、きっとこういう手なんだろうなぁ。

 

「朝からきていただけるのありがたいんですけど、面倒じゃないですか?」

「学校から近いからね。大丈夫だよ。」

大丈夫、ということは大変ではあるのだろう。

申し訳なさに眉が下がった。

 

 

「そういえば、昨日他のクラスの生徒が随分群がったそうだね。辛く当たられていないかい?」

「あ、いえ。私は全然。むしろ他のクラスの子達が爆豪くんに煽られた可能性が…」

「どうしてそうなる…。」

消太さんが目頭らしき場所を押さえた。

 

「校内への(ヴィラン)侵入ともなれば公表をせざるを得なくてね。」

伏し目がちになったリカバリーガールに気にしないでくださいと告げた。

 

多分重傷者()の情報は出していないのだろう、と私を見て驚いた顔をした普通科の彼のことを思い浮かべる。

 

「私も彼らのおかげで体育祭頑張ろうと思えたので。」

「それさえなければあんたが昨日手術する必要なかったんだけどね。」

言葉がぐさっと心に刺さった。

 

「じゃあ、私は学校に向かうよ。」

「ありがとうございました。」

パイプ椅子を畳んでリカバリーガールは立ち上がった。

 

「夜も来るからね。」

「お手数ですが、よろしく願いします。」

企業みたいだねと笑うリカバリーガールに釣られて私も笑ってしまった。

 

 

「消太さんもそろそろ帰ってシャワー浴びたり、着替えたりした方がいいですよ。」

間に合わなくなっちゃう。と時計を指で指し示す。

 

「…あぁ。」

カバンを手に取った消太さんをのんびりと眺める。

 

「授業が終わったらまた来る。」

「無理しないでくださいね。」

消太さんが過労で倒れてしまわないか心配になる。

私はすぐ寝てしまったけど、消太さんはちゃんと夜眠れたんだろうか。

ソファはただでさえ寝にくいだろうに。

 

「先生の言うことはちゃんと聞いて、ちゃんとゆっくり休め。困ったことがあれば電話しろ。」

「はい。」

まるで母のように細々と私に言ってそれでも心配そうに振り返りながら消太さんは病室から出ていった。

 

 

「おはよう。相澤さん。」

看護師さん数名とお医者さんが病室に入ってくる。

 

「おはようございます。昨日はありがとうございました。」

「ヒーローの仕事が助けを求めている人を助けることなのと同じで、僕たちの仕事も治療を必要としている人を助ける仕事だからね。」

そう言いながら私の腕に血圧計を巻いて、血圧を測る。

逆の手にはパルスオキシメーターというらしい、血液中の酸素濃度を測る機械が取り付けられる。

 

「…うん。大丈夫だね。カテーテル入れたところは違和感ないかな?」

「首が動きにくいくらいですね。あとは特に何もありません。」

よかったよかったとお医者さんは言って、看護師さんは点滴パックを取り替える。

 

「何かあったらナースコール押してくださいね。着替えはもうすぐお手伝いしに来るので。」

「ありがとうございます。」

てきぱきと話す看護師さんが教えてくれる。

 

…やることがない。

この間はほとんどの時間を気絶あるいは眠って過ごしていたから気が付かなかった。

病院のベッドの上って暇だ…

 

伸びをしようにも絶妙な位置にある点滴の管に触れてしまいそうで怖い。

 

 

「おはよう相澤さん。着替えのお手伝いしにきましたよ。ついでにお身体拭いちゃいましょうね。」

「あ、りがとうございます。」

着替えを手伝ってもらうのにすらまだ慣れないのに、体を拭いてもらうことに慣れているはずもなく、どぎまぎする。

 

「はい、終わりましたよ。」

「ありがとうございます…!」

ようやく終わった…。

ほっと胸を撫で下ろして、部屋を出る看護師さんを見送ってすぐ、スリッパの音が聞こえてきた。

 

「弓月ちゃん…?!」

聞き馴染みのある色気に溢れた声が聞こえた。

ミッドナイトさんだった。

 

「弓月ちゃん!心配したのよ!」

「…ミッドナイトさん?」

ふわりと彼女からいつも香る優しい香りがした。

 

「イレイザーからまた入院したって聞いて、ちょうど授業のない時間だったからきちゃったのよ。」

どうして、と聞いていないはずなのに、疑問が顔に出ていたのかミッドナイトさんはここにきた理由を教えてくれる。

 

「…わたしのこと怖くないんですか?」

ぎゅうと肩口を抱きしめられていることに気がついて、ただただ疑問を口にする。

彼女は私の瞳を見て、息を呑んだはずだ。

私の昔の話を聞いて泣いたはずだ。

 

こんなわけのわからない女と一緒にいたいわけがないと、思った。

 

「怖いわけないじゃない…っ!」

私から身を離したミッドナイトさんはぽろぽろと大粒の涙を流す。

 

その涙の理由が今の私にはわからなくて眉が下がった。

 

「…綺麗な瞳よね。」

「へ??」

涙を見せまいと、下を向いたままのミッドナイトさんが口を開いた。

頭の中で想定した問答の中にない言葉が飛んできて、つい間の抜けた声が出てしまった。

 

「弓月ちゃんの紅い瞳。綺麗よね。」

「ええ?」

そろりと目の前の彼女の瞳が私の瞳を見つめる。

 

あの妖精眼(グラムサイト)が綺麗?

