・個人の想像のもとに書いているので、原作と一部乖離した部分が生じるかもしれません。
「わが名は ミルドラース…… 魔界の王にして 王の中の王。」
「そ その……私が…… やぶれる……とは……」
今回も同じセリフだ…思わず舌打ちをしたくなってしまう。何かを忘れているような…そんな気がしてならない。
レックスの天空の剣の一閃を受けた魔王ミルドラースの体から幾条もの光が放たれる。
魔王討伐。勇者として生を受けたレックスの使命はこれにて達成された。魔王が消え去った空間から旅の扉が現れ、元の世界へと帰っていく。
その後はマスタードラゴンの背に乗ってお世話になった人たちへ挨拶回りを行い、最後にグランバニアに戻って国を挙げて祝勝会を行い-----------
「おお 神よ! この者たちに 尊き ご加護の あらんことを!」
まただ。気付いたらグランバニアの教会前に戻されている。おそらくまたミルドラースと戦う直前の時間まで戻されたのだろう。
「今回もダメかぁ~これで何回目?」
「6回目かな。やっぱり倒し方とかじゃないのかも」
子供たちが今回の戦闘の振り返りを行っていた。実はループを認識しているのは僕だけじゃない。
この現象を認識しているのは僕以外には妻のビアンカと子供のレックス、タバサの家族4人だけ。他の仲間や城の住人にそれとなく聞いてみたが、倒したことを覚えているのは一人もいなかった。
「ねぇアベル?少し確認したいことがあるんだけど」
「ん?どうしたのビアンカ。前回と何か違うところでもあった?」
世界ループの脱出を決めてからはいろいろなことをした。新しく出現したダンジョンの地下深くにいたエスタークを倒したり、すごろく場の景品を回収して回ったりもした。1回目のループ後は世界が大きく変化していて、その変化を知る為に世界中をもう一度見て回ったほどだ。
そのこともあり、ループ直後に感じた変化は家族間で共有するようにしていた。
「今回の挨拶回りでヘンリーさんにおかしな所はなかった?」
「ん~特に感じなかったかな?いつも通りマリアさんやコリンズ君と一緒に話して終わったけど、今言われてみれば何かそわそわしてたような…」
ヘンリーとは長い期間一緒に旅していたこともあり、今では良い友人関係を築けていると思っている。だが今ビアンカに言われるまではその友人の小さな変化に気付くことができなかった。
「ルドマンさんの所に行った時に少しフローラさんと話をしたんだけど…たぶん彼女はループを認識してると思うわ」
想定外だった。広く知らせるにしても無用な混乱を呼びかねない内容だったので、あちら側からアピールしてくれたのは正直とてもありがたかった。
「多くのループを起こしたことで私たち以外にも違和感を感じた人がいるかもしれないわ。だからこの機会に改めて世界を巡ってみない?」
正直ここ数回は手段を変えながら連続して魔王討伐を行っていたし、子供たちのご褒美もかねて世界を巡りながら変化を知るのも悪くないかもしれない。
もしかしたらこのループを抜けられる手がかりを得られるかもしれないし、正直僕も魔界の戦闘はうんざりしていたところだ。
「…よし。レックス、タバサ?しばらく勇者業はお休みだ。まだ解決はしてないけど、頑張ったご褒美にみんなでちょっとした旅行にでも行こうか」
僕の言葉を聞いた子供たちは少し驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔になってくれた。
「ちょっと不謹慎かもですが…楽しみです。今まではそんな余裕もなかったですから」
「だよね~。魔王討伐の旅以外だと、お父さんたちを探してる時くらいだったかな?どっちも観光って感じじゃなかったもんね~」
……このループの件が無事に片付いたら思いっきり甘やかしてやろう。
せめて父親らしいことをしてあげたい。
その為の手がかりを得るために、簡単な荷造りを終えて数日後にグランバニアを出発した。
今後は各地の戦闘データありキャラを中心に会いに行く予定です。