【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第二話です。


第二話「喀什(カシュガル)ハイヴ」

 後に第一次月面戦争と呼ばれることになるBETAとの戦闘を以て人類は30年以上にわたるBETAとの戦争を始めた。しかし、BETAの勢いを止める事は出来ず、人類は大きな損害を受けて月面からの撤退を余儀なくされた。途方もない金と物資、人員をつぎ込んだにも関わらず人類は兵站の距離的問題や有効的な兵器がなかったこともあって大敗したのである。

 とはいえそれだけであったのなら人類は幸せだっただろう。確かに受けた損害は大きいが時間をかければ取り戻せる数値だったのだから。

 1973年。第一次月面戦争が継続している中でのちにあ号標的と認識されるようになる喀什(カシュガル)ハイヴが建設された。当初、領内に誕生したこのハイヴを中華人民共和国は自国のみで調査を行った。月面での憂さ晴らしをするようにあふれ出るBETA群に対して航空戦力や戦車を用いて突破。ハイヴまであと少しというところまで接近する事に成功した。

 しかし、それに対応したかのように表れた光線属種と呼ばれるレーザーを発射するBETAの出現により航空戦力は無力化された。空からの支援を受けられなくなった地上戦力は光線属種の攻撃もあってあっという間に壊滅した。その後、BETAに主だった動きはなく、精々が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この間に中国軍は失った戦力を取り戻すべく軍の増強に同じイデオロギーであり、協力関係にあるソビエト連邦に助力を請うた。

 国連の介入を嫌った中華人民共和国と仮想敵国であるアメリカを追い抜くために力と権力を求めていたソビエト連邦は両者の思いが合致し、ハイヴの共同攻略を目指した紅旗作戦の実行へと至った。戦術機という対BETA戦の切り札が世界に浸透していないこの時代において中ソは歩兵を主力とする物量で以て四方からのハイヴ攻略に乗りだした。

 そして、そんな中ソ両国の動きはBETAとなり、事実上人類と戦争をすることとなったあ号標的にも伝わっていた。ゲームにおけるBETAであれば数によるごり押しで戦っただろう。しかし、このあ号標的は違う。それを中ソ両軍は身をもって知る事となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 俺があ号標的となって早数か月。この間に俺は集めたG元素を使って戦力増強とハイヴの増築に勤しんでいた。ハイヴはその大きさ・規模などからフェイズと呼ばれるくくりがされるらしい。俺がこの地にやってきたときのハイヴはフェイズ1だったが増築を繰り返したおかげでフェイズ2と呼べる状態へと至った。

 そもそもハイヴとは反応炉というBETAの生成・維持・命令伝達に必要不可欠ないわば心臓と頭脳を兼任する物を守る建造物だ。まぁ、でかくなれば資源を打ち出す役割も出てくるが現状の役目はそれだけだな。ハイヴは地表構造物とその下に広がる穴に分かれている。地表構造物は手裏剣のようなものがいくつも重なった特徴をしており、これがフェイズ5あたりになると資源を射出する砲台のようになる、らしい……。

 そしてメインともいえるのが穴だ。これはアリの巣のように入り組んだものとなっており、地中を横に移動する“横坑(ドリフト)”にそれらをつなぐ“広場(ホール)”が形成される。中央、地表構造物の下には“大広間(メインホール)”という反応炉、つまり俺の本体が存在するエリアとなっている。これらはフェイズを重ねるごとに巨大且つ複雑になっていくようで、BETAの記録にあるマーズゼロ、つまり火星における重頭脳級のハイヴはフェイズ9という規模で、これだけで国が包み込めそうな巨大なハイヴとなっている。そこまで大きくなればどんな兵器を用いようとも陥落させることは出来ないだろう。

 ああ、それと。ここからは俺のオリジナルの行動になるが地表にある草木類を一部だがハイヴ内で育てている。神様知識によるとBETAが侵攻した場所は草木一つ残らないそうだがそれは流石にどうかと思って人工的に栽培を行っている。BETAとしてみれば明らかに不必要な行為なのかもしれないがこれのおかげで幾つかの発見を得ることが出来た。

 

 まず、この草木を栽培するにあたって雑草の処理とかをどうするか悩んだ。というのも俺は動けないし手のような細かいことを出来るものはない。だからこそ闘士級の一部に任せる事にした。戦車級じゃ体がでかいしだったら腕みたいなのが一本しかないけど小型の闘士級の方が向いていると考えたからだ。

 そして、結果を先に言えば大失敗に終わった。まず、育てる草木を踏みつぶし、なぎ倒して進む闘士級しかおらず、これらを避けるという行動がなかったのだ。そのため、栽培係の闘士級に草木を避ける、つぶさないように力加減をするなどの情報をインプットする羽目になった。とはいえこれは成功し、BETAも具体的に指示を出せばそれを実行できる能力がある事が証明された。

