【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第十六話「黒の剣(シュヴァルツェ・シュヴェールト)

 数日後。4万以上のBETAが防衛線に迫った。一部BETAはヴィスワ川を渡河し、ワルシャワを通っており、予断を許さない状況となっていた。

 しかし、これは既にワルシャワ条約機構は察知しており、少ない時間の中で対応の準備を行っていた。

 

『レーザーヤークトは別の部隊が既に実行中だ。我々はヴィスワ川を渡河したBETAを駆除するぞ!』

『『『『『『『『了解!』』』』』』』』

 

 大雪が降る中で真っ赤な大群として押し寄せる戦車級。そんな奴らに対して一番槍を付けたのはアネット・ホーゼンフェルトだった。長刀を振り回して付近の戦車級をなぎ倒していくが一機だけ降り立った彼女に戦車級が四方八方から群がってくる。しかし、アネットの死角を守るように上空からイングヒルト・ブロニコフスキーの援護射撃が行われる。上空を飛び回るイングヒルトに手を伸ばすも届くはずがなく、その隙をつくようにアネットによって切り倒されていく。

 また、別の場所においてはバディを組んだカティアとテオドールが背中合わせに射撃を行い死角をなくして敵の殲滅を行っていた。アイリスディーナたちは機動戦を展開して一か所に留まらないことでBETAに攻撃されないように動いている。

 

「ふむ、やはり第666戦術機中隊は防衛のかなめだな」

 

 その様子を同じく前線で戦いながら観察するアルフレート。漆黒の機体を用いて敵を切り殺していくその姿は死神とさえ形容できた。

 

「大尉。うれしい知らせだ。敵の増援がさらに来るぞ。要撃級だ」

『ちょうどいいところです。敵が小さすぎて飽き飽きしていたところだ。シュヴァルツ02と03は私についてこい! 要撃級を狩るぞ!』

『『了解!』』

「私も前に出よう」

『っ! よろしいので?』

「私の戦術機は短期決戦型だ。要撃級相手ならともかく戦車級ではもったいないからな」

『それは頼もしい。ではお力をお借りしましょう!』

「大船に乗ったつもりでいるといい」

 

 アイリスディーナとアルフレートを先頭にヴァルター・クリューガーとファム・ティ・ランが続く。しばらく飛んでいくと要撃級の群れが確認できた。数はおおよそ100。本来であればたった4機では厳しい相手だがアルフレート達に焦りはない。

 

「大尉。君たちに半分をプレゼントしよう。残りは私の獲物だ」

『少佐、無理はしない方が……と言いたいところですが杞憂ですね』

「その通りだ。さっさと蹴散らすぞ!」

 

 そういうが早いがアルフレートは機体を加速させると一気に要撃級の群れへと突っ込んでいく。

 

「っ!」

 

 そして地面に落下する直前にブースターを切ると自由落下に切り替え、武装を展開する。腕や足から刃が出現し、全身を覆うように展開されると同時に要撃級の上に乗り、押しつぶす。上空からの侵入者に要撃級が一斉にアルフレートの方を見ると一気に群がってくる。

 四方八方からやってくる彼らに対してアルフレートは焦りなく対処する。一番接近してきた前方の要撃級の大ぶりの一撃を躱すと要撃級の上をすべるように回転して回避する。が、今のアルフレートの戦術機は全身が刃でおおわれている。機体に触れた要撃級は上半分を切り裂かれて動きを停止した。次にその回転の勢いを殺すことなくすぐ後ろに控えていた要撃級に回し蹴りを放ち一撃で沈めると両腕に装備した双剣を左右に投擲する。それらを迫ってきていた要撃級を切り裂き動きを止めさせると肘につけられたワイヤーが巻き取り剣が戻ってくる。

 

 黒の剣(シュヴァルツェ・シュヴェールト)と名付けられた()()()()()()()()()()()()は短期決戦・超近接戦闘を前提としたピーキーな機体であったがアルフレートはそれを乗りこなし、功績をあげるだけの実力を有していた。でなければレーザーヤークトを主任務とする第666戦術機中隊と常に行動を共にすること等出来るはずがなかった。

 

