「西からの亡命者か……。中々面白い人材を拾ってきたようだな」
基地へと帰還した第666戦術機中隊だが自ら救難信号の発信源に向かったアイリスディーナが連れてきたのは西ドイツからの亡命を希望するカティア・ヴァルトハイム少尉だった。
「それでいてこの中隊に編入させると? ベルンハルト大尉。君は誰にこの話をしているのか理解しているのか?」
「もちろんです同志少佐。少佐ほどの方であればお認めになると考えています」
「……確かに、シュヴァルツェスマーケンを補充すると考えれば利点はある。報告書を読ませてもらったが部隊が壊滅する中で最後まで生き残っていた実力。確かにこの部隊の欠員を埋める穴にはなる。私が認可すれば誰も反対できないのも事実だ」
「……」
まるで詰問するかのごときアルフレートの言葉にアイリスディーナは内心で感じる緊張感を一切出さずに必ず認可するという姿勢を崩さない。ふと、両者の視線がまじりあう。数秒か数分か。それが続き、先に目を離したのはアルフレートであった。
「……
「はっ! 認可していただき感謝します!」
「構わんさ。今は戦力が少しでもほしい。ヴァルトハイム少尉が
「……了解しました」
「話は以上か? ならば退室したまえ」
「はっ! 失礼します!」
アイリスディーナを退出させたアルフレートは改めて報告書を見る。そこにはカティア・ヴァルトハイムの詳細なプロフィールと顔写真が記載されており、アルフレートはカティアの顔を見ながら目を細めて呟いた。
「……
BETAの数は日を追うごとに増えている。昨日、最大侵攻数を更新したと思えば今日、それが更新され、明日にはさらに更新される。そんな形で減らすより増えているのが欧州戦線の現状だった。欧州戦線は3つの戦線に区切られており、ポーランド領に侵攻する軍勢を中央戦線、フィンランドを北部戦線、ルーマニアを南部戦線としているが中でも苛烈なのが中央戦線だった。ここには数万単位のBETAが常に侵攻を行っており、一番圧力をかけていた。
そのためにそこを守備する東ドイツの損耗率はかなり高い。それでも第666戦術機中隊という切り札とも言える戦術機部隊を運用して何とか防衛線を維持していた。それでも戦線は日々西に向かっており、数日前にはポーランド人民共和国の首都ワルシャワが陥落したばかりであった。
「このような状態だ。貴殿のように戦闘経験がある衛士の亡命は歓迎するところだ。たとえ、その者が
「あ、ありがとうございます……」
カティア・ヴァルトハイムは目の前に座るアルフレート・ヴァルデの言葉に緊張気味にお礼を言う。第666戦術機中隊“監査官”を名乗る人物に呼び出された彼女は押しつぶされそうな威圧感でもって歓迎を受けた。話が進んだ今でこそ威圧感は消えたが鋭い視線は変わっておらず、カティアを信用していない・疑っているという事は明白であった。
「イェッケルン中尉が既に確認済みのようだが本当に我らが祖国に忠誠を誓うつもりでいるのだな?」
「は、はい! 私は亡命をしてきた以上そのつもりです!」
「……なるほどな」
アルフレートはカティアの言葉を聞いて息を吐くと手元に置かれた書類、亡命に関する手続きの書類にサインを書いていく。
「聞いているかもしれないが一応伝えておこう。第666戦術機中隊はレーザーヤークトを基本任務としている。つまりレーザー級の殲滅を主要目標としているわけだ。その際にどのような事態、味方からの救援要請等があったとしてもこれを無視する事がある」
「……」
「さらにはレーザー級のいる敵の後方まで吶喊するわけだ。部隊の損耗率は高い。その証拠として中隊と言っておきながら4機足りていない。これらを聞いたうえで通達しよう。貴様の亡命が認証されればこの隊に配属する事となる。亡命を希望したことを後悔するほどの過酷な任務が待っているがその覚悟はできているのか?」
「もちろんです!」
怯えこそあれど説明を聞いても尚カティアの目は決意で溢れていた。これ以上の説明は必要ないなと、アルフレートはサインを書き終えると認可の判を押した。
「ではただ今の時刻を以てカティア・ヴァルトハイム少尉は東ドイツ国家人民軍第666戦術機中隊配属となった。貴官の活躍を期待する」
「はい! よろしくお願いします!」
「うむ。下がっていい。詳細は隊の者に聞くように。それと明日にでも貴官を含めた状態での実機訓練を行う」
「はっ! 了解しました!」
カティアを下がらせるとアルフレートはシュタージと党に提出する報告書の作成を行う。シュタージから派遣された彼だがその立場上党への報告も義務付けられている。そのために重要な報告をするときには両組織を行き来する必要があり、それは両方の組織から不信感を得る最悪の結果となっていた。彼を送り込んだはずのシュタージでさえ今では彼を心から信頼していない。
それでも、彼は自分の役職を恥じた事はない。監査官という場合によっては督戦のごとき行動をしないといけないこともあるが第666戦術機中隊では一切その事態に陥ったことがない。加えて、彼が言ったことはないが中隊の面々を信頼しているために本来するべき監視も必要な時を除いてほとんど行われていない。
「今、欧州戦線は劣勢だというのにこの国は派閥争いか。全く、人類というのは何故一致団結できないのか……」
東ドイツを事実上支配しているシュタージだがその内部においても派閥争いが起こっている。それはソ連の影響下にあることを良しとする、つまり現状維持を望む“モスクワ派”と、東欧諸国との連携を強めるべきとする“ベルリン派”に分かれている。アルフレートはモスクワ派の者によって派遣されているとはいえ彼自身がその思想に傾倒しているわけではない。むしろそういった派閥争いを嫌っている彼は非常事態にもかかわらずまとまる事が出来ない事に呆れや不満を感じていた。
「最近ではベルリン派が新たな戦術機中隊を結成。モスクワ派もシュタージ最強の
前線に出てくる事がほとんどない後方の治安維持部隊の増強を行うならレーザーヤークトを主任務とする第666戦術機中隊を強化するべきだとアルフレートは毒づく。いまだソ連が最初に作成した第一世代機を改造して使っているのだ。もっといい機体を渡して戦果を挙げられる環境を作れればと常々考え、それを提案してもいるが彼の言葉に耳を傾ける者はいなかった。
「カティア・ヴァルトハイムについてもいろいろと言われるだろうが仕方ない。監査官という者の宿命として受け入れるしかないな」
アルフレートは報告書を手早く作り上げるとそれをシュタージと党に提出するために部屋を出ていった。
そしてその数日後、シュタージの戦術機中隊が彼らのいる基地に姿を現した。
まりもちゃんは
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マミる(原作準拠)
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マミらない(トラウマ回避)
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武の精神をぶっ壊せ(更なるグロ描写)