【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第十七話「補充要員」

 ヴェアヴォルフ大隊の全滅によってシュトゥルムヴィント戦術機中隊が撤退したことでレーザーヤークトは失敗に終わった。更にはハンニバル戦術機大隊を率いていたハンニバルも()()()()()()()()()()()()要塞級の包囲によって命を落とした上に遺体すら回収する事は出来なかった。それゆえにヴィスワ川東部で敵を食い止めていた第666戦術機中隊の奮戦むなしく国家人民軍はヴィスワ川防衛線の放棄を決定。最終防衛線より西の地点に防衛ラインを形成した。

 唯一の救いと言えるのは今回侵攻してきたBETAは中央戦線にのみ現れたことだろう。北方や南部戦線はいまだに現状維持が出来ている。総崩れの心配はなかった。

 

「ベアトリクス・ブレーメの戦死……。()()()()()“ベルリン派”か」

「少佐は、ベアトリクスが殺されたと思いますか?」

「十中八九な。でなければBETAに食い殺されているかのどちらかだ。生き残っている可能性はない」

「……」

 

 友人という間柄ではないとはいえ士官学校時代に交友があったのだ。思うところはあるのかアイリスディーナの表情は険しかった。とはいえこれ以上の詮索はシュタージに逮捕されるきっかけを作ってしまうとアルフレートは話題を変える事にした。

 

「そういえば戦闘の途中で撃墜されたヴァルトハイム少尉は無事か?」

「はい。幸いな事に怪我はなく、すぐにでも復帰が可能です」

 

 戦闘の終盤においてカティア・ヴァルトハイムは一瞬の隙をつかれてBETAに戦術機を破壊された。そのまま食われるかと思ったがバディを組んでいたテオドールによって救出され、近くを撤退中だったクルト・グリーベル曹長率いる野戦中隊に預けていた。しかし、撤退中の彼らを戦車級の群れが襲撃。テオドールが救援要請を受けて駆け付けた時には瀕死で戦車級の下敷きとなったグリーベル曹長以外は全滅した後だった。レーザーヤークトの失敗で撤退命令が出ておりカティアはテオドールの機体に乗って命をつなぎ留め、グリーベルは囮となって敵を引き寄せると大量の爆薬とともに爆死するという最期を遂げた。

 

「あまりよろしくはありませんがヴァルトハイム少尉は今回の一件で戦う覚悟が出来たようです」

「ほう? やはり戦場に出る事で一皮むけたか」

 

 カティアという少女は理想が先行するどこか危うい存在だったが今ではきちんと足をつき、物事を冷静に見つつ戦場での覚悟が出来ている。アイリスディーナはそう感じていた。そんな彼女の言葉に噓偽り、ましてや勘違いはないだろうとアルフレートは信用することを決めた。

 

「ヴィスワ川防衛線の放棄がされた以上今後は今まで以上に厳しい戦いとなる。優秀な衛士は多いに越したことはないからな。……それと、これは急遽決まったことだが第666戦術機中隊に新たな人員が派遣されることとなった」

「この時期に? それも急とは穏やかではありませんね」

「それも推薦者は“ベルリン派”だ」

「……スパイ、というわけですか」

「ただのスパイであるなら問題はない。だが、()()の交友関係が問題だ」

 

 そういうとアルフレートはアイリスディーナに詳細な情報が書かれた紙の束を見せる。左上にはこの情報主である一人の女性の顔写真がつけられていた。そして、交友関係の情報を確認したアイリスディーナも目を見開き驚愕した。

 

「リィズ・ホーエンシュタイン。テオドール・エーベルバッハ少尉の義妹だ」

「……少佐はこれが仕組まれたものだと思いますか?」

「確実にそうだろうな。アクスマンか、それとも別のやつかは知らないが随分と嫌らしい手を使う」

 

 親族を使って情報を得る。最も効果的な情報収集の方法だ。それも離れ離れになった相手ならば。

 

