箱厨のポケモン小説ボックス   作:箱厨

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続けて一気に後編へ
ここら辺もネタバレ注意……いや、もうタグ付けするべきかなこれ?


愛の篝火に恋を焼べよ~熱情、延焼~

スターダスト大作戦から数週間。アカデミー校長のクラベルより、スター団がSTC(スタートレーニングセンター)の運営を任されてからというものの、メロコらボスは忙しない日々を過ごしていた。

クラベル校長はスター団のおかげで今のいじめのないアカデミーがある事を理解し、スター団への解散通告を取り下げた。しかし、これまで団がしてきた数多くの学則違反は見逃せない為、奉仕活動をすることを命じた。その奉仕活動こそがSTCだ。

さて、先ほどボスたちは忙しない日々を送っている、と語られた。忙しくも充実した日々を送っていることで、毎日が満たされているのだ。

 

……ただ、一人だけを除いて。

 

「…………」

 

アカデミーの一室にて、マジボスである少女・ボタンを含むスター団のボスが一同に結集している。これは月に一度行われる報告会で、どのチームにどれくらいの挑戦者が来たか、それら挑戦者の強さはどれくらいのものか、という話し合いの場である。

 

「…………」

 

「コソコソ(……ねぇ、メロコ、本当に何があったわけ?)」

 

「ヒソヒソ(いや、ボク知らないけど……シュウメイ、何か知ってる?)」

 

「ボソボソ(拙者も何も知らぬでござる……)」

 

スター団のボスのうち、男組が顔を寄せ合ってヒソヒソと話している。内容はズバリ、メロコのことだ。

メロコは唯一、カチコミ時に侵入者を撃退したことがあるボスだ。それ自体は、よくやったくらいには思ったが、問題は撃退時に使っていたポケモンだった。

スター団の誰も知らないメロコの切り札……それは、「いざないポケモン・シャンデラ」だった。強力な特殊能力を持つシャンデラのオーバーヒートで、タイプ相性で不利なウェルカモを一撃で倒したと聞いた時、団の全員が一番に思ったことは「そのシャンデラ、どこで捕った?」である。当然、シャンデラのことを聞き出そうとした者はいた。だが、メロコはシャンデラについては一切口を割らなかった。

それどころか、シャンデラの話を振ると顔を真っ赤にしたりいきなり落ち込んだり、また真っ赤になって暴れたかと思えばシャンデラが入ったダークボールを愛おしそうに抱きしめたりと、いろんな意味で近づき難かったのだ。

こんなにも一人百面相をするメロコに、当然だが付き合いの長いボスたちは疑問を抱いた。ただ、仲間であるボスたちに対しても似たような反応を返すので、時間とともに聞き辛くなってしまったのだ。

 

「コソコソ(あれ、絶対に普通じゃないって。あんなメロコ、俺初めて見たんだけど)」

 

「ヒソヒソ(まぁ、でも悪いことじゃないっしょ?実際、メロコのシャンデラってバカ強かったじゃん)」

 

「ボソボソ(たった一体で我らのポケモンを半数も倒す火力……実に見事でござった)」

 

「コソコソ(問題はあのシャンデラをどこで捕まえたか、だけど……)」

 

「ヒソヒソ(なんでかメロコ、教えてくれないんだよね……)」

 

「ボソボソ(あのシャンデラに、メロコ殿の強さの秘訣があるのでござろうか……)」

 

「……オルちゃん、ピーニャくん、シュウメイくん。さっきからコソコソとなんの話をしてるの?」

 

「え"っ」

 

「あ、いや……な、なんでもないよビワちゃん!」

 

「これは男同士の密約ゆえ……」

 

「そっか」

 

ビワに話を振られて焦った三人だが、なんとか誤魔化すことができた。……ボタンだけは、三人をジト目で見ていたが。

 

「そういえばメロちゃん……メロちゃん?」

 

「……っ!ぁ……な、なんだ、ビワ姉?」

 

「さっきからどうしたの?なんだかボーッとしてるみたいだけど……」

 

「いや、ボーッとなんて……」

 

メロコは否定していたが、実際メロコは話し合いの間ずっと上の空だった。全員から注目され、メロコはどことなく居心地が悪くなった。

 

