スマブラにはまりました。
今のところB組からしか奪取していないのでバランスを考えるとA組から奪っておきたい。
仕掛けるなら、轟くんと緑谷くんが睨み合う今。
と、思ったんだけど。
「なんかあっち、ゴタゴタしてません?」
「爆豪って誰にでも切れるんだな本当に。」
いやあ怖い本当に。
「彼はハリネズミみたいな人なので。」
その針が彼自身の体に向かないことを祈らざるを得ない。
轟くんと緑谷くんが小競り合いをしている間、爆豪くんは爆豪くんで災難に見舞われていた。
「単純なんだよA組。」
爆豪くんから鉢巻を2本とも掠め取る物間くんが涼しげに言い放つ。
「やられた!」
「んだとてめぇこら!返せ殺すぞ!」
道端でキレてくるチンピラの皆様よりもキレの反応速度が速い。
もっと他の場所に生かして欲しいんだけどなぁ、とのんびり構えつつ考える。
「ミッドナイトが第1種目といった時点で予選段階から極端に人数を減らすとは考えにくいと思わない?」
「あ?」
物間くんは頭を使うタイプなようだ。
あんまり高らかに話さないほうがいいのでは…?と老婆心が首をもたげる。
「おおよその目安を40位以内と仮定し、その順位以下にならないように予選を走ってさ、後方からライバルになるもの達の個性や性格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろ?」
「クラスぐるみか…!」
おおよその目安の判断については私と同じだった。
ヒーロー科の就職活動になるのだ、それならできる限りヒーロー科は通したいのが学校の親心という物だろう。
爆豪くんの表情が剣呑なものとなる。
「まあ全員の総意ってわけじゃないけど、いい案だろ?」
「おい、来るぞ。」
物間くんはのんびりと首に鉢巻をかける。
黒髪の少年が物間くんに鋭く報告する。何が来るんだ。
「人参ぶら下げた馬みたいに仮初の頂点を狙うより、さ。」
「ぐっ…!」
「あっ、あとついでに、君有名人だよね?ヘドロ事件の被害者。今度参考に聞かせてよ。年に1度
「…切島。予定変更だ。」
「あ、ぇえ?」
そこには鬼神の如き表情の爆豪くんがいた。
「デクの前にこいつら全員殺そう。」
物騒だなぁ爆豪くん。
「物間、あんま煽んなよ。同じ土俵だぞそれ。」
「あぁ、そうだね。ヒーローらしくないし、それによく聞くもんね。恨みを買ってしまったヒーローが
騎馬の少年からの静止をさらりと爆豪くんへの挑発に転嫁してしまう物間くんの手腕に感心してしまった。
「お、おお…」
「爆豪!落ち着けって!冷静になんねえとポイント取り返せねえぞ!」
切島くんの声を聞いているのかいないのか爆豪くんは爆破を自分の手元で弾けさせる。
「っし、進め切島。俺は今、すこぶる冷静だ…!」
「頼むぞマジで…!」
ドスの効いた声に悪人面を隠しもせず冷静だという彼は本当に冷静なのだろうか?
爆豪くんの声に従うように切島くんは走り出した。
「しねぇえ!」
爆破を交えながらの手のひらは軽く物間くんにいなされた。
…いなされた?
「あっ…く!」
振り向きざまの爆豪くんに物間くんの手のひらが迫る。
爆豪くんのものとそっくり同じに見える爆破が物間くんの手のひらから放たれた。
「ははっ、へぇ、すごい。いい個性だね。」
「って!」
そう呟いた物間くんは切島くんの額を叩く。
「…っ俺の!」
「爆豪!おめえもだだかぶりか?」
切島くんは随分と白髪の少年のことを気にしていたらしい。
「くっ、くそが!」
「ほんと、いい個性だよ。」
爆豪くんのやけっぱちのような爆破で舞い上がる爆炎の奥から物間くんの声が聞こえる。
「僕のほうがいいけどさ。」
煙が晴れて、硬化のような個性で爆豪くんの拳を防いだ物間くんが現れた。
「うぁああ!俺の?!また被った?」
「ちげえ。こいつコピーしやがった。」
正解!とさも楽しそうに物間くんは声を返した。
「物間くんのあれ、使いようによっては本当に怖い個性ですね。」
「単純に手数が多そうだね…」
ぽしょぽしょと騎馬の中で物間くんの個性礼賛が始まった。
「まぁ、馬鹿でもわかるよね。」
こつ、と自分の頭に人差し指を当てて微笑む物間くんを見た爆豪くんの顔が苛立ちに歪んでいく。
その2人の間を割くように白い粘性の液体が割り込んだ。
「凡戸、仕掛けてきたな。」
「物間、あとは逃げ切るだけだ。このポイントなら確実に4位以内に入る!」
そう言って物間くんの騎馬は走り去る。
「追え!」
「固まった…!すげえ、動けねえ!」
凡戸と呼ばれていた大柄の彼はその名の通りボンドのような液体を出せるのだろう。
切島くんの足元がしっかりと固まってしまっている。
「ちょい待ち!私の個性で溶かすから!」
「早く!0ポイントだぞ?!」
三奈ちゃんが靴底から酸を出して溶かしているらしい。
瀬呂くんがそれをせかしている。
「あぁ、怒らないでね。お疲れ!」
そう言って物間くんはひらりと手を振って今度こそ走り去った。
「待て!待てって!」
「はぁ、しつこいなぁ。その粘着質はヒーロー以前に人として…」
そう言いかける物間くんの語尾を飲み込むかのように爆発音が鳴る。
「勝手すな爆豪!」
「円場、ガード!」
切島くんと物間くんの声が被る。
その声に従って茶髪の少年が息を吐き出した。
「てっ!」
「しゃあ!」
息を吐いた先にまるで壁があるかのように爆豪くんの動きは止まる。
「はは!見えねえ壁だ。ざまあみろ!」
そういって物間くんの騎馬は踵を返そうとした。
爆豪くんの拳が不可視の壁を突き破って鉢巻を奪う。
「っ!取られた!2本!」
「爆豪チーム2本奪取だ!この終盤で順位が変わりゆく!若気の至りだ!」
マイクさんの声が轟く。
「つ、角取!」
角取さんというらしい、金髪の女の子が不可視の壁に阻まれてもんどり打ったのを見る。
「あいた!」
円場くんの個性をコピーしたのだろう、物間くんが逆方向にも不可視の壁を張って、凡戸くんと呼ばれていた子を阻む。
「大丈夫だ!まだチャンスはある!拳藤は凍らされて動けないから…!」
「あぁ、この1本を死守すれば…!」
物間くんは残った鉢巻を離すまいと握る。
「跳ぶときは言えってば!」
しゅるしゅると間一髪のところで爆豪くんに絡みついたテープを巻き戻す瀬呂くんが叫ぶ。
「でもこれで通過は確実…。」
「まだだぁ!」
騎馬の上へと収まった爆豪くんは切島くんに発破をかけてぼこぼこと彼の頭を叩く。
「完膚なきまでの1位なんだよ俺が取るのは!」
そう言いながら爆豪くんは騎馬を走らせる。
「さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが利かねえ!いけ!俺らのポイントも取り返して、1000万へ行く!」
「ったく!」
「しょうゆ顔!テープ!」
「瀬呂な!」
物間くんよりもさらに先の地面瀬呂くんのテープが付く。
「黒目!進行方向に弱め溶解液!」
「あ・し・ど・み・な!」
進行方向の地面が溶解液にじわりと溶ける。
その溶解液に足を乗せて、テープを手綱に物間くんへと迫る。
そこに爆豪くんの爆破がロケットエンジンの役割を果たした。
「爆豪!容赦なし!やるなら徹底、彼はあれだな。完璧主義だな!」
マイクさんの声を聞きながら眩しさに瞳を細めた。
円場くんのガードも張ったのだろう。
それすらものともせずに物間くんの首へと爆豪くんの手のひらが迫った。
「次ぃ!デクと轟のところだ!」
爆豪くんは氷壁を仰いだ。