【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第二十七話「暗転」

「これで残り4!」

 

 アネットは双剣を照射粘膜を守る保護膜ごと貫く。僅かに硬い感触に当たったとに剣の根元まで深々と突き刺さったことで重レーザー級は活動を停止した。

 

『弾薬・推進剤残り2割以下! これ以上の戦闘は……』

『……仕方ない。テオドール。アネットに続いて近接戦闘による吶喊をしてもらう。我々はその援護を行う』

『了解』

「中隊長! 私の武器を使ってください。どうせ双剣ばっかりでほとんど使っていないので」

『済まない。では借りるぞ。……総員! 二人の援護だ!』

 

 アネットの武器を受け取ったアイリスディーナはそう言って銃撃を開始する。残りの弾薬量からこの射撃は数十秒しか持たない。その間に決着をつけるべくアネットとテオドールは吶喊する。

 そしてアネットは今までと同じように双剣を突き刺し、重レーザー級をしとめ、テオドールも短剣を保護膜が開いた隙を狙って突き刺した。

 

『残り2体!』

「これで決める!」

 

 アネットはそういうと一気に残り2体のうちの1体に近づいていく。そして、双剣を突き刺そうとするがこれまでの動きを見ていたのか。重レーザー級は体をくねらせて回避し、双剣は分厚い体に突き刺さった。それでは致命傷とならなかったようで保護膜が開き、アネットの機体に照射粘膜が向けられた。

 

「くっ!」

 

 アネットは双剣を抜くとその照射粘膜を×字に切り裂いた。唯一の武器をやられた重レーザー級は痛みからか体をくねらすがそこを狙って再び双剣を突き刺した。

 

「死ねぇぇぇぇっ!!!」

 

 絶叫とも言える叫び声をあげて双剣を突き刺すと、重レーザー級もついに動かなくなり、倒れこんだ。そして、限界を迎えたのか双剣の片方が曲がってしまい、取り出すのが困難となってしまった。

 

『こちらシュヴァルツ08。重レーザー級を撃破!』

「シュヴァルツ06同じく重レーザー級を撃破! だけど剣が一本だめになった!」

『了解した。だがこれで重レーザー級は駆逐できた。弾薬も空だ。一時帰還するぞ』

『『『『『『『「了解!」』』』』』』』

 

 重レーザー級の撃破という功績をあげたものの、すでに弾薬はほとんどが空となっている。これ以上の戦闘は不可能と判断したアイリスディーナは撤退を決め、全機が戦線を離脱していった。とはいえ重レーザー級の撃破により、最悪の事態は脱却したといってよく、ゼーロウ要塞陣地は確実にBETAを削っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「第666戦術機中隊、重レーザー級を撃破!」

「……!」

 

 国家人民軍の政治総本部にいたグレーテルはその報告に胸をなでおろした。権力を強めるシュタージに潰されないためにここまで奔走してきたグレーテルだがその結果としてこの大事な局面で隊のみんなと一緒に戦場をかける事が出来なくなっていた。だが、彼らは自分たちの役目をきっちりとこなしているのがわかり、グレーテルは自分も頑張らないと決意を新たにした。

 

 

 それが二度と実行される事はないと知らずに。

 

 それは突然だった。

 

 部屋の扉が突如として爆破されたからだ。

 

「な、何事だ!?」

 

 グレーテルは扉の近くにいたことが災いして爆風で吹き飛ばされた。全身に痛みが走る中必死に扉の方を見れば武装した武装警察軍の姿があった。

 

「動くな!」

「全員壁に手を付け!」

 

 政治総本部で作業をしていた軍人たちはなすすべなく無力化されていくがグレーテルは銃を突きつけられてもそういう命令は受けなかった。なぜ自分だけという疑問に答えたのは新たに表れた男の言葉だった。

 

「グレーテル・イェッケルン中尉。一緒に来ていただきます」

「……誰だお前は?」

「もうすぐでそんな口も態度も取れなくなる相手、とだけ答えておきましょう」

 

 それだけ言うとグレーテルは周りの男たちに拘束されて部屋を無理やり出されていく。途中、複数の爆発音が響き渡り、襲撃がここだけではないと理解出来てしまい、最悪の事態が訪れたと痛感した。

 

「クーデターか……」

 

 政治交渉をしていく中で判明したシュタージによるクーデター。それを教えたフランツ・ハイムはなんとか阻止するか成立してもすぐに対応できるように動こうとしていたがシュタージの迅速な行動からベルリンの制圧はすぐだと理解できてしまった。

 

 そして、政治総本部を出れば2機のシュトゥルムヴィントがおり、その足元に一台の車が停車していた。その車に入れられると車は走りだし、政治総本部から離れていく。

 

「……」

「先ほどの呟きに答えましょう。我々の行いは確かにクーデターに見えるでしょうが違いますよ」

 

 どこか女性のような口調で男がそういった時だった。銃声と破壊音が響き渡る。グレーテルが後ろを振り返れば先ほどまで自身がいた政治総本部が2機の戦術機によって破壊されていた。

 

「なっ!? 一体何を……!」

「すでにベルリン内の主要施設は制圧か破壊しています。東ドイツという国は機能不全に陥ったと言ってよい状況です」

「貴様ら……! そんなことをすればどうなるのか理解しているのか!?」

「もちろんですよ」

 

 男の言葉にグレーテルは動揺を隠しきれない。今武装警察軍が行っていることは東ドイツへの反逆どころか人類への反逆に等しい行為だ。とても正気の人間がするものとは思えなかった。

 

「あなた方東ドイツという()()()()()()()()()()()()()()()。ですが我々は違います。この行為は我々にとってとるべき行動なのですから」

「お前、何を言って……」

「いずれにしろ人類はまた一歩滅亡へと歩みを始めます。我々の願い通りにね」

「……まさか!」

「では少しの間その美貌を隠してもらいましょうか」

 

 グレーテルは最悪の予想を出した。しかし、それはあまりにも突発的すぎる。第一、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして自らが感じた最悪の予測が当たっていれば、人類は勝てない。グレーテルはまるで地面が崩れていき、底なしの沼に引きずり込まれるような感覚を覚えながら両脇に乗った武装警察軍によって顔に袋をかぶせられるのだった。

 

 

 

 

 

 基地へと帰還した第666戦術機中隊の顔は明るい。何しろ危険な任務を終えて戻ってきたばかりなのだから。

 整備兵たちは補給に向かい、隊員たちはつかの間の休息をとるべく戦術機を降りていく。

 

「よくやったなテオドール、そしてアネット」

「へへ、あのくらいよゆうさ」

「俺としてはギリギリだったがな。さすがに重レーザー級相手に短剣は厳しすぎたな」

 

 今回のMVPとも言える二人にアイリスディーナは称賛した。今回は普通のレーザー級相手ではなかったが誰一人として欠けず、それどころか全滅させれたのは大きいと感じていた。いまだ予断を許さないゼーロウ要塞陣地だがこのままいけば十分に守り切れると感じていた。

 

「補給と機体の修復が完了すればまた出撃となるだろう。それまでは休むといい」

「うーん。そうさせてもらおうかな」

「アイリス、少し話したいが良いか?」

「ああ、もちろんだ」

「あれ? あたしはお邪魔? なら離れるよ」

 

 テオドールの真剣な表情から、何を勘違いしたのかアネットはニヤニヤと笑みを浮かべながら遠くに見えたイングヒルトのもとに走っていく。あとでヴァルデ少佐の話でからかってやるとテオドールは思いつつアイリスディーナに向き合った。

 

「決めたよ。俺はあんたについていく。あんたとカティアの夢のためにな」

「テオドール……」

 

 アイリスディーナの理想。それは東ドイツと西ドイツの統合というカティアの理想と似ており、このシュタージによる監視国家を終わらせたいというものだった。それはもともと彼女の兄の夢であったが夢半ばでシュタージにバレた彼はアイリスディーナを守るために自らを密告させたのだ。そんな兄の意志を継いでここまでやってきたがそれもまもなくかなうだろうというところまで来ている。

 

「アイリス、俺はあんたの事が……」

 

 テオドールがそこまで言ったときだった。突如として基地内の電源が切れ、あたりが真っ暗となる。突然の事にアイリスディーナとテオドールはハッとした。

 

「総員! 機体に戻れ!」

 

 そうアイリスディーナが叫ぶのと、天井が崩れ落ち、基地の入り口が爆破するのは同時だった。

 

「動くな!」

『全員大人しくせよ』

 

 爆破された入り口からは武装警察軍が、崩れ落ちた天井からは完全武装のシュトゥルムヴィントが姿を現し、それぞれ武器を向けてきていた。

 いきなりの事態に整備兵はあっけなく無力化され、第666戦術機中隊の隊員たちも自分の戦術機に乗る事さえできずに拘束されていく。

 

「くそ! いきなり何なんだ!」

「テオドール! 無事か!?」

 

 結果、戦術機に乗り込めたのはテオドールとアネットのみだった。正確にはテオドールの戦術機に乗り込む形でカティアも拘束を逃れていた。しかし、そのコックピットにはシュトゥルムヴィントの銃口が向けられており、すぐにでも不審な動きを見せれば破壊するという意思が込められていた。

 脱出は不可能。テオドール達に出来る事は残されていなかった。

 

「くそ! どうすればいいんだ!」

『お兄ちゃん、降りて』

 

 そんな手詰まりの状況に悪態をついたテオドールの耳に入ってきたのは知っている声だった。いや、この状況を思えばその声であってほしくはない。そんな思いすら感じつつテオドールは声の方を向いた。そして絶望する。

 

「リィズ……!」

『じゃないと、この女の安全は、保障できないよ?』

 

 そこにいたのはテオドールの妹であり、シュタージの犬と疑われていたリィズだった。そして、彼女は銃をアイリスディーナの頭部に銃口を向けていた。それが何を意味しているのか、分からないテオドールではない。

 

「どうして……!」

『テオドール! そっちは逃げられそう!?』

 

 動揺するテオドールに通信が入る。それは同じく戦術機への搭乗が出来ていたアネットだった。しかし、彼女のもとにもシュトゥルムヴィントが銃口を向けていて動くに動けない状況だった。

 

「こっちもだめだ。動けそうにない。それと……。リィズが裏切った」

『っ! ……そう。言っちゃ悪いけど当然と言えば当然ね』

 

 最悪だが予想出来ていた事でもありアネットに動揺はない。むしろこの状況をどう切り抜けるのか考えている様子だった。しかし、状況が好転するわけもなく、さらにもう一機が姿を現した。

 その機体は黒の剣(シュヴァルツェ・シュヴェールト)に似ており、同種の機体というのが外見から見て取れた。

 

『両戦術機に登場した第666戦術機中隊の隊員に告げる。降りろ』

「っ! それで俺たちを拘束するってか? ふざけるな!」

『では死ぬか?』

 

 新たに表れた機体の衛士は容赦するつもりはないようで剣を取り出すとテオドール達が乗る機体に突きつけた。

 

『っ! シュタージなんかに屈するわけが……!』

『そんなシュタージから派遣された男に好意を持った奴がよく言う』

『なっ!?』

『まぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『何を、言って……』

 

 そこまで言うと、機体のコックピットが開く。アネットは嘘だと思いつつも目が離せない。最悪の予想が頭から離れない。信じたくないと頭が叫んでいる。

 

 そして、絶望する。

 

『ではお前の()()()からのお願いだ。降りて投降してくれ』

 

 コックピットから姿を現したのは、海王星作戦から帰還時に、シュタージに拘束されたはずのアルフレート・ヴァルデだった。

 




次話は2022/11/21 23:26投稿予定です。

唐突だけど他作品をBETAで蹂躙したくなった。何処が良いと思う?なお、BETAはこの作品のやつらとする。

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