 だが、肝心なのはここからだ。闘士級の指は3本しかなく、細かい作業をするには不向きな形をしている。だからこそどうにかこの腕の形を変えれないかと弄ってみたのだが……、成功したのだ。闘士級亜種もしくは栽培級とでも呼ぶべき人の手のように細かい作業が出来る腕へと姿を変える事が出来たのだ。これに成功したときは驚いたし改造なんて出来るのかと新たな境地に達した気分だった。だが、そこで気づいたんだ。新種のBETAが作れるし、何なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()って。もし、人間が作れるというのであれば今の人類にこだわる必要はなくなる。そいつらを人類としてBETAの一部に組み込む形で地球の支配者にすればいい。どこまでできるかは分からないが脳を弄って見た目も中身も人間だがBETAには反抗しない従順なものにすることが出来れば歪だが共存が出来る事になる。それを行うには今の人類を駆逐する必要があるがそれは今更な話だ。

 それに、人型が作れるのなら人間社会に潜らせることも出来る。人類を内側から瓦解させることが出来れば最高だし、この世界の主人公たちの情報を得られるかもしれない。これまでの様子から人類もBETAに人に似たものがいるとは思っていないだろうし、たとえそれが判明しても疑心暗鬼になって他者を信じられなくなるだけの話だ。人間を作り上げるのはメリットも多い。そして、人を作れればそれを操り、疑似的に人間の体でもう一度人のような生活を送る事が出来るかもしれない。味覚や嗅覚をきちんと作り上げ、それを共有できるようにすれば食事を楽しむことも出来る。BETAになったがために失われた人としての生活を再び送る事も出来るかもしれないのだ。俄然やる気が出てくるというものだ。

 

 ……とはいえそう簡単に人間を作る事など出来るわけがない。そもそも、俺は別に生物学者でもなんでもないただの一般人だった。人間の構造を熟知しているわけではない。そういうわけでいきなり作り上げようとした人間(仮)試作一号機は肉の塊として誕生した。冷凍エビを解凍したような気持ち悪い柔らかさでとても人間には似つかない。あまりにも気持ち悪いために戦車級に食べてもらって処理をした。

 次の2号機では1号機の失敗から人間の死体から情報を得てから作り上げたが……。細部まではまねる事が出来ずに見た目はそれっぽい人形が完成した。簡潔に言うのなら関節がなくてぐにゃんぐにゃん動く四肢を持ち、それ以外の部分は硬くて少しも動かないという何とも言えないものだ。これも戦車級の餌となってもらったがその際にも発見はあった。肉人形には血がなく、中身も臓器のようなものはなくて硬いだけの骨と柔らかすぎるにくだけの状態だったのだ。これを見るにいきなり人間を作ろうとするのはいけない事だと理解できた。脳内では血も内臓もきちんと作成できていると思っていたからな。

 そんなわけで3号機以降は四肢や頭部、内臓などに分けながら人間の生成を目指す事になったがここで問題が起きた。素材となりうる人間の死体が枯渇したのだ。そもそも俺が目覚めた時に手に入れた死体はほとんどがG元素に変換しており一部だけしか死体が残っていなかったのだ。

 

 どうしようかと頭を悩ませたがそろそろ動きを見せてもいいと考えなおした。そもそも俺はBETAの個体数を増やすこととハイヴの増築しか行っておらず、周囲に侵攻するような事は一切していない。だからこそ今の状況となって素材が足りないことに陥っているだけだ。戦力的にもハイヴから溢れそうな勢いまで増えたしそろそろ行動を起こしてもいいかもしれない。

 

 そう思っていた為だろうか? 俺を囲むように中国軍と、おそらくソ連軍らしき大軍勢がやってきたのだ。それを知った時は思わず笑いそうになったよ。……笑う口はないけどな。

 なんせ素材(人間)が向こうからやってきてくれたのだから。俺は嬉々として中ソ両軍の迎撃準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、たぶんこのころ……。いや、転生したときからかもしれない。俺は人間としての常識や理性がなくなり、BETAという人類を滅ぼす存在の一人であると無意識に思うようになり、人間を同族とは思わなくなっていた。だからこそ、この後に起こる虐殺を目に俺は平然としていられたのかもしれない。

 




次話で(作者が勝手に展開させる)紅旗作戦が始まります。

まりもちゃんは

  • マミる(原作準拠)
  • マミらない(トラウマ回避)
  • 武の精神をぶっ壊せ(更なるグロ描写)
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