「……シャンデラ」ボソッ

 

「なっ……!」

 

ボソリと呟かれた、オルティガの言葉。しかし、しっかりと耳に届いていたメロコはかぁっ、と顔を赤くする。

 

「いい加減、教えてくれても良くない?あのシャンデラのこと」

 

「まぁ、確かに気にはなるよね。パルデアにはいないポケモンだし」

 

「……メロコ殿、無理にとは言わぬ。ですが、拙者達は同士……仲間に隠し事をされると、些か寂しいでござる」

 

「うっ……」

 

メロコは答えに窮した。教えること自体はメロコ自身何も問題はない。ただ、教えるためにコマツとの出来事を振り返ると、なぜか落ち着かなくなってしまう。特に最近はメロコ自身、言葉にできない自分の感情に振り回されっぱなしで、どう説明していいのかわからなかった。

 

「……みんな」

 

事態を見守っていたボタンが、控えめに声を上げた。マジボスであるボタンの声掛けだけあって、全員が一斉にボタンの方へと振り返る。

 

「報告に関しては資料で受け取ってるし、なんかメロちゃん疲れてるっぽいから、今日はもう解散しよっか」チラッ

 

「……!うん、そうだね!さすがボタンちゃん!それじゃあ、私はメロちゃんを送っていくからお先に!お疲れ様でスター!」

 

「あっ、ビワ姉……!」

 

一瞬のアイコンタクトですべてを察したビワは、メロコの腕を取るとそのまま引っ張っていき部屋を出ていった。

腕を引かれ続けてしばらく……ようやく足を止めたビワを、メロコは困惑気味に見上げた。

 

「えっと、ビワ姉……?」

 

「……メロちゃん、最近は本当に上の空になってるよ。本当に大丈夫?」

 

「…………」

 

「何かあったなら、話を聞くよ?同じ女同士だし、悩みは聞くよ!」

 

「ビワ姉……実は……」

 

メロコは少しずつ、ポツポツと話し始めた。

 

「前に、一週間くらい連絡できなかったこと、あるだろ?あの時さ、油断してキノココの胞子を浴びちまってさ……」

 

「えぇ!!だ、大丈夫だったの!?」

 

「あぁ……通りがかった人が、助けてくれた。そいつはコマツって言うんだけど……コマツ、凄くってさ」

 

「うんうん」

 

「オレより年上ってのもあるんだろうけど、なんでも知っててさ……オレがキノココの胞子で動けねぇって知ると、すぐに症状に効くカレーを作ってくれたんだ。きのみがいっぱい入ったやつで、ガラル地方ではメジャーなんだってさ。でも、胞子の影響で手足も痺れてちゃんと動かなくて、でもコマツは先にオレにカレーを食べさせてくれてさ。……あ、あーん、なんて、あいつなんの恥ずかし気もなくしてきやがってオレばっかり焦っちまって、でも早く元気になれっていつも励ましてくれてて、スゲー嬉しかった」

 

「うんうん……」

 

「コマツってすっげー聞き上手でさ、スター団のこととか全部喋っちまったんだけど……そしたらあいつ、オレの頭を撫でてくれて『よく頑張ったな』って言ってくれたんだ。それで、『やりすぎはよくないけど、主義主張を通すには力も必要だ。だから、スター団のこと、いじめのこと、メロコたちは何も間違っちゃいないよ。校則違反って意味じゃあ行動は褒められたものじゃないけど、その気持ちは決して間違いなんかじゃない。よく頑張ったな、メロコ』って言ってくれてさ……。オレ、スゲー嬉しかった。なんだか、自分が認められたみたいでさ……」

 

「うんうん……?」

 

「コマツは将来、料理人になりたいんだって。でも、コマツのほのおポケモン、めちゃくちゃ鍛えられててさ……あの時のオレじゃ、絶対に勝てなかった。バトルは好きじゃないとか言いながら、強くなる必要ないのにポケモンはめちゃくちゃ鍛えてて、それでオレ、聞いたんだよ。"なんで強くなるんだ?"って。そしたらコマツはさ、『俺自身が強くありたかったんだ』って言ったんだ。『俺が俺の人生をありのままに生きる……それを止める権利なんて、誰にもない』……あいつの言葉、かっこよかった。オレも、そうなりたいなって思った……」

