魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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おきにいり、感想、誤脱のご連絡ありがとうございます。
砂藤くんをずっと普通の砂糖にしているとご指摘いただきまして、総ざらえで直しました。
教えていただきありがとうございます。


魔法使い、チームを決めました。

騎馬戦という団体競技において大切なことはただ1つ。

誰と組むべきか。

 

「なぁ、相澤。一緒にやんねえ?」

どうしようかなぁなんて思っていたら瀬呂くんが声をかけてくれる。

 

「でも私、正直瀬呂くんとは1回共闘してるわけですし、戦ってみたいんですよね…」

「まじかー轟とかまだ面子あいてっかな。」

ありがたいけど、できれば戦ってみたいと思って断ると、瀬呂くんは頭を抱えた。

 

ううん誰と組むべきか、そして、誰と組まざるべきか。

 

「相澤、俺と組まない?」

「…心操くん。」

また、ぱちりと瞳が爆ぜた。

今回は堰き止めきれず、一筋の赤い涙がこぼれた。

なんなんだほんと。

 

瀬呂くんに見られたら心配されてしまう。

反射的にぐ、と拳で流れ落ちる血を塞き止める。

 

「瀬呂くん、轟くんはわかりませんけど、爆豪くんはまだ決まってなさそうですよ。」

「お?まじ?行ってくるわ。」

瀬呂くんが駆け出すのを流れた血を抑えたまま見届ける。

 

「ちょっと、いいですか?」

「あぁ。」

心操くんを見据えて声をかける。

 

「あの、第1種目の時も思ったんですけど、なんか仕掛けました?組むのはいいんですけど、一緒に戦うのであれば自分の身に何が起きていたのか知りたいです。」

「…俺の個性だよ。洗脳。」

赤い涙が邪魔で拭いながら質問をすると心操くんは渋々答えてくれる。

 

「洗脳…ですか。」

「そう、こいつを洗脳するぞって意識を持って相手に話しかける。それに返事が返ってきたら洗脳できる。単純な命令ならこなしてもらえる。」

それはかなり便利な力だ。

 

そして、思い当たった。

あの入試で心操くんが活躍することは不可能に近い。

もしも会場で多くの仮想敵が受験生を襲った場合に彼らを避難させることに成功すれば、あわよくば受かったかもしれない。

 

でも救助(レスキュー)ポイントを知らされていない時点の彼は間違いなく無理だと思っただろう。

なら、他人を助けるところまでは踏み出せないだろうと、思った。

 

これを同情というのなら、同情かもしれない。

これをおせっかいというのならそうなのかもしれない。

 

それでも私は彼を勝たせたいと思ってしまった。

その受け取り様によっては侮辱ともとられかねない思考を悟られないように続ける。

 

「…尚更疑問ですけど、どうして私だったんですか。」

明らかに私ではない人間の方が有用だと心操くんもわかっていたはずだ。

細かな指令が通らないなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()は間違いなく使いにくい。

そもそも洗脳した相手の個性や力は使えるのだろうか。

 

使えない場合、より一層私を洗脳するリスクが高くなる。

私が彼なら私のことは操らない。

 

「この間教室に行ったの、覚えてる?」

「はい。おかげさまで体育祭出る決意ができました。」

まあそのせいで私、入院したんですけど。何で余談は無粋なので言わない。

 

「あのとき、あんただけが大怪我をしていた。車椅子も教室に1台しかなかった。」

案外心操くんはあのとき教室の中身をじっくり見渡していたようで驚いた。

 

「周りの人間の反応を見るにいじめはあり得ない。それならあんたの怪我はUSJでの襲撃が原因だろ。」

「正解です。」

淡々と推測を吐き出す心操くんに一言だけ答える。

 

「だからこそ、あんたに興味があった。怪我も治ったって言ってたし。」

どういう意味での興味なのか聞かない方がいい気がした。

 

