「と言うわけでトーナメントのメンツに変更は無し。抽選の結果組み合わせはこうなりました!」
ミッドナイトさんの声と共に歓声が上がる。
第1試合は緑谷くんと心操くん。
ふたりともあまり素の力がある方じゃないけど、心操くんの個性が割れてなければもしかしたら、もしかするかもしれない。
クラスメイトを差し置いて他の子を応援するのも気が引けるけど、騎馬戦のよしみってことで、許してほしい。
ごめんね、緑谷くん。
「あんただよな。緑谷出久って。」
「うわ、あぁ!」
いつのまにトーナメントを見ている緑谷くんの背後に忍び寄ったのか、心操くんが緑谷くんに声をかけている。
「この人…。普通科の…?」
「1回戦、よろしく。」
そう声をかける心操くんに返事しようとした緑谷くんの口元に、障子くんの複製腕が絡みついた。
「…緑谷。」
心操くんはにやりと笑って立ち去っていった。
どうしてこの子は悪役みたいな行動をとってしまうんだろう。
いい子だと思うんだけどなぁ。
「障子くん。どうしたの?」
「奴と話さないほうがいい。」
障子くんのことは確かに洗脳したけど、まさかたった一度でタネが割れるなんてことあるだろうか?
「え?」
「おそらく奴の個性だろう。言葉に答えると、意識を奪われる。」
普通にバレていた。
ごめんなさい心操くん。これは私のミスだ。
というか障子くんが答えるとは思わなかったんだよなぁ。
梅雨ちゃんさえ洗脳しちゃえば
いやでもそんなわざわざ教えちゃうのか…。いや教えるか。そうだよね、他クラスの個性気になるよね…。
第2試合は轟くんと瀬呂くん。
「ねえ、俺轟に勝てると思う?」
「なんでそれ私に聞くんですか…?」
つんつんと私の肩をつついて瀬呂くんが質問してくる。
普通に考えれば轟くんの勝ちだろう。
直接的な戦闘における攻撃力が突出している。
でもそれを私に聞いてくるということは現実を知らされたいと思っているわけじゃないのだろう。
「瀬呂くんが勝てるかはわかりませんが、勝って欲しいなとは思いますよ。」
「よっしゃやる気出たわ。」
にっと笑った瀬呂くんは腕を伸ばしながらどこかへいってしまった。
第3試合は上鳴くんと庄田くん。
「ねえ相澤、庄田ってどんな個性?」
「騎馬戦で使ってましたよ。気が付いてないのなら内緒です。」
上鳴くんに聞かれて唇に人差し指を当てる。
心操くんの個性がバレてしまった以上、庄田くんの個性まで私のせいで対策されるわけにはいかない。
「ええー!クラスメイトじゃん教えてくれてもよくねえ?」
「私まだこの服装根に持ってますけど…?」
やたらと短いスカートの裾をぴらりと持ち上げる。
ぴし、と上鳴くんが固まった。
「と言うわけで頑張ってくださいね!」
「くっそー!尾白に聞く!」
尾白くんなら教えてくれるかもしれないですね。なんて呟いて上鳴くんの元から去る。
第4試合は飯田くんと、発目さん?
消去法的に行くとあのサポート科の子かな…?