 

「うーん……?」

 

「あとは、その……コマツが俺のことを……か、"可愛い"とか言い出して……!でも、コマツがお世辞とかで言ってるわけじゃないってのもすぐに分かって、オレ、わけわかんなくなって……あ、でもコマツってパルデアには来たばっかりらしくて、サンドウィッチを作るのに食パンを用意したんだぜ?パルデアのサンドウィッチはバゲットで作るんだぞって教えてやったら、凄く興味津々だったな……だから、実際にあいつが用意した材料でサンドウィッチを作ってやったんだ。そしたらコマツのやつ、『美味しい!毎日でも食べられそうだ!メロコはいいお嫁さんになれそうだな』って……し、シラフで言うんだぞあいつ!信じられねぇよな!?でも、それもやっぱり本音で言ってるってわかるから、その……うぅ、この話は無しだ!次行くぞ次!」

 

「????」

 

ビワは こんらん している!

 

「(変だな……私、メロちゃんの悩みを聞いてたと思ってたのに、いつのまに惚気話を聞かされてたの……?)」

 

あれー?と心の中で首を傾げながらもメロコのトークは止まらない。まるで特性「じょうききかん」ですばやさを限界まで上昇させながらも「ニトロチャージ」を止めないトロッゴンの如くだ。

 

「それでさ、スター団がSTCを任せられるようになって、結構忙しくなっただろ?オレ、なんとか時間を作ってもう一度西3番エリアに行ったんだ。また、会えるような気がして……。それで、チャンプルタウンを歩くコマツを見つけたんだ。……でも、コマツの横には知らない女がいた。炎のような赤い髪を真っ直ぐに降ろした、綺麗な女の人……コマツと並んで歩いてて、すっげー似合ってるなって思って……。そしたらさ、胸の奥がグッ、って苦しくなったんだ。見てるのも辛いのに目を離せなくて、でもってますます胸が苦しくなって……"なんでオレじゃないんだ"って、何度も考えた。でも、なんでそんな事を考えるのか、自分でもよくわからなくて……もうどうすればいいのかわからなくて、頭ん中がぐちゃぐちゃになった……」

 

「…………」

 

「意味わかんねーのに後をつけて、結局コマツがその女にソウブレイズとグレンアルマを譲るところまで見て、ハッコウシティから船に乗って女がいなくなるのを見て……それから、コマツを問い詰めた。あの女……コマツの幼馴染で、他所の地方でジムリーダーやってるんだって言ってた。『パルデアのほのおポケモンに興味あるようだったから、案内も兼ねてポケモンを譲るって約束だったんだ。それ以上でも何でもないぞ?』って言われて、やっと安心できた。……でも、今度はなんで安心できたのかがわからなくって……。オレ、いったいどうしちまったんだろな……なぁ、ビワ姉……ビワ姉?」

 

「( ゚д゚)」

 

悪役レスラーを彷彿とさせるフェイスペイントをしているにも関わらず、今のビワの顔は見事な「マヌケ面」を晒していた。そうして数秒ほど硬直したあと復活したビワは、今度はキラキラと輝いた目でメロコを見つめた。

 

「メロちゃん!」

 

「な、なんだよ……」

 

「それはっ!恋だよっ!!」

 

「こ、こい……コイキング?」

 

「流石にその誤魔化し方は怒るよ?」

 

「ご、ごめんっ!」

 

ビワの目が笑っていなかったので、ガチだと察したメロコはすぐに謝罪した。

 

「でも、恋なんて……オレは……」

 

「メロちゃんはきっと、そのコマツさんが大好きなんだよ。……あのね、メロちゃん。メロちゃんはコマツさんの幼馴染さんに嫉妬したんだよ。好きな男の子が違う女の子と一緒にいると、凄く嫌な気持ちになるの。メロちゃんも、そうだったでしょ?」

 

「それは……!……ちが、わない……」

 