「なんでだかあんたには洗脳、効かなかったけどね。」

説明し難くて目を逸らす。

 

おそらく私の妖精眼(グラムサイト)が悪さをしている。

というかほぼ確実に。

多分一時的に私が洗脳されて、他者からの言葉に返事を返すわけがない妖精眼(グラムサイト)に主導権が移ってしまうのだろう。

そしてその過負荷による衝撃で私の目が覚めている、気がする。

 

心操くんは是非とも個性の訓練の際に二重人格者とかを相手取ってみてほしいなぁと思考の筋道を強制的に変える。

 

ふと後ろに目をやるとぼんやりとした顔の尾白くんともう1人知らない子が立ちすくんでいる。

流石にぼんやりしてしまったこのふたりを目の前に呑気に話し続けるのも良心が痛む。

 

「その洗脳?の解除方法はなんでしょうか。」

「強めの衝撃を与えること、だけど、ちょっと?」

心操くんの困惑声を振り切って両腕を振りかぶる。

 

「いやちょっと、やめてくれない?」

その言葉を無視して尾白くんと見知らぬ少年の頬を引っぱたいた。

 

「え?!何?」

「初対面の人に殴られる所以はないと思うんだが…?」

ごめんなさい私だって初対面の人をしばくことになるとは思いませんでした。

 

「ええと、まず心操くん。君の個性が洗脳(それ)だとしたら、騎馬戦で仲間に使うのは信頼関係的な意味でちょっと厳しいです。私と組むならこのふたりに使うことを諦めてください。」

わかったよ、と目を逸らした心操くんは言う。

とりあえず心操くんをそのまま置いておいて、尾白くんに向き直る。

 

「それから尾白くん。こちらの心操くんの個性で洗脳されていたので引っ叩きました。悪意はありません。」

ううん、ありがとう…?と腑に落ちない顔をする尾白くん。

彼の尻尾はさらに素直でわたわたと落ち着きを失っている。

 

「最後に、私相澤弓月と申します。あなたのことを存じ上げませんが、尾白くんと以下同文の理由で引っ叩きました。」

「理由があるなら構わないよ。僕は庄田二連撃。敵同士とは言え、仲良くしてくれたまえ。」

とりあえず庄田くんと自己紹介を交わした。

 

「なんかもう随分固まってきてますし、尾白くん、庄田くんのおふたりが嫌じゃなければこの4人で組もうと思います。」

「瀬呂とかと一緒じゃなくていいの?!」

尾白くんが驚きの声を上げる。

 

「瀬呂くんからのお誘いは断りました。」

「それ、俺がA組から恨まれるやつじゃない?」

そんなことないと思いますけど、と首を傾げる。

そうかな?と尾白くんも首を傾げた。

そもそも私と組んで恨まれるなら私が騎馬戦に出られないじゃないか。

 

「しかし、僕はB組だよ。いいのかい。」

「そんなこと言ったらそこの心操くんはC組ですよ。折角体育祭なわけですし、クラス混合もいいんじゃないですかね。」

なるほど、と物思いに耽る顔をした後で庄田くんからも承諾を得る。

 

「ところで心操くんは2人に謝っておいてくださいね。ちょっと作戦考えたいです。」

騎手から決めるのがセオリーだと思うんだけど、恐らく体型から鑑みて私か心操くんが適任だ。

尾白くんは心操くんより背丈は小さいけれど、この間触ってしまった感じだと尻尾もかなり重たそうだし、体つきもがっしりしている。

庄田くんも細身な方では無い。

 

私を上にするか、心操くんを上にするか。

 

「庄田くんの個性はどういうものなんでしょうか?」

「僕の個性は、ツインインパクト。いちど打撃を与えた箇所に任意のタイミングでもういちど、より強い打撃を与えることが出来るよ。」

なるほど、時限発火装置のようなものなのか。

 

「そうなると出来れば片腕は空けておきたいですよね………。」

「俺は両腕空いてなくてもしっぽがあるからなぁ。」

ううんと考えていると尾白くんが呟いた。

 

