「中隊に編入される、新たな衛士を紹介する。東欧派遣兵団より補充として本日より着任となる。彼女が一日も早く、中隊に馴染むように気を配ってほしい」
アイリスディーナがそういうと、後方の扉が開き、一人の少女が入ってくる。そして、その少女に最も反応を見せたのは予想外にもテオドールだった。彼はシュタージの一件以来他人を信用する事はなくなり、中隊の面々に関してもどこか距離を置いているように見られた。そんな彼がつまらなそうな顔を一変させて目を見開いて驚きをあらわにしたのだ。
「リィズ・ホーエンシュタイン少尉です! よろしくお願いします! ……え?」
少女、リィズ・ホーエンシュタインはテオドールに気付くと凛々しい顔を驚かせ、笑みを浮かべた。
「お兄ちゃん! 会いたかった……! ずっと……!」
「リィズ、なのか……?」
笑みを浮かべて抱き着くリィズにテオドールは困惑しつつも問いかける。テオドールは二度と会えないと思っていたがゆえに。
「……んん! ホーエンシュタイン少尉。悪いが予定が詰まっている。続けても構わないか?」
「あ! 失礼しました大尉! もちろんです!」
「よろしい。では、本日の午後よりホーエンシュタイン少尉を加えた飛行訓練を行う。その心づもりでいるように。それとテオドール、今後の事について話がしたい。少し時間を貸せ」
「り、了解です」
「うむ。では解散!」
アイリスディーナは朝の朝礼を終わらせるとテオドールを連れて外に出る。それに続くようにグレーテル、ヴァルターも続く。外ではすでに待っていたらしいアルフレートもおり、彼の顔を見たテオドールは露骨に嫌な顔をしつつも合流した。
「エーベルバッハ少尉。君の義妹、ホーエンシュタイン少尉についてだ。ぶしつけだがあれは本人か?」
「……間違いありません。少佐殿」
アルフレートの問いかけに少し間をおいて答える。その間が記憶をたどって本人かどうかの確証を得るためか、それともシュタージの人間である彼と話すことを嫌ってなのかは分からなかった。
「別人の可能性はないのか?」
「あれは別人じゃない。……俺の、妹だ」
「となるとますます怪しいな」
3年前に国外脱出を図った際に離れ離れになった妹との再会。それも推薦者がシュタージの“ベルリン派”という事でほぼクロと言ってよかった。
「残念だがホーエンシュタイン少尉はシュタージの犬だ」
「っ! それはあなただってそうでしょう!」
妹に対して辛い事実を言うアルフレートに対してついに我慢が出来なくなったテオドールが食って掛かる。シュタージから正式に派遣されたアルフレートはテオドールのいう通り犬でこそあるがだからと言って上官に対する物言いではないと注意をしようとしたアイリスディーナをアルフレートは手で制した。
「確かに私はシュタージから派遣された。だが、それは
そもそも、“モスクワ派”は第666戦術機中隊を排除しようとは考えていない。東ドイツ最強の部隊であり、消すには惜しいという事と、モスクワ派にはヴェアヴォルフ大隊という最強の駒がいたのだ。今でこそ大隊長のベアトリクスが戦死しているが大隊の大半は無傷のまま残っている。
対する“ベルリン派”は近年でこそシュトゥルムヴィント戦術機中隊を保有しているが数の上では劣る。更には“ベルリン派”の中核と言えるアクスマンはアイリスディーナと確執があった。信用できない相手である以上消す方向で動いている。
「“モスクワ派”であれば第666戦術機中隊を自分達の陣営に組み込みたいとして行動するだろう。だが“ベルリン派”ならばそうではない。アクスマンは昔は読みやすかったが今は
「だから、リィズが犬だと?」
「犬でないなら問題はない。犬ならば犬としての役目を出来なくすればいいだけの話だ。エーベルバッハ少尉。お前に任務を与える。ホーエンシュタイン少尉を監視し、犬かどうかを見極めろ」
「っ! ……それが命令であるならば」
テオドールはこれ以上話すことはないと言わんばかりにその場を後にする。アルフレートは大股で歩くテオドールを見送りながらつぶやいた。
「エーベルバッハ少尉にはああいったがホーエンシュタイン少尉は確実にシュタージの犬だ。くれぐれも隙は見せるな。そして、
「エーベルバッハ少尉がホーエンシュタイン少尉に情報を流すと?」
「肉親の情を相手が全面に押し出してくればな。最悪、
「……」
アルフレートの問いかけにその場の誰もが答えられない。3年ぶりに会う妹だ。余計なことを喋ってしまったり彼女をかばうことだって考えられる。それがないとは言い切れない以上アルフレートの指示は妥当とも言えた。
「別に彼らをのけ者にするわけではない。犬でないなら何も問題はない。犬だったときが致命的なだけだからな。全く、BETAという脅威がいるにも関わらず、国家一つでさえまとまる事が出来ないんだな。人類は」
アルフレートはどこかあきらめたような感情を込めながらそうつぶやいた。
人類一丸となって。
言葉としての響きはいいがこれを実際に達成できているわけではない。アフリカや東南アジア、南米各国はBETAが攻撃をしない限り襲ってこないと知ってから物資提供すら断るようになってきている。派兵は一度として行われずに常に前線は兵力不足で苦しんでいる。そんな人類をBETAは数に任せて対応してくる。戦術的・戦略的行動はほとんどしないのは人類にそれだけの価値がないから。そう提唱する学者もいる程だ。だが、実際に人類はそうなってきている。いずれ人類は各個撃破され、地球はBETAのものとなる。アルフレートはそんな暗い未来をどこか予想出来てしまったがために人類の愚かさを嘆くのだった。
「全く。まさかあの場から逃げるとは思わなかったよ」
ああ、これは夢だ。見た瞬間に分かる。
何しろ私はその光景を知っているからだ。場所は暗い部屋、尋問の部屋だ。部屋には小さな少女、護衛、そして座って意気揚々と笑っている私と
「……」
「何か言ったらどうかね? まぁ、それで何かが変わるわけではないがね」
私はこれから起こる悲劇など分からずに余裕な表情で言っている。この時、すでに目の前の少女は私たちがいいように
「……な」
「ん? なんd……」
【人間とは愚かだな】
その瞬間、私の護衛は首を切られて絶命し、私は目の前の少女、リィズ・ホーエンシュタインの右腕から伸びる赤い触手に拘束された。
「な、なんだこれは!?」
【全く。たかが少女相手にイキるなんて恥ずかしくてできないぞ】
ホーエンシュタインは確かに少女の皮をしているが中身は別人だ。それが一瞬で分かったとはいえこの時点で出来る事はなかった。腰の銃には手が届かず、助けを呼ぼうものなら首をへし折られるだろう。
【だが、そんな愚かさが人類の成長の要因であり、滅びの原因となる】
「……まさか!?」
ホーエンシュタインの中身の正体に行き着いた私に対してこの化け物、BETAはにやりとゆがんだ笑みを浮かべて言った。
【
これが私、ハインツ・アクスマンが人類にとって許されざる者となった瞬間でもあった。
次話は2022/11/12 23:32投稿予定です。
唐突だけど他作品をBETAで蹂躙したくなった。何処が良いと思う?なお、BETAはこの作品のやつらとする。
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