橋頭堡の確保に成功したことでグダンスクには急ピッチで基地が建設され始めた。しかし、その建造速度はテオドール達第666戦術機中隊の面々から見ても異様とも感じられるほど早かった。何しろたった半年で基地として稼働できるほどに建設されているのだから。
「これが……、西側の力か」
「これだけの余力があるにも関わらず前線には社会主義国家しかいない。いや、この場合は我々が断っていると考えた方がいいのかもしれないな」
テオドールの呟きに答えたのはアルフレートだがその言葉には自嘲ともとれる言葉があった。現在、テオドールとアルフレート、アネット、リィズ、カティアは建設されるグダンスクの基地の様子を確認しており、西側の驚異的な建設能力に圧倒されていた。
「少ない戦術機で戦っているのが馬鹿らしくなるわ……わっ!?」
「その分衛士の質じゃ俺たちが上だと考えればいい。囲まれたときに生存できる可能性が俺たちの方が高いとな」
アネットの嫌味な言葉を聞いたアルフレートは彼女の頭をなでながらフォローするように言うが当の本人は好意を寄せる相手になでられていることもあって顔を真っ赤にしてうつむいている。前回食事中にイングヒルトが暴露したこともあって第666戦術機中隊の面々はアネットがアルフレートに好意を寄せていることを知っている。小さいお姉ちゃんのように感じるアネットが真っ赤にしているのを見たカティアとリィズは微笑まし気に笑った。その瞬間だった。
「あー、いたいた」
その言葉とともにやってきたのは西ドイツの衛士のジャケットを着た三人の男女だった。そして先頭に立つ女性は続ける。
「こんなところにいたのね。役立たずのテロ国家の皆さん」
「……」
笑顔を見せているが内容はアルフレート達をけなす言葉だった。彼女の言葉にアルフレート達の表情は険しくなる。
「ドイツ連邦軍、第51戦術機甲大隊“フッケバイン”所属、キュルケ・シュタインホフ少尉よ」
「……ドイツ民主共和国第666戦術機中隊“シュヴァルツェスマーケン”テオドール・エーベルバッハ少尉だ」
「東ドイツ最強、なんだっけ? まぁ、どうせプロパガンダなんだろうけど」
「……さっきから喧嘩売ってるの?」
彼女、キュルケの言葉にアネットが我慢できなくなったのか食って掛かる。キュルケの言葉はアルフレートに撫でられているにも関わらず、現実に戻すほどの威力はあったようだ。
「謝罪を要求するわ」
「はぁ?」
「あなたたちを救出するために必要ない損害を被ったの。ハーゲンドルフは重傷。クリストルはもう少しで食われるところだったわ」
そう言って隣の女性を見る。その女性がクリストルというのだろう。表情は厳しかった。
「謝りなさい。無能な自分たちのせいでご迷惑をかけましたって」
「はぁっ!? こっちはあなたたちの砲撃で死にかけたのよ!?」
「勝手に突っ込んだだけでしょう? あんなの面制圧だけで殲滅出来たわ。ほんと、これだから社会主義国家は……。死にたいのなら、自分達だけで死になさいよ。私たちを巻き込まないで!」
「っ!」
「落ち着けアネット」
アネットは今にもつかみかかりそうになるがアルフレートが手に力を入れてアネットの頭を押さえる。頭が固定されたことで動けないアネットはフー、フーと犬のように鼻息を荒くしているがアルフレートは構う事はなくキュルケの方を見る。
「自分達から首を突っ込んでおいてよく言うな」
「……なんですって?」
「BETAがどうやって判別しているかは不明だが攻撃を仕掛けていない国家に対してBETAは一切の侵攻を見せていない。現にインドや中東、東南アジアにBETAが侵攻した事は一度としてない。にも関わらずお前ら欧州連合は手を出した。それなのになんだ? 死にたいなら自分たちで死ね? 死ぬ勇気もない奴が出しゃばってくるんじゃねぇよ」
「っ! あなたねぇ!」
「そこまでだ」
今にもつかみかかりそうになるキュルケを第三者が止めた。それは撤退時に通信を行ったヨアヒムだった。
「し、少佐!?」
「ったく、何やってるんだお前は」
「……っ」