「確かエーベルバッハ少尉は3年前に国外脱出を図り失敗。その後は一人となって軍に入隊した……。妹に関しては一切情報が回ってこなかったが確実に妹の方がシュタージに媚を売ったのだろう」

「あまりいい話ではありませんね」

 

 自らも似た境遇ゆえにアイリスディーナはリィズに少し同情心を持つがだからと言って警戒しないでいい相手ではない。

 

「ホーエンシュタイン少尉は今日にでも到着する。顔合わせの機会を作る。準備をしてくれ」

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィスワ川防衛線から帰還したカティア・ヴァルトハイムはバディを組んだテオドールからの頼みを受けて資料整理を行っていた。グリーベル曹長との出会いと別れを経た彼女はおっとりとした性格は残しつつ戦場で戦う心構えが出来たことで大きく成長していた。彼女を知らない者が亡命時と今の彼女を比べれば変わったと分かるほどの成長だ。

 

「第666戦術機中隊監査官。アルフレート・ヴァルデ少佐……」

 

 そんな彼女は一つの資料を目にした。それはアルフレートのプロフィールが簡潔に書かれた者であり、カティアでも見る事が出来る、むしろ同じ中隊の者として知っておくべき最低限の事が書かれた資料でもあった。

 正直に言って、カティアはアルフレートに対して苦手意識を持っていた。別につらく当たられたわけではない。編入時に厳しい言葉をかけられたがそれはグレーテルにも同じことを言われてていたために再確認のようなものだと認識していた。

 

「1951年生まれ。18歳で入隊。22歳の時にシュタージに転属。BETAとの戦争がはじまると衛士としての訓練を受けて戦術機パイロットに……。半年前に第666戦術機中隊の監査官として着任……」

 

 彼の経歴はそれ以外に書かれていない。カティアでも見る事が出来る資料、シュタージにいたという事を踏まえればむしろ書きすぎなところもあるくらいだ。しかし、これを見たカティアはテオドールの話を思い出した。

 

『ヴァルデ少佐は本人の性格はともかくシュタージからこっちに来た以上絶対に信用するな。あの人は俺たちに不利になる報告はしていないとはいえ真実は報告しているはずだ。カティア、自分の願いを叶えたいなら必ず本音を話すな』

「そんなに悪い人には、見えないんだけどなぁ……」

 

 そんなことを呟きながら資料を運んでいると偶然にもアネットと遭遇した。彼女の隣にはイングヒルトもおり、親し気に会話をしているようだった。

 

「あれ? カティアじゃん。どうしたの?」

「アネットさん。実はテオドールさんから資料整理を頼まれちゃいまして……」

「あー。あれね。地味だし私は好きじゃないなぁ」

 

 アネットはうへぇと嫌な顔をして苦手なことをアピールしている。イングヒルトもそんな彼女を知っている為か微笑ましそうに笑っている。

 カティアは苦笑いを浮かべながらもちょうどいいとアルフレートの話を振ってみる事にした。

 

「そういえばヴァルデ少佐について話を聞きたいんですけど……」

「ヴァルデ少佐? 何が聞きたいの?」

「あの人がシュタージにいたって本当なんですか?」

「……そうだね。本当の事だよ」

 

 アネットはカティアの質問に少し寂し気な様子で答え始めた。

 

「テオドールなんかはシュタージに恨みあるみたいだしそもそも東ドイツ(この国)じゃシュタージを嫌っていないやつはほとんどいないんじゃないかな」

「だから彼に対して今も警戒して嫌う人はいるわ。衛士だけじゃなくて整備班の人たちにも……」

 

 後半はイングヒルトが変わりアルフレートに関する話を続ける。アルフレートに対する態度がよそよそしかったり、露骨に顔をしかめる人物がいるのはカティアも理解していた。その最たる例が彼女のバディでもあるテオドールなのだ。

 

「でも! あいつは別に悪い奴じゃないんだ! 少なくとも、なんでシュタージに入ったのか分からないくらいに!」

「え、えっと……」

 