咄嗟に否、と答えようとして、しかし否定するととても悲しい気持ちになりそうだったので、弱々しくもメロコは肯定した。それを受けたビワもまた、うんうんと頷く。

 

「私もさっきメロちゃんから聞かされただけだけど、コマツさんがすっごく素敵な男性なんだってことが伝わってきたよ。それと、さっきの話でだいたい予測がついたんだけど……あのシャンデラって、コマツさんからもらったんだよね?」

 

「……うん。タマゴをくれたんだ、ヒトモシの。オレとの縁が続くようにって……」

 

「キャーッ!すごいロマンチック!いいなぁ、メロちゃん羨ましい!」

 

「う、羨ま……!?だ、ダメだ!いくらビワ姉でも、コマツは……!!」

 

「お、落ち着いてメロちゃん……!」

 

「あ……ご、ごめん……」

 

必死にビワに諭されて、なんとかメロコは落ち着きを取り戻した。しかし、その慌て様こそが全てを物語っているも同然だった。

 

「今、私がコマツさんに魅力を感じて、メロちゃんすごく焦ったでしょ?誰かに取られたくない……そんな思いもまた、恋から生まれるんだよ!まぁ、確かにコマツさんはいい人なんだなとは思うけど、私はメロちゃんほどコマツさんをよく知らないからあくまで"いい人"止まりなんだけどね」

 

「……そう、か……」

 

メロコは無意識に自分の胸に手を当てた。その鼓動は、コマツのことを考えると早鐘を打つ。今もコマツのことを考えるうちに、次第に鼓動が早くなっていった。

 

「(オレ……コマツのこと、好きなんだ……。女として、男のコマツを……。けど、コマツには幼馴染が……あんなに仲良さそうだったのに、不良学生のオレなんかが……)」

 

メロコはようやく自分の気持ちを理解できた。だが、それはそれで躊躇いが生まれる。自身は一年半も不良だったアカデミー生で、相手は料理人志望の夢追い人だ。STCの一指導者としての地位は確立されたも同然だが、そこに至るまでの経緯を考えればとても褒められたものではないだろう。

 

「いいのかな、オレなんかが……」

 

「……!メロちゃん、恋は勝負なんだよ!早くしないと、コマツさんが誰かに取られるかも……」

 

「え――」

 

ここぞというところで尻込みするなどメロコらしくない。そんな思いで、ビワはメロコにいつものような闘志を燃やしてもらおうと発破をかけた。

 

――ただし、ビワは致命的に見誤っていた。

 

「……だ……」

 

「え?」

 

「……やだ……いやだ……いやだいやだいやだいやだいやだ……!!」

 

「メ、メロちゃん……?」

 

――メロコが抱く感情は、ビワの想像を遥かに超えるほどに。

 

「――て、たまるか……!コマツは、コマツはオレの、オレの……!!」

 

「あっ、メロちゃん!!」

 

――黒く黒く、黒煙を上げるほどに燃え盛っていたのだ。

 

そうして走り出したメロコを、ビワは止めることができなかった。あっという間に最高速で走り去っていったメロコを見ていることしかできなかったビワは、大きくゆっくりと深呼吸をすると、そっと天を仰いだ。

 

「(……頑張ってください、コマツさん)」

 

とりあえずメロコが暴走した元凶に全部ぶん投げることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶぇっくしょーいっ!!」

 

「バシャッ!?」

 

「……っと、すまんバシャーモ。ついくしゃみが」

 

「ヤークデー?」

 

「大丈夫だって、マルヤクデ。心配すんな」

 

「マルー」

 

こちらはいつものようにパルデアを巡り、料理磨きに余念がない青年コマツ。現在彼は東1番エリアに来ていた。

 

「……そういえばこのへんって……」

 

ふと、顔を上げて辺りを見渡すコマツ。看病中、メロコからチーム・シェダルのアジトの場所を聞いていたのを思い出したのだ。

 

「おっ、あれか……ちょっと見てみるか」

 

遠くに揺れるほのお組の旗を見つけ、コマツはそちらに足を向けた。旗が立つ場所を過ぎると、ゴングがぶら下がるゲートが見えてきた。

 

「おぉ、あれか。……えーっと、おじゃましまーす」

 