私にはわからない感性で不思議な気持ちになる。

 

つい隠したくなってしまって瞬きをしようとした瞼が乾いた義眼に引っかかった。

 

「もちろん、弓月ちゃん自身がその瞳を好いているわけじゃないこともわかっているのよ。それでも綺麗だなって思っちゃったのよね。」

私の気の抜けた声を聞いて、ミッドナイトさんは弁解の言葉を並べた。

 

「死の色ですよ。」

「いえ、いのちの色よ。」

ミッドナイトさんの紅とは対照的な瞳が私を射止める。

 

いのちの、色。

そうか、いのちの色か。

 

「…あは。」

無意識に私の唇は弧を描いた。

 

「それ、すごくいいですね。いのちの色。使わせてください。」

誰にも言われたことのないカラーリングに嬉しさを覚える。

生きる理由すら備え付けられてしまった私にはちょうどいいと思ってしまった。

 

「私たちが、もっと早くついていれば弓月ちゃんがそこまでする必要なかったのよね。」

「結局、あぁして(ヴィラン)が学校まで来てしまうのならば遅かれ早かれってことだったと思います。」

俯きがちなミッドナイトさんを掬い上げるように見てさらに続ける。

 

「私自身そこまで気の長い方でもないですし、あの日はいつか来たと思います。それは、ミッドナイトさんのせいでも消太さんのせいでもありません。(ヴィラン)が、(ヴィラン)だけが悪いです。」

「…でも。」

こちらを伺うように見るミッドナイトさんの眉は下がり続けている。

 

「隠しごとをし続ける心理的な負担を考えるとある意味早くバレてよかったかもしれません。」

正直、だいぶ疲れていたのだ。

みんな自分の個性の使い方や、強くなる方法を模索する中、私だけは自分の力をちまちまとやりくりしていて、すこししんどかった。

何となく自分だけが蚊帳の外みたいな、そんな気分だった。

 

先生方にもよくしてもらっているのに、騙し続けることに苦しさはあった。

 

「ごめんなさいね。」

それでもミッドナイトさんは眉を下げて謝る。

彼女は、何を思って謝るのだろうか。

 

「ねぇミッドナイトさん、なにひとつミッドナイトさんのせいなんかじゃあないんですよ。」

彼女が何かに罪悪感を覚えていたとして、私は謝られるようなことをされていない。

彼女の震える手を取って、体温を移そうとした。

私の手の方が冷たくて、自分の行動の締まらなさに笑ってしまいそうだった。

 

「私は私のために隠し事をして、私のためにUSJで戦ったんですから。」

それが、心配なのよ。とミッドナイトさんはぽろぽろと涙を落とした。

 

「きっかけとして消太さんが攻撃されていたことは大きな意味がありましたけど、あそこで攻撃されていたのがクラスメイトでも誰でも結局は同じことだと思います。」

厳密に言って仕舞えば同じことではないと思う。

やられていたのが消太さんでなければ、恐らくあそこまで平静を失うことはなかった。

 

しかしそれでも、私は誰のためにでも飛び出せてしまう社長(イバイツキ)を尊敬していて、そうありたいと思ってしまう人間なのだ。

だから、ミッドナイトさんには自分を責めないでほしい。

というより、消太さんも13号先生もクラスの皆さんも自分を責めないでほしい。

 

「だから、もしも嫌じゃなかったら今まで通り笑っていてくれませんか?」

好きなんです。ミッドナイトさんの笑顔。と付け足した。

 

「そんなこと、頼まれなくたって。嫌がられたって一緒にいるわよ。」

ミッドナイトさんは赤く充血した瞳を擦って、頬を膨らませた。

 

 

空いた時間があったのか私の荷物を片手に抱えて病室の扉を蹴り開ける消太さんに驚いた。

 

「…ミッドナイト。」

「おはよう。イレイザー。」

まだ目の赤いミッドナイトさんを見て少し口籠った消太さんは、私の荷物をサイドテーブルに置く。

 

「校長が戻ったら校長室にこいって言ってたぞ。」

「あら、そうなの。」

それじゃあ戻らなきゃ、とミッドナイトさんは立ち上がる。

 

「また遊びに来るわね。弓月ちゃん。」

「かなり暇なのでいつでもいらしてください。」

また、と温かい約束をして手を振った。




昨日の修正に伴いはみ出した分の修正版となります。
結局のところ全然進んでいないので今日もう1話出したいです…出せないかもしれません………
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