 その後もアルフレートは要撃級に攻撃の動作さえほとんどさせずに50体以上を狩りつくした。返り血で赤く染まる漆黒の戦術機にアイリスディーナ達はため息をつく。

 

『ヴァルデ少佐殿の実力は知っているつもりだが改めて見せられると何も言えんな』

『さすがにレーザーヤークトとかではここまではしないけど本当に強いわよね』

『少佐。半分はこちらでという事でしたが6割近くご自身で狩りつくしていますよ』

「む? そうか。ならば負担が減ったと考えればいい。BETAはまだまだ来るんだ。少しでも長期戦が出来るように備えておけ。……ん?」

 

 アルフレートが刃を仕舞うと同時に彼のもとに通信が入る。それは第666戦術機中隊の中では彼にしか入らないシュタージの極秘通信であった。内容を確認したアルフレートの視線はどんどんと険しくなっていく。

 

「……大尉。最悪の知らせだ。レーザーヤークトは失敗。吶喊した戦術機は全滅。砲撃支援は出来なくなった」

『では撤退を?』

「違う。もう一度レーザーヤークトを行うそうだ。行うのはヴェアヴォルフ大隊のベアトリクス少佐率いる中隊に例のシュトゥルムヴィント戦術機中隊だ」

『!? シュタージは一体何を考えて……!?』

「残念ながら俺にも分からん。ただし、確実にシュタージの派閥争いが関係しているのは確かだろう。それよりもこちらはこちらで出来る事をするぞ。次の敵だ! 来るぞ」

 

 アルフレートはこのレーザーヤークトでベルリン派とモスクワ派。どちらかの戦術機が()()()()()()()()()()()()()()だろうなと思いつつ新手としてやってきた要撃級に切りかかるのだった。

 

 

 

 

 

 国家保安省(シュタージ)武装警察軍戦術機大隊ヴェアヴォルフ大隊長ベアトリクス・ブレーメは不満だった。そもそも、彼女は本来この戦闘に参加するはずがなかった。正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったのだ。これには反体制派と呼ばれるテロ組織と繋がっているとされるハンニバルをつぶす目的があったがアクスマンが自らの手ごまを送り出したことで状況は変わった。

 シュトゥルムヴィント戦術機中隊。戦術機の詳細は一切不明。戦闘データも作られて間もないことと一度も前線に出たことがないために皆無。更には()()()()()()()()()()()為にアクスマン達ベルリン派と対立するモスクワ派は慎重にならざるを得なかった。しかし、いつまでもそうしているわけにはいかないためにベルリン派の力を削ぐことも考えてベアトリクスに全機の破壊が命じられたのだ。そして、レーザーヤークトというのはその舞台にぴったりだった。敵しかおらず、味方の眼がないうえに重金属雲で通信でもできないここでなら始末してもBETAのせいにしてしまえる。

 それゆえに、先に飛んでいくシュトゥルムヴィント戦術機中隊にヴェアヴォルフの面々は銃口を向ける。下では戦車級や要撃級が防衛線に向かって進んでおり、もう少し行けばレーザー級のもとにたどり着くだろうが射線が通らない今が()()()と言えた。

 

「射撃、開始!」

『『『『『了解!』』』』』

 

 仲間内での通信でタイミングをそろえると一斉に射撃を開始した。しかしこれらはあっけなく回避されることとなるがベアトリクスに焦りはない。相手とて警戒はしているはずと理解している可能性は高かったために次の攻撃は既に行っている。予測されていた回避行動の先に銃撃を行う。高速で移動する戦術機は急には針路を変えられない。そう思っての射撃だがシュトゥルムヴィント戦術機中隊は直角に避けると素早い動きでベアトリクスの懐に飛び込んだ。

 

「なっ!?」

 

 慌てて回避を取ろうとするベアトリクスだがすでに手遅れだ。戦術機は頭部の装甲を開くと()()()()()()()()()を光らせて発射した。

 瞬間、ベアトリクスの視界は光でおおわれた後、全身を爆発の痛みが襲い、意識を手放した。

 




次話は2022/11/10 23:05投稿予定です。

まりもちゃんは

  • マミる(原作準拠)
  • マミらない(トラウマ回避)
  • 武の精神をぶっ壊せ(更なるグロ描写)
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