何も考えずにゲートを通り過ぎる。すると、中から団員らしき少年少女がすぐさまコマツの元に駆けてきた。

 

「こんにちは!STCへようこそ!ここはスター団ほのお組、チーム・シェダルです!」

 

「おぉ、これは元気にこんにちは」

 

「ひょっとして、ボスへの挑戦者ですか?申し訳ないのですが、ただいまボスは定期報告に出席してまして……」

 

「ボス……もしかして、メロコのこと?それなら待つよ、どれくらい?」

 

「(えっ、ボスのことを呼び捨て?もしかして知り合い……?)えぇっと、少し前に会議が終わったと連絡が……あ、ボス!」

 

「ん?」

 

団員が走っていってしまったので、コマツもあわせて振り返る。そこにはちょうど帰ってきたのだろうメロコがいた。団員と何か話しているが、途中でコマツの存在に気がついた。

 

「やぁ、メロコ!遊びに来たよ」

 

「……っ!!」

 

ダンッ!と力強く大地を蹴り上げ走り出すメロコ。向かう先は一直線に、コマツの元へ。

 

「おーい、メロコー!」

 

「……!!」

 

「メロ――クォッ!?」

 

そしてメロコはそのままコマツのお腹に向かってダイブし、形だけ見ればコマツはメロコの頭突きを腹に喰らうこととなった。

押し倒されそうになったが、そこは年上のプライドが許せないのかコマツは意地でも踏ん張った。

 

「いてて……ひ、久しぶりだな、メロコ。また会えて嬉しいよ……」

 

「……本当か?」

 

「え?」

 

「本当に、オレに会えて嬉しいのか?」

 

「うん、嬉しい嬉しい。スター団を解散させる作戦のこととか、耳に届くことがあって……心配してたんだ。でも、メロコも無事でスター団も解散せずに済んだ……ほんと、よかったよ」

 

「……そ、そうか……!へへ……!」

 

ようやく埋めていたお腹から離れて顔を上げたメロコ。そこでコマツは違和感を覚えた。

 

「……あれ?メロコ、なんか顔が赤くないか?またくさポケモンにしてやられた?」

 

「……ちょっと、来い」

 

「え?」

 

「いいから来いっ!」

 

「えぇ!?」

 

グイグイとメロコに腕を引っ張られ、コマツが連れてこられたのはひときわ大きなテントの前。メロコがテント前にいる団員に目配せすると、彼らはいそいそと離れていった。

 

「来い」

 

「えぇ……?」

 

それから中に連れ込まれ、いよいよコマツは困惑で思考が定まらなくなる。テントの奥にはベッドがポツンと置かれていた。

 

「へぇ、ここで寝泊まりしてるのか?」

 

「あぁ……今日は特別、人払いをしてある」

 

「……ん?」

 

「もう誰も、このテントには近づかねぇ」

 

「……んん?」

 

「だから……」

 

「メロコ……?うわぁっ!?」

 

コマツはポイ、と放られるとベッドの上に転がった。困惑も極みに達し混乱へと変わったところで、メロコが上にのしかかってきた。

 

「……えーっと、メロコ?」

 

「……オマエは、いっつもそうだ。誰彼構わず優しくしやがって……節操のないルガルガンには、お仕置きが必要だよな……!」

 

「いや、あの、何の話……って、ちょ!?」

 

コマツは驚きに声を上げた。なぜなら、メロコが改造してある制服に手をかけ、あろうことか脱ぎ始めたのだ。

 

「ま、ままま待って!?なにをしようとしてんの!?」

 

「なにって……言っただろ?節操のないルガルガンにお仕置きするんだ」

 

「えぇー!?お、俺が一体何をしたって言うんだよ!?」

 

「あぁ、もうっ……このわからず屋が!

オマエに助けられて、オマエに慰められて、オマエからポケモンまで貰っちまって……オレは、オマエからいつも貰いっぱなしだ……だから、お前になにかしてやりたいって思った!

でもあの時……チャンプルタウンで幼馴染と歩いているオマエを見て、オレ……"嫌だ"って思った!」

 

「え……」

 

「オマエが他の女と一緒にいるなんて耐えられない!オマエと別れてからオレ、変なんだ……!オマエのことを考えてると、体が熱くなって疼いてくんだよ……オマエという火種を求めて、オレの中の炎が騒ぐんだ……!

