アネットは目の前に出ている数字に絶望する。
「右翼8万、中央14万、左翼8万。計30万。前に聞いた時よりも増えてる……」
前代未聞とも言える30万という大群。これを相手する東ドイツは傷だらけの戦術機と寄せ集めの軍隊。それらが守る強固な防衛線のみ。とてもではないが勝てる相手とは言えない状態だった。
「モスクワハイヴから西進したBETAは予想外にもミンスクハイヴのBETAと合流。30万という群れを3つに分けてポーランド領内を進軍中。背後にはベルリンがあり、後退は許されない。そこで、軍は保有するほぼすべての戦術機をゼーロウ要塞陣地に集結。全戦力を以てこれを迎え撃つ」
「グダンスクの基地はどうなっているんですか?」
「そちらは30万のBETAとは別の群れが集まっている。援護は期待できない。だが、そこが引き付けられているからこそ30万で済んでいるとも言える」
あまりにも敵の数が多すぎた。これを守り切る事が本当に出来るのか不安になるがアイリスディーナが状況を説明したヴァルターに代わり話を続ける。
「作戦を前に、中隊について2つ報告がある。イェッケルン中尉は戦力補充の政治的交渉の為しばらくベルリンに滞在する事になった。中尉の抜けた穴はファム中尉がフォローする事となる。そして先ほど、わが中隊が教導隊に編入されるという内示が下った。いずれ対BETA戦だけではなく、教育支援にも関わる事になる」
それはつまり危険な前線を離れられることを意味している。そのためか、隊の面々の表情は明るい。誰だって死と隣り合わせの戦場よりも後方での教導の方がいいと感じるのは当然と言えた。
「すべては貴様たちが上げた武勲あればこそだ。私は誇りに思う。だからもう一度、その力を貸してほしい……。総員傾注! 祖国の存亡はこの一戦にかかっている。最強たる我々に敗北は許されない。不埒な異星起源種どもに、
「「「「「「「「祖国万歳!」」」」」」」」
ブリーフィングが終わったが、その瞬間、シルヴィアは目の前に座っていたリィズと、その隣にいたテオドールに声をかけた。
「覚えておくことね。私はあなたたちを信じたわけじゃない。怪しい動きをしたら、その場で撃つわ」
シルヴィアの言葉には殺気が籠っており、確実にそういう状況となれば撃つという意思が感じ取れた。しかし、それに対するリィズは強気な笑みを浮かべてまるで挑発すかのように口を開く。
「お好きにどうぞ。私がシュタージの犬じゃないってことをちゃぁんと戦って証明しますから」
そういってテオドールの腕に抱き着くリィズに前のような涙は見られない。覚悟を決めた強い心を見せる女性がそこにはいた。
とはいえそれに困惑するのは周囲の人間だ。だが、腕に抱き着かれたテオドールの様子とリィズの様子から察する事が出来たアイリスディーナはテオドールを呼び出し改めて確認をする。
「リィズ・ホーエンシュタインはシュタージの犬ではないのだな?」
「分からない、というのが現状だ。状況証拠だけをみれば黒だが、それにしてはおかしい点もある」
「……だから関係を持ったのか」
「っ! ……ああ、そうだ。リィズは俺を愛していると言っていた。その想いは、本物だと感じた」
「愛情で以て相手を縛る、か……」
愛情というものが時にどんな強さを引き出すのか、そして
「……分かった。ホーエンシュタイン少尉の件は貴様に一任する。出撃は一時間後だ。準備をしておけ」
「……了解」
テオドールは義妹との関係を持ったこと、その義妹がシュタージの犬かも知れないという不安を持ちつつもそうであってほしくはないという希望を胸からその不安に蓋をするのだった。
ゼーロウ要塞陣地は東ドイツ最後の防衛線である。ここはゼーロウ高地によってレーザー級の射線が切れている事から高地を越えない限り敵の攻撃が来る心配はない好条件の場所だった。
しかし、それはレーザー級が越えなければの話であり、越えれば多大な被害を受ける事は必須と言えた。
火砲やミサイル火器により近づいてくるBETAを次々と吹き飛ばしていく。対するBETAも30万という数は伊達ではなく、本当に減らせているのか不安になるほどの大群で以て押し寄せてくる。その様子は戦車級の多さと雪の白さも相まってまるで赤い津波のような勢いであった。
さらにBETAは重レーザー級という、装甲・火力・射程がレーザー級を軽く凌駕するBETAを繰り出して来る。本来、届くはずのない距離から狙撃されていくために戦術機に大きな被害が出始めた。
それを受けて、第666戦術機中隊が動き出した。
『総員傾注! これより第666戦術機中隊は重レーザー級に
『重レーザー級相手に!?』
「あんなの私たちだけで倒せるんですか!?」
『私たち以外に誰が出来る! 総員覚悟を決めろ! ここが正念場だ』
