これは、ゲームであっても遊びではない。
茅場晶彦
第一層 草原
「はぁぁぁぁ!!」
掛け声と共に剣を構えた少年と同時に剣が光る。
少年は光った剣の動きに体を動かしながら目の前の猪型モンスターに振り下ろす。
「ブモォ!」
振り下ろしたその剣は猪にヒットし、HPを減らす。
やがてHPゲージが無くなり、猪はガラス状になって四散する。
少年の名は『リュウ』
決して昇○拳を打つ格闘家ではない。
あと光る剣はこの世界でソードスキルと言われるものだ。
それはさておきリュウは自身のパートナーを方を向き危険が迫っていることを知らせる。
「コハル!そっち行った!」
コハルと言われた少女は近くに来ていた猪型モンスターに視線を向け、そちらに自身の持つ短剣を構え、ソードスキルを発動して一閃
その一閃が猪にダメージを与え消滅させる。
猪がいなくなったことを確認したリュウはコハルの方へ駆け寄る。
「最初の頃と比べて上手くなったじゃん!」
「そっちだって上手くなってたよ!2人で試行錯誤したおかげだね!」
2人ともにこのゲーム、VRMMORPG SAO『ソードアート・オンライン』βテストで知り合った初心者同士であり、右も左もわからない状況で出会い、初心者同士ということで協力し合いβテスト最終日を迎えこうして狩りを行っていたということである。
「そろそろβテストを終わっちゃうなぁ........正式サービス開始まで待たなきゃいけないのはキツイなぁ。」
「そだねー。正式版でも頑張るぞぉ!」
「コハルは元気いっぱいだねぇ」
などと会話をしていたらコハルが少し前に歩き夕陽をバックにしてこちらに語りかけてくる。
「ねぇ、正式版でも一緒にプレイしてくれる......?」
不安そうな顔をしてこちらを見てくる。
それに対し、リュウは
「もちろんさ、いろんな人がいるだろうけどやっぱり付き合いが長い人をいた方が気が楽だし楽しいからな」
それを聞いたコハルは嬉しそうな顔をする
「やった!じゃあまたね!」
そうして2人はログアウトして現実世界に帰る。
「.............あっ、待ち合わせ場所決めてなかった。まあいっか」
そして2022年、11月6日
運命のサービス開始を迎える。
「よし、時間だな」
リュウ改め『柊 竜輝』はSAOに入るための機械、ナーヴギアを被りその言葉を口にする。
《リンク・スタート》
第一層 始まりの街 転移門
「おぉ、たくさん人がいるなぁ。この中から探すのキツすぎない?まあ探さないとダメだよなぁ」
〜少年探索中〜
探し始めて5分ほど経っただろうか。広場の端の方にコハルを見つけそちらに駆け寄ると彼女の顔が笑顔になる。
「やっほーコハルー」
「リュウ!ようやく会えたよ、人がたくさんいて全然見当たらないから心配したんだから」
顔を少し膨らませながら言ってくる。それを俺は軽く宥める。
「まあ会えたんだしいいじゃん。それより早くいこうぜ。急がないと草原にたくさん人が来て自由に練習できなくなるぞ」
「それもそっか。じゃあまたバトルまだ下手だから頑張る!」
草原エリア
街から少し離れたとこまで歩いた俺たちはここら辺で練習をすることを決めた。
そこからコハルの練習を始めたがやはり期間が空いたためかあまり上手くなっていない。ついこけて尻もちをついてしまうほどだ。
どうしようかと思っていたところ1人のプレイヤーが現れた。
彼の名はクライン。
彼曰く動きがぎこちないとのこと。それは俺も感じていたしそれをどうにかしようとしていたことを伝えた。
すると彼は少し考えた素振りからキリト先生なる人物に教えてもらおうと言った。
「こいつがキリト先生。俺も初心者だからキリト先生に色々と教わってんだ。」
キリトと言われたイケメン顔を青年は呆れたように言う
「先生ってなんだ先生って。何か用か?」
「いやーキリト先生や。そこのかわいこちゃんにちょいとレクチャーしてやってくれよ」