コマツ……オマエが、好きだ」

 

「!!」

 

「好きで好きで、堪らないんだ……もうこれ以上、オレはオレの熱を抑えられねぇ……!

誰かに奪われる前に……今、オレがオマエを奪ってやる」

 

「……なるほど、そういうことか。うん、メロコの気持ちは良くわかった。その気持ちはとっても嬉しいよ。

……だからね、あのね、その手をちょっと止めようか?うん、一回落ち着こうぜメロコ、理性を捨てるな!それを捨てるなんてとんでもない!君、歳はいくつだ!?場合によっちゃあ、俺犯罪者!

あっ、バカっ、俺の服にまで手をかけるな!……うわっ、メロコって結構腕力……というか握力強っ!?あぁ!待って待って、落ち着けメロコ!話をしよう!

ちょっ、まっ……アッーーーー!!」

 

チーム・シェダルのボスのテントからは、陽が昇るまで音が絶えなかったそうだ。翌日、チーム・シェダルの全団員は、げっそりとした顔でテントからでてきたボスの客人にこう言ったそうな。

 

――昨夜はお楽しみでしたね。

 

 

 

 

 

 

 




うん、至って普通の恋バナでした。
……なんだろう、最近こういう感情が重いキャラを書いてると凄い楽しくてニヤつく自分がいる……なんなんだ、この感情は……?

このお話のメインのふたりをご紹介です

コマツ
パルデアを旅して回っているほのお使いの料理家。故郷はホウエン地方で、同じほのお使いの幼馴染がホウエンで、叔父がガラルでジムリーダーをしているなど、ジムリーダー業の人物とは何かと縁がある。
性格は根っからの世話焼きで、"最近は慣れてきた"らしいジムリーダーの幼馴染の身を案じ、手紙によるやり取りは欠かしていない。
手持ちはキュウコン(カントー)、ブーバーン、ヒヒダルマ(イッシュ)、バシャーモ(隠)、マルヤクデ(色)、シャンデラで、エースはシャンデラ。全国津々浦々を歩いているだけあって、手持ちは全てパルデアに生息していないほのおタイプポケモンで構成されている。また、戦闘用とは別に趣味である料理のお手伝い用にみずタイプのミロカロス、くさタイプのタルップルを連れている。
西3番エリアできのみ拾いに勤しんでいたところ、キノココの胞子にやられていたメロコを発見し、保護した。その後はきのみ拾いを続けながらもメロコの面倒を見続け、時にはバトルの指南をしたり手料理を振舞ったりした。メロコが快復すると、ヒトモシのタマゴをメロコに譲り一度別れた。
再会したメロコの感情が激重化していたが、本人はその理由に皆目見当が付いていない。

メロコ
スター団ほのお組『チーム・シェダル』のボス。赤髪で顔にそばかすがある。
宣戦布告を受けたことで八つ当たり兼自主練のため、西3番エリアでむしタイプやくさタイプを相手にポケモンのレベル上げをしていた。しかし一瞬の油断からキノココの胞子を浴びてしまい、高熱や体の痺れなどで動けなくなっていたところをコマツに救われた。
それから一週間の間、コマツのお世話になっていた。その間、コマツから努力を評価されたり、ポケモンへの愛情を見抜かれたり、「主義主張を通すためには力も必要」とスター団のやり方を肯定されたりしているうちに絆されていき、最終的には惚れた。駄目押しにコマツのエースポケモンのタマゴを譲ってもらったので役満である。
そんなある日、コマツが幼馴染にパルデアのほのおポケモンを紹介している場面に遭遇し、激しく嫉妬してしまう。その後、幼馴染との関係や知ったこと、自身の胸の内に溢れた感情(ドス黒い物も含む)の正体をビワに指摘されたことが切っ掛けで無事に感情がだいばくはつした。
最近はコマツと離れている時間が長ければ長いほど体が熱く疼いてくるそうで、熱冷ましのためにコマツとのスキンシップを要求している。

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