「体格というか、フィジカルで言えば、私か心操くんが騎手かなと思ったんですけど…。」

「…俺は騎手には背が高すぎないか?」

心操くんが眉を顰めた。

 

「逆に心操くん、尾白くんを持ち上げる自信はありますか?私は微塵もありません。」

「…ない。」

心操くんがお手上げのポーズをとって尾白くんが呆れ顔をする。

 

「そういえば、相澤の個性はなんなの。」

「僕も気になっていたから差し支えなければ教えてくれたまえ。」

ううん、少し困ったなぁ。

でもふたりの個性を聞いてしまったからには言わなければならないだろう。

 

「私の個性は遠隔操作です。障害物競走ではこの力で遠くの地雷を起爆したり、自分を浮かせたりしていました。」

「あぁ、なるほど。」

心操くんは口元に指先をやる。

その後ろで尾白くんは微妙な顔をしている。

ごめんね尾白くん。嘘に加担させるようなことして。

 

「ちなみにこの力の応用で自分の身体能力以上の力を発揮することも可能です。外付けの火事場の馬鹿力ってやつですね。」

ぐい、と袖を捲って見せると、捲った袖に手が置かれた。

その手を辿って手の主を見上げる。

 

「ごめん。個人的な気持ちで申し訳ないんだけど、あんまりそれ使わないで欲しい。力業が必要なら俺、もいるし…。」

「…使えるもん使わないと駄目じゃないの。」

心操くんの言うことも理解できる。使えるなら使いたい。

尾白くんの表情を見て、あぁなるほどと納得した。

彼はまだ怖いのだろう。

 

「…怖いですか?」

「相澤のことが怖いわけじゃない。むしろすごいなと思ってる。でも、()()は危ないでしょ。」

視線を下げている彼の意図はよくわかる。

おそらくUSJでの一件で肉体操作(ドーピング)が私本人を壊しかねない力だと言うことを察しているのだろう。

 

心操くんと庄田くんは頭上に疑問符を散らしている。

 

「…わかりました。できるだけ使わないようにしましょう。」

「ごめん…ありがとう。」

尾白くんは、多分、自分の言っていることの理不尽さをよく理解している。

だからこそ、彼は拳を握って、唇を噛み締めている。

 

「尾白くん、血が。」

「…ごめん。」

噛み締めたときに切れたのだろうか。

ポケットに入れていたハンカチを差し出す。

自分の血を拭うときに使えばよかったと後悔していたけど結果オーライだ。

 

「すみません、おふたりとも。汲んでいただけますか?」

微妙な顔をしながらふたりとも頷いてくれた。

 

「そうなってくるとやっぱり私が騎手になるのがいいんですかね…?浮けますし。多分他の方持ち上げられないですし。」

「僕はそれがいいと思うよ。」

庄田くんの了承をもらう。

まあ確かに、空中戦可能な個性が私しかいない以上、私が上に乗るのが定石になるのかな。

 

「庄田くんの個性を使いたいときは私が浮くということで。」

「浮遊系の個性は便利なものだね。」

庄田くんの言葉に少し驚いた。

ツインインパクト、使いようによってはかなりの汎用性を誇ると思うのだけど。

 

「ちなみにどれくらい浮いてられるの。」

「やったことはないですけど、浮くだけなら1日浮けるんじゃないですかね。」

やったことは、ない。

普通に自分の力として馴染んでしまっているからこそ、耐久力は分かっていても時間は知らない。

今度試してみよう。

 

「個性把握テストの幅跳び1キロ超えてたもんね…。」

「あぁ、そんなこともありましたね、時間制限つけてもらって。」

「ちょっと意味わかんない。」

心操くんが眉を寄せて信じられない物を見る目で私を見る。

いや、そりゃあ浮けますからね。




騎馬戦は心操くんと組みます。
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