 突如として早口でまくしたて始めたアネットにカティアは圧倒されてしまい、なんと言葉をかけていいのか分からずにしどろもどろになっているとイングヒルトがフォローを入れた。

 

「ふふ、アネットはヴァルデ少佐に気があるのよ」

「えっ!?」

「い、イングヒルト!? 何言って……!?」

 

 アネットが唐突の暴露に驚いているがそれはカティアとて同じだ。正直に言って彼女がそういう思いを抱いているとは思えなかった。それは普段の彼女がアルフレートに関する話題を出さない、近づかないなどが理由であったがイングヒルトは丁寧に説明していく。

 

「もともとシュタージってことで一番かみついていたのはアネットなのよ。でもそうやって嚙みついているうちにヴァルデ少佐がシュタージとは思えない程良い人だって知って、たぶん一番のきっかけはカティアちゃんが救出されたあの日の戦闘で助けられたことじゃないかな?」

「そ、そうだったんですか……」

「ううぅぅぅっ!!!」

 

 次々と説明していくイングヒルトは楽しげだが隣で説明を聞いているアネットの顔は真っ赤であり、今にもつかみかかりそうな雰囲気を出しておりカティアは余計に答えに窮してしまった。

 

「それに、この前なんてベッドのうえでヴァルデ少佐の名前を何度もつぶやきながら……」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 そして、G弾の如き破壊力の爆弾を投下しようとしたイングヒルトについにアネットは限界を迎えて絶叫しながら逃げ出していった。カティアは呆然とその後姿を見送ったが隣のイングヒルトは笑みを浮かべながら困ったように続ける。

 

「アネットって()()みたいでね? 毎日毎日聞こえてくるのよ。壁が薄いけど隣は私だけだから他の人は気付いていないかもしれないけどここ1月は毎日毎日毎日聞かされて少しノイローゼ気味なのよ」

「そ、そうですか……。で、では! 私はこれで失礼します!」

 

 カティアは脱兎のごとくその場を離れた。愚痴のように言うイングヒルトの眼に光はなかった。笑みを浮かべながら怒っているのだと気づいたカティアは自分に飛び火しないうちにこの場を離れるという選択肢をしたのだ。今のイングヒルトに立ち向かうのは突撃級の攻撃を正面から受け止めようとしている状況に近い。無謀すぎた。

 

「はぁ、結局ヴァルデ少佐の話は全然聞けなかったなぁ……」

「あ、あの!」

 

 とぼとぼと何とも言えない人の恋バナを聞かされたカティアは本来の書類整理をするべく移動していたが、ふと声をかけられた。この方を向けば一人の少女がおり、カティアの方を見ていた。

 

「はい。どうかしましたか?」

「第666戦術機中隊の隊長さんはいらっしゃいますか? 補充要員として今日からこちらに配属になったのですが……」

「え? あ、はい! どうぞどうぞ!」

 

 初めて見る少女ゆえに一瞬戸惑ったが補充要員という言葉に納得した。第666戦術機中隊は消耗が激しい部隊だ。こういった人物が来てもおかしくはないとカティアは少女を案内する。

 

「補充要員が来るなんて全然知りませんでした。……あ! 私カティア・ヴァルトハイムと言います。私も配属されて間もないので仲良くしてくださいね!」

 

 そう言って笑うカティアに、少女は笑みを浮かべた。

 

「リィズ・ホーエンシュタインです。よろしくね、カティアちゃん!」

 




おかしいなぁ。別にくっつけるつもりはなかったのに気づいたらこうなってた……


【挿絵表示】

紫が新たな前線です。特に見ないといけないものでもないので無視しても構わないです

次話は2022/11/11 23:52投稿予定です。

まりもちゃんは

  • マミる(原作準拠)
  • マミらない(トラウマ回避)
  • 武の精神をぶっ壊せ(更なるグロ描写)
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