魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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みなさま、良いお年をお迎えください。


魔法使い、騎馬戦に挑みます。

タイムアップのブザーが鳴った。

 

「それじゃあいよいよ始めるわよ!」

ミッドナイトさんは腕を伸ばしながらよく通る声で開始準備を告げる。

 

「15分のチーム決め兼作戦タイムを経てフィールドに12組の騎馬が並び立った!」

「…なかなか面白え組が揃ったな。」

 

「さぁ上げてけ、鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今、狼煙を上げる!」

マイクさんの声を聞いて、聞き忘れていたことに気がついた。

 

「ちなみになんですけど、みなさん。派手に行きますか?地味に行きますか?」

心操くんの答えは実に彼らしい言葉だった。

それに私はにやりと笑って返した。

 

「了解しました。」

それならばまずは様子見を。

 

ざっと周りを見渡す。

轟くんチームには、ヤオモモちゃん、飯田くん、上鳴くん。

飯田くんが緑谷くんと一緒じゃないの意外だなぁ。てっきり組むものだと思っていた。

轟くんの額には615の文字が縫われた鉢巻が乗っている。

 

緑谷くんチーム、10000320ポイント。

常闇くん、麗日ちゃん、それから…あのサポート科の女の子か。

 

爆豪くんチームは、665ポイント。

切島くん、瀬呂くんに三奈ちゃん。

切島くんとは正面からかち合いたくないなぁ。

心操くんがぼろぼろになってしまう。

 

梅雨ちゃんのチーム…いや、峰田くんのチームか。

障子くん、梅雨ちゃん、峰田くんのトリオで420ポイント。

 

その隣の宙に浮く385ポイントの鉢巻は葉隠ちゃんのものだろうか。

耳郎ちゃん、砂藤くん、口田くんかぁ。

口田くんと砂藤くんのフィジカルが怖い。

 

橙の髪の女の子が騎手を務めるのであろうグループは205ポイント。

 

確か教室前で爆豪くんに突っかかっていた白髪の男の子のグループは705ポイント。

あの、騎馬の子、障害物競走のときに地雷で吹き飛ばしかけた子達だ。

うわ、狙われそう。嫌だなぁ。

 

獣っぽい子と綺麗な黒髪の男の子の2人組は115ポイント。

 

あの金髪の男の子、やたらと目が合う。なんだろうか。

彼の額の鉢巻には295と数字が入っている。

 

黒髪の無表情の女の子が騎手なのだろうグループの鉢巻には150ポイント。

 

蜥蜴に近いのだろうか、顔色が悪く見える少年の鉢巻は60ポイントだった。

 

そして私の手のひらにある鉢巻には、370と縫い込まれていた。

私がこの3人の次があるかないかを決めかねないのかと思うと、気が重くなってきた。

 

「よーし組み終わったな?準備はいいかなんて聞かねえぞ?」

マイクさんの声が会場を轟かせる。

 

「さあ行くぜ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!3、2、1」

「スタート!」

マイクさんのカウントダウンをミッドナイトさんが継いだ。

どっと騎馬たちが動き出した。

 

「と言うかなんでしょう、前騎馬が心操くんなのなんだか心配になっちゃいますね。」

「相澤がそう決めたんでしょ。」

みんな1000万の鉢巻を持つ緑谷くんの方へ走って行くので呑気に心操くんに話しかける。

はぁ、とため息をつく心操くんを見てからからと笑う。

 

「緑谷くん周りの地面が歪んでますね。あれは誰かの個性でしょうか?」

「骨抜じゃないかな。触れたものなら柔らかくできるそうだよ。」

なるほど、便利な個性だなぁ。

 

緑谷くんが何らかのスイッチを押した。

彼が背負っていたバックパックが火を吹いて、4人は空に舞い上がった。

 

「飛んだ?!サポート科のか?追えっ!」

白髪の男の子が叫んだ。

 

「耳郎ちゃん…!」

「わかってる!」

耳郎ちゃんのイヤホンジャックが緑谷くんたちの方へと伸びる。

そのイヤホンジャックを常闇くんの黒影(ダークシャドウ)が防ぎ切る。

緑谷くんの騎馬の周りをきょろきょろとするそぶりを見せる黒影(ダークシャドウ)を勘定に入れると、しばらくは緑谷くんたちに近づくことはできないだろう。

 

「どうですか?ベイビー達は?可愛いでしょう?可愛いは作れるんですよ。」

「機動性ばっちり。すごいよベイビー。そして発目さん。」

でしょう!と言っている彼女があのバックパックや、麗日ちゃんの足に装備されているアーマーを作ったのだろう。

 

「私たちも追うよ!さあ、耳郎ちゃん、リベンジ!」

「あ!つうかおい葉隠!鉢巻ねえぞ!」

葉隠ちゃんの言葉を聞いて視線を上げた砂糖くんが驚きの声を上げる。

 