「飯田くんってあなたですか?」
「ん?いかにも、俺は飯田だ。」
思った通りの女の子が飯田くんに話しかける。
「あぁわよかった。実はですね。」
発目さんはゴーグルをぴかぴかと瞬かせて飯田くんに何かを話し始める。
…色々な機械が出てきた。
……更に色々な機械が飛び出してきた。
カオスだなぁと思って目を逸らした。
第6試合はヤオモモちゃんと常闇くん。
「全力でいく。」
「望むところですわ。」
常闇くんとヤオモモちゃんがばちりと火花を散らした。
ヤオモモちゃんが緊張して見えるのが気持ち心配で眉が下がる。
第7試合は切島くんと尾白くん。
「よろしくな。切島。」
「よろしく!どっちが勝ってもお互い恨みっこなしだぜ!」
にっと笑って尾白くんの方に拳を突き出す切島くんが眩い。
勿論。と尾白くんが言ってこつんと拳をぶつけるふたりを見てミッドナイトさんのいう青いというのはこういうことなのかなと思った。
最後の試合は麗日ちゃんと爆豪くんだった。
「あぁ?麗日ぁ…?」
呟く爆豪くんの後ろでチア姿の麗日ちゃんが真っ青になった。
心配でしかない。
今の段階での麗日ちゃんの個性で爆豪君に勝つ作戦、というとかなり絞られてしまうのが現実だと思う。
つまり私は第5試合に配置された。
私の相手は、そう。
「弓月、負けないからね!」
「私も負けませんよ。」
私の相手は三奈ちゃんだった。
「よーし!それじゃトーナメントはひとまず置いておいて、イッツ束の間!」
マイクさんの声に合わせて花火が空に上がる。
「楽しく遊ぶぞ、レクリエーション!」
「じゃ、せっかくチアの衣装着たんだし私たちはチアするよー!」
マイクさんの声と共に、チアリーダーの方々と並んで踊る。
「まずは借り物競走だ!」
私たちが踊っている間にレクリエーションが進んでいる。
「誰かー!カバン貸してもらえませんか?」
「これ!どうぞ!」
瀬呂くんの声かけに観客席から身を乗り出した男の子が鞄を差し出す。
「ありがとさん!」
しゅるしゅるとテープを射出してカバンを観客席から巻き取る。
「ネコー!猫をお願いします!」
砂藤くんの声を聞いて、猫なんてここにいるのか?と不思議に思う。
「教科書!教科書持ってる人いる?」
「これでいいですかー?」
上鳴くんの声に応じた観客の中学生くらいの女の子が教科書をグラウンドに落とす。
「ありがとうございます!」
その教科書を拾ってぺこりとお辞儀をする上鳴くんを横目に見る。
「む、無理だろ…。」
カードを拾ってわなわなと震える峰田くん。
いったい何が書いてあるんだ…。
「やだねえ。レクリエーションだというのに本気になって。ほんとA組の連中は空気が読めないっていうか…。なんていうか…。」
壁に寄りかかりながらぷちぷちと呟く物間くんの元に橙の髪の女の子が駆け寄る。
「物間!やる気ないなら一緒に来て!」
「どうして?」
ぴ、と無言で出されたカードにはひねくれ者と書かれていた。
それを見て回れ右しようとした物間くんを彼女は巨大化した手のひらで捕まえた。
「ははっ!拳藤。選ぶ相手を間違えていないかい?」
「大丈夫合ってる。」
拳藤さんはそのまま持ち上げてすたすたとゴール地点へ向かっていった。
楽しそうに笑うみんなの顔を見て微笑ましさを覚える。
案外トーナメントに出る生徒はレクリエーションに出てきていないみたいだ。
まあそうだよなぁと納得する。
私もこんな服に身を包むことにさえならなければ休憩してたなぁと思ってスカートの裾を摘む。
そもそもこのスカート短すぎない?
「相澤ちゃん楽しんどる?」
「楽しんでますよ。麗日ちゃんは楽しそうですね。」
楽しいよ!と笑う麗日ちゃんはきっと本当はかなり緊張しているのだろう。
いつもより汗をかいているように見えた。
「ヤオモモちゃん。」
「弓月さん。どうしたのですか?」
ポンポンを縦に振るだけとなっていたヤオモモちゃんの横へ位置をずらす。
「ちょっと疲れちゃって。」
「あら、タオルでも出しましょうか?」
汗を拭う真似をして笑ってみせる。
「や、本戦前なのにそこまでしてもらうわけにはいきませんよ。」
冗談めかして放った言葉でヤオモモちゃんを消耗させるわけには行かないと慌てて腕を胸の前でクロスさせる。
「…本戦、緊張しますわね。」
「そうですね。だんだん怖くなってきました。」
それでも空は綺麗に青くて、観客の歓声も響き渡っていた。
レクリエーションが終わって休憩時間に入った。
セメントス先生がグラウンドをセメントのフィールドへとぬりつぶしていく。
そこからしばらくして、マイクさんの声が響き渡る。
「サンキューセメントス!ヘイガイズ!アーユーレディ?」
観客達の歓声が割れんばかりに響いた。
お雑煮も好きですが、七草粥が好きなので今日はいい夜ご飯でした。