「……“フッケバイン”の隊長、ヨアヒム・バルクだ。うちのキュルケが失礼した」
「第666戦術機中隊監査官アルフレート・ヴァルデ少佐だ。こちらとしてもみっともなく反論した。お互い様だ」
「え? 少、佐……?」
そこでようやくキュルケは自分のおかしそうになった失態に気付いた。他国とはいえ自分より階級の高い相手につかみかかりそうになったのだ。そして、監査官という役職。それが何なのかを理解できないほどキュルケは無学ではない。
監査官とは軍や党が派遣する者を政治将校というのならシュタージが派遣する者がこれに当たる。いうなればシュタージ版政治将校と言えた。さすがにヨアヒムも予想外だったのか目を見開いて驚いている。
「まさか監査官殿だったとは。うちの隊員が失礼しました!」
「問題ない。階級は同じなのだ。楽にしてくれて問題はない」
「そういってもらえるとこちらとしてもありがたい。これからの作戦、お互いに協力していこうじゃないか」
「こちらとしても敵視しあって戦闘に臨むよりは良い。よろしく頼む」
「あ……」
お互いに握手を交わすがそれによって頭から手を放す事になり、アネットは寂しげな声を出した。
「んじゃな。お互い同じドイツ人どうし、仲良くな」
そういうとヨアヒムは戻っていく。その後を悔し気な表情をしたキュルケ達が追いかけていき、何とか手を出す事態に陥ることなく終息に成功した。しかし、この一件で西側が自分達東側をどう見ているのか、本当にやっていけるのかという不安や不満が心に現れ、沈殿していく事になる。
「新たなBETAの群れが確認された」
数日後、基地も完成してフル稼働が始まった時に第2波とも言えるBETAの動きが発見された。
「数は6万。我々ワルシャワ条約機構軍はその敵の流れを正面から受け止める事となった」
「どうしてそんな危険なことを!」
ヴァルターの言葉に驚きの声を上げたのはアネットだった。かつては戦争神経症という病気にかかり、情緒不安定だった彼女もカティアという末の妹のような存在、アルフレートという好意を寄せる相手が出来たことで精神的安定を取り戻しており、昔では考えられない程大人しくなっていた。
「最後まで聞け! わが軍を中央として、右翼にアメリカ軍、左翼に欧州連合軍が展開。我々がBETAを遅滞させている間に重金属雲を展開し、面制圧で包囲殲滅する」
「これが対BETA戦ドクトリン、アクティブディフェンスだ! レーザー級を飽和攻撃する以上我々の出番はない前線近くでの遅滞、防御線が主になる。何か質問はあるか?」
その問いに手を挙げたのはシルヴィアだった。
「西側が面制圧にこだわる理由は?」
「可能な限り安全にBETAを減らすためだ」
「……ほかに理由があるんじゃない?」
「……西の衛士はBETAとの近接戦の経験が少ない。出来る限り、安全策を取りたいのだろう」
「じゃあ、面制圧に失敗したら?」
「失敗など許されない!」
シルヴィアのネガティブともとれる質問に怒鳴るようにして答えたのはグレーテルだった。権力を強めるシュタージに対して確かな功績を欲した軍部は必ずこの作戦を成功させると息まいており、その重圧が今の彼女にかかっていた。それゆえに狂気とも感じる程彼女はこの作戦の成功に拘っていた。
「我が国の威信をかけてなんとしてもこの作戦を成功させねばならない!」
「……うまくいくといいわね」
「……っ!」
シルヴィアのどこか嘲笑するような笑みと呟きを聞きグレーテルの顔は怒りで染まるがそれを必死に抑え込んだ。その様子を見ながらアイリスディーナが話を続ける。
「出撃まで時間はある。各員準備を整えておくように。解散!」
「……」
どこか不安を残しつつ、ブリーフィングが終了した。アルフレートは危うい焦りを見せるグレーテルを見ながらこの作戦について考えるのだった。
次話は2022/11/15 23:03投稿予定です。
唐突だけど他作品をBETAで蹂躙したくなった。何処が良いと思う?なお、BETAはこの作品のやつらとする。
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