アネットの弱気な言葉をアイリスディーナは一蹴する。実際、レーザーヤークトを行って帰還率が高いのは第666戦術機中隊以外にいない。他は失敗するか成功しても帰還できないかのどれかだ。そういう意味では適任と言えるかもしれないがだからと言って相手は重レーザー級である。不安になるのもしょうがないと言えた。
しかし、アネットの脳裏にふとよぎる顔があった。アルフレートだ。現在、彼がどのようになっているのか、それは分からない。そもそもシュタージ方面は完全にアルフレートが情報収集や同行の確認を行っており、アイリスディーナ達にそちらの伝手はない。それゆえに、彼女たちは第3者からシュタージの情報を得るしかない状況にあった。
それゆえに、思い人を連れていかれてからのアネットは目に見えて落ち込んでいた。今も尋問という名の拷問を受けているのではないか? そう考えるだけで彼女の心は張り裂けそうなほどだった。
そんな彼女がこうして戦術機に乗って戦闘できているのもまた、アルフレートへの思いからだ。アルフレートがベルリンにいる可能性が高い。もし、ここを突破されればアルフレートが食い殺されるかもしれない。それだけはさせたくない。そういう思いが彼女に力を与えていた。
『行くぞ!』
アイリスディーナを先頭に重レーザー級へと吶喊する。彼女たちを支援するように陣地からの砲撃が続いており、重レーザー級はそちらの迎撃を行っていた。重レーザー級は火力・装甲・射程においてレーザー級を上回っている。しかし、一つだけレーザー級に劣るものがあった。それはレーザー発射までのインターバルだ。レーザー級は12秒時間がかかるが、重レーザー級はその3倍の36秒かかる。レーザー級が3発撃つことが出来る時間を用いて発射するそのレーザーは強力となっているのだ。
それだけ発射に時間がかかるものだが、第666戦術機中隊が到着したとき、運よく重レーザー級はレーザーを発射した直後であった。
『陣地からの砲撃が陽動となっている! いまなら懐に飛び込めるぞ!』
第666戦術機中隊は一気に吶喊を開始し、重レーザー級に攻撃を開始する。完全に横を見せた重レーザー級の腹部に銃弾が突き刺さっていくが装甲も高いというのは折り紙付きだった。これらの攻撃を重レーザー級は無傷もしくは擦り傷程度で防いだのだ。そして、今の攻撃で第666戦術機中隊の接近に気付いた重レーザー級は標的をそちらに向けた。
「効果なし! レーザーきます!」
『全機バックブースト展開! 全力で後退しろ!』
全機が離れると同時に、重レーザー級はレーザー級の何十倍もありそうな極太のレーザーを放つ。それは余波だけで戦術機にダメージを与える程であり、これによりテオドールの機体は左腕に不調をきたすようになった。
『左腕に損害! ですがまだ戦えます!』
『でもこちらの攻撃を受け付けないあの外皮にどうすれば……』
「あたしに任せて!」
ここでアネットは跳躍ユニットを吹かすと重レーザー級に接近する。そして、盾を捨てると
残念ながら双剣をそろえる事は出来なかったが自分に何かあっても機体が無事なら第666戦術機中隊で役立ててほしいと常々言っていたことで双剣を譲りうける事になった。アネット本人も思い人の武器を使えれば士気を上げられるだろうという配慮も存在した。
「はああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
そしてその思惑通り、アネットは雄たけびを上げると瞼を閉じようとする重レーザー級に右手の剣を突き刺す。中心部という一番閉じるのに時間がかかる箇所を刺された重レーザー級は痛みに悶えるように振り回そうとするがやがて動かなくなった。
「重レーザー級1体撃破!」
『こちらシュヴァルツ05。一体撃破した』
『こちらも一体撃破した。倒せない相手ではない! 次に行くぞ!』
アイリスディーナの言葉通り、重レーザー級は倒せない相手ではない。外皮は確かに硬いがそれでも突撃級の正面装甲には劣り、レーザー以外の攻撃手段を持たない。戦車級のように数が多いわけではなく、要撃級のような素早さもない。だがそれでも消耗は覚悟しないといけない相手ではあったが。
『残り7体……! 手早く倒すぞ!』
「『『『『『『『了解!』』』』』』』」
第666戦術機中隊は残りの重レーザー級に吶喊を開始した。
アニメで重レーザー級にやられて悲鳴を上げるアネットがかわいかった
次話は2022/11/20 23:08投稿予定です。
唐突だけど他作品をBETAで蹂躙したくなった。何処が良いと思う?なお、BETAはこの作品のやつらとする。
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