「はっ!?いつの間に?!」

葉隠ちゃんの叫びを耳に入れて考える。

緑谷くんに全員が気を取られている間に誰かが取ったのだろう。

 

その答えは私たちのもとにすぐやってきた。

 

ほぼ棒立ちに等しい私たちのもとに別クラスの人たちで構成されている騎馬が近づいてきた。

すごくよく目が合う金髪の子だ。

 

「庄田くん。あのすごく笑ってる金髪の彼は?」

「物間寧人。個性の都合上触られない方がいいよ。あと、A組のことを大層嫌っている。」

「…なんですかそれ。怖いんですけど。」

恨まれるようなことを誰かがしたのだろうか。

多分爆豪くんだろうなぁ。

うん、爆豪くん以外に考えられない。

 

「やぁ、相澤さん。会いたかったよ!」

「私A組と職員室にいる方々以外にお友達いないのになんで名前知られてるんですか!」

あれ私?!私なの??

いや寂しすぎないかい。という庄田くんの突っ込みは黙殺した。

 

「障害物競走のときはよくも僕のクラスメイトを足止めしてくれたねぇ!」

「本気で足止めする気なら足元すれすれの地雷狙いますよ!!!」

あんなに安全に配慮したって言うのにどうして代理人が大笑いしながらやってくるんだ。怖いからやめてほしい。

私だってちょっとくらい見せ場あってもいいじゃないですか!

 

「そんなセリフ信じられないなぁ?」

「まあ確かにそうですよね…。」

目の前の物間くんは私の頭から爪先までをにやにやと見つめる。

品定めされているみたいで不快だ。

首元に巻いている2本の鉢巻のうち1本をこれみよがしに引っ張ってみせる物間くんに不快感を覚える。

その鉢巻には385の文字が縫われていた。

 

385は確か葉隠ちゃんの鉢巻だったはず。

なるほど彼が葉隠ちゃんの鉢巻を取ったのか。

瞳を細める。

 

それを見て物間くんはにやりと笑った。

 

「ねぇ相澤さん。その体、本当に治っているのかなぁ?」

「…っ!」

尾白くんがまさかと言う顔で私を見上げる。

 

「あんな惨い大怪我してそんなすぐに治るのかなぁ?うちにはリカバリーガールがいるにしてもさぁ。」

「見ての通り、治ってるじゃないですか。」

物間くんはおそらく心操くんが吹っかけに来たときのあの人だかりの中に潜んでいたのだろう。

めんどくさくてついため息を漏らしつつ、両腕を広げて無事だとアピールする。

騒霊現象(ポルターガイスト)で鉢巻を取るにしてもとりかえされる可能性を考えるともう少し近づいて欲しい。

 

「鉢巻、取りたいならどうぞ。差し上げますよ。」

「へえ、じゃあ遠慮なく。庄田もどうしてA組の連中なんかと組んだんだか。」

広げた両手をあげて、降参のポーズを取る私に向けて伸びるジャージの袖を下から握って引き落とす。

 

「…っは?!」

がくりと体制を崩した物間くんに向けて腕を伸ばす。

 

「そんなことしたって、君の体格じゃあ僕の首には届かないだろう?」

片頬を釣り上げて笑う物間くんを見てそこまで計算していたかと悔しげな顔を作る。

物間くんの首にかかる鉢巻が1本しゅるりとひとりでに取れる。

 

取れた鉢巻は風に舞い上がるように私の手に収まる。

届かなくたって私には関係ない。

ひらひらと鉢巻を振って385の文字を見せるようにしてにやりと笑ってみせる。

 

「通行料はいただきましたよ。」

「さいっあくなんだけ、どっ。」

腕を薙ぐように振るう物間くんを見て、上体を逸らす。

手のひらに物間くんの指先が、触れかけて反射的に騒霊現象(ポルターガイスト)の壁を小さく張る。

 

「触れもしないのか。」

物間くんはそのまま去っていってしまった。

 

「私ってそんなに注目の的でした?」

「…相澤さんは実技試験のときからずっと目立ってるよ。」

「あれ、なんか耳が遠くなった気がします。」

いやぁ、実技試験のことなんて覚えてないなぁ。

 

「あぁ、実技試験終わりに横抱きにされた女子生徒って相澤さんのことなのかい?」

「ぴんと来ないで欲しかったですね…!」

羞恥心に身を任せて騎馬から飛び降りたくなった。

物間くんから奪った葉隠ちゃんの鉢巻が無駄になるかもしれないとすんでのところで思いとどまった。




物間くんとどうしても絡ませたかったのですが、弓月ちゃんの交友関係が狭すぎてこう、敵討ち的な体を取ってみました。
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