キリトは少し考え顔を上げた。
「それぐらいだったら全然いいぜ。使ってる武器はなんだ?」
「あ、短剣です」
「短剣か...........分かった。じゃあまず〜〜〜」
「俺たちはあっちでレベル上げしようぜ。あ、えーとなんて名前だ?」
「はぁ.......俺はリュウ。よろしくな」
「おう!リュウか、いい名じゃねぇか。かっこいいぜ?まあ俺様のクラインのほうがかっこいいけどな!」
コハルのレクチャーの間、俺とクラインは狩りをしてレベル上げと練習をした。
3時間ほどたっただろうか。太陽が沈み夕陽が差し込む時間になりコハルたちと合流した。
「リュウー色々教えてもらったよ!」
「リュウ、コハルのレクチャー終わったぜ。真面目でしっかりと実践するからちゃんと強くなるぜ」
「そうか。コハルを任して正解だったよ。ありがとう」
「いいよ、これぐらい全然。初心者に教えるのも悪くないしな」
「いいねぇ。あっそうだ。お前ら時間大丈夫か?俺は腹が減ったから落ちるけどどうすんだ?」
「俺はまだやるよ」
「俺もまだ大丈夫だな。コハルと一回街に帰ってアイテム整理するよ。それでいいか?」
「うん。それでいいよ」
「じゃあ俺は5時半でピザを予約してるから落ちるわじゃあな。またやろうぜ」
クラインはそう言ってメインメニューを開いてログアウトしようとする。
「あれ?ログアウトボタンがねぇよ。」
「よく見てみろよ」
「.........やっぱどこにもねぇよ」
「メインメニューの一番下に........あっ.......」
それを聞いた俺たちもメインメニューを開く。
やはりログアウトボタンがない。
「ねえだろ?」
「うん。ない」
「コハルはあるか?」
「ううん。こっちにもないよ」
まさかバグか?
「まっ、今日は正式サービス初日だかんな。こんなバグも出るだろ。今頃運営は半泣きだろうな」
運営もそうだが.......
「クライン。お前もな」
「えっ?」
「今、5時25分だけど」
それを確認したクラインは頭を抱えて
「あっ......俺様のテリマヨピザとジンジャーエールがぁ!!」
「さっさとGMコールしろよ」
「とっくに試したんだけど反応ねえんだよ。他にログアウトする方法ってなかったっけ?」
「ない。プレイヤーが自発的にログアウトするにはメニューを操作する以外の方法はない」
「そんな.......」
コハルが不安そうな顔をする。
俺は心配そうなコハルの手に手を乗せる
「大丈夫だって。すぐ直るさ」
「そうだね.......」
「現実世界の誰かがナーヴギアを外してくれるかだけど....」
「でも俺一人暮らしだぜ。おめえらは?」
「俺は両親と兄がいる」
「私は両親が」
「母親と妹がいる。だから晩飯の時には気づいてもらえると思うけど........」
するとクラインがキリトに駆け寄る
「キ.....キリトの妹さんっていくつ?」
「あ......あいつ運動部系だしゲーム大嫌いだから俺らみたいな人種とは接点ないよ」
「そんなこと言わずに........」
食い下がるクラインにキリトは股間を蹴る。
おう......痛そうって思ったけど痛みはないんだっけか
クラインも悶えるが痛みがないことに気づく
そんな姿を見てコハルも俺も
少し笑った。
「それよりやっぱり変じゃないか?」
「そりゃ変だろうさ、バグなんだしよ」
キリトは考えながら喋る
「ただのバグじゃないさ。ログアウトできないなんて今後のゲームの運営に関わる大問題だよ。こんなの一度サーバーを停止して全プレイヤーを強制ログアウトすればいいのに.........」
全員の顔が暗くなる
その時、どこからかゴーン、ゴーンと重い鐘の音が鳴る。
すると全員の体が青い光に包まれる。
「コハル!」
「リュウ!」
手を伸ばしてコハルの手を掴む。
青い光に包まれた俺たちは目を開けると始まりの街の広場に移動していた。これは転移か?
それはそうと
「コハル大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。でもビックリしたね。いきなりここに飛ばされるなんてね」
コハルの無事を確認した俺は安心した。でも何か嫌な予感がする。
そんな予感を感じていると周りから声が上がる
おい上を見ろ! なにあれー?
その声に従い俺は上を向く。
そこには赤い警告アナウンスがあり、それが次第にあたり一面の空を覆いそこから赤いローブが現れた。
「あれはゲームマスターか?」
コハルの手を強く握る
コハルも握り返して一緒にそのローブを見る。
そこからローブはこのゲームの開発者、茅場晶彦であり。そのゲームの真相が語られた。
一つ、ログアウトボタンが無いのはSAO本来の仕様であること。
二つ、外部の人間がナーヴギアの停止、あるいは解除を試みるとナーヴギアが脳を焼き切ること。
三つ、このゲームに蘇生手段は無く、HPがゼロになったときはそのプレイヤーは現実の世界でも死ぬこと。
四つ、このゲームからの脱出方法は第百層のボスを倒すこと。
衝撃の真実に俺たちは唖然とするばかりだった。
「それでは最後に諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」
プレゼント?...........これは手鏡?
すると周りのプレイヤーが青い光に包まれ始める。
また転移か!?
俺たちも光に包まれた。
どこかに転移されたのかと思ったが転移じゃないようだ。
じゃあ一体何が...........
「リュウ......?なの?」
コハルにそう言われる
「そうだけど........まさか!?」
手鏡を見て俺はどうなっているかを把握する。
身長が下がっている......なんでだ?まさか、現実の姿になっているのか!?
周りを見てみれば他のプレイヤーも現実の姿になっている。
キリトも可愛らしい顔の男子になっているし、クラインも野武士面の顔になっている。
でもコハルはなにも........まさか!?
「ねぇ、コハルってもしかして現実の姿そのままなの!?」
「う、うん。設定とかよく分からなくてとりあえずそのままに......」
「おまえらも現実の姿になってんのか!コハルちゃんは何も変わってないけど、お前は.......なんかちっちゃくなったな?」
「気にしてるから言わなくていい!」
「おお......すまんすまん。でもなんで」
「スキャン......ナーヴギアは顔をすっぽり覆っているから顔の形を把握できるんだ。でも身長や体格は.......」
「キャリブレーションだっけ。初めてログインする時にやったやつ」
「でも、でもよぉ。なんでだ?どうしてこんなことを」
キリトは茅場を指差して言う
「どうせすぐ答えてくれるさ」
茅場の演説は続き、目的はもう達成されたこと。この世界を作り、干渉するためにSAOを作ったこと。そして今、全て達成したことを言った。
そうして赤いローブは消滅した.........
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
どこからか悲鳴が聞こえてくる。それに反応していろんな罵詈雑言が飛び交う。
ここにいてはいけない。コハルを連れてどこかに行こう。
俺は涙を流すコハルの手を引き路地裏に入った。
「私たち帰れないんだ........ゲームに閉じ込められちゃった.........」
どうして、どうしてと涙を流して膝をつくコハルを俺は抱きしめる。
背中をさすりながら俺はこう言う
「大丈夫、大丈夫だよ。俺が絶対にコハルを守ってみせる。絶対に現実世界に返してみせる」
「うん.........うん...........ありがとう..........」
しばらく俺はコハルを宥めた。
しばらく経ってからベンチをコハルを座らせる
「どうだコハル?落ち着いた?」
「うん、ありがとう。迷惑かけてごめんね。こんな時にこそ冷静にならなきゃいけないのに..........」
「いきなりこんなことになったんだ。仕方ないよ。もう今日は宿で休もう」
「うん、そうだね。色々ありすぎて疲れちゃった..........
ねぇ、リュウ.......」
「なに?」
「宿の部屋なんだけどね...................................一緒の部屋じゃダメかな......?」
「................えっ?」
拝啓、お母さん、お父さん。命の危機に晒されることになったけど女の子に一緒の部屋に泊まろうと言われました。危機感を感じなきゃいけないのに俺の心はテンションマックスです!!
頑張った.......第一層終わるのかなり先かも........