「さぁ、降りてください」
ヘリが着陸すると男によって降りるように促される。反抗しても無駄だと理解したファムを先頭に、いまだ放心しているアネットをかばいながらカティアが続いた。ゼーロウ要塞陣地では爆発音や銃声が聞こえてくるがそれはかなり遠くの方からであり、それが意味するのはこの周囲一帯がBETAに制圧されているという事でもあった。
とはいえやはりというべきかBETAがカティアたちに襲い掛かってくる事はない。まるで興味がないと言わんばかりに戦車級や要撃級が通りすぎていくだけだ。暫くその場で待っていると他の面々もヘリから降ろされていた。この場には武装警察軍とその戦術機、第666戦術機中隊の面々がいるが端から見れば異様な光景だろう。周囲にBETAがいるのに誰一人として襲われていないのだから。
「では行きましょうか。お迎えが来ているようですので」
男は地響きのようなものを感じたためかそう言うとゼーロウ要塞陣地へと向かって歩き出す。そんな男について行けと言わんばかりに兵士が銃口を向けて無理やり歩かせる。そこに戦術機から降りたアルフレートとリィズも合流し、それなりの人数で歩いていく。
「……」
アイリスディーナは表情を崩さずに周囲を確認する。もちろん兵士にバレないように視線だけを動かして。
「(……シュタージは一体いつ取り込まれた?)」
アイリスディーナはシュタージがBETAに屈したか
では、いつ取り込まれたというのか? BETAはいつから計画していたのか? そして、BETAの手は
「(もはや私たちに出来る事はない。兄さん、あなたの理想を叶えられなくてすみません……)」
アイリスディーナは兄に生かされたというのにこうして夢半ばで倒れようとしている状況を謝罪した。東ドイツの周辺は拘束され、ここに連れてこられるヘリの中から見る事が出来た。見たくもない光景だったがアイリスディーナは絶対に忘れないと目に焼き付けていた。
破壊されたゼーロウ要塞陣地の穴をくぐり、東側に出るとそこにはすでに先客がいた。
「っ! イェッケルン中尉!」
「……お前たちも、捕まったのか」
そこには複数の武装警察軍と闘士級戦車級に囲まれているグレーテルがいた。その表情には生気がなく、すべてをあきらめているようにも見えた。
「いつからここに?」
「ゼーロウ要塞陣地がシュタージの攻撃を受けて直ぐだ。……私は見ている事しかできなったがな」
「この状況であれば仕方がないことだ」
「……あー、よろしいですか? そろそろ行きますよ?」
話を始めたアイリスディーナとグレーテルの間に男が割り込む形で会話を終了させた。
「……で? 我々はここからどうすればいいのだ? まさか歩いていくと、言わないよな?」
「もちろんですよ。きちんと乗り物は用意しています。……どうやら来たようです」
男がそういうと地響きが響き渡る。まるで地震の如き揺れに誰もが腰を低くしたり膝をついて倒れないようにする中、それは現れた。
地面が破裂したように吹き飛び、巨大な肉の口が現れたのだ。それは要塞級を軽く飲み込める程巨大で人間等蟻以下の大きさにしか感じない巨体だった。
「な、なんだこれは……!」
「うーん、そうですね。
「これが、輸送用だと!?」
アイリスディーナは戦慄した。この一体でどれほどの輸送能力があるのか? それ以前にこれがどれほどの巨体なのか想像できない。地面から出している部分だけでもかなりの大きさなのにそれが長大でもあったら? こんなのが前線から遠く離れた場所に現れれば人類は大混乱となる。
そんなアイリスディーナの驚愕をよそに男が再び歩き出し、キャリアー級に向かっていく。しかし、あまりにも巨大すぎて乗り込むのは不可能だ。そもそも乗り込むのがあの口として無事でいられる保証はあるのか? そんな心配が出てくるがその辺はきちんと対応されていたようだ。
「ではこれを登ってもらいましょうか」
それは肉の階段とも呼ぶべきものであり、男はそれを登っていく。段数はそれなりに多く、登りきるころにはそれなりの運動となってしまった。
階段の先には電車のようなシートがあり、そこに腰を掛けるようになっていた。実際、男が既に座っており、寛いでいた。
「さぁさぁ! 遠慮せずに座ってください。でないと振動で大変な事になってしまいますよ?」
「……」
歩いているだけでも肉の感触が気持ち悪いというのに座らないといけないことにげんなりしつつ全員が座る。その際に、テオドールの隣にはリィズがくっついて座り、アネットの隣にはアルフレートが座った。
「……今更何よ」
「何か問題があるか? 少なくとも我々はお前たちを傷つけようとしているわけではない」
「……裏切ったくせに」
アネットはそう言いつつもまだ心の整理が出来なかった。裏切られたことは衝撃だったし、何でという気持ちにふざけるなと憎む気持ちもあった。だが、それでも隣にアルフレートが座るだけで好きだという気持ちがあふれてくる。そのことがアネットには腹正しく、そしてもっと近くにいたいと思ってしまい感情がぐちゃぐちゃになってくる。
「……」
「それじゃ行きましょうか。しっかり踏ん張ってくださいね」
男がそういうと同時に、キャリアー級の口が閉じる。一気に真っ暗となるが非常灯のような赤いライトが付き、暗くて周囲が見えないという事はなくなった。そして、キャリアー級が移動を開始したらしくとてつもない振動が襲い掛かってくる。
「きゃあっ!?」
「ぐっ!」
「これは……!」
想像以上の揺れに座っていた何人かが倒れこんでしまう。それでは立っている武装警察軍はもっと危険だが彼らは足を床とくっつけることで直立の姿勢を維持していた。
「本来は鉄道を走らせる計画でしたがこのキャリアー級が存在したことで取りやめになったのですが大きすぎますしやはり別の方法に変えるべきですね」
男がのんきにそんな話をしているがその言葉を聞いている余裕はない。第666戦術機中隊の面々はミンスクハイヴに到着するまでの間、すさまじい振動を受け続ける事になるのだった。
「酷い、めに……。あった……うぷ!」
辛うじてそうつぶやいたアイリスディーナは我慢を超えたらしく胃の中身を吐き出した。これで全員が一度は吐き出した事になり、一番酷かったのがカティアとリィズだった。最初こそ生気のない瞳で兄であるテオドールとくっついていたリィズだが揺れを受け続けている間に一番最初に嘔吐し、周辺に胃の内容物をまき散らした。それによって一番近くにいたテオドールも貰ってしまい、更なる地獄絵図が誕生した。そして、その後リィズはカティアと一緒に胃液が残っていないのではないかと思うほど出しまくり武装警察軍の兵士たちに肩を貸してもらって歩いていた。
「しかし……。これが、ミンスクハイヴか」
一月ほどしか経過していないはずなのに、ミンスクハイヴはフェイズ2まで建設が進んでいた。彼女たちがいるメインホールも地上から大分下にあり、日の光があっても届き切らないほどの深さであった。
「……それで? 私たちをここに連れてきた理由はなんだ?」
「それはまもなく分かりますよ」
一度吐いてすっきりしたらしいアイリスディーナは毅然とした様子で男に問う。このメインホールにはハイヴのコアである頭脳級以外には存在せず、頭脳級から放たれる青白い光で光源を確保している状態だった。
こんなところで一体何をするのか? 何をさせるのか? それが見えてこないアイリスディーナ達に対して男は待つように言う。そして、それは来た。
「……予想外にも全員健在。一人くらいは死ぬと思ってたのにきちんと全員連れてきたんだな」
「っ! だれだ!?」
声の方向をみれば頭脳級の上に一人の男が座っていた。アジア人らしいその男は笑みを浮かべると自己紹介を行う。
「やぁ、初めまして。第666戦術機中隊の皆さん。私は重頭脳級BETA。カシュガルハイヴにて地球のBETAすべての指揮を執るものさ」
すべての元凶にして、人類が駆逐するべき対象が、そこにはいた。
キャリアー級は口のついたでっかいミミズみたいで気持ち悪い
次話は2022/11/23 23:01投稿予定です。
唐突だけど他作品をBETAで蹂躙したくなった。何処が良いと思う?なお、BETAはこの作品のやつらとする。
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