魔法使い、ヒーローになります!   作:ysrm

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魔法使い、クラスメイトに戸惑います。

そんな爆豪くんをただ眺めているわけにもいかず、彼の活躍の裏で私たちは話をする。

 

「たまにはクラスメイトの鉢巻取ってもいいと思うんですよね。」

「いやそれは任せるけど。」

自分の心を軽くするために心操くんに相談の程を取ろうとしたらすごく冷たく返されてしまった。

 

「ううん、心操くんの個性使います?」

「A組の連中に声掛けて返事が返ってくる気がしないんだけど。」

尾白くんには爆豪くんから守ってもらったし、庄田くんの個性で私は白髪の子から鉢巻を奪った。

次誰かの個性を使うなら心操くんだろう。

 

「梅雨ちゃんを洗脳してくれさえすれば、峰田くんの鉢巻は取れると思います。」

「本気?」

もちろん本気だ。

梅雨ちゃんの意識があるタイミングで私が峰田くんの鉢巻を取ろうとすると、おそらくバレる。

彼女はよく周りを見ているから、舌で捕まえられかねないのが怖いんだよなぁ。

 

「君ら、面白い騎馬を組むよね。」

「あぁ、峰田、の。」

どうしてそこで障子くん、君が答えちゃうの。

 

「峰田って、中の小さいやつ?」

「けろ、この子が、峰田ちゃん。」

気が付かれないうちにと思ったのか、矢継ぎ早に心操くんが話しかける。

ぷつ、と機能を停止したようにそれに応えた梅雨ちゃんの動きが止まる。

 

「そっかあんたが峰田か。」

「あ、お前こないだ教室来、てた。」

そっと鉢巻を取ろうと思ったそのときに心操くんがまたもや話しかける。

そっと騒霊現象(ポルターガイスト)で鉢巻を取った。

 

「…A組には馬鹿しかいないのか?」

「あまりにもまんまと引っかかりすぎて我がクラスながらびっくりしているところです。」

私も私で呆れ顔の心操くんと同じ顔をしているだろう。

いやぁほんとにうまくかかりすぎてる。

夢だろうか?

 

「え?どうしましょう本当に。こんな強いんですか?心操くん。」

「初見殺しだけどね。」

いやこれ結構強めの初見殺しでは?という言葉を一旦飲み込んだ。

 

「あ、ちなみにおふたりも引っ叩く前あんな感じでした。」

「僕たち、こんなぼんやりしている状態で騎馬戦やらされそうになってたのかい。」

ドン引きする庄田くんを見て、確かにと思う。

 

「どうするつもりだったんですか?」

「3人とも操って騎馬にするつもりだったけど。」

それ、結構大変なことなんじゃないだろうか?

 

「心操くんってほんっとうに操ろうとする相手だけ間違えたんですね…。」

「本当に後悔してるよ。こういうすぐ洗脳にかかるやつを捕まえるべきだった。」

後悔してるんだ…。

本当に心操くんが洗脳すべき相手は私じゃないよなぁ。とのんびり考えつつ、轟くんと緑谷くんの騎馬を見遣る。

 

「いい作戦だったからあなたでも組んだのに、いつ鉢巻失ったの?」

「わっかんねえよぉ!けどこれでもう失うもんはねぇ!」

そういった峰田くんは障子くんの腕の間から顔をのぞかせる。

 

「障子、フルアタックモード!」

その言葉と同時に障子くんの複製腕が開放された。

あれは、俗に言うおんぶ?

 

「いやそんなこと言ってる場合じゃなくない?」

「たしかに、障子くんの背中の広さがすごい話からするべきかも知れませんね。」

違う違うと尾白くんが尻尾を振る。

 

「あの2組のポイント全力でかすめとるぞ!」

そう言って障子くんは緑谷くんと轟くんの騎馬の元へ走っていった。

 

2組はじりじりとした空気を醸し出している。

 

「飯田、前進。」

飯田くんは轟くんの言葉でふくらはぎのマフラーを吹かす。

 

「八百万、ガードと伝導を準備。」

その言葉でヤオモモちゃんは何かを生成する。

 

「上鳴は…」

「いいよ分かってる!」

上鳴くんの放電で場面制圧を狙ってるのかな。

 

「…手荒に行きます。尾白くんを軸に浮かせるのでおふたりは絶対に尾白くんから離れないでください。尾白くんも捕まえててくださいね。」

「分かった。」

尾白くんを掴むようにして、他は支える程度の力加減で浮き上がる。

 

「しっかり防げよ!無差別放電、130万ボルト!」

「あっぶな…。」

浮き上がった数瞬後に放電が地面を制圧した。

轟くんたちは白い布のようなものを被って事なきを得たようだった。

あれがさっき言ってたガードか。

 

「すみません、急遽上がりましたけど、酔ったりしてませんか?あと尾白くん、体に負担は?」

「ないよ。浮くときは若干右足に負担あったけど。」

うわすみませんと平謝りする。

 

「悪いが、我慢してろ。」

その言葉で地面を見ると、辺り一面が凍りついていた。

 

「なんだ?なにした?!群がる騎馬を轟、一蹴!」

「上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた。流石というか…障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな。」

「ナイス解説。」

 

「ところで相澤はどうやって浮いてんの?」

「あの感じだと遠隔操作で尾白を掴んでんだろ。残りのふたりは浮かせてるっつっても下から支えている程度だろうな。」

うわすっごいばれてる。

 

「なんか思ったより手間なんだね。」

「手間というより、ある程度頑丈な人じゃないと力加減が厳しくて…尾白くんが頑丈でよかったです…。」

 

「一応貰っとく。」

轟くんが橙の髪の少女から数本の鉢巻を抜き取る。

 

「…くっそー!」

「あれ?俺のも?!」

騎馬が騒がしくなってきた。

緑谷くんのバックパックはもう寿命のようだった。

そして、緑谷くんと轟くんの騎馬は氷のフィールドに閉じ込められた。

 

「あっ、バックパックがイカれた!?」

「ベイビー、改善の余地あり。」

 

「あかん、強すぎるよ。逃げきれへん!」

「…牽制する。」

向かってくる轟くんたちめがけて常闇くんの黒影(ダークシャドウ)が襲いかかる。

 

「八百万!」

「はい!」

轟くんのひとことでヤオモモちゃんがガードを作り出して黒影(ダークシャドウ)を防ぎ切った。

 

「八百万さんの創造、厄介すぎる。」

「いや、それ以上に上鳴だ。あの程度の装甲、太陽光ならば黒影(ダークシャドウ)で破れていた。」

なるほど、ダークというだけある、ということか。

 

「そうか、上鳴くんの電光…。」

「奴の放電が続く限り攻めでは相性最悪だ。黒影(ダークシャドウ)が及び腰になっている。」

件の黒影(ダークシャドウ)はぐすぐすと暴力反対を訴えている。

 

「あー!緑谷チーム!もう後がない!」

緑谷くんがフィールドぎりぎりまで足を下げたところでマイクさんのアナウンスを聞いた。

緑谷くんは何かを決意したように常闇くんに話しかけている。

何を話したのかは、聞こえなかった。

 

そして、決意したのは緑谷くんだけではなかったようだ。

 

「みんな、残り1分弱、この後俺は使えなくなる。頼んだぞ。」

「飯田?」

飯田くんは、眼鏡を光らせて、足を踏ん張った。

 

「しっかり捕まっていろ。取れよ、轟くん!トルクオーバー!」

その言葉とほぼ同時に、飯田くんのふくらはぎのマフラーが唸り声と蒼炎を上げた。

 

「レシプロバースト!」

「は?」

そのたった一瞬で轟くんは、緑谷くんの鉢巻を奪い取った。

 

「な、何が起きた?!は、速っ!飯田そんな超加速があるなら予選で見せろよ!」

「流石、足の速さナンバーワンの飯田くん。」

彼の口ぶりからさっするに秘中の秘なのだろう。

 

「なんだ、今の。」

「トルクと回転数を無理やりあげて爆発力を産んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメイトにはまだ教えていない裏技さ。」

呆然と振り返る緑谷くんを見据えて、飯田くんは笑った。

 

「言っただろ緑谷くん。君に、挑戦すると。」

観客の歓声が湧き上がる。

 

「逆転ー!ライン側の攻防!その果てを制した轟が1000万!そして緑谷急転直下の0ポイント!」

マイクさんの声を聞いて、緑谷くんが騎馬に指示を飛ばす。

 

「これくらい鉢巻あれば、予選通過くらいならできると踏んでるんですけど、目立ちに行きます?」

「いや、必要ないよ。このまま空中キープしていこう。」

りょうかいです、と言ってそのままの高度をキープする。

ぽたりと汗が落ちた気がした。

 

「…相澤?」

「…、え?なんですか?」

いや、なんでもない。と心操くんは前を向き直す。

なんだよう、思春期か?

 

…冷静に考えて高校1年生は思春期だった。

 

「取ったあぁあ!」

そこからわずかの時間を置いて、緑谷くんの声が聞こえた。

 

「残り11秒!こちらも怒りの奪還!」

「待ってください、この鉢巻、違いませんか?」

サポート科の子が何かを言う。

()()

1000万じゃないと言うことだろうか。

 

「万が一に備えて、鉢巻の位置は変えていますわ。甘いですわ緑谷さん!」

「轟くん、しっかりしたまえ。危なかったぞ。」

 

「なっ!緑谷チーム1000万奪還ならず!そろそろ時間だ!」

無情にもカウントダウンが始まった。




障子くんってなんだかんだで声かけたら返事してくれる子だと信じています。
弓月ちゃんは心操くんに声かけられて返しちゃうなんてお人よしなのでは?とか思っていますが、この時点で個性バレてないのでそりゃあ答えちゃうよね